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親が高齢だけど今からアパート建てるのは危険?リスクと判断基準を徹底解説

「親が70代後半なのに、アパート建設の話を持ちかけられている」「相続税対策と言われているけど、本当に大丈夫なのか」このような不安を抱えている方は少なくありません。実際、高齢になってからのアパート建設には、若い世代とは異なる特有のリスクが存在します。この記事では、親が高齢でアパート建設を検討する際の判断基準、注意すべきポイント、そして家族としてどう向き合うべきかを具体的に解説します。最後まで読めば、感情的にならず冷静に判断するための知識が身につくはずです。

高齢でのアパート建設が増えている背景

高齢でのアパート建設が増えている背景のイメージ

近年、70代以上の高齢者によるアパート建設が増加傾向にあります。この背景には、相続税対策としての不動産活用が広く知られるようになったことが大きく影響しています。現金や預金で資産を持つよりも、賃貸物件として活用することで相続税評価額を下げられるという仕組みが、多くの資産家に注目されているのです。

また、低金利環境が長く続いたことで、金融機関も高齢者への融資に積極的な姿勢を見せてきました。特に土地を所有している高齢者に対しては、その土地を担保にアパート建設資金を融資するケースが増えています。建設会社やハウスメーカーも、相続税対策を前面に出した営業活動を展開しており、高齢者が提案を受ける機会が増えているのが現状です。

しかし、提案する側の論理と、実際に建設後に直面する現実には大きなギャップがあることも事実です。国土交通省の調査によると、2025年12月時点で全国のアパート空室率は21.2%に達しており、決して楽観視できる状況ではありません。高齢者がこの厳しい賃貸市場で成功するには、慎重な判断が必要になります。

高齢でのアパート建設に潜む5つの主要リスク

高齢でのアパート建設に潜む5つの主要リスクのイメージ

高齢になってからアパートを建てる場合、若い世代とは異なる特有のリスクが存在します。まず最も深刻なのが、ローン返済期間と寿命の問題です。一般的なアパートローンは20年から30年の返済期間が設定されますが、75歳で建設した場合、完済時には95歳から105歳になります。返済途中で亡くなった場合、相続人である子どもたちに債務が引き継がれることになり、家族に大きな負担を残すことになります。

次に、判断能力の低下リスクがあります。アパート経営では、入居者トラブルへの対応、修繕の判断、家賃設定の見直しなど、継続的な経営判断が求められます。しかし、80代、90代になると認知機能が低下する可能性が高まり、適切な経営判断ができなくなるケースも少なくありません。実際、管理会社に任せきりにした結果、不利な条件で契約を更新してしまったり、必要な修繕を見送って物件価値を下げてしまったりする事例が報告されています。

空室リスクも見逃せません。新築時は満室でスタートできても、築年数が経過すると競争力が低下します。特に人口減少が進む地域では、10年後、20年後の賃貸需要が大きく減少する可能性があります。国土交通省の住宅統計によれば、築20年を超えると空室率が急激に上昇する傾向が見られます。高齢で建設した場合、物件が古くなる頃には自身も高齢化しており、リノベーションなどの対策を打つことが難しくなります。

修繕費用の負担も重要な問題です。アパートは築10年を過ぎると外壁塗装、築15年で給湯器交換、築20年で屋根の修繕など、大規模な修繕が必要になります。これらの費用は数百万円単位でかかることも珍しくありません。高齢になると収入が年金のみになるケースが多く、突発的な大きな出費に対応できない可能性があります。

最後に、相続時のトラブルリスクがあります。アパート建設は相続税対策になると説明されることが多いのですが、実際には相続人間での分割が難しく、トラブルの原因になることがあります。複数の子どもがいる場合、アパートという分割しにくい資産をどう分けるかで揉めるケースが後を絶ちません。また、借入金が残っている場合、誰が債務を引き継ぐかでも問題が生じます。

「相続税対策になる」という提案の真実

アパート建設の営業トークで最もよく使われるのが「相続税対策になります」という言葉です。確かに、現金を不動産に変えることで相続税評価額を下げられるのは事実ですが、これには重要な前提条件があります。まず、そもそも相続税がかかるほどの資産があるかどうかを確認する必要があります。

2026年度の相続税の基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。例えば、配偶者と子ども2人の場合、4800万円までは相続税がかかりません。つまり、資産総額が基礎控除額以下であれば、そもそも相続税対策は不要なのです。実際、国税庁のデータによると、相続税の課税対象となるのは全体の約8%程度に過ぎません。

仮に相続税対策が必要な資産規模だったとしても、アパート建設が最適な方法とは限りません。土地の評価額は確かに下がりますが、建物の評価額も考慮する必要があります。さらに、建設費用として数千万円から億単位の借入をした場合、その債務も相続されます。結果として、相続税は減っても、相続人が背負う借金の返済負担が大きくなり、トータルでは不利になるケースも少なくありません。

また、「サブリース契約で家賃保証があるから安心」という説明にも注意が必要です。サブリース契約は確かに空室リスクを軽減しますが、保証される家賃は相場の80〜90%程度であり、しかも2年ごとに見直されるのが一般的です。周辺の家賃相場が下がれば、保証家賃も下げられます。実際、当初の収支計画通りにいかず、持ち出しが発生しているケースが多数報告されています。

