マイホームを購入したものの、転勤や家族構成の変化で住み続けることが難しくなった。そんな時、「自宅を賃貸に出して家賃収入を得ながら、新たに投資用物件を購入できないだろうか」と考える方は少なくありません。実は、適切な手順を踏めば自宅を賃貸に出しながら投資ローンを組むことは可能です。ただし、住宅ローンと投資ローンの違いや金融機関の審査基準を理解しておかないと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。この記事では、自宅を賃貸に出して投資ローンを組む際の具体的な手順、金融機関との交渉ポイント、そして失敗しないための注意点まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
住宅ローンと投資ローンの根本的な違いとは

自宅を賃貸に出して投資ローンを組む前に、まず理解しておきたいのが住宅ローンと投資ローンの違いです。この違いを知らずに進めてしまうと、契約違反となり一括返済を求められるリスクがあります。
住宅ローンは「自分が住むための住宅」を購入する目的で組むローンです。そのため金利が低く設定されており、2026年2月現在では変動金利で0.4〜0.8%程度と非常に優遇されています。これは国の住宅政策として、国民の持ち家取得を支援する目的があるためです。一方で、住宅ローンには「本人が居住すること」という厳格な条件が付いています。
対して投資ローン(不動産投資ローン)は、賃貸収入を得る目的で不動産を購入するためのローンです。金利は住宅ローンより高く、変動金利で1.5〜2.0%、固定10年で2.5〜3.0%程度が一般的です。金融機関にとっては事業性融資の一種として扱われるため、審査も厳しくなります。しかし、物件を賃貸に出すことが前提となっているため、家賃収入を返済原資として考慮してもらえるメリットがあります。
重要なのは、住宅ローンで購入した自宅を無断で賃貸に出すことは契約違反になるという点です。多くの住宅ローン契約には「本人居住要件」が明記されており、これに違反すると残債の一括返済を求められる可能性があります。国土交通省の調査によると、住宅ローンの不正利用による問題は年々増加傾向にあり、金融機関も監視を強化しています。
自宅を賃貸に出す際の正しい手順

自宅を賃貸に出して投資ローンを組むためには、適切な手順を踏むことが不可欠です。まず最初に行うべきは、現在の住宅ローンを組んでいる金融機関への相談です。
転勤や介護など、やむを得ない事情で自宅を離れる場合、多くの金融機関は一定期間の賃貸を認めています。この場合、住宅ローンのまま賃貸に出すことが可能です。ただし、事前に金融機関へ書面で届け出を行い、承諾を得る必要があります。届け出なしに賃貸に出すと、発覚した際に契約違反として扱われてしまいます。
一時的な賃貸ではなく、長期的に賃貸経営を行いたい場合は、住宅ローンから投資ローンへの借り換えを検討します。この際、金融機関は物件の収益性や借主の返済能力を改めて審査します。借り換えには手数料がかかりますが、正規の手続きを踏むことで法的なリスクを回避できます。
次に、新たな投資用物件を購入するための投資ローンを申し込みます。この時点で既に自宅を賃貸に出している場合、その家賃収入は審査でプラスに働きます。ただし、金融機関は家賃収入の100%を収入として認めるわけではなく、通常は70〜80%程度を実質収入として計算します。これは空室リスクや管理費用を考慮したものです。
全国銀行協会のデータによると、2026年2月現在、投資ローンの審査では年収の7〜8倍程度までが融資上限の目安となっています。例えば年収600万円の方であれば、4200〜4800万円程度が融資可能額の範囲です。ただし、既存の住宅ローン残債がある場合は、その分が差し引かれるため注意が必要です。
金融機関の審査で重視されるポイント
自宅を賃貸に出して投資ローンを組む際、金融機関は通常の投資ローンよりも慎重に審査を行います。複数の物件を所有することになるため、返済能力や資産状況がより厳しくチェックされるのです。
最も重視されるのは、安定した収入と十分な自己資金です。金融機関は借主の年収だけでなく、勤続年数や勤務先の安定性も確認します。一般的に、勤続3年以上、年収500万円以上が一つの目安となります。また、自己資金として物件価格の20〜30%を用意できると、審査が通りやすくなります。
既存の住宅ローンの返済状況も重要な審査項目です。過去に延滞があったり、返済比率が高すぎたりすると、新たな融資は難しくなります。返済比率とは、年収に占めるローン返済額の割合のことで、一般的に35%以内が望ましいとされています。例えば年収600万円の方であれば、年間のローン返済額が210万円以内に収まることが理想です。
