不動産の税金

SRC造 収益性を高める投資術

不動産投資を始めようとすると、「RC造とSRC造はどちらが有利なのか」「鉄骨鉄筋コンクリートは高コストだけに本当に儲かるのか」といった疑問が湧くものです。特にSRC造は耐久性と耐震性が高い反面、建設費が重くのしかかります。そこで本記事では、SRC造 収益性の本質を数字と実例から解き明かし、2025年時点で活用できる制度を踏まえて、初心者でも実行できる投資戦略を提示します。最後まで読めば、物件選定の目線がクリアになり、購入後のキャッシュフローまで具体的に設計できるはずです。

SRC造とは何か ― 構造とコストを正しく理解する

まず押さえておきたいのは、SRC造が鉄筋コンクリート(RC)と鉄骨(S)の長所を組み合わせた構造であるという点です。鉄骨で骨格を組み、その周囲を鉄筋コンクリートで包むことで、高層建築に必要な剛性と耐火性を両立できます。この構造が生む最大のメリットは、地震時の揺れを吸収しつつ、長期にわたり躯体性能を維持できることです。

一方で、鉄骨とコンクリートを併用するため建設コストは同階数のRC造より約10〜15%高いのが一般的です。国土交通省の最新版「建築着工統計」(2025年10月公表)によれば、SRC造マンションの平均工事費は延床1㎡当たり26万円前後、RC造は23万円前後と示されています。つまり初期投資額は大きくなるものの、躯体寿命60年以上という長さが退去後の原状回復費を抑え、長期保有で回収できる仕組みです。

重要なのは、コスト増を「長期耐久による修繕費圧縮」と「高い賃料設定」で相殺できるかを見極めることです。耐火・耐震性能が高い住宅は保険料が低減しやすく、保険会社の割引率がRC造比で3〜5%向上するケースもあります。したがって、SRC造の収支は表面的な資本回収年数だけでなく、修繕・保険・賃料の三要素を合わせて評価する必要があります。

SRC造がもたらす収益性の仕組み

SRC造がもたらす収益性の仕組みのイメージ

ポイントは、SRC造物件が収益を生むルートが単に「高い家賃」だけではないことです。東京都都市整備局の「賃貸住宅市場動向調査」(2025年度版)では、築15年時点の家賃水準をRC造と比較した際、SRC造は平均で8%高いという結果が出ています。しかし収益性を左右する指標は家賃差より運営コスト差の方が大きいことが見逃されがちです。

具体的には、外壁や柱・梁の劣化が遅いため、大規模修繕の周期を12年から15年に延ばせる点がキャッシュフローに効いてきます。仮に総戸数30戸、外壁修繕費3,000万円を12年ごとから15年ごとに延長できれば、長期割引後の現在価値で約400万円の費用削減になります。また、国交省が示す2025年度の長期修繕計画標準モデルでは、SRC造の年間修繕積立金はRC造比で1㎡あたり60円安い試算も提示されています。

さらに、建物評価が高いことで金融機関の担保評価も上がりやすく、LTV(Loan to Value=借入額÷資産価値)の許容範囲が広がります。実際に都内のメガバンクでは、SRC造築浅物件に対して70〜75%の融資割合を提示する事例が増えています。低金利の長期融資を引ければ、月間キャッシュフローは表面利回りが同じでもRC造より1〜2万円向上することがあります。

投資判断で見る指標とデータ

実は、SRC造の収益性を定量的に測る上で欠かせない指標は「利回り」だけではありません。まずローン返済後の手残り額を示すCCR(Cash on Cash Return)を算定し、減価償却による税還付効果を加味して実質利回りを計算します。例えば築20年、価格3億円、年間家賃収入2,400万円のSRC造を例にとると、表面利回りは8%ですが、鉄骨割合が高いほど減価償却費を2,000万円ほど取れるケースもあり、所得税率33%の法人なら税負担が年660万円軽減されます。これを加えた実質利回りは10.2%へ上昇します。

また、空室率にも注目です。総務省「住宅・土地統計調査」(2023年速報値を基に2025年推計)では、都心三区のSRC造マンションの空室率は4.1%、RC造は5.3%と差がついています。1ポイント余計に稼働率を確保できれば、年間収入ベースで30戸中1戸分、約80万円の上振れ効果があります。空室リスクが低い構造が数字で裏付けられるため、事前シミュレーションには地域別の構造別空室率を組み込むと正確性が増します。