重要なのは、相続税の節税額と、アパート経営のリスクやコストを天秤にかけて判断することです。仮に相続税が500万円減らせたとしても、空室や修繕で年間100万円の赤字が出れば、5年で相殺されてしまいます。目先の節税効果だけでなく、長期的な収支を冷静に見極める必要があります。

建設を検討する前に確認すべき5つのチェックポイント

親が高齢でアパート建設を検討している場合、家族として冷静に確認すべきポイントがあります。まず第一に、本人の健康状態と判断能力を客観的に評価することです。認知機能に不安がある場合や、重大な病気を抱えている場合は、長期的な経営判断が難しくなる可能性が高いため、建設は見送るべきでしょう。かかりつけ医に相談し、客観的な意見を求めることも有効です。

次に、資金計画の妥当性を第三者の専門家に確認してもらうことが重要です。建設会社が作成した収支計画は、往々にして楽観的な数字になっています。満室を前提にしていたり、家賃下落を考慮していなかったり、修繕費用が過小評価されていたりするケースが多いのです。独立系のファイナンシャルプランナーや不動産コンサルタントに、セカンドオピニオンを求めることをお勧めします。

立地条件と賃貸需要の将来性も慎重に調査する必要があります。その地域の人口動態、近隣の競合物件の状況、交通アクセス、生活利便性などを総合的に評価します。特に地方都市や郊外では、今後10年、20年で人口が大きく減少する可能性があります。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口などを参考に、長期的な需要を見極めることが大切です。

相続人全員の意向確認も欠かせません。親が亡くなった後、誰がアパートを引き継ぐのか、他の相続人は納得しているのか、事前に話し合っておく必要があります。引き継ぐ人が決まっていない状態で建設を進めると、相続時に大きなトラブルになります。また、引き継ぐ予定の人が、本当に経営能力や意欲を持っているかも確認すべきです。

最後に、建設しない場合の選択肢も検討することが重要です。土地を持っているなら、売却して現金化する、駐車場として活用する、子どもに生前贈与するなど、アパート建設以外の方法もあります。それぞれのメリット・デメリットを比較し、家族全体にとって最適な選択を探ることが大切です。焦って決断する必要はありません。

家族としてどう向き合うべきか

親が高齢でアパート建設を検討している場合、家族としての関わり方が非常に重要になります。まず心がけたいのは、頭ごなしに反対するのではなく、親の気持ちを理解しようとする姿勢です。多くの場合、親は「子どもたちに資産を残したい」「相続税で困らせたくない」という善意から建設を考えています。その思いを受け止めた上で、冷静に話し合うことが大切です。

具体的には、一緒に専門家に相談に行くことをお勧めします。親子だけで話すと感情的になりがちですが、第三者である専門家を交えることで、客観的な議論ができます。税理士、ファイナンシャルプランナー、不動産コンサルタントなど、利害関係のない専門家を選ぶことがポイントです。建設会社が紹介する専門家は、建設を前提とした提案になる可能性があるため注意が必要です。

また、具体的な数字を使って話し合うことも効果的です。「危険だから」「リスクが高いから」という抽象的な反対ではなく、「この地域の空室率は○%で、満室にならない可能性が高い」「築15年で必要な修繕費用は約○○万円かかる」など、データに基づいた議論をすることで、親も納得しやすくなります。

親が既に建設会社と契約を進めている場合でも、クーリングオフ制度を利用できる可能性があります。訪問販売や電話勧誘で契約した場合、契約書を受け取ってから8日以内であれば無条件で解約できます。また、重要事項の説明が不十分だった場合や、虚偽の説明があった場合は、契約の取り消しを主張できることもあります。消費生活センターや弁護士に相談することも検討しましょう。

最終的に親が建設を決断した場合は、家族としてサポート体制を整えることが重要です。定期的に収支状況を確認する、管理会社との連絡窓口になる、将来的な引き継ぎ計画を明確にするなど、親任せにせず家族全体で関わる体制を作ることで、リスクを最小限に抑えることができます。

まとめ

親が高齢でアパート建設を検討している場合、慎重な判断が必要です。相続税対策という言葉に惑わされず、本当に相続税がかかるのか、アパート建設が最適な方法なのかを冷静に見極めることが大切です。高齢でのアパート建設には、ローン返済期間の問題、判断能力低下のリスク、空室リスク、修繕費用の負担、相続時のトラブルなど、特有のリスクが存在します。

建設を検討する前に、本人の健康状態と判断能力、資金計画の妥当性、立地条件と賃貸需要、相続人全員の意向、そして建設しない場合の選択肢を確認することが重要です。家族として頭ごなしに反対するのではなく、親の気持ちを理解した上で、専門家を交えて客観的に話し合うことをお勧めします。

最も大切なのは、親の老後の安心と、家族全体の幸せです。アパート建設がそれを実現する手段として本当に適切なのか、時間をかけて慎重に検討してください。焦って決断する必要はありません。不安があれば、複数の専門家に相談し、納得できるまで情報を集めることが、後悔しない選択につながります。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅統計 – https://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-jutaku-2.html
  • 国税庁 相続税の申告事績 – https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/sozoku/sozoku.htm
  • 国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口 – https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp2023_ReportALL.pdf
  • 消費者庁 サブリース契約に関する注意喚起 – https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/
  • 金融庁 高齢者向け金融商品・サービスに関する実態把握 – https://www.fsa.go.jp/news/r2/korei_jittai.html
  • 総務省統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/index.html
  • 不動産流通推進センター 不動産統計集 – https://www.retpc.jp/research/

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