賃貸に出す自宅と新たに購入する投資物件、両方の収益性も審査されます。自宅の想定家賃収入が住宅ローンの返済額を上回っているか、新規物件の利回りは適正か、といった点が確認されます。日本不動産研究所の調査では、都心部のワンルームマンションで表面利回り4〜5%、地方都市で6〜7%程度が平均的な水準となっています。
さらに、物件の担保価値も重要です。金融機関は融資額に対して物件価値が十分かどうかを評価します。築年数が古い物件や立地条件が悪い物件は、担保価値が低く評価されるため、融資額が制限される可能性があります。
成功するための資金計画の立て方
自宅を賃貸に出して投資ローンを組む場合、通常の不動産投資以上に綿密な資金計画が必要です。複数の物件を管理することになるため、キャッシュフローの管理が複雑になるからです。
まず、自宅を賃貸に出した場合の収支を正確に把握しましょう。家賃収入から住宅ローン返済額、管理費、修繕積立金、固定資産税などを差し引いた実質的な収支を計算します。多くの方が見落としがちなのが、賃貸管理会社への手数料です。家賃の5〜10%程度が相場となっており、この費用も考慮に入れる必要があります。
新たに購入する投資物件についても、同様に詳細な収支計画を立てます。この際、空室率を20%程度見込んでおくことが重要です。常に満室を前提とした計画では、空室が発生した際に資金繰りが苦しくなってしまいます。また、大規模修繕に備えて、家賃収入の10〜15%程度を積み立てておくことをお勧めします。
両物件の収支を合算した上で、自分の給与収入も含めた総合的なキャッシュフロー表を作成しましょう。月々のプラスマイナスだけでなく、年間を通じた資金の流れを把握することが大切です。固定資産税や火災保険料など、年に一度の支出も忘れずに計上します。
予備資金として、最低でも300万円程度は確保しておくことが望ましいです。これは突発的な修繕費用や、空室期間が長引いた場合の返済資金として必要になります。金融庁の調査によると、不動産投資で失敗する方の多くは、予備資金が不足していたことが原因だったというデータがあります。
賃貸経営で注意すべきリスクと対策
自宅を賃貸に出して投資ローンを組むということは、実質的に2つの不動産を経営することになります。そのため、通常の不動産投資以上にリスク管理が重要になってきます。
最も大きなリスクは空室リスクです。自宅と投資物件の両方が同時に空室になった場合、2つのローン返済を給与収入だけで賄わなければなりません。このリスクを軽減するためには、立地条件の良い物件を選ぶことが基本です。駅から徒歩10分以内、周辺に商業施設や学校がある、といった条件を満たす物件は空室リスクが低くなります。
家賃滞納リスクも見逃せません。入居者が家賃を支払わなくなった場合、法的な手続きを経て退去させるまでに数ヶ月かかることもあります。この間もローン返済は続くため、資金繰りが厳しくなります。対策としては、家賃保証会社の利用が効果的です。月額家賃の0.5〜1%程度の保証料で、滞納リスクをカバーできます。
金利上昇リスクも考慮しておく必要があります。変動金利で借りている場合、将来的に金利が上昇すると返済額が増加します。2026年2月現在の変動金利は1.5〜2.0%程度ですが、過去には4〜5%の時期もありました。金利が2%上昇した場合でも返済できるかどうか、シミュレーションしておくことが重要です。
建物の老朽化リスクにも備えましょう。築年数が経過するにつれて、大規模修繕の必要性が高まります。外壁塗装や屋上防水工事には数百万円の費用がかかることもあります。国土交通省のガイドラインでは、マンションの場合、12年ごとに大規模修繕を行うことが推奨されています。
税務上の注意点と確定申告
自宅を賃貸に出して投資ローンを組むと、税務上の扱いが複雑になります。適切な申告を行わないと、後々税務署から指摘を受ける可能性があるため、基本的な知識を身につけておきましょう。
自宅を賃貸に出した時点で、その物件から得られる家賃収入は不動産所得として確定申告が必要になります。不動産所得は、家賃収入から必要経費を差し引いた金額です。必要経費には、ローンの利息部分、固定資産税、管理費、修繕費、減価償却費などが含まれます。ただし、ローンの元本返済部分は経費として認められないため注意が必要です。
減価償却は節税効果が大きい項目です。建物部分の価値を耐用年数に応じて毎年経費として計上できます。木造住宅の場合は22年、鉄筋コンクリート造の場合は47年が法定耐用年数です。例えば、建物価格2000万円の鉄筋コンクリートマンションであれば、年間約43万円を減価償却費として計上できます。
