一棟アパート投資を始めようと考えたとき、多くの方が最初に悩むのが「新築と中古、どちらを選ぶべきか」という問題です。新築は魅力的に見えるけれど価格が高い、中古は安いけれど修繕費が心配、そんな迷いを抱えている方も多いのではないでしょうか。実は、新築と中古にはそれぞれ明確なメリットとデメリットがあり、投資家の目的や資金状況によって最適な選択は大きく変わります。この記事では、一棟アパート投資における新築と中古の違いを、初期費用から収益性、リスクまで多角的に比較し、あなたに合った投資判断ができるよう詳しく解説していきます。
新築アパートと中古アパートの基本的な違い
一棟アパート投資において、新築と中古の最も大きな違いは物件価格と利回りのバランスにあります。新築アパートは建築費や土地代が反映されるため、同じ立地条件でも中古物件より2〜3割程度高額になるのが一般的です。一方で、中古アパートは築年数に応じて価格が下がるため、初期投資を抑えられる点が魅力となります。
新築物件の表面利回りは都市部で4〜6%程度が相場です。これに対して中古物件は築年数や状態によって6〜10%以上の利回りも期待できます。ただし、利回りの数字だけで判断するのは危険です。新築は当面の修繕費がほとんどかからないため、実質利回りで見ると中古との差は縮まります。さらに、新築は入居者が決まりやすく、空室期間が短いという大きなメリットがあります。
建物の状態という観点では、新築は最新の建築基準に適合しており、耐震性や断熱性能が優れています。2025年以降は省エネ基準の適合が義務化されているため、新築物件は長期的な資産価値の維持という面でも有利です。一方、中古物件は建築時の基準で建てられているため、築年数によっては現在の基準を満たしていない場合もあります。
融資条件も新築と中古では大きく異なります。金融機関は新築物件に対してより積極的に融資を行う傾向があり、融資期間も長く設定できることが多いです。新築なら30〜35年の融資が可能ですが、中古の場合は法定耐用年数から築年数を引いた期間が目安となり、築古物件ほど融資期間が短くなります。
新築アパート投資のメリットとデメリット
新築アパート投資の最大のメリットは、当面の修繕費用がほとんどかからない点です。建物や設備はすべて新品のため、少なくとも最初の10年間は大規模な修繕の心配がありません。これにより、収支計画が立てやすく、予期せぬ出費に悩まされるリスクが低くなります。実際、新築から10年間の修繕費は年間家賃収入の3〜5%程度で済むことが多く、中古物件の10〜15%と比べて大幅に抑えられます。
入居者募集の面でも新築は圧倒的に有利です。新しい設備や清潔感のある内装は入居希望者に好印象を与え、周辺の中古物件より高い家賃設定でも入居が決まりやすい傾向があります。特に若い世代や女性の入居者は新築を好む傾向が強く、入居率の高さは安定収益につながります。2025年12月の全国アパート空室率は21.2%ですが、新築物件に限れば10%以下という地域も珍しくありません。
税制面でのメリットも見逃せません。新築物件は減価償却期間が長く取れるため、所得税の節税効果が長期間続きます。木造アパートの場合、法定耐用年数は22年ですが、新築なら満額の期間で減価償却できます。また、固定資産税の軽減措置も新築から一定期間適用されるため、初期の税負担を抑えられます。
一方で、新築アパートには明確なデメリットも存在します。最も大きいのは初期投資額の高さです。土地から購入して建築する場合、都市部では1億円を超えることも珍しくありません。自己資金として2000万〜3000万円程度が必要になるケースが多く、資金面でのハードルは高いと言えます。
さらに、新築プレミアムの消失というリスクも考慮すべきです。新築時は高い家賃設定が可能ですが、数年後には周辺相場に合わせて家賃を下げざるを得ないケースが多くあります。当初の収支計画通りに進まず、想定より利回りが下がってしまう可能性があります。実際、新築から5年後には家賃が10〜15%下落することも珍しくありません。
中古アパート投資のメリットとデメリット
中古アパート投資の最大の魅力は、初期投資を大幅に抑えられる点にあります。築15〜20年の物件であれば、新築の半額程度で購入できることも多く、限られた資金でも一棟アパート投資を始められます。例えば、新築なら1億円かかる規模の物件が、築20年なら5000万〜6000万円で購入できるケースもあります。この価格差により、表面利回りは新築より2〜4%高くなることが一般的です。
既存の入居者がいる状態で購入できる「オーナーチェンジ物件」も中古ならではのメリットです。購入直後から家賃収入が得られるため、空室リスクを抑えながら投資をスタートできます。また、過去の入居状況や修繕履歴を確認できるため、物件の実力を事前に把握しやすいという利点もあります。新築では入居率や実際の運営コストが予測でしかありませんが、中古なら実績データに基づいた判断が可能です。
立地の選択肢が広いことも中古物件の強みです。新築を建てられる土地は限られていますが、中古なら駅近や商業施設に近い好立地の物件も見つかります。特に都市部では、新築用地の確保が難しくなっているため、好立地を求めるなら中古物件の方が選択肢が豊富です。
