不動産投資を始めたばかりの方が直面する最も深刻な問題の一つが、空室率の高い物件を相場より高く購入してしまうケースです。購入後に想定していた収益が得られず、毎月の持ち出しが続いて不安な日々を過ごしている方も多いのではないでしょうか。しかし、諦める必要はありません。適切な対策を講じることで、状況を改善し、収益性の高い物件へと転換することは十分に可能です。この記事では、空室が多い物件を高値で購入してしまった場合の具体的な立て直し戦略を、現状分析から実践的な対策まで詳しく解説します。
まず冷静に現状を把握することから始める

空室が多い物件を高値で購入してしまったと気づいたとき、最初にすべきことはパニックにならず冷静に現状を分析することです。感情的な判断は状況をさらに悪化させる可能性があります。
まず物件の購入価格が本当に高かったのかを客観的に確認しましょう。周辺の類似物件の取引事例を不動産情報サイトや国土交通省の「不動産取引価格情報検索」で調べ、自分の物件と比較します。築年数、立地、設備などの条件を考慮して、実際にどの程度割高だったのかを数値化することが重要です。
次に空室の原因を特定します。空室には必ず理由があります。家賃が相場より高すぎるのか、物件の設備が古いのか、立地に問題があるのか、管理会社の営業力が弱いのか。複数の不動産会社に物件を見てもらい、率直な意見を聞くことをお勧めします。国土交通省の「住宅市場動向調査」によると、入居者が物件を選ぶ際に重視する要素は立地、家賃、設備の順となっており、これらの観点から自分の物件を評価してみましょう。
現在のキャッシュフローも正確に計算します。家賃収入、ローン返済額、管理費、修繕積立金、固定資産税などすべての収支を月単位で把握し、毎月どれだけの持ち出しが発生しているかを明確にします。この数字が今後の戦略を立てる基礎となります。
家賃設定を見直して入居率を改善する

空室対策として最も即効性があるのが家賃の見直しです。高値で物件を購入した場合、購入価格を回収しようと家賃を高めに設定してしまいがちですが、これが空室を生む最大の原因となっています。
周辺相場を徹底的にリサーチしましょう。同じエリアで同程度の築年数、間取り、設備の物件がいくらで募集されているかを調べます。不動産ポータルサイトで少なくとも20〜30件の類似物件をチェックし、平均的な家賃水準を把握することが大切です。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の調査では、相場より5%以上高い家賃設定は入居率を大きく下げることが示されています。
家賃を下げることに抵抗を感じるかもしれませんが、空室のまま放置するよりも、適正家賃で満室にする方が総収入は増えます。例えば月10万円の家賃で空室率50%の場合、年間収入は600万円ですが、家賃を8万円に下げて満室にすれば年間960万円となり、360万円も収入が増える計算です。
段階的な家賃調整も効果的な戦略です。いきなり大幅に下げるのではなく、まず相場の上限程度に設定して反応を見て、それでも決まらなければさらに調整します。また、最初の1〜2年間は家賃を抑えめに設定し、入居者が定着してから徐々に適正水準に戻していく方法もあります。
物件の魅力を高めるリノベーション戦略
家賃を下げるだけでなく、物件自体の価値を高めることも重要な対策です。適切なリノベーションは入居率を劇的に改善する可能性があります。
費用対効果の高いリノベーションから始めましょう。国土交通省の「住生活総合調査」によると、入居者が重視する設備は「インターネット環境」「セキュリティ」「水回りの清潔さ」の順となっています。まず無料Wi-Fiの導入、モニター付きインターホンの設置、浴室やキッチンのクリーニングや部分的な交換など、比較的低コストで効果の高い改修を優先します。
内装の印象を変えることも効果的です。壁紙を明るい色に変える、照明をLEDのおしゃれなものに交換する、床をフローリングに変更するなど、見た目の印象を大きく変える工夫をします。特に壁紙と照明の変更は10〜30万円程度で実施でき、物件の印象を大きく向上させることができます。
ターゲット層に合わせた設備投資も検討しましょう。単身者向けなら宅配ボックスや独立洗面台、ファミリー向けなら収納スペースの増設や追い焚き機能付き浴槽など、入居者のニーズに合った設備を追加します。リノベーション費用は家賃アップや入居率改善で回収できるかを慎重に計算し、投資判断を行うことが重要です。
管理会社を変更して営業力を強化する
空室が続く原因の一つに、管理会社の営業力不足があります。物件自体に問題がなくても、適切に入居者募集が行われていなければ空室は埋まりません。
現在の管理会社の対応を評価しましょう。募集図面は魅力的に作られているか、写真は十分な枚数と質があるか、主要な不動産ポータルサイトに掲載されているか、内見の対応は迅速かなどをチェックします。また、定期的に空室状況や対策について報告があるかも重要なポイントです。
