不動産投資を始めようと物件を探していると、築20年前後の物件が魅力的な表面利回りで掲載されているのを目にすることが多いのではないでしょうか。新築物件と比べて価格が手頃で、利回りも高く見えるため、初心者にとって非常に魅力的に映ります。しかし、表面利回りの数字だけで判断してしまうと、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。この記事では、築20年物件の表面利回りの実態と、本当に投資価値があるかを見極めるための具体的なポイントを解説します。物件選びで失敗しないための知識を身につけ、安心して不動産投資をスタートさせましょう。
築20年物件が高利回りになる理由とは

築20年の物件が新築や築浅物件と比べて高い表面利回りを示すのには、明確な理由があります。最も大きな要因は物件価格の下落です。不動産は築年数が経過するにつれて資産価値が減少し、特に築15年から25年の間は価格の下落幅が大きくなる傾向があります。
物件価格が下がれば、同じ家賃収入でも利回りは高く計算されます。例えば、月額家賃10万円の物件で年間家賃収入が120万円の場合、物件価格が3000万円なら表面利回りは4%ですが、築年数が経過して物件価格が2000万円に下がれば、表面利回りは6%になります。このように、築20年物件の高利回りは価格の下落によって生まれているのです。
また、築20年という時期は建物の設備や外観に経年劣化が目立ち始める時期でもあります。そのため、購入希望者が減少し、売主は価格を下げざるを得ない状況になります。一方で、適切に管理されている物件であれば、まだ十分に賃貸需要があり、家賃収入は安定して得られる可能性があります。
重要なのは、高い表面利回りが必ずしも高い収益性を意味するわけではないという点です。築20年物件には修繕費用や空室リスクなど、表面利回りには現れないコストが潜んでいます。表面利回りはあくまで物件選びの入口であり、その数字の背景にある実態を理解することが成功への第一歩となります。
表面利回りと実質利回りの違いを理解する

不動産投資で最も混同されやすいのが、表面利回りと実質利回りの違いです。この2つの指標を正しく理解していないと、投資判断を大きく誤る可能性があります。
表面利回りは「年間家賃収入÷物件価格×100」という非常にシンプルな計算式で求められます。例えば、物件価格2000万円で年間家賃収入が120万円なら、表面利回りは6%です。この計算には諸経費や税金、管理費などは一切含まれていません。そのため、物件の収益性を大まかに把握するための目安として使われます。
一方、実質利回りは運営に必要な経費をすべて差し引いた上で計算します。具体的には「(年間家賃収入−年間経費)÷(物件価格+購入時諸費用)×100」という式になります。年間経費には管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税、火災保険料、賃貸管理手数料などが含まれます。また、購入時諸費用として仲介手数料、登記費用、不動産取得税なども考慮する必要があります。
築20年物件の場合、表面利回りと実質利回りの差が特に大きくなる傾向があります。建物の老朽化により修繕費用が増加し、管理費や修繕積立金も高額になることが多いためです。表面利回り6%の物件でも、経費を差し引いた実質利回りは3〜4%程度になることも珍しくありません。
さらに、空室期間や原状回復費用を考慮すると、実際の手取り収益はさらに減少します。築20年物件への投資を検討する際は、必ず実質利回りを計算し、現実的な収益予測を立てることが不可欠です。物件情報に記載されている表面利回りだけで判断せず、自分で詳細なシミュレーションを行いましょう。
築20年物件特有のリスクと対策
築20年という築年数は、不動産投資において重要な転換点となります。この時期特有のリスクを理解し、適切な対策を講じることが投資成功の鍵となります。
最も大きなリスクは大規模修繕の必要性です。マンションの場合、一般的に12〜15年周期で大規模修繕が実施されますが、築20年前後は2回目の大規模修繕時期に当たります。外壁の塗装、防水工事、配管の更新など、多額の費用が必要になる可能性があります。修繕積立金が十分に積み立てられていない物件では、一時金の徴収や修繕積立金の大幅な値上げが発生することもあります。
設備の老朽化も見逃せない問題です。給湯器、エアコン、インターホンなどの設備は15〜20年が寿命とされています。入居者の入れ替わり時に複数の設備を同時に交換する必要が生じれば、想定外の出費となります。特に築20年を超えると、設備交換の頻度が急激に増加する傾向があります。
