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アパート経営の収益性を高める手順

アパート経営に興味はあるものの、「本当に儲かるのか」「何から始めればいいのか」と不安を抱える方は多いでしょう。実は、収益性を決める要因と手順を体系的に理解すれば、初心者でも安定した家賃収入を目指せます。本記事では、物件選びから資金計画、運営管理、そして2025年度の最新支援策までをわかりやすく解説します。読み終えるころには、自分に合ったアパート経営プランを描けるようになるはずです。

アパート経営で押さえる収益性の基本

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重要なのは、収益性を単なる利回りの数字で判断しないことです。家賃収入から経費と空室損を差し引いた「実質利回り」が、長期的な利益の指標となります。

まず家賃収入は、エリアの平均賃料と将来の賃料下落率を踏まえて試算します。国土交通省住宅統計によると、2025年7月時点の全国アパート空室率は21.2%で、前年より0.3ポイント改善しました。しかし依然として二割超の空室があるため、保守的に空室率15〜20%を見込む姿勢が不可欠です。

次に経費です。固定資産税や火災保険、管理委託料に加え、10年に一度は外壁塗装や屋根防水といった大規模修繕が発生します。これらを年間家賃収入の15%程度で計上すると、予算超過を避けやすくなります。

最後にローン返済を加味したキャッシュフローを確認します。金利1.5%の35年ローンであっても、金利上昇2%を想定したシミュレーションを同時に行いましょう。つまり、収益性は「家賃−空室損−経費−返済額」で測るべきで、表面利回りだけでは判断できないということです。

物件選びと市場分析の手順

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ポイントは、「立地→賃料相場→競合供給量」の順でデータを絞り込むことです。まず人口動態からチェックします。総務省の住民基本台帳によれば、地方圏でも政令市中心部は若年単身者が微増傾向にあります。こうした局所的な需要を捉えられるエリアが狙い目です。

実際の物件は、駅徒歩10分以内で築20年以内の軽量鉄骨造が初心者に扱いやすい選択肢です。築年数が浅いほど修繕コストが少なく、長期修繕計画を立てやすいからです。一方で築古物件は低価格で利回りが高く見えますが、配管更新など見えない修繕が潜んでいるため、調査費用を惜しまない覚悟が必要です。

次に競合物件の募集状況を確認します。ポータルサイトで似た条件の募集戸数と掲載期間をメモし、平均掲載日数が30日以内なら需要が強いと判断できます。もし60日を超えるなら、家賃設定を低めに見積もるか別エリアを検討しましょう。

最後に将来の出口戦略も忘れずに考えます。20年後の売却価格を現行路線価から逆算すると、内部収益率(IRR)がより現実的に把握できます。この工程を経た物件のみ購入候補に残すことで、失敗リスクを大幅に減らせます。

ファイナンスとキャッシュフロー設計

まず押さえておきたいのは、自己資金比率を高めるほど返済負担は軽くなるという原則です。自己資金20%を確保できれば、金融機関からの評価が上がり、金利も0.2〜0.3ポイント下がるケースが一般的です。

融資先は、都市銀行、地方銀行、信用金庫の順に金利は低くなりますが、融資期間は短くなる傾向があります。2025年現在、地方銀行の投資用アパートローンは金利1.3〜1.8%がボリュームゾーンです。返済比率30%以内に収まるようシミュレーションし、空室率20%でもキャッシュフローがプラスになるか確認しましょう。

キャッシュフロー計算書では、税引前の年間純利益(NOI)をベースに、繰入減価償却費を加えてローン元本返済額を差し引きます。この計算を毎年続けると、資金繰りに行き詰まるタイミングを事前に把握できます。また、家賃入金日と返済日のズレを解消するため、管理会社の集金代行サービスを利用すると資金管理がスムーズです。

加えて、家賃保証会社との契約料を経費に入れるかどうかで手残りが変わります。保証料が年1万円でも、平均空室期間を半月短縮できるなら、結果として純利益が増えるため、費用対効果で判断する姿勢が大切です。

運営管理で利益を最大化する方法

実は、購入後の運営で収益性は大きく変わります。入居者満足度を高める施策は、長期入居と賃料維持に直結するからです。たとえば、共用部のLED照明化や無料Wi-Fi設置は、年間経費を抑えながら物件の魅力を底上げします。

入居募集は「客付け力」がカギとなります。複数の仲介会社に図面を配布し、広告料(AD)を家賃の0.5〜1カ月分支払うと、決まるスピードがほぼ倍になります。国交省の調査でも、ADの有無で平均空室期間に35日の差が生じているとの結果があります。

クレーム対応は、24時間コールセンターを導入するだけでオーナーの負担が激減します。費用は月額300円/戸程度ですが、オーナー直通よりも入居者が安心でき、退去抑制につながります。つまり、小さな仕組み化の積み重ねが最終的な収益を押し上げるのです。

さらに、10年目の防水工事や15年目の給水管交換など、計画修繕を前倒しで実施すると、突発的な故障による家賃損失を抑えられます。修繕積立金を毎月家賃収入の5%で積み立てる仕組みを作れば、資金ショートのリスクを大幅に低減できます。

2025年度の税制・支援策を活用するコツ

まず押さえておきたいのは、賃貸住宅向けの省エネ改修を対象とした「2025年度 こどもエコすまい支援事業(賃貸オーナー枠)」です。高断熱窓や高効率給湯器の設置で、戸当たり最大12万円が補助され、申請期間は2025年12月末までとなっています。工事後に家賃アップを狙えるため、実質利回り改善につながります。

また、固定資産税の軽減措置にも注目です。耐震改修を行った賃貸住宅は、翌年度分の固定資産税が半額になる特例が2025年度まで延長されています。耐震補強費用を投下しても、3〜4年で回収できるケースが多いので、築古物件を保有しているなら検討する価値があります。

さらに、東京都や大阪府などの大都市圏では、空き家活用を促進する補助金が賃貸併用でも受けられます。補助額は最大100万円ですが、家賃助成と組み合わせることで、返済比率を下げる効果が期待できます。自治体によって要件が異なるため、事前に公式サイトで確認しましょう。

最後に税制です。青色申告特別控除65万円を活用するには、複式簿記で帳簿を付け、期限内に確定申告する必要があります。クラウド会計ソフトを導入すると、銀行口座と連携して自動仕訳が可能になり、経理負担を軽減しながら節税できます。これらの制度を組み合わせることで、同じ家賃収入でも手取り額が増える点を覚えておきましょう。

まとめ

アパート経営の収益性を高めるには、立地と物件の選定から資金計画、運営管理、そして2025年度の支援策まで、段階ごとに最適な手順を踏むことが欠かせません。家賃収入を過大評価せず、空室率や修繕費を織り込んだ実質利回りで判断する姿勢が肝心です。また、入居者満足度を意識した運営と制度活用を組み合わせれば、手残りキャッシュを大幅に改善できます。まずは本記事で紹介したシミュレーションを試し、自分に合った投資プランを具体化してみてください。行動を起こすことで、安定した不動産収入への第一歩が始まります。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅統計調査 2025年7月速報 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省 住民基本台帳人口移動報告 2025年版 – https://www.soumu.go.jp
  • 財務省 税制改正の概要 2025年度 – https://www.mof.go.jp
  • こどもエコすまい支援事業公式サイト – https://kodomo-ecosumai.go.jp
  • 東京都 空き家活用等推進事業 2025年度募集要項 – https://www.metro.tokyo.jp

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