不動産投資を始めた後に、自宅用の住宅ローンを組もうと考えている方は多いのではないでしょうか。「投資用ローンがあると住宅ローンの審査に通らないのでは」という不安を抱えている方もいるかもしれません。実は、投資ローンの残債は住宅ローン審査に大きく影響します。しかし、正しい知識と対策があれば、両立は十分に可能です。この記事では、投資ローンが住宅ローン審査にどのように影響するのか、そして審査を通過するための具体的な方法について詳しく解説します。
投資ローン残債が住宅ローン審査に与える影響とは

住宅ローン審査において、投資ローンの残債は確実に影響を及ぼします。金融機関は申込者の返済能力を慎重に審査するため、既存の借入状況を必ず確認するからです。
最も大きな影響を受けるのが「返済負担率」という指標です。これは年収に対する年間返済額の割合を示すもので、多くの金融機関では30〜35%以内を基準としています。たとえば年収600万円の方の場合、年間返済額は180万円から210万円以内に抑える必要があります。投資ローンの返済額もこの計算に含まれるため、既に投資ローンで月10万円を返済している場合、住宅ローンで借りられる金額は大幅に減少します。
さらに重要なのは、金融機関が投資物件からの家賃収入をどう評価するかという点です。多くの銀行では、家賃収入の全額を収入として認めるわけではありません。空室リスクや修繕費用を考慮して、家賃収入の70〜80%程度しか収入として計算しないのが一般的です。つまり、月10万円の家賃収入があっても、実際には7〜8万円程度の収入としてしか評価されないということです。
投資ローンの残債が多い場合、金融機関は「この人は既に大きな借金を抱えている」と判断します。住宅ローンとの二重ローンになることで、返済が滞るリスクが高まると考えるためです。実際に、投資ローンの残債が年収の5倍を超えている場合、住宅ローンの審査が厳しくなる傾向があります。
金融機関が重視する審査基準を理解する

住宅ローン審査で金融機関が最も重視するのは、申込者の総合的な返済能力です。投資ローンがある場合、通常の審査基準に加えて、いくつかの特別な項目がチェックされます。
まず確認されるのが、投資物件の収益性です。金融機関は投資物件の稼働状況や空室率を詳しく調べます。満室経営ができていて安定した家賃収入がある場合は、プラス評価につながります。一方で、空室が多かったり、家賃滞納が発生していたりする場合は、大きなマイナス要因となります。過去1〜2年分の確定申告書や賃貸借契約書の提出を求められることも珍しくありません。
次に重要なのが、投資ローンの返済履歴です。これまで遅延なく返済できているかどうかは、信用情報として記録されています。たとえ一度でも返済が遅れた記録があると、住宅ローン審査に悪影響を及ぼします。逆に、長期間にわたって問題なく返済している実績があれば、返済能力の証明として評価されます。
自己資金の状況も厳しくチェックされます。投資ローンがある状態で住宅ローンを組む場合、通常よりも多めの頭金を求められることがあります。一般的には物件価格の20%程度が目安ですが、投資ローンがある場合は30%以上の自己資金を用意できると審査が有利に進みます。これは金融機関にとって、申込者の資金管理能力と本気度を測る指標となるからです。
勤務先の安定性や勤続年数も、より重要な判断材料となります。投資ローンという追加のリスクを抱えている分、本業の収入が安定していることが強く求められます。上場企業や公務員など、安定した職業に就いている場合は審査で有利になります。勤続年数は最低でも3年以上、できれば5年以上あることが望ましいとされています。
投資ローンがあっても住宅ローン審査を通過する方法
投資ローンの残債があっても、適切な対策を講じることで住宅ローン審査を通過することは十分に可能です。重要なのは、金融機関に「この人なら二重ローンでも問題なく返済できる」と判断してもらうことです。
最も効果的な方法は、投資ローンの残債を減らすことです。可能であれば、住宅ローンを申し込む前に繰り上げ返済を行いましょう。残債が減れば返済負担率が改善され、住宅ローンの借入可能額が増えます。たとえば投資ローンの残債を500万円減らせば、年間の返済額が30〜40万円程度減少し、その分を住宅ローンに回すことができます。
