多くの投資家が「堅牢で長寿命」と聞いてSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造に興味を持ちます。しかし、実際に物件検索サイトを眺めるとRC造より高めの価格帯が並び、「本当に利回りが取れるのか」と不安になる方も少なくありません。この記事では、SRC造ならではの構造的メリットと収益性の関係を整理し、初心者でも再現しやすい利回り向上のポイントを解説します。読み終えたとき、立地の見極め方から融資戦略、出口戦略まで一通りの判断軸が手に入り、物件選定で迷わなくなるはずです。
SRC造とは何かとRC造・S造との違い

まず押さえておきたいのは、SRC造が「鉄骨」と「鉄筋コンクリート」を組み合わせたハイブリッド構造である点です。S造(鉄骨)の軽さとRC造(鉄筋コンクリート)の耐火性・遮音性を併せ持ち、柱がスリムでも高層化できるため、都心のタワーマンションに多く採用されています。
耐震性や遮音性の高さは賃借人の満足度に直結し、長期入居を後押しします。また法定耐用年数が47年とRC造より2年長く、税務上の減価償却期間が伸びるため、キャッシュフローの計画を立てやすい点も見逃せません。一方、建築コストが高いので販売価格は他構造より割高になりがちです。つまり、収益性を測る際には家賃設定と空室期間の短さがどの程度それを吸収できるかを見極める必要があります。
利回りの考え方とSRC造の優位性

ポイントは、SRC造が必ずしも高利回りを生むわけではなく、低空室率と長期保有に適した構造だという事実を理解することです。日本不動産研究所の2025年12月調査によれば、東京23区の平均表面利回りはワンルームで4.2%、ファミリーで3.8%、アパートが5.1%です。同じエリアでSRC造に絞ると表面利回りは3.6〜3.9%に留まりますが、平均空室期間はRC造の1.4か月に対し1.1か月と短く、実質利回り(NOI利回り)が底上げされる傾向が見られます。
実は、SRC造の防音性と共用施設の充実度がリピーター入居を生み、原状回復費も抑えられます。加えて、長寿命ゆえ修繕積立金が計画的に積み上がっている物件が多く、大規模修繕後の築15年〜20年物件を狙うと、当面の追加負担を抑えられます。つまり、初期利回りが低くても、運営コストが読めることでトータルの手残りが安定しやすいわけです。
物件選びで押さえるべき数字
重要なのは「価格 × 家賃」だけでなく、「修繕積立金」「管理費」「築年数から残存耐用年数を引いた償却期間」をセットで比較することです。具体的には、月額家賃20万円のファミリータイプを価格6,000万円で購入した場合、表面利回りは4.0%ですが、管理費3,000円・修繕積立金12,000円を引くと実質は3.4%に下がります。この差を強く意識することで、過度に高い物件をつかむリスクを回避できます。
また、周辺の新築RC造と家賃差が月1万円以内に収まる物件は、競合に埋もれにくい傾向があります。東京都都市整備局の人口推計でも23区の単身・共働き世帯は2025年から2030年にかけて年平均0.5%増で推移する見込みです。家賃相場が堅調なエリアであれば、SRC造のブランド力が長期にわたって空室リスクを抑えてくれます。最終的に、購入価格が家賃の220〜240か月分以内に収まると、表面利回り4%前後でも手残りが確保しやすいと覚えておくと便利です。
融資・税制を味方にする方法
まず、都市銀行や信託銀行はSRC造を好み、2025年時点で最長35年・金利1.2%台の固定金利商品を用意しています。金融庁「月次金融統計」では、RC造より0.1〜0.15ポイント低い金利が適用されるケースが多いと報告されています。金利差は小さく見えても35年間では数百万円の総返済額差になるため、融資条件を細かく比較する価値があります。
税制面では、投資用不動産に対する「不動産取得税」の軽減措置が2025年度も継続しています。新築から取得後6か月以内に申告すれば、建物評価額から1,200万円が控除されるため、SRC造の高額物件ほど恩恵が大きくなります。さらに耐用年数47年のうち残存が30年以上あれば、定額法による減価償却費が年間200万円を超えるケースも珍しくありません。これが所得税と住民税の圧縮に寄与し、結果として実質利回りを押し上げます。
リスク管理と出口戦略
まず押さえておきたいのは、SRC造だからといってメンテナンスを後回しにできるわけではない点です。日本建築学会の調査では、屋上防水と外壁タイルの補修は15年サイクルで実施すると、その後の修繕コストが約3割削減できるとされています。積立金不足のマンションに出合ったら購入前に長期修繕計画を精査し、追加徴収リスクを数字で把握しましょう。
出口戦略では、築35年前後で区分所有から一棟丸ごとリノベーションに切り替えるディベロッパー向け売却が選択肢になります。再開発を控えた駅前立地なら、表面利回り3%台でも資産価値の底固さを評価する法人が現れやすいです。また、価格下落に備え、保有期間中にローン残高を家賃収入の50倍以下へ圧縮できるよう繰上返済を計画的に進めると、いざというときに柔軟な売却判断が可能になります。
まとめ
ここまでSRC造利回りの仕組みと実践的な改善策を見てきました。表面利回りだけを追うとRC造やアパートに見劣りしますが、空室期間の短さや修繕費の見通しやすさを加味すれば、実質利回りは十分競争力があります。さらに、低金利融資と税制優遇を合わせればキャッシュフローは安定し、築古になるほど耐用年数の長さが効いてきます。最終的に重要なのは、購入前に家賃と経費の実数を洗い出し、出口までの資金計画を描くことです。ぜひ本記事を参考に、堅牢なSRC造で着実な資産形成をスタートしてください。
参考文献・出典
- 日本不動産研究所 – https://www.reinity.co.jp
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp
- 東京都都市整備局 人口推計 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
- 金融庁 月次金融統計 – https://www.fsa.go.jp
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp
- 住宅金融支援機構 融資金利データ – https://www.jhf.go.jp