空室リスクも築年数とともに高まります。賃貸市場では築浅物件が好まれる傾向があり、築20年を超えると競争力が低下します。周辺に新築物件が建設されると、相対的に魅力が下がり、家賃を下げざるを得ない状況になることもあります。国土交通省の調査によると、築20年以上の物件の平均空室率は築10年未満の物件と比べて約1.5倍高くなっています。
これらのリスクに対処するには、購入前の徹底的な調査が不可欠です。修繕履歴と修繕計画を確認し、今後5〜10年の修繕予定と費用を把握しましょう。また、建物の管理状況を確認し、管理組合が適切に機能しているかをチェックすることも重要です。さらに、周辺の賃貸需要を調査し、将来的な人口動態も考慮に入れた立地選びを心がけることで、リスクを最小限に抑えることができます。
築20年物件で成功するための物件選びのポイント
築20年物件への投資で成功するには、表面利回りの数字だけでなく、物件の質と将来性を見極める目が必要です。ここでは具体的な選定基準を解説します。
立地条件は最も重要な要素です。駅から徒歩10分以内、できれば5分以内の物件を選ぶことで、築年数のハンデを補うことができます。東京23区の場合、2026年2月時点でワンルームマンションの平均表面利回りは4.2%ですが、駅近物件は築年数が経過しても賃貸需要が安定しています。また、周辺に大学や大企業のオフィス、商業施設があるエリアは、長期的な需要が見込めます。
建物の管理状態を詳しく確認することも欠かせません。エントランスや共用部分が清潔に保たれているか、掲示板に管理組合の活動記録が適切に掲示されているかをチェックしましょう。管理が行き届いている物件は、入居者の質も高く、長期的に安定した運営が期待できます。修繕積立金の残高が適正水準にあるかも重要なポイントです。
間取りと設備のバランスも考慮すべき要素です。ワンルームや1Kは単身者向けで回転率が高い一方、ファミリータイプは長期入居が期待できます。築20年でも、リノベーション済みの物件や、設備が更新されている物件は競争力があります。特にバス・トイレ別、独立洗面台、システムキッチンなどの設備は、賃貸需要に大きく影響します。
周辺の競合物件との比較も忘れてはいけません。同じエリアの類似物件の家賃相場を調査し、適正な家賃設定ができるかを確認しましょう。また、新築物件の建設予定がないかも調べておくと、将来的な競争環境を予測できます。
購入価格の交渉余地も重要です。築20年物件は売主の売却理由によって価格交渉がしやすい場合があります。相場より高い価格設定の物件は避け、適正価格またはそれ以下で購入できる物件を選ぶことで、投資の安全性が高まります。
実際の収支シミュレーションで見る築20年物件の実態
理論だけでなく、具体的な数字で築20年物件の収益性を確認してみましょう。ここでは東京都内の築20年ワンルームマンションを例に、現実的な収支シミュレーションを行います。
物件価格2000万円、表面利回り6%の物件を想定します。年間家賃収入は120万円(月額10万円)となります。一見すると魅力的な数字ですが、実際の運営では様々な経費が発生します。
まず固定費として、管理費が月額8000円、修繕積立金が月額1万円、合計で年間21万6000円かかります。固定資産税と都市計画税は年間約10万円、火災保険料は年間1万円程度です。賃貸管理を委託する場合、家賃の5%程度の管理手数料がかかるため、年間6万円となります。これらの固定費だけで年間38万6000円が必要です。
さらに変動費として、入居者の入れ替わり時には原状回復費用が平均15万円程度かかります。年間の空室率を10%と想定すると、実質的な家賃収入は108万円に減少します。また、設備交換費用として年間10万円程度を積み立てておく必要があります。
これらを差し引くと、年間の実質収入は約59万円となり、実質利回りは約3%です。さらに、購入時の諸費用(仲介手数料、登記費用、不動産取得税など)として物件価格の7〜10%、約150万円が必要になります。これを考慮すると、初年度の実質利回りはさらに低下します。
ローンを利用する場合は、返済額も考慮する必要があります。物件価格の80%にあたる1600万円を金利2%、返済期間25年で借り入れると、月々の返済額は約6万8000円、年間約81万6000円となります。この場合、年間収支はマイナス22万6000円となり、持ち出しが発生します。