投資物件の収益性を高めることも重要な対策です。空室がある場合は、住宅ローン申し込み前に入居者を確保しましょう。満室経営の実績があれば、金融機関の評価は大きく向上します。また、家賃収入が安定していることを証明するため、過去2年分の確定申告書や通帳のコピーを準備しておくと良いでしょう。賃貸管理会社を利用している場合は、その管理報告書も有効な資料となります。
自己資金を増やすことも審査通過の鍵となります。住宅ローンの頭金として、物件価格の30%以上を用意できれば、金融機関の信頼を得やすくなります。さらに、緊急時の予備資金として200〜300万円程度の貯蓄があることを示せれば、返済能力の高さをアピールできます。親族からの援助が受けられる場合は、それも自己資金として計上できます。
金融機関選びも戦略的に行う必要があります。メガバンクは審査基準が厳しい傾向がありますが、地方銀行や信用金庫は柔軟に対応してくれることがあります。特に、投資物件のローンを組んでいる金融機関に住宅ローンも申し込むと、既存の取引実績が評価されて審査が通りやすくなる場合があります。複数の金融機関に相談し、最も条件の良いところを選ぶことをお勧めします。
返済負担率の計算方法と改善策
返済負担率は住宅ローン審査の最重要指標の一つです。この数値を正確に理解し、改善することが審査通過への近道となります。
返済負担率の計算式は「年間総返済額÷年収×100」です。たとえば年収500万円で、投資ローンの年間返済額が120万円、希望する住宅ローンの年間返済額が100万円の場合、返済負担率は44%となります。これは多くの金融機関の基準である35%を大きく超えているため、審査に通らない可能性が高くなります。
返済負担率を改善する最も直接的な方法は、年収を増やすことです。配偶者に安定した収入がある場合、ペアローンや収入合算を検討しましょう。夫婦の年収を合算することで、返済負担率を大幅に改善できます。たとえば夫の年収500万円に妻の年収300万円を合算すれば、世帯年収は800万円となり、同じ返済額でも返済負担率は27.5%まで下がります。
投資ローンの借り換えも有効な手段です。2026年2月現在、不動産投資ローンの変動金利は1.5〜2.0%程度となっています。もし現在のローン金利がこれより高い場合、借り換えによって月々の返済額を減らせる可能性があります。金利が0.5%下がるだけでも、年間の返済額は数十万円単位で削減できることがあります。
住宅ローンの返済期間を長くすることも一つの方法です。返済期間を30年から35年に延ばせば、月々の返済額は減少し、返済負担率も改善されます。ただし、総返済額は増加するため、将来的な繰り上げ返済を計画に入れておくことが重要です。定年までに完済できるよう、無理のない返済計画を立てましょう。
審査に有利な投資物件の管理方法
投資物件の管理状況は、住宅ローン審査において重要な評価ポイントとなります。適切な管理ができていることを示すことで、金融機関からの信頼を得ることができます。
まず重要なのは、入居率を高く保つことです。金融機関は過去1〜2年の入居状況を確認します。常に満室または高い入居率を維持していれば、安定した収益性があると判断されます。空室が発生した場合は、できるだけ早く次の入居者を見つける努力が必要です。リフォームや家賃の見直しなど、空室対策を積極的に行っている姿勢も評価されます。
家賃の滞納がないことも重要な要素です。入居者からの家賃が毎月確実に入金されていることを、通帳の記録で証明できるようにしておきましょう。もし滞納が発生している場合は、住宅ローンを申し込む前に解決しておく必要があります。保証会社を利用することで、家賃滞納リスクを軽減できることもアピールポイントになります。
物件の維持管理状況も審査対象となります。定期的な修繕やメンテナンスを行い、物件の資産価値を保っていることが重要です。大規模修繕の計画や実施記録があれば、それらの資料も準備しておきましょう。建物の状態が良好であることは、将来的な収益性の維持につながると評価されます。
