不動産投資を始めようと考えたとき、多くの方が最初に悩むのが「新築と中古、どちらを選ぶべきか」という問題です。特に築古物件については「安く買えるけど大丈夫なのか」「リスクが高いのではないか」といった不安を抱える方も少なくありません。実は、新築と中古にはそれぞれ明確なメリット・デメリットがあり、投資目的や資金状況によって最適な選択は大きく変わります。
この記事では、新築物件と中古物件(特に築古物件)の違いを徹底的に比較し、それぞれの特徴や収益性、リスクについて詳しく解説します。さらに、実際の投資シミュレーションを通じて、どのような投資家にどちらが向いているのかを明らかにしていきます。この記事を読めば、あなたの投資スタイルに合った物件選びができるようになるでしょう。
新築物件と中古物件の基本的な違いとは

不動産投資において新築と中古の違いを理解することは、成功への第一歩となります。単に築年数の差だけでなく、価格設定や収益構造、リスクの性質まで大きく異なるため、それぞれの特徴を正確に把握することが重要です。
新築物件の最大の特徴は、建物の状態が完璧であることと、最新の設備や耐震基準を満たしている点です。国土交通省の調査によると、新築マンションの平均価格は2026年時点で首都圏において約6,500万円となっており、中古物件と比較して2〜3割程度高い水準にあります。しかし、その分だけ入居者からの人気が高く、特に新婚夫婦やファミリー層からの需要が安定しています。
一方、中古物件は築年数に応じて価格が下がるため、初期投資を抑えられるという大きなメリットがあります。特に築20年以上の築古物件になると、新築の半額以下で購入できるケースも珍しくありません。ただし、建物の劣化状況や設備の老朽化を考慮する必要があり、購入前の入念な調査が欠かせません。
税制面でも両者には違いがあります。新築物件は減価償却期間が長く設定されるため、年間の経費計上額は少なくなります。対して築古物件は減価償却期間が短いため、短期間で多くの経費を計上でき、節税効果が高くなる傾向があります。この違いは投資戦略を考える上で非常に重要なポイントとなります。
新築物件投資のメリットとデメリット

新築物件への投資は、安定性と安心感を求める投資家に適した選択肢です。まず押さえておきたいのは、新築物件は入居者募集において圧倒的な優位性を持つという点です。不動産情報サイトでは「新築」というフィルター検索が人気で、多くの入居希望者が新しい物件を優先的に探しています。
設備面での優位性も見逃せません。最新のセキュリティシステム、宅配ボックス、高速インターネット対応など、現代の入居者が求める設備が標準装備されています。さらに、省エネ性能が高いため光熱費が抑えられることも、入居者にとって大きな魅力となります。これらの要素が組み合わさることで、家賃を相場より5〜10%高く設定できる可能性があります。
維持管理の面でも新築物件は有利です。購入後10年程度は大規模な修繕が不要で、設備の故障リスクも極めて低いため、突発的な出費を心配する必要がほとんどありません。多くの新築物件には10年間の瑕疵担保責任保険が付いており、構造上の問題が発覚した場合でも保証が受けられます。
しかし、デメリットも存在します。最も大きな問題は物件価格の高さです。同じエリアの中古物件と比較して2〜3割高い価格設定となるため、利回りは低くなる傾向があります。国土交通省のデータでは、新築マンションの平均利回りは3〜4%程度にとどまっており、中古物件の5〜7%と比較すると見劣りします。
また、新築プレミアムの問題も考慮が必要です。新築物件は購入直後から中古物件となり、市場価値が10〜20%程度下落することが一般的です。つまり、短期間で売却する場合には損失が出る可能性が高くなります。さらに、周辺環境や管理組合の運営状況など、実際に住んでみないと分からない要素があるため、予想外のトラブルに直面するリスクもゼロではありません。
中古物件・築古物件投資の魅力とリスク
中古物件、特に築古物件への投資は、高利回りを追求する投資家にとって魅力的な選択肢となります。重要なのは、築年数が経過した物件ほど価格が下がり、相対的に利回りが高くなるという基本原理です。築20年以上の物件では、表面利回り7〜10%以上も珍しくなく、中には15%を超える高利回り物件も存在します。
価格面での優位性は明確です。不動産経済研究所の調査によると、築20年のマンションは新築時の約60%、築30年では約40%の価格まで下落します。つまり、同じ予算で新築1戸を購入するか、中古2〜3戸を購入するかという選択が可能になります。複数物件を所有することで、空室リスクの分散や収入の安定化が図れるのです。
節税効果の高さも築古物件の大きなメリットです。木造アパートの場合、法定耐用年数は22年ですが、築22年を超えた物件は4年で減価償却できます。これにより、短期間で多額の経費を計上でき、所得税や住民税の節税につながります。特に高所得者にとっては、この節税効果が投資判断の重要な要素となります。
立地の選択肢が広がることも見逃せません。新築物件は郊外の新興住宅地に建設されることが多いのに対し、中古物件なら都心部や駅近の好立地でも手が届く価格帯になります。実際、築30年でも駅徒歩5分以内の物件は安定した需要があり、空室リスクは比較的低く抑えられます。