しかし、中古アパートには見逃せないデメリットもあります。最も大きいのは修繕費用の負担です。築年数が経過した物件では、外壁塗装や屋根の補修、給排水設備の交換など、大規模修繕が必要になります。築20年を超えると、10年以内に500万〜1000万円規模の修繕が必要になることも珍しくありません。これらの費用を見込んでいないと、想定外の出費で収支が悪化してしまいます。
融資条件の厳しさも中古物件のハードルです。築年数が古いほど融資期間が短くなり、月々の返済額が増えてしまいます。例えば、築25年の木造アパートの場合、法定耐用年数22年を超えているため、金融機関によっては融資期間を10〜15年程度に制限されることがあります。これにより、キャッシュフローが悪化し、手元に残る資金が少なくなるリスクがあります。
建物の性能面でも注意が必要です。古い物件は断熱性や遮音性が現代の基準に達していないことが多く、入居者の満足度が低くなりがちです。また、旧耐震基準で建てられた物件の場合、大規模地震時のリスクが高く、資産価値の下落も懸念されます。1981年以前に建築された物件は特に慎重な検討が必要です。
投資目的別の選び方と判断基準
一棟アパート投資で新築と中古のどちらを選ぶべきかは、投資家の目的によって大きく変わります。まず、長期的な資産形成を目指す方には新築アパートが適しています。新築は建物の劣化が遅く、30年以上にわたって安定した収益を期待できます。相続対策として不動産を保有したい場合や、老後の年金代わりに長期的な家賃収入を得たい場合は、新築の方が安心です。
一方、短期間で投資資金を回収したい方や、複数物件への分散投資を考えている方には中古アパートが向いています。初期投資が少なく、高利回りが期待できる中古物件なら、10〜15年程度で投資資金を回収し、次の投資に移ることも可能です。また、限られた資金で複数の物件に投資することで、リスク分散を図ることもできます。
自己資金の額も重要な判断基準です。自己資金が3000万円以上ある方は、新築物件の選択肢が広がります。一方、自己資金が1000万円程度の方は、中古物件から始めて実績を積み、将来的に新築へステップアップする戦略も有効です。金融機関は投資実績のある方により好条件で融資を行う傾向があるため、まず中古で実績を作ることは理にかなっています。
立地条件も選択に大きく影響します。人口増加が続く都市部では、新築でも安定した入居需要が見込めるため、多少価格が高くても新築を選ぶ価値があります。国土交通省の住宅統計によると、東京23区や大阪市などの大都市圏では、新築アパートの空室率が10%以下と低水準を維持しています。一方、人口減少が進む地方都市では、新築プレミアムが長続きしない可能性が高く、価格の安い中古物件の方がリスクを抑えられます。
管理の手間をどこまで許容できるかも考慮すべきポイントです。新築は当面の修繕が少なく、管理会社に任せておけば手間がかかりません。本業が忙しく、不動産投資に時間を割けない方には新築が適しています。一方、中古物件は定期的な修繕計画の立案や、入居者対応など、オーナーの関与が必要な場面が多くなります。不動産投資に積極的に関わりたい方や、DIYなどで修繕費を抑えられる方には、中古物件の方が向いているかもしれません。
収益性とリスクを数字で比較する
新築と中古の収益性を具体的な数字で比較してみましょう。例えば、東京都内の駅徒歩10分圏内で、1K×8戸の木造アパートを想定します。新築の場合、土地建物合わせて1億円、表面利回り5%、年間家賃収入500万円というケースが一般的です。一方、築20年の中古物件なら、購入価格6000万円、表面利回り8%、年間家賃収入480万円といった条件が考えられます。
実質利回りで比較すると、差はさらに縮まります。新築の場合、管理費や固定資産税などの経費が年間100万円程度、実質利回りは4%となります。中古の場合、経費に加えて修繕積立金が必要で、年間経費は150万円程度、実質利回りは5.5%です。表面利回りでは3%の差がありましたが、実質利回りでは1.5%の差に縮まります。
キャッシュフローの観点からも検証が必要です。新築を自己資金3000万円、借入7000万円(金利1.5%、期間30年)で購入した場合、年間返済額は約290万円です。家賃収入500万円から経費100万円と返済290万円を引くと、年間キャッシュフローは110万円となります。一方、中古を自己資金1500万円、借入4500万円(金利2.0%、期間20年)で購入した場合、年間返済額は約280万円です。家賃収入480万円から経費150万円と返済280万円を引くと、年間キャッシュフローは50万円です。
この比較から、新築の方がキャッシュフローは大きいものの、投資効率(自己資金に対するリターン)で見ると中古も悪くないことがわかります。新築の自己資金利回りは約3.7%(110万円÷3000万円)、中古は約3.3%(50万円÷1500万円)となり、大きな差はありません。さらに、中古は初期投資が少ないため、残った資金を別の投資に回せるという利点もあります。