ただし、キャップレート(純利回り)を用いる際は、修繕積立負担や保険料差をネットオペレーティングインカム(NOI)に反映しなければ正しい比較はできません。国交省「不動産投資市場動向調査」(2025年6月)では、SRC造マンションの平均NOI利回りは4.2%でRC造の4.0%をわずかに上回る程度ですが、築後30年以降で差が広がり最大0.5ポイントほど逆転幅が拡大します。したがって、中長期保有を前提とするならSRC造の優位性は年を追うごとに高まると読み取れます。

SRC造物件のリスクと対策

しかし、SRC造が万能というわけではありません。第一のリスクは取得価格が高いため、売却時に市場全体が下落していると含み損が膨らみやすい点です。過去の例として、2010〜2012年のリーマンショック後には、東京都心のSRC造投資用マンションで平均価格が12%ほど調整しました。この局面で築浅物件を購入した投資家の中には、ローン残高が評価額を上回りリファイナンスが難しくなった人もいます。対策として、自己資金を20%程度入れてLTVを抑え、売却時にもエクイティを確保する慎重な資金計画が欠かせません。

第二に、修繕積立会計の不備です。SRC造は寿命が長いため修繕積立金が低設定のまま据え置かれる管理組合が散見されます。購入前に長期修繕計画と積立残高を必ず確認し、不足があれば購入後すぐに積立金を引き上げる提案を行うことが重要です。もし合意形成が困難な場合は、外部委託管理に切り替えて専門家を交えることで合意を得やすくなります。

三つ目は、テナントのニーズ変化です。SRC造は耐震性能が高い分、柱型が大きく室内の有効面積がやや狭くなる物件があります。ワークスペース付きレジデンスなど新しい需要に応えるには、間取り変更を視野に入れたリノベーション計画をあらかじめ立てておくと安心です。リノベ費用を計上した上で表面利回りが7%を超えるかどうかを判断の目安とすると安全度が高まります。

2025年度の制度活用と出口戦略

基本的に、投資用住宅は自宅と異なり直接的な補助金が少ないものの、2025年度も利用できる税制や金融優遇を押さえておくとリターンが向上します。まず、中古SRC造を購入して耐震補強を実施する場合、固定資産税の減額措置が適用されます。具体的には、耐震基準適合証明を取得し自治体へ申請すると、当該年度の固定資産税が1/2に減額される仕組みです。東京都では申請期限が毎年度末の3月31日で、遡及適用は不可なので工程管理を綿密に行う必要があります。

また、法人で購入する場合は、2025年度も引き続き中小企業経営強化税制の対象に「一定の耐震基準を満たす賃貸不動産」が含まれています。資本金1億円以下の法人が対象物件を取得すると、取得価額の10%を税額控除するか、50%の即時償却を選択できます。SRC造は耐震等級2以上を取得しやすいため、要件を満たす確率が高い点がメリットです。

出口戦略としては、相続税評価の圧縮効果を生かしてファミリー間で資産移転する方法があります。国税庁「財産評価基本通達」によると、賃貸用マンションの相続税評価額は、建物が固定資産税評価額×70%、土地が路線価×借家権割合で算定されます。賃料の高いSRC造物件は評価額抑制効果が相対的に小さく見えるものの、長寿命ゆえに修繕後も収益を維持でき、結果として世代を超えたインカムゲインを期待できます。売却益よりキャッシュフローを優先する長期運用を想定するなら、法人保有から個人相続への切り替えタイミングを計画に織り込むと税負担の最適化が図れます。

まとめ

ここまで、SRC造 収益性を構造面・数字面から多角的に検証しました。初期コストの高さは確かにハードルですが、耐久性による修繕費の圧縮と、空室率の低さがもたらす安定収入で回収できることがわかります。投資判断では表面利回りだけでなく、CCRやNOI利回り、空室率など複合指標を用いることが鍵です。さらに、2025年度も有効な耐震補強の固定資産税減額や中小企業経営強化税制を活用すれば、手残りキャッシュフローを押し上げられます。まずは候補物件の長期修繕計画とLTVを確認し、10年先も黒字を維持できるシミュレーションを作成することから始めてみてください。

参考文献・出典

  • 国土交通省 建築着工統計 2025年10月公表 – https://www.mlit.go.jp
  • 東京都都市整備局 賃貸住宅市場動向調査 2025年度版 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
  • 総務省 住宅・土地統計調査 2023年速報推計 – https://www.stat.go.jp
  • 国土交通省 不動産投資市場動向調査 2025年6月 – https://www.mlit.go.jp
  • 国税庁 財産評価基本通達 令和7年1月版 – https://www.nta.go.jp

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