新たに購入した投資物件についても、同様に不動産所得の申告が必要です。複数の不動産を所有する場合、それぞれの収支を合算して申告します。一方の物件で赤字が出た場合、もう一方の黒字と相殺できるため、全体の税負担を軽減できる可能性があります。
青色申告を選択すると、さらに節税メリットがあります。青色申告特別控除として最大65万円を所得から控除できるほか、赤字を3年間繰り越すことも可能です。ただし、青色申告を行うには、事前に税務署への届け出と、複式簿記による帳簿の作成が必要になります。
国税庁のデータによると、不動産所得の申告漏れや誤りが多く見られるため、不安な場合は税理士に相談することをお勧めします。税理士報酬は年間10〜20万円程度が相場ですが、この費用も必要経費として計上できます。
金融機関との交渉を有利に進めるコツ
自宅を賃貸に出して投資ローンを組む際、金融機関との交渉を有利に進めるためのポイントがあります。準備を整えて臨むことで、より良い条件での融資を引き出せる可能性が高まります。
まず、複数の金融機関に相談することが重要です。メガバンク、地方銀行、信用金庫、ノンバンクなど、それぞれ審査基準や金利条件が異なります。少なくとも3〜4社に相談し、条件を比較検討しましょう。全国銀行協会の調査では、複数の金融機関を比較した人の方が、平均で0.3〜0.5%低い金利で借りられているというデータがあります。
事業計画書を作成して持参すると、金融機関からの評価が高まります。物件の概要、収支計画、返済シミュレーション、リスク対策などを具体的にまとめた資料を用意しましょう。特に、楽観的なシナリオだけでなく、空室率が高まった場合や金利が上昇した場合のシミュレーションも含めると、計画の信頼性が増します。
自己資金を多めに用意できると、交渉が有利になります。物件価格の30%以上の自己資金があれば、金融機関は借主の本気度と返済能力を高く評価します。また、自己資金が多いほど融資額が減るため、金利も低く設定される傾向があります。
既存の取引実績も交渉材料になります。給与振込や公共料金の引き落としなど、日常的に利用している金融機関であれば、取引実績を評価してもらえる可能性があります。また、住宅ローンの返済を遅延なく続けてきた実績は、大きなプラス要因となります。
まとめ
自宅を賃貸に出して投資ローンを組むことは、適切な手順を踏めば十分に可能です。重要なのは、住宅ローンと投資ローンの違いを理解し、金融機関への事前相談を怠らないことです。無断で賃貸に出すと契約違反となり、残債の一括返済を求められるリスクがあるため、必ず正規の手続きを踏みましょう。
金融機関の審査では、安定した収入、十分な自己資金、既存ローンの返済状況、物件の収益性などが総合的に評価されます。審査を通過するためには、年収500万円以上、自己資金として物件価格の20〜30%、返済比率35%以内を目安に準備を進めることが望ましいです。
資金計画では、両物件の収支を正確に把握し、空室リスクや修繕費用も考慮した保守的なシミュレーションを行いましょう。予備資金として300万円程度を確保しておくと、突発的な支出にも対応できます。また、税務上の取り扱いも複雑になるため、確定申告の準備や青色申告の検討も必要です。
複数の金融機関を比較し、事業計画書を作成して交渉に臨むことで、より有利な条件での融資を引き出せる可能性が高まります。不動産投資は長期的な取り組みとなるため、焦らず慎重に計画を立て、専門家のアドバイスも活用しながら進めていくことをお勧めします。適切な準備と知識があれば、自宅を賃貸に出しながら新たな投資物件を購入することは、資産形成の有効な手段となるでしょう。
参考文献・出典
- 全国銀行協会 – https://www.zenginkyo.or.jp/
- 国土交通省「住宅市場動向調査」 – https://www.mlit.go.jp/
- 日本不動産研究所「不動産投資家調査」 – https://www.reinet.or.jp/
- 金融庁「金融機関の融資動向調査」 – https://www.fsa.go.jp/
- 国税庁「不動産所得の申告について」 – https://www.nta.go.jp/
- 住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査」 – https://www.jhf.go.jp/
- 不動産流通推進センター「不動産統計集」 – https://www.retpc.jp/