問題があれば管理会社の変更を検討します。複数の管理会社に相談し、それぞれの募集戦略や実績を比較しましょう。特に地域に強い管理会社は、地元の不動産会社とのネットワークを持っており、入居者を見つけやすい傾向があります。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の統計では、管理会社変更後に入居率が20%以上改善したケースが全体の約40%を占めています。
自主管理も選択肢の一つです。管理会社に支払う手数料(家賃の5〜10%程度)を節約でき、自分で入居者募集をコントロールできます。ただし、入居者対応や清掃、トラブル処理などの手間がかかるため、時間的余裕がある場合に限られます。最近では自主管理をサポートするオンラインサービスも増えており、これらを活用することで負担を軽減できます。
入居条件を柔軟にして間口を広げる
入居者の条件を厳しくしすぎていることも、空室が埋まらない原因となります。リスク管理は重要ですが、過度に制限すると入居希望者を逃してしまいます。
ペット可物件への転換を検討しましょう。ペットを飼っている世帯は増加傾向にあり、ペット可物件は需要が高い一方で供給が少ない状況です。一般社団法人ペットフード協会の調査によると、犬や猫を飼育している世帯は全体の約30%に達しています。ペット可にすることで入居者の選択肢が大きく広がり、家賃も相場より高めに設定できる可能性があります。ただし、退去時の原状回復費用を敷金で多めに預かる、ペット飼育に関する規約を明確にするなどの対策は必要です。
外国人入居者の受け入れも効果的です。日本で働く外国人は年々増加しており、特に都市部では重要な入居者層となっています。言葉の壁や文化の違いを懸念する大家さんも多いですが、多言語対応の管理会社を利用する、契約書を英語版も用意する、生活ルールを分かりやすく説明するなどの工夫で、トラブルは最小限に抑えられます。
高齢者や生活保護受給者の受け入れも検討の価値があります。高齢化社会において、高齢者向け住宅の需要は高まっています。見守りサービスとの提携、バリアフリー化などの対応をすることで、安定した入居者を確保できます。また、生活保護受給者は家賃が自治体から直接支払われるため、家賃滞納のリスクが低いというメリットもあります。
売却も含めた出口戦略を考える
あらゆる対策を講じても状況が改善しない場合、売却という選択肢も現実的に検討する必要があります。損切りは辛い決断ですが、傷が深くなる前に手を打つことも重要な判断です。
売却のタイミングを見極めましょう。不動産市場は景気や金利、地域開発などの影響を受けて変動します。国土交通省の「不動産価格指数」を参考に、市場が上向きのタイミングで売却することで、損失を最小限に抑えられる可能性があります。また、確定申告の時期や相続税の特例が使える期間なども考慮に入れます。
売却価格の設定は慎重に行います。高値で買ってしまった物件でも、適正価格で売り出せば買い手は見つかります。複数の不動産会社に査定を依頼し、現実的な価格を把握しましょう。早期売却を優先するなら査定価格の90〜95%程度、時間をかけても高く売りたいなら査定価格の100〜105%程度が目安となります。
任意売却という選択肢もあります。ローンの返済が困難になった場合、金融機関と交渉して市場価格で売却し、残債を整理する方法です。競売にかけられるよりも高値で売却でき、信用情報への影響も比較的軽減できます。ただし、任意売却には金融機関の同意が必要で、残債の処理方法についても交渉が必要です。
損失を税務上で活用することも考えましょう。不動産の譲渡損失は、給与所得など他の所得と損益通算できる場合があります。また、損失を翌年以降に繰り越すことも可能です。税理士に相談し、税務上のメリットを最大限に活用することで、実質的な損失を軽減できます。
金融機関との交渉でキャッシュフローを改善する
毎月の持ち出しが大きい場合、ローン条件の見直しで状況を改善できる可能性があります。金融機関も貸し倒れを避けたいため、誠実に相談すれば柔軟に対応してくれることがあります。
返済期間の延長交渉を検討しましょう。返済期間を延ばすことで月々の返済額を減らし、キャッシュフローを改善できます。例えば残債2000万円、金利2%、残存期間20年のローンの場合、月々の返済額は約10万円ですが、期間を30年に延長すれば約7.4万円に減少します。ただし、総返済額は増えるため、長期的な収支計画を立てた上で判断することが重要です。
借り換えも有効な手段です。現在より低金利のローンに借り換えることで、月々の返済額を減らせます。2026年2月現在、不動産投資ローンの金利は金融機関によって大きく異なり、1%台から4%台まで幅があります。複数の金融機関に相談し、より有利な条件を探しましょう。ただし、借り換えには手数料がかかるため、手数料を含めても総返済額が減るかを計算する必要があります。