一方で、築古物件特有のリスクも存在します。最も注意すべきは修繕費用の問題です。築20年を超えると、給排水管の交換、外壁の補修、屋根の防水工事など、大規模な修繕が必要になる可能性が高まります。これらの費用は数百万円規模になることもあり、事前に十分な資金を確保しておく必要があります。
設備の老朽化も課題です。エアコン、給湯器、キッチン設備などは15〜20年で寿命を迎えるため、購入後すぐに交換が必要になるケースも少なくありません。また、最新設備がないことで入居者募集に苦戦する可能性もあります。特にインターネット設備や宅配ボックスなど、現代の入居者が重視する設備が欠けている場合、家賃を下げざるを得ないこともあります。
融資面でのハードルも高くなります。金融機関は築年数が古い物件に対して融資を渋る傾向があり、特に築30年以上の物件では融資期間が短くなったり、金利が高くなったりすることがあります。場合によっては、自己資金比率を高める必要が出てくるため、資金計画を慎重に立てる必要があります。
収益性の比較:実際のシミュレーション
新築と中古の収益性を具体的に比較するため、実際の投資シミュレーションを見ていきましょう。ここでは、同じエリアの新築物件と築25年の中古物件を比較します。
新築ワンルームマンションの場合を考えてみます。物件価格3,000万円、家賃月額10万円、管理費・修繕積立金月額1.5万円、固定資産税年額12万円という条件です。表面利回りは4.0%となり、諸経費を差し引いた実質利回りは約2.5%程度になります。フルローンで購入した場合、金利1.5%、返済期間35年とすると、月々の返済額は約9.2万円です。
収支を計算すると、家賃収入10万円から管理費等1.5万円と返済額9.2万円を差し引くと、月々のキャッシュフローはマイナス0.7万円となります。つまり、毎月持ち出しが発生する状態です。ただし、減価償却費を計上することで所得税の還付が受けられるため、税引後のキャッシュフローは改善されます。
一方、築25年の中古ワンルームマンションの場合です。物件価格1,500万円、家賃月額8万円、管理費・修繕積立金月額2万円、固定資産税年額8万円という条件で考えます。表面利回りは6.4%、実質利回りは約4.5%となります。自己資金500万円、借入1,000万円、金利2.0%、返済期間20年とすると、月々の返済額は約5.1万円です。
収支を見ると、家賃収入8万円から管理費等2万円と返済額5.1万円を差し引くと、月々のキャッシュフローはプラス0.9万円となります。さらに、築古物件は減価償却期間が短いため、年間の減価償却費が大きく、節税効果も高くなります。木造の場合、4年で全額償却できるため、初期の節税効果は非常に大きいのです。
10年間の累計収支を比較すると、その差は明確になります。新築物件は物件価値の下落が緩やかで、10年後も購入価格の80%程度の価値を維持する可能性があります。しかし、毎月のキャッシュフローがマイナスのため、10年間で約84万円の持ち出しとなります。売却時の残債を考慮すると、トータルでの収益はほぼゼロか、わずかなプラスにとどまります。
対して中古物件は、10年後の物件価値は購入価格の70%程度まで下落する可能性がありますが、毎月のキャッシュフローがプラスのため、10年間で約108万円の収入が得られます。さらに節税効果を加えると、トータルでの収益は200万円以上になる可能性があります。ただし、この期間中に大規模修繕が必要になった場合、その費用を考慮する必要があります。
物件選びで失敗しないためのチェックポイント
新築と中古のどちらを選ぶにしても、物件選びで失敗しないためには、いくつかの重要なチェックポイントがあります。まず基本となるのは立地の評価です。駅からの距離、周辺の商業施設、学校や病院などの生活インフラを確認することが大切です。
新築物件を選ぶ際に特に注意すべきは、周辺の開発計画です。購入時は静かな環境でも、数年後に大型商業施設や高層マンションが建設される可能性があります。自治体の都市計画を確認し、将来的な環境変化を予測することが重要です。また、管理会社の実績も確認しましょう。新築物件の場合、管理組合の運営はこれから始まるため、管理会社の質が将来の資産価値に大きく影響します。
中古物件、特に築古物件では、建物の状態確認が最優先事項となります。外壁のひび割れ、雨漏りの痕跡、共用部分の清掃状態などを入念にチェックします。可能であれば、建築士などの専門家に同行してもらい、インスペクション(建物状況調査)を実施することをお勧めします。費用は5〜10万円程度かかりますが、購入後の予期せぬ修繕費用を考えれば、決して高い投資ではありません。
修繕履歴と修繕積立金の状況も必ず確認してください。大規模修繕が適切に行われているか、修繕積立金は十分に積み立てられているかを管理組合の議事録で確認します。修繕積立金が不足している場合、近い将来に一時金の徴収や修繕積立金の値上げが予想されます。これは月々の収支に直接影響するため、慎重な判断が必要です。
入居者の属性と入居期間も重要な情報です。中古物件の場合、現在の入居者がどのような人で、どのくらいの期間住んでいるかを確認できます。長期入居者が多い物件は、住環境が良好である証拠です。逆に、頻繁に入居者が入れ替わっている物件は、何らかの問題がある可能性を疑う必要があります。
