不動産の税金

ビル投資のメリット・デメリット徹底解説

都市部で「ビルを所有して賃料収入を得たい」と考える方は年々増えています。しかし高額な投資であるがゆえに、期待と不安が入り交じり、具体的な判断基準が分からないという声も多く聞かれます。本記事では「ビル メリット・デメリット」を軸に、最新データと2025年度の制度を交えながら、初心者でも納得できるポイントを整理します。読み進めることで、収益性だけでなく長期リスクまで見通せる視野が得られるはずです。

ビル投資が注目される背景

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まず押さえておきたいのは、ビル投資がなぜ今さらに注目されているのかという点です。総務省の労働力調査によると、テレワーク普及後も都心のオフィス需要は2024年以降緩やかに回復し、平均空室率は4%台で推移しています。つまりオンライン化が進んでも、対面ニーズは一定程度残り、立地の良い物件には安定した賃借人がつく構造が続いているのです。

一方、低金利環境が長期化したことで、預金や債券より高い利回りを求める資金が不動産市場へ流れ込みました。特にビルは区分マンションより規模が大きく、物件価格の変動に対して家賃収入が相対的に安定しやすいと評価されています。また2025年のインボイス制度定着により、法人テナントが賃料の支払い先を厳選する動きが強まり、管理体制の整ったビルへの需要が底堅いことも追い風になっています。

しかし、需要が堅調だからといって安易に飛びつくのは危険です。立地や築年数、テナント属性によって収支は大きく振れます。そこで次章から具体的なメリットとリスクのバランスを、数字を交えて検証していきましょう。

収益性のメリットとリスク管理

収益性のメリットとリスク管理のイメージ

重要なのは、ビル投資の収益性が家賃収入だけで語れないという点です。東京都心五区の2025年平均坪賃料は2万5千円前後、表面利回りは4〜5%が目安とされます。一方で管理費や修繕積立を差し引いた実質利回りは2.5〜3%へ下がるため、この水準をどう見るかが第一の判断軸になります。

家賃収入の最大のメリットは、複数テナントで構成されるため一室が空いても収入がゼロにならないことです。例えば延床面積800㎡で10社が入居するビルであれば、一社退去しても家賃の90%が維持できます。言い換えると、区分マンションより空室リスクを分散できるのが強みです。

一方でテナントの入れ替えコストは見落とされがちです。居抜き解約時の原状回復費用を負担するのはテナント側ですが、フリーレント(家賃免除期間)を求められるケースが増えています。2024年の日本不動産研究所調査では、都心オフィス成約の約35%にフリーレントが付与され、平均期間は2.2ヶ月でした。これを織り込んでキャッシュフローを試算しないと、空室期間と合算した実質利回りがさらに低下しかねません。

損失を抑える手段として、賃料保証付きのサブリース契約も選択肢ですが、保証料として通常賃料の5〜10%を差し引かれます。リスク削減と収益性のバランスを、シミュレーションを通じて確認する姿勢が欠かせません。

築年数と設備更新のポイント

ポイントは、築年数によるキャッシュフローの変化を長期視点で捉えることです。ビルは法定耐用年数(鉄筋コンクリート造で47年)を超えても使用されるケースが多いものの、15年ごろから設備更新費が増えはじめます。国土交通省「建築物ストック統計」によると、築20年を超えるビルでの平均修繕費は年間賃料収入の7〜10%に達します。

特に空調、エレベーター、給排水といった基幹設備は故障が直接テナント不満に結びつきます。2025年度の「既存建築物省エネ化推進事業」は、高効率空調やLED化などを行う改修に対し、補助率1/3・上限5千万円を支援します(予算枠に達し次第終了)。補助を活用すればキャッシュアウトを抑えつつ、維持費とエネルギーコストを削減できる点は大きなメリットです。

ただし補助金ありきで計画を立てるのは危険です。採択には省エネ性能の証明や工期制約が伴い、採択後の仕様変更は原則不可となります。したがって、まずは自己資金で対応する想定を立て、補助採択はボーナス程度に位置付ける方が健全です。

