不動産の税金

初心者でも失敗しないアパート経営の家賃設定やり方

不動産投資を始めたばかりだと「家賃をいくらに決めればいいのか」という疑問が尽きません。高く設定しすぎれば空室が増え、低すぎれば利益が出ないため、悩みは深まるばかりです。本記事では、空室率や周辺相場の読み解き方から、入居者ニーズを踏まえた家賃調整のコツまでを解説します。読めば、数字に振り回されず自信を持って賃料を決められるようになりますので、ぜひ最後までお付き合いください。

家賃設定が投資成績を左右する理由

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重要なのは、家賃がキャッシュフローを直接左右し、レバレッジ効果にも影響する点を理解することです。家賃収入はローン返済、修繕積立、税金支払いの源泉となり、わずかな差でも年間では大きな金額差につながります。例えば月額家賃を5,000円上げると、10戸のアパートでは年間60万円の増収です。

まず家賃が高止まりすると、国土交通省住宅統計による2025年7月の全国アパート空室率21.2%(前年比-0.3%)のような競争環境下では、成約までの期間が長くなるリスクがあります。また、空室期間が1か月延びるだけで年間利回りは概算0.8ポイント低下します。つまり、空室ロスは家賃の数百円差よりはるかに大きなダメージを与えるのです。

一方で安易な値下げは物件価値そのものを下げかねません。家賃を下げると、将来売却時の利回り計算に影響し、物件価格が目減りする恐れがあります。したがって、適正な家賃を見極める力がアパート経営の成否を決定づけるといえます。

市場相場を読み解く三つのステップ

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実は、家賃は感覚ではなく客観データで決める方が圧倒的に安全です。ここでは市場相場を把握するための基本手順を三段階で整理します。

まず周辺5 km以内の募集賃料を調査します。ポータルサイトやレインズマーケットインフォメーションを用い、築年数・専有面積・階数が近い物件を20件程度抽出すると傾向がつかめます。平均値だけでなく、上位25%と下位25%をはじくと極端値に惑わされません。

次に成約賃料を確認します。募集賃料と成約賃料には2〜10%の開きがあることが多いので、仲介会社へヒアリングし実際に決まった金額を聞き取ることが重要です。仮に成約賃料の中央値が6万円なら、まずその水準をベースラインとします。

最後に将来の需要を推計します。総務省統計局の人口推計や市区町村の都市計画を参照し、単身世帯の増減と新築供給予定を確認します。需要が伸びるエリアならやや強気に、供給過多が見込まれる場合は保守的に設定するなど、時間軸を取り入れると戦略的な家賃設定が可能になります。

物件の付加価値を反映させる調整術

ポイントは、物件固有の魅力を数値化し、相場に上乗せまたは下げ幅を抑えることです。築浅でなくても、防犯カメラや高速Wi-Fiなど人気設備があれば5%ほどの上積みが可能です。逆にバストイレ同室やエレベーターなしの3階物件はマイナス補正が必要になります。

まず入居者アンケートや仲介会社のフィードバックを利用しましょう。例えば「ネット無料なら1,500円高くても選ぶ」という声が多ければ、設備投資と家賃増収の採算を試算します。設備投資が50万円、家賃が月1,500円上がり空室率が変わらなければ、回収期間は約2年9か月です。このように数字で裏付けると判断がぶれません。

さらに、部屋ごとの差別化も有効です。角部屋、最上階、南向きは競争力が高いので、同タイプより500〜2,000円上乗せできます。入居者がメリットを感じるかを基準に、根拠のあるプレミアムを乗せることで、空室リスクを最小限にしつつ総収入を底上げできます。

賃料改定のタイミングと交渉の心得

まず押さえておきたいのは、賃料改定は更新時だけでなく、退去後のリフォーム完了時が絶好のチャンスだという点です。入居中の値上げは法的にも慎重さが求められますが、退去後なら市場価格に合わせて柔軟に調整できます。

改定手順を整理すると以下のとおりです。

  • 退去通知受領後、市場調査を実施
  • 原状回復と同時に付加価値向上リフォームの可否を検討
  • 募集家賃を決定し、仲介会社と共有
  • 募集開始後2週間で反応を確認し必要なら微調整

この流れを徹底することで、空室期間を短縮しながら最大限の家賃を達成できます。また、長期入居者に対しては、設備更新や清掃サービスを提案し、付加価値を示したうえで1,000円程度の値上げを打診すると受け入れられやすいです。

家賃設定と税務・融資審査の意外な関係

基本的に家賃はキャッシュフローだけでなく、金融機関の評価や税務負担にも影響します。住宅金融支援機構のアパートローン審査では、想定家賃に基づく返済比率が重視されるため、高すぎる想定は審査落ちの原因になります。一方、法人化している場合、家賃収入が上がるほど消費税課税売上高が1,000万円を超えやすくなり、消費税の課税事業者になるタイミングが早まります。

また、財務省の法人税統計によると、不動産所得を中心とする小規模法人の25%が赤字決算です。家賃を無理に下げて収益が圧迫されると、修繕積立が不十分になり、結果的に資産価値が目減りします。税負担と資金繰りを同時に見ることで、適正家賃の幅がより明確になります。

結論として、家賃設定は市場調査、物件価値、税務・融資の三面から総合的に決める必要があり、このバランスが取れてこそ安定経営が実現します。

まとめ

ここまで、家賃設定の基礎から応用までを見てきました。相場調査で現実的なレンジを把握し、物件の強みを数値化して上乗せすることが第一歩です。さらに、退去時の改定サイクルを徹底し、税務と融資の視点も交えて決定すれば、空室率21.2%という逆風の中でも着実に収益を確保できます。今日紹介した手順を実践し、データに基づく家賃設定でブレないアパート経営を始めましょう。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅統計調査 2025年7月速報 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省統計局 人口推計 2025年版 – https://www.stat.go.jp
  • REINS Market Information 月例レポート 2025年8月 – https://www.reins.or.jp
  • 住宅金融支援機構 アパートローン審査基準 2025年度版 – https://www.jhf.go.jp
  • 財務省 法人税統計 2024事務年度 – https://www.mof.go.jp

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