リスク面では、空室率の想定が重要です。2025年12月の全国アパート空室率21.2%を考慮すると、中古物件では空室率20〜25%を想定した収支計画が必要です。一方、新築は立地が良ければ空室率10〜15%程度で計画できます。例えば、8戸のアパートで空室率20%なら、常時1〜2戸が空室という計算になり、年間家賃収入は想定より80万〜100万円減少します。
修繕費の将来負担も数字で把握しておくべきです。新築の場合、最初の10年間は年間20万〜30万円程度の小修繕で済みますが、15年目以降は外壁塗装や屋根補修で500万〜800万円の大規模修繕が必要になります。中古の場合、購入直後から年間50万〜100万円の修繕費を見込み、さらに5〜10年以内に大規模修繕が必要になる可能性が高いです。これらの費用を事前に積み立てておかないと、突然の出費でキャッシュフローが悪化してしまいます。
失敗しないための物件選びのポイント
新築と中古のどちらを選ぶにしても、物件選びで失敗しないためには、立地条件を最優先に考えることが重要です。駅からの距離、周辺の商業施設、学校や病院などの生活利便施設の有無は、入居率に直結します。特に単身者向けアパートの場合、駅徒歩10分以内が一つの目安となります。国土交通省の調査によると、駅徒歩10分以内の物件は、それ以上離れた物件と比べて空室率が5〜10%低いというデータがあります。
新築物件を選ぶ際は、建築会社の実績と信頼性を必ず確認しましょう。大手ハウスメーカーは品質が安定していますが、価格は高めです。地域密着型の工務店は価格を抑えられる一方、施工品質にばらつきがあります。過去の施工実績や、アフターサービスの内容を詳しく確認し、長期的な付き合いができる業者を選ぶことが大切です。また、建築中は定期的に現場を訪れ、施工状況をチェックすることをお勧めします。
中古物件を選ぶ際は、建物の状態を専門家に診断してもらうことが必須です。外観だけでは判断できない構造上の問題や、設備の劣化状況を把握するため、ホームインスペクション(住宅診断)を依頼しましょう。費用は5万〜10万円程度かかりますが、購入後の予期せぬ修繕費用を考えれば、決して高くありません。特に築20年以上の物件では、配管の劣化や雨漏りのリスクが高まるため、慎重な調査が必要です。
入居者の属性と入居期間も重要な確認ポイントです。オーナーチェンジ物件の場合、現在の入居者がどのような人で、どれくらいの期間住んでいるかを確認しましょう。長期入居者が多い物件は、住環境が良好で安定した収益が期待できます。一方、入居期間が短い入居者ばかりの場合、何らかの問題がある可能性があります。また、家賃の滞納歴がないかも必ず確認してください。
周辺の賃貸市場調査も欠かせません。同じエリアの類似物件の家賃相場や空室状況を調べ、購入を検討している物件の家賃設定が適正かどうか判断します。不動産ポータルサイトで周辺物件を検索したり、地元の不動産会社に相談したりして、リアルな市場情報を収集しましょう。相場より高い家賃設定の物件は、購入後に家賃を下げざるを得なくなり、収支計画が狂う可能性があります。
まとめ
一棟アパート投資における新築と中古の選択は、投資家の目的、資金力、リスク許容度によって最適解が変わります。新築は初期投資が高額ですが、修繕費が少なく安定した経営が可能で、長期的な資産形成に適しています。一方、中古は初期投資を抑えられ、高利回りが期待できるため、短期回収や複数物件への分散投資を目指す方に向いています。
重要なのは、表面利回りだけでなく、実質利回りやキャッシュフロー、将来の修繕費用まで含めた総合的な収支計画を立てることです。また、どちらを選ぶにしても、立地条件を最優先に考え、入居需要が見込めるエリアの物件を選ぶことが成功への近道となります。
不動産投資は長期的な視点が必要な投資です。焦らず、複数の物件を比較検討し、専門家のアドバイスも受けながら、自分に合った物件を見つけてください。新築と中古、それぞれのメリットとデメリットを理解した上で、あなたの投資目標に最も適した選択をすることが、不動産投資成功への第一歩となります。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計 – https://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-jutaku-2.html
- 国土交通省 不動産市場動向マンスリーレポート – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/index.html
- 日本不動産研究所 不動産投資家調査 – https://www.reinet.or.jp/
- 国土交通省 建築着工統計調査 – https://www.mlit.go.jp/statistics/details/jutaku_list.html
- 金融庁 投資用不動産向け融資に関する実態調査 – https://www.fsa.go.jp/
- 公益財団法人 東日本不動産流通機構 市場動向 – https://www.reins.or.jp/