老朽化が進んだビルを購入する場合、将来の解体費用も忘れてはいけません。解体単価は近年上昇傾向にあり、鉄筋コンクリート造で1㎡あたり3万円前後が目安です。延床1000㎡なら単純計算で3億円の負担となるため、残存価値と解体費を差し引いた土地値が購入価格を下回らないか確認する必要があります。

融資と税制上のメリット

実は、ビル投資の魅力はレバレッジ効果と税務メリットにあります。2025年現在、都市銀行のビル向け融資金利は1.2〜2.0%が中心で、借入期間は25年が一般的です。家賃収入が固定金利を上回る構造であれば、他人資本で不動産を取得し、法人の純資産を効率的に拡大できます。

さらに固定資産税や都市計画税は、建物評価額が年々下がることで税負担も緩やかに減少します。一方、建物部分の減価償却費は損金算入できるため、キャッシュアウトを伴わない費用計上により課税所得が圧縮される点がメリットです。法人で所有し、役員報酬を適切に設定すれば、給与所得控除と法人経費のダブル活用も可能です。

ただし融資審査は厳格化が続いています。自己資金が物件価格の20%未満では審査に時間がかかり、金利条件も不利になりがちです。日本政策金融公庫の「中小事業者向け不動産取得貸付」では、自己資金1/10以上を条件に最長20年・固定1.5%前後の融資を利用できますが、返済比率や事業計画の妥当性を詳細に問われます。融資交渉に臨む前に、実質利回りが1.5倍の返済余力を持つか試算し、ストレスシナリオ(空室率20%、金利+2%)でも黒字を確保できる計画が求められます。

ビル経営で避けたいデメリットの回避策

基本的に、ビル投資のデメリットは資本回収期間の長さと流動性の低さに集約されます。物件価格が3億円、実質利回り3%なら、単純回収には30年以上を要する計算です。途中売却で利益を実現する場合でも、流動性が区分マンションより劣るため、急な資金需要には向きません。

また、災害リスクも無視できません。国交省ハザードマップポータルの想定浸水区域内に立地するビルは、テナントのBCP(事業継続計画)要件で敬遠されがちです。耐震改修促進法の改正により、昭和56年以前の旧耐震基準ビルは、都道府県から耐震診断や改修命令を受ける可能性があります。指示に従わない場合、ビル名の公表や使用制限が科されるため、購入前に築年数と耐震診断の有無を確認することが重要です。

デメリットを軽減する現実的な策として、プロパティマネジメント会社との長期委託契約があります。専門家がテナントリーシングや修繕計画を一括管理することで、オーナーの労力を大幅に削減できます。管理料は通常賃料の3〜5%ですが、空室ロスの削減や適切な修繕タイミングの提案によって、総合的にはキャッシュフローを改善できるケースが多いです。

まとめ

ここまで「ビル メリット・デメリット」を多角的に検証してきました。賃料分散による安定収入、減価償却・融資レバレッジの効果、省エネ改修補助など魅力は大きい一方で、長期修繕費や流動性、災害リスクといった課題も存在します。まずは実質利回りを保守的に試算し、築年数と立地に応じた修繕計画を立てることが出発点です。そのうえで、補助金や専門会社の活用を検討し、自らの資金計画と照らし合わせて無理のない投資判断を行いましょう。慎重な準備が、数十年先まで続く安定経営への近道となります。

参考文献・出典

  • 国土交通省 建築物省エネ化推進事業公募要領 – https://www.mlit.go.jp
  • 日本不動産研究所 オフィスマーケットレポート2025年版 – https://www.reinet.or.jp
  • 総務省 労働力調査長期時系列データ – https://www.stat.go.jp
  • 日本政策金融公庫 融資制度一覧 – https://www.jfc.go.jp
  • 東京都都市整備局 耐震ポータルサイト – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp

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