確定申告を適切に行っていることも信頼性の証明になります。不動産所得を正確に申告し、必要な経費を適切に計上している記録は、金融機関にとって申込者の信頼性を測る重要な資料です。過去3年分の確定申告書を用意し、収支が健全であることを示せるようにしておきましょう。青色申告を行っている場合は、より詳細な収支記録があることで信頼性が高まります。
金融機関との交渉で押さえるべきポイント
住宅ローンの審査を有利に進めるためには、金融機関との交渉も重要です。適切な準備と説明によって、審査担当者の理解を得ることができます。
事前相談を積極的に活用しましょう。正式な申し込み前に、投資ローンがある状況を正直に伝え、住宅ローンの借入可能性について相談することが大切です。この段階で必要な書類や改善すべき点を教えてもらえることがあります。複数の金融機関に相談することで、最も条件の良い選択肢を見つけることができます。
投資物件の収益性を具体的に説明できる資料を準備しましょう。単に「家賃収入があります」と伝えるだけでなく、過去の実績や将来の収支予測を数字で示すことが重要です。賃貸借契約書、家賃入金記録、確定申告書、収支計算書などを整理し、投資が健全に運営されていることを証明します。物件の立地や周辺環境の良さもアピールポイントになります。
返済計画の具体性も審査を左右します。住宅ローンと投資ローンの両方を無理なく返済できることを、具体的な数字で示しましょう。月々の収入と支出を詳細に記載したキャッシュフロー表を作成し、余裕を持った返済が可能であることを説明します。ボーナス時の繰り上げ返済計画なども含めると、返済意欲の高さを示すことができます。
自己資金の出所を明確にすることも信頼性を高めます。頭金として用意する資金が、コツコツと貯めたものであることを通帳の記録で示せれば、計画的な資金管理ができる人物として評価されます。親族からの援助がある場合は、贈与契約書などの正式な書類を準備しておきましょう。借入金ではなく、返済義務のない資金であることを明確にすることが重要です。
まとめ
投資ローンの残債は住宅ローン審査に確実に影響しますが、適切な対策を講じることで両立は十分に可能です。最も重要なのは、返済負担率を金融機関の基準内に収めることです。投資ローンの繰り上げ返済や借り換え、配偶者との収入合算などを活用して、返済負担率を35%以内に抑えましょう。
投資物件の収益性を高く保つことも審査通過の鍵となります。満室経営を維持し、家賃収入が安定していることを証明できれば、金融機関からの評価は大きく向上します。確定申告書や賃貸借契約書など、収益性を示す資料をしっかりと準備しておくことが大切です。
自己資金を多めに用意し、複数の金融機関に相談することで、最適な条件を見つけることができます。投資ローンがあるからといって住宅ローンを諦める必要はありません。正しい知識と準備があれば、マイホームの夢を実現することは可能です。
不動産投資と住宅購入の両立は、長期的な資産形成において大きなメリットをもたらします。この記事で紹介した対策を参考に、計画的に準備を進めていきましょう。必要に応じて、住宅ローンアドバイザーやファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することもお勧めします。あなたの不動産投資と住宅購入の成功を心から応援しています。
参考文献・出典
- 全国銀行協会 – https://www.zenginkyo.or.jp/
- 住宅金融支援機構 – https://www.jhf.go.jp/
- 国土交通省 住宅局 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/
- 金融庁 – https://www.fsa.go.jp/
- 日本銀行 – https://www.boj.or.jp/
- 不動産流通推進センター – https://www.retpc.jp/
- 一般社団法人 不動産投資家育成協会 – https://www.jrei.or.jp/