不動産の税金

SRC造で実現する賢い節税術

不動産投資の利益を高めたいと思っても、税金が重くのしかかると手取りが減ってしまいます。とくに給与所得と合わせて課税される個人投資家にとって、節税策の有無はキャッシュフローを左右する大問題です。そこで注目されているのが「SRC造 節税」というキーワードです。本記事では、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)物件を活用して税負担を抑える方法をわかりやすく解説します。仕組みを理解すれば、物件選定から運用まで一貫して税コストを最適化できるので、最後までしっかり読み込むメリットがあります。

SRC造とは何かを正しく理解する

SRC造とは何かを正しく理解するのイメージ

まず押さえておきたいのは、SRC造が鉄骨と鉄筋コンクリートを組み合わせた構造である点です。この複合構造はRC造より軽量で、かつ耐震性が高いと評価されています。その結果、建物寿命が長く、法定耐用年数も47年と木造の22年や軽量鉄骨の34年を大きく上回ります。

一方で、長い耐用年数は減価償却費を毎年少しずつしか計上できないという面も持ちます。つまり短期で大きく損益通算したい場合には不利に映ることがあります。しかし、後述する修繕計画や特定資産の区分によって、SRC造でも十分な節税が可能です。加えて、長期保有を前提にした時、建物の価値が下がりにくい点は資産保全の観点で魅力的です。

長寿命構造がもたらす税務メリット

長寿命構造がもたらす税務メリットのイメージ

重要なのは、耐用年数が長いこと自体が節税の敵ではないという事実です。国税庁の「耐用年数表」に基づくと、RC造やSRC造は法定耐用年数を過ぎた後でも、1/2の年数で再計算して償却できます。中古物件を購入する場合、この計算方法により年間償却費を思ったより多く計上できるケースがあるのです。

また、長寿命であるがゆえに修繕費を計画的に分散でき、支出と減価償却を組み合わせた総合的な節税がしやすくなります。例えば、外壁改修を5年ごとに分割発注することで、支出を複数年に分散しつつ全額を損金算入できます。耐震補強や省エネ改修を行う際には、2025年度も継続中の「既存建築物省エネ化補助金」の要件に合致すると補助率が最大1/3に達し、自己負担が減る上に税額控除も併用できます。こうした制度を利用すれば、実質的なキャッシュアウトを抑えながら資産価値を維持できるのです。

減価償却を最大化する具体策

ポイントは、建物本体以外の資産区分を細分化して償却スピードを上げることです。内装や設備は「建物附属設備」や「構築物」として認識し、耐用年数をそれぞれ15年や20年で設定できます。さらに、エアコンや給湯器など個別の機器は「器具備品」として6年で償却できるため、初年度から大きな経費計上が可能です。

具体例として、築30年のSRC造マンションを1億円で取得したケースを考えます。建物割合を60%と想定すると6,000万円が償却対象です。このうち1,500万円を附属設備、300万円を器具備品に再区分できれば、最初の数年で年間300万円超の償却費を追加計上できます。国税庁の「資産の耐用年数等に関する省令」は2025年12月時点でも同一基準のため、この手法は今後も有効です。

ただし、区分が過度に細かすぎると税務調査で否認されるリスクがあるので、専門家と連携して合理的な見積書を準備してください。さらに取得直後に大規模修繕を行う場合は、資本的支出か修繕費かの判定が重要です。工事の目的が原状回復であり、資産価値を著しく高めないと説明できれば、修繕費として一括損金算入できます。

節税しつつキャッシュフローを守る運営術

実は、税金だけを減らしても手残りが増えなければ意味がありません。SRC造は高い耐震性と遮音性が評価され、都市部のファミリー層やDINKsから安定した需要があります。そのため平均入居期間が長く、空室損失を抑えやすいという利点があります。

さらに、火災保険料や地震保険料がRC造と同水準で済むうえ、木造より保険料率が低いこともキャッシュフロー改善に寄与します。賃料水準が落ちにくいエリアでSRC造を選べば、修繕積立やローン返済に充当する余力を確保しやすくなります。結果として、減価償却による節税効果と実質収益の両方を享受でき、運営リスクを総合的に抑えられます。

また、2025年度も継続中の「住宅ローン控除(投資用除外)」とは異なり、投資用ローンでは金利をすべて経費化できます。金利が上昇局面に入っても、この経費化効果はむしろ拡大するため、金利交渉と借換え戦略を併用すると節税とキャッシュフロー改善を同時に達成できます。

2025年度税制改正にどう備えるか

まず、2025年度税制大綱では不動産所得に関する大きな改正は予定されていません。ただし、インボイス制度が2026年1月から完全実施となるため、課税事業者選択のタイミングには注意が必要です。課税事業者になると消費税の納税義務が生じる一方、課税仕入れ控除も使えるため、修繕費や管理委託費が多い大家ほど有利になります。

さらに、グリーン投資減税の延長が示唆されており、一定の省エネ性能を満たす設備更新は税額控除の対象になる見込みです。SRC造は断熱改修の効果が高いため、この制度を想定して設備投資をスケジューリングするとよいでしょう。なお、制度の正式決定は2026年3月の成立が前提になるため、最新情報を税理士と共有しながら柔軟に対応してください。

最後に、相続税対策としてSRC造は評価額が低く見積もられやすい点がメリットです。建物評価額は固定資産税評価額を基準にするため、耐用年数が長いわりに評価が抑えられ、土地の広さを限定できれば総課税評価額を圧縮できます。節税と資産承継を同時に考えるなら、早期に法人化を検討して持分を分散する方法も視野に入れておきましょう。

まとめ

SRC造物件は長寿命ゆえに減価償却が遅いというイメージがありますが、設備区分や修繕費の活用で初年度から十分な節税が可能です。さらに、耐震性と居住性の高さによって空室リスクや保険料を抑え、安定したキャッシュフローを確保できます。2025年度の税制改正でも大きな逆風はなく、省エネ補助金やグリーン投資減税が追い風となる見通しです。まずは信頼できる税理士と建築士に相談し、具体的な区分見積もりと修繕計画を作成するところから始めてみてください。

参考文献・出典

  • 国税庁「耐用年数表」 – https://www.nta.go.jp/
  • 国土交通省 住宅局「既存建築物省エネ化補助事業」 – https://www.mlit.go.jp/
  • 総務省「家計調査報告」 – https://www.stat.go.jp/
  • 日本損害保険協会「耐震・構造別保険料率資料」 – https://www.sonpo.or.jp/
  • 財務省「2025年度税制改正大綱(速報)」 – https://www.mof.go.jp/

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