一時的な返済猶予の相談も可能です。空室対策の効果が出るまでの間、元金返済を一時的に猶予してもらい、利息のみの支払いにすることで、キャッシュフローの悪化を防げます。金融機関によっては、具体的な改善計画を提示することで、こうした柔軟な対応をしてくれる場合があります。
税理士に相談して節税対策を強化する
不動産投資では適切な税務処理により、手元に残るお金を増やすことができます。特に赤字が出ている場合、税務上のメリットを最大限に活用することが重要です。
減価償却を最大限に活用しましょう。建物部分は減価償却費として経費計上でき、実際の支出を伴わずに所得を圧縮できます。購入時の建物と土地の価格配分を適切に行うことで、減価償却費を増やせる可能性があります。また、設備や備品は建物本体より短い期間で償却できるため、これらを分けて計上することも効果的です。
修繕費とリノベーション費用の処理も重要です。修繕費は全額その年の経費にできますが、資本的支出とみなされる改良工事は減価償却の対象となります。税理士と相談し、適切な処理方法を選択することで、税負担を最適化できます。
青色申告を活用しましょう。青色申告特別控除により最大65万円の所得控除が受けられ、赤字を3年間繰り越すことも可能です。また、家族への給与を経費にできる青色事業専従者給与の制度も活用できます。これらの制度を適切に使うことで、税負担を大きく軽減できます。
長期的な視点で不動産投資の知識を深める
今回の失敗を次に活かすため、不動産投資の知識を体系的に学ぶことも重要です。知識があれば、今後同じような失敗を避けられるだけでなく、現在の物件の運営も改善できます。
不動産投資の基礎を学び直しましょう。物件の評価方法、収益計算、融資の仕組み、税務処理など、基本的な知識を体系的に習得します。書籍やオンライン講座、セミナーなど、様々な学習方法があります。特に実際の失敗事例や成功事例を学ぶことで、実践的な知識が身につきます。
地域の不動産市場を研究することも大切です。人口動態、開発計画、交通インフラの整備状況など、地域の将来性を判断する要素を理解しましょう。総務省の「住民基本台帳人口移動報告」や各自治体の都市計画などを定期的にチェックすることで、市場の動向を把握できます。
不動産投資家のコミュニティに参加することもお勧めです。同じような経験をした投資家から学べることは多く、具体的なアドバイスや業者の紹介なども得られます。オンラインフォーラムや地域の不動産投資家の会など、様々なコミュニティがあります。
まとめ
空室が多い物件を高値で買ってしまったという状況は確かに厳しいものですが、適切な対策を講じることで改善の道は開けます。まず冷静に現状を分析し、家賃の見直し、リノベーション、管理会社の変更、入居条件の柔軟化など、できることから着実に実行していきましょう。
重要なのは、一つの対策だけに頼るのではなく、複数の施策を組み合わせて総合的にアプローチすることです。また、状況によっては売却という選択肢も含めて、柔軟に判断することが大切です。金融機関や税理士などの専門家の力も借りながら、最適な解決策を見つけてください。
この経験は辛いものですが、不動産投資家として成長する貴重な機会でもあります。今回学んだことを次に活かし、より賢明な投資判断ができるようになることが、長期的な成功への道となります。諦めずに一歩ずつ前進していきましょう。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産取引価格情報検索 – https://www.land.mlit.go.jp/webland/
- 国土交通省 住宅市場動向調査 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000001.html
- 公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 – https://www.jpm.jp/
- 国土交通省 住生活総合調査 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000001.html
- 一般社団法人ペットフード協会 全国犬猫飼育実態調査 – https://petfood.or.jp/
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
- 総務省 住民基本台帳人口移動報告 – https://www.stat.go.jp/data/idou/
- 国税庁 タックスアンサー(不動産所得) – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm