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初心者でも失敗しないSRC造 始め方ガイド

鉄筋と鉄骨を組み合わせたSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)は、耐震性と耐久性に優れるため長期運用に向いた投資用物件として注目されています。しかし、初期費用が高い、専門知識が必要などのイメージから一歩を踏み出せない人も多いでしょう。本記事では、これから不動産投資を始める方に向けて、SRC造の基礎知識から物件選び、資金計画、そして2025年度に利用できる制度までを丁寧に解説します。読み終えるころには、最初の物件取得に向けた具体的な行動手順がイメージできるはずです。

SRC造が投資家に選ばれる理由

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重要なのは、SRC造の構造的特徴が長期運用に直結するという点です。鉄骨の骨組みに鉄筋コンクリートを巻くことで、RC造よりも柱や梁を細くでき、居室面積を確保しつつ高い耐震性を実現します。国土交通省の2025年耐震性能調査によると、SRC造の大規模修繕周期は平均18~20年で、RC造より2年程度長い結果が示されました。この修繕サイクルの長さは、キャッシュフローの安定に大きく寄与します。

また、SRC造は遮音性や断熱性でも優位に立ちます。実際、総務省「住宅・土地統計調査」では、SRC造集合住宅の平均入居年数が他構造より1.4年長いと報告されています。入居期間が長いほど空室リスクが下がり、賃料収入が安定します。つまり、長期保有を前提とする投資戦略とSRC造の特性は相性が良いのです。

一方で、建設コストが高い分、取得価格も上昇します。しかし日本銀行の2025年6月不動産向け融資レポートによると、SRC造は融資審査で有利に評価されやすく、LTV(Loan to Value:融資比率)がRC造より5%前後高い傾向が確認されています。長寿命構造が担保価値を押し上げ、結果として自己資金比率を抑えられる点は初心者にとって大きなメリットと言えるでしょう。

物件選びで押さえるべきポイント

物件選びで押さえるべきポイントのイメージ

まず押さえておきたいのは、SRC造であっても立地が収益性を左右するという事実です。駅徒歩10分圏内かつ商業施設が充実するエリアでは、賃料水準が同規模RC造より8~12%高いケースが珍しくありません。一方、入居需要が限定的な郊外では構造の強みが生かしきれず、利回りが平均水準を下回ることもあります。

次に確認したいのが築年数です。SRC造は物理的耐用年数が長いため、築25年でも構造躯体に大きな問題がない場合があります。ただし、設備の経年劣化は避けられないため、直近で大規模修繕が行われているか、長期修繕計画に積立金が充当されているかを管理組合議事録で確認しましょう。

加えて、賃貸需要の細かなデータを読み解く姿勢が重要です。不動産流通推進センターの空室率マップでは、同じ市区内でも世帯年収や単身世帯比率で賃貸動向が大きく異なります。たとえば、大学が多いエリアならワンルームの回転率が高く、家賃も安定しやすい一方、ファミリー向け住戸の需要は限定的です。SRC造の遮音性を活かしてファミリー層を狙うなら、教育環境や公園整備が整った地区を選ぶべきでしょう。

最後に、管理会社の実績確認も欠かせません。SRC造特有の構造体メンテナンスは専門知識を必要とするため、管理実績3棟以上を条件にすると安心です。担当者が建築士資格を持つかどうかもチェックポイントになります。

資金計画と融資のコツ

ポイントは、融資条件と減価償却の両面からキャッシュフローを最適化することです。SRC造の法定耐用年数は47年と長く、築古物件でも減価償却期間が残っているケースが多いです。例えば築25年の場合、残存耐用年数は22年あり、家賃収入に対する課税所得を圧縮できます。

融資面では、返済期間を耐用年数に合わせて設定すると毎月返済額を抑えられます。2025年12月時点で都市銀行の固定金利は1.6~2.0%が主流ですが、金利交渉の余地はまだあります。金融機関が重視するのは担保価値と自己資金比率です。SRC造は評価が高い分、自己資金10~15%でもフルローン近い融資が可能になる例があります。