このシミュレーションから分かるように、表面利回り6%の物件でも、実際の手取り収益は大きく異なります。築20年物件への投資を検討する際は、楽観的な予測ではなく、保守的な条件でシミュレーションを行い、十分な収益が見込めるかを慎重に判断することが重要です。
築20年物件を活かすリノベーション戦略
築20年物件の価値を高め、競争力を向上させる有効な手段がリノベーションです。適切なリノベーションを行うことで、家賃アップや空室期間の短縮が期待できます。
費用対効果の高いリノベーションとして、まず水回りの更新が挙げられます。キッチン、浴室、洗面台、トイレなどの水回り設備は、入居者が最も重視する部分です。築20年の設備は見た目も機能も古く感じられるため、最新の設備に交換するだけで物件の印象が大きく変わります。予算は50万円から100万円程度で、家賃を5000円から1万円程度アップできる可能性があります。
内装のリフレッシュも効果的です。壁紙の張り替え、フローリングの交換、照明器具の更新などを行うことで、清潔感と現代的な雰囲気を演出できます。特に白やベージュなどの明るい色調を選ぶことで、部屋を広く見せる効果があります。内装リノベーションの費用は30万円から50万円程度で、入居率の向上に直結します。
間取りの変更も検討する価値があります。例えば、和室を洋室に変更したり、壁を取り払ってリビングを広くしたりすることで、現代のライフスタイルに合った空間を作ることができます。ただし、構造上の制約があるため、専門家に相談しながら計画を立てる必要があります。
設備の追加も差別化につながります。宅配ボックス、モニター付きインターホン、ウォシュレット、エアコンの新調などは、比較的少額の投資で入居者の満足度を高めることができます。特に防犯設備の充実は、女性の入居者にとって重要な判断材料となります。
リノベーションを行う際の注意点として、投資額の回収期間を計算することが重要です。リノベーション費用100万円をかけて月額家賃を5000円アップできた場合、回収には約17年かかります。物件の残存耐用年数や売却予定時期を考慮し、費用対効果の高い部分に絞って投資することが賢明です。
また、リノベーション後の家賃設定は周辺相場を十分に調査した上で決定しましょう。過度な家賃アップは空室期間を長引かせる原因となります。適正な価格設定と質の高いリノベーションのバランスが、成功への鍵となります。
まとめ
築20年物件の表面利回りは確かに魅力的に見えますが、その数字だけで投資判断をすることは危険です。表面利回りと実質利回りの違いを理解し、修繕費用や空室リスクなど、築年数特有のコストを正確に把握することが不可欠です。
成功する投資のポイントは、立地条件の良さ、建物の管理状態、適正な価格での購入、そして現実的な収支シミュレーションです。表面利回り6%の物件でも、実質利回りは3〜4%程度になることを念頭に置き、保守的な計画を立てましょう。
また、リノベーションによって物件価値を高める戦略も有効ですが、費用対効果を慎重に検討することが重要です。築20年物件への投資は、新築物件にはない価格的なメリットがある一方で、リスク管理が成否を分けます。
不動産投資は長期的な視点が必要です。目先の高利回りに惑わされず、物件の本質的な価値と将来性を見極める目を養いましょう。十分な知識と慎重な判断で、築20年物件でも安定した収益を得ることは十分に可能です。まずは複数の物件を比較検討し、信頼できる不動産会社や専門家に相談しながら、自分に合った投資物件を見つけてください。
参考文献・出典
- 国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査」 – https://www.mlit.go.jp/
- 日本不動産研究所「不動産投資家調査(2026年2月)」 – https://www.reinet.or.jp/
- 公益財団法人東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2025年)」 – http://www.reins.or.jp/
- 総務省統計局「住宅・土地統計調査」 – https://www.stat.go.jp/
- 国土交通省「マンション管理適正化・再生推進事業」 – https://www.mlit.go.jp/
- 一般社団法人日本賃貸住宅管理協会「賃貸住宅市場景況感調査(2025年度)」 – https://www.jpm.jp/
- 公益財団法人不動産流通推進センター「不動産統計集」 – https://www.retpc.jp/