周辺の賃貸相場を徹底的に調査することも欠かせません。不動産ポータルサイトで同じエリアの類似物件を検索し、適正な家賃水準を把握します。売主が提示する想定家賃が相場より高い場合、実際にはその家賃では入居者が決まらない可能性があります。複数の不動産会社に賃料査定を依頼し、客観的な家賃相場を確認しましょう。
融資条件の確認も重要です。特に築古物件の場合、金融機関によって融資条件が大きく異なります。複数の金融機関に事前審査を申し込み、最も有利な条件を引き出すことが大切です。また、将来的な金利上昇リスクも考慮し、金利が1〜2%上昇しても返済可能かシミュレーションしておきましょう。
投資目的別の最適な選択とは
不動産投資の目的は人それぞれ異なるため、新築と中古のどちらが適しているかも投資家によって変わります。ここでは、代表的な投資目的ごとに最適な選択を考えていきます。
安定した長期収入を求める投資家には、新築物件が向いています。特に年金の補完として不動産収入を考えている方や、相続対策として資産を残したい方にとって、新築物件の安定性は大きな魅力です。入居者が決まりやすく、空室期間が短いため、安定したキャッシュフローが期待できます。また、当面は大規模な修繕が不要なため、収支の予測が立てやすいのも利点です。
高利回りを追求し、積極的に資産を増やしたい投資家には、中古物件が適しています。特に築20年以上の築古物件は、価格が安く利回りが高いため、効率的に資産を増やせる可能性があります。複数の物件を所有することで、リスクを分散しながら収入を最大化できます。ただし、物件の目利き力と修繕に関する知識が必要となるため、ある程度の経験を積んでから挑戦することをお勧めします。
節税を主目的とする高所得者には、築古の木造アパートが最適です。短期間で減価償却できるため、給与所得などと損益通算することで、大きな節税効果が得られます。ただし、2026年度の税制では、不動産所得の損失と給与所得の損益通算には一定の制限があるため、税理士に相談しながら計画を立てることが重要です。
初めて不動産投資に挑戦する方には、築10〜15年程度の中古物件がバランスが良いでしょう。新築ほど価格が高くなく、築古ほどリスクも高くないため、初心者でも比較的安心して投資できます。建物の状態も比較的良好で、大規模修繕までまだ時間があるため、突発的な出費のリスクも低めです。この価格帯の物件で経験を積み、徐々に投資規模を拡大していくのが賢明な戦略といえます。
将来的な売却益を狙う投資家には、立地の良い新築物件か、再開発エリアの中古物件が適しています。新築物件は価値の下落が緩やかで、10年後でも比較的高値で売却できる可能性があります。一方、再開発が予定されているエリアの中古物件は、将来的に大きな値上がりが期待できます。ただし、再開発計画は変更や中止のリスクもあるため、複数の情報源から確認することが大切です。
まとめ
新築物件と中古物件、特に築古物件の比較を通じて、それぞれに明確な特徴とメリット・デメリットがあることが分かりました。新築物件は安定性と安心感が魅力ですが、価格が高く利回りは低めです。一方、中古物件、特に築古物件は高利回りと節税効果が期待できますが、修繕リスクや融資のハードルが高くなります。
重要なのは、どちらが絶対的に優れているということではなく、あなたの投資目的、資金状況、リスク許容度に合わせて選択することです。安定志向なら新築、高利回り志向なら築古、バランス重視なら築10〜15年の中古物件というように、自分に合った選択をすることが成功への近道となります。
不動産投資を始める前には、必ず複数の物件を比較検討し、収支シミュレーションを行いましょう。また、不動産会社や金融機関、税理士など、専門家のアドバイスを受けることも大切です。焦らず慎重に検討を重ね、自分に最適な物件を見つけることが、長期的な投資成功につながります。
この記事で得た知識を活かし、あなたの不動産投資が成功することを心から願っています。まずは気になる物件の資料請求や内覧から始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献・出典
- 国土交通省「不動産価格指数」- https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
- 不動産経済研究所「全国マンション市場動向」- https://www.fudousankeizai.co.jp/
- 公益財団法人 東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」- http://www.reins.or.jp/
- 国土交通省「住宅市場動向調査」- https://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-jutaku-2.html
- 一般社団法人 日本不動産研究所「不動産投資家調査」- https://www.reinet.or.jp/
- 国税庁「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」- https://www.nta.go.jp/
- 金融庁「投資用不動産向け融資に関する実態調査」- https://www.fsa.go.jp/