また、2025年度の「エネルギー性能向上計画認定住宅」に該当するリノベーションを行うと、地方銀行で最大0.2%の金利優遇を受けられる商品が出ています。物件購入時に省エネ改修を同時に計画し、見積書を融資申し込みに添付すると審査がスムーズです。

さらに、金利上昇リスクに備えるシミュレーションは欠かせません。金利2%上昇時でも自己資金が全額失われないラインを把握し、家賃下落率3%を加えた厳しめの収支表を作成しておくと、長期的に安定運用できます。

管理と運用で失敗しないために

実は、SRC造の優れた耐久性を活かすには計画的な保守が前提になります。竣工後15年で防水層、25年で配管更新を実施するのが目安です。国土交通省の修繕ガイドラインによれば、これらを先送りすると共用部の漏水事故率が約1.7倍に跳ね上がると示されています。

管理費と修繕積立金のバランスも見逃せません。築20年時点で1㎡あたり月250円以下の修繕積立金だと、30年時に大規模修繕が赤字になる可能性が高いです。購入前に長期修繕計画表を必ず取り寄せ、積立金の改定予定を確認しましょう。

運用フェーズでは、入居者コミュニケーションが空室リスクを左右します。SRC造は室内遮音性が高いため楽器演奏可能物件として訴求する例も増えています。ターゲットを絞った募集広告は、平均空室期間を約20日短縮する効果があると日本賃貸住宅管理協会の統計で示されています。

トラブル対応は24時間コールセンターを活用し、オーナー自身の負担を減らすことが長期投資での精神的安定につながります。管理委託料が月額賃料の5%を超える場合でも、コールセンターや巡回清掃が含まれていれば費用対効果は高いと考えられます。

2025年度に活用できる制度と税制優遇

まず、2025年度も引き続き法人所有物件の加速度償却は認められています。具体的には、建物取得後3年以内に耐震補強か省エネ改修を行うことで、改修費用を一括損金算入できます。制度期限は2026年3月31日取得分までなので、来年中の計画が必要です。

また、中小企業経営強化税制の「先端設備等導入計画」を活用すると、SRC造の高効率空調や断熱窓への投資額について即時償却または税額控除10%のいずれかを選択できます。投資判断時には、投資額とキャッシュフローへの影響を比較検討しましょう。

個人投資家向けには住宅ローン減税の適用外ですが、長期譲渡所得に係る軽減税率が有効です。保有期間10年超で譲渡した場合、譲渡益6000万円以下の部分は14.21%で課税されます。将来的な出口戦略として売却を視野に入れるなら、この税率差は大きなメリットになります。

加えて、2025年度の「賃貸住宅省エネ改修支援補助金」は、外壁断熱と高効率給湯器の同時設置で上限120万円の補助が受けられます。取得と同時に申請すれば、工事費の一部を相殺でき、表面利回りの向上にも寄与します。

まとめ

結論としては、SRC造は耐震性・耐久性に優れ、金融機関評価も高いため初心者が長期運用を目指す際の有力な選択肢になります。ただし、取得価格が高い分だけ立地選定と資金計画の精度が問われます。築年数や修繕計画を丁寧に確認し、金利変動を織り込んだ保守的シミュレーションを作ることが、安定したキャッシュフローを生む鍵です。最後に紹介した2025年度の税制や補助金を組み合わせれば、初期費用と税負担を抑えつつスタートできます。これらを踏まえて具体的な物件探しを始め、一歩ずつ行動に移していきましょう。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅局「2025年耐震性能調査」 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省統計局「住宅・土地統計調査」 – https://www.stat.go.jp
  • 不動産流通推進センター「空室率マップ2025」 – https://www.retpc.jp
  • 日本銀行「不動産向け融資レポート2025年6月」 – https://www.boj.or.jp
  • 国税庁「租税特別措置法のあらまし(2025年度版)」 – https://www.nta.go.jp

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