不動産の税金

円安時代に勝つ不動産投資の着眼点と実践法

円安が長期化するいま、外国資本が日本の不動産に注目し、物件価格や賃料に影響が出ています。「買い時なのか、それとも待ったほうがいいのか」と悩む初心者は少なくありません。本記事では、不動産投資 円安時代というテーマのもと、為替の基本からキャッシュフローへの影響、2025年度の税制までをやさしく解説します。読み終えるころには、円安局面でも慌てずに判断できる視点と行動ステップが手に入るでしょう。

為替と不動産投資の関係を読み解く

為替と不動産投資の関係を読み解くのイメージ

まず押さえておきたいのは、円安がどのように不動産市場へ波及するかという点です。為替は輸出入だけでなく、資産価格にも連動しやすい指標だからです。

日銀の統計によると、2020年以降の円安局面では海外マネーの流入額が前年比で約15%増加しました。この資金は主に都心オフィスや高級マンションに向かい、実需と投資需要を同時に押し上げています。一方、地方レジデンスへの影響は緩やかで、価格上昇幅は4%程度にとどまりました。つまり、同じ円安でも物件種別やエリアで影響度は変わるのです。

しかし、為替だけに目を奪われると判断を誤ります。人口動態や再開発計画など、基礎的な需給バランスが健全でなければ円安効果は限定的です。長期で保有するなら、表面的な価格上昇よりも「賃料を支える実需」が確かかを見極めることが欠かせません。

円安がもたらすキャッシュフローの変化

円安がもたらすキャッシュフローの変化のイメージ

ポイントは、円安が直接的に家賃収入を増やすわけではないという事実です。それでも投資家の手元キャッシュフローは変化します。

外国人テナント比率が高い都心部では、ドル建てで給料を得る入居者が増え、家賃耐性が向上しました。日本人だけを対象にしていた頃より、同じ1LDKでも月額2万円ほど高く設定できた事例もあります。ただし入居期間が短い傾向があるため、退去リスクを含めた空室対策を同時に考える必要があります。

一方で、円安による資材高騰は修繕コストを押し上げました。国交省の建設工事費デフレーターでは、2022年から2025年までに内装材が約12%値上がりしています。運営費が増えると利回りは下がるため、購入時には年間維持費を1.2倍で試算し、余裕をもたせると安心です。

国内投資家が取りうる資金調達戦略

重要なのは、円安局面でも金利が歴史的低水準にある点です。住宅ローンと異なり、投資用ローンは変動金利が1.5〜3%で推移しています。

金融機関は物件評価よりも個人の資産背景を重視しがちですが、海外資本の流入が続くと担保評価が改善し、融資枠が広がるケースがあります。しかし金利の先高観も同時に高まるため、固定期間選択型で5〜10年の固定をはさむ組み合わせが現実的です。

また、法人設立を活用すると、赤字繰越や経費計上の幅が広がります。設立初年度は登録免許税などで約30万円かかりますが、課税所得が400万円を超える規模なら節税効果がコストを上回りやすいです。つまり、保有規模とキャッシュフローの見通しをもとに、個人か法人かを選ぶことが資金効率を高める鍵といえます。

物件タイプ別の影響と選び方

実は、円安メリットを取り込みやすい物件とそうでない物件があります。判断の軸を整理してみましょう。

海外投資家が好むのは、管理が容易で出口が明確な新築ワンルームやオフィスビルです。彼らの参入で価格が上がるため、国内投資家が割安に買える場面は少なくなります。一方、築15年超の中規模ファミリー物件は、円安の影響が相対的に小さく、リノベーションで付加価値を高めやすいという特徴があります。

さらに、地方中核都市の商業ビルはテナント賃料が円建てのまま上昇しにくく、為替トレンドの影響は限定的です。人口減少リスクを吸収できるかが課題ですが、利回りが高めに設定されているため、長期保有で修繕リスクを分散できる投資家には向いています。こうした物件ごとの特性と自身の投資目的を擦り合わせることが、円安時代における失敗回避の近道となります。

2025年度の税制・補助制度を活かすコツ

まず押さえておきたいのは、2025年度も「住宅ローン減税」の投資用物件への適用は原則不可という点です。そのため、個人投資家は賃貸住宅の「投資促進税制」を活用するほうが現実的です。これは長期保有を条件に、固定資産税が3年間半額になる制度で、2027年3月までの取得物件が対象となっています。

また、一定の省エネ基準を満たす賃貸住宅には、「賃貸住宅省エネ性能向上支援事業」の補助金が2025年度も継続予定です。上限は戸あたり45万円ですが、断熱改修や高効率設備の導入で空室対策と運営費削減を同時に狙えます。ただし申請枠には限りがあり、工事前の事前エントリーが必須なので、スケジュール管理が重要です。

加えて、法人で取得する場合は「中小企業経営強化税制」を活用し、建物附属設備の30%即時償却を選択できます。結果として初年度のキャッシュフローが改善し、次年度以降の投資余力を高める効果があります。円安により設備費が割高でも、税効果でバランスを取れる点は見逃せません。

まとめ

円安時代の不動産投資では、為替による価格変動だけでなく、賃料市場や運営コスト、税制の動きまで総合的に捉える姿勢が求められます。海外資本が押し上げる都心物件は魅力的ですが、修繕費や金利の上昇リスクも同時に考慮しなければなりません。一方で、築年数の進んだファミリー物件や地方中核都市の商業ビルには、まだ割安な機会が残っています。まずは自身の資金計画とリスク許容度を整理し、制度活用や融資条件を比較しながら一歩踏み出してみてください。円安は脅威ではなく、準備した投資家にとって追い風となるはずです。

参考文献・出典

  • 日本銀行「資金循環統計」 – https://www.boj.or.jp/statistics/sj/
  • 国土交通省「不動産価格指数」 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省「住民基本台帳人口移動報告」 – https://www.stat.go.jp
  • 国土交通省「建設工事費デフレーター」 – https://www.mlit.go.jp
  • 財務省「法人税関係税制改正の概要(2025年度)」 – https://www.mof.go.jp

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