不動産投資を始めようと物件情報を見ていると、「表面利回り10%」といった魅力的な数字が目に飛び込んできます。特に木造アパートは高い表面利回りが提示されることが多く、初心者にとって非常に魅力的に映るでしょう。しかし、この数字だけで投資判断をしてしまうと、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。この記事では、木造アパートの表面利回りの基本から、実際の収益性を正しく見極める方法まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
表面利回りとは何か?基本を理解する

表面利回りとは、物件価格に対する年間家賃収入の割合を示す指標です。計算式は「年間家賃収入÷物件価格×100」で求められます。例えば、3000万円の物件で年間家賃収入が300万円なら、表面利回りは10%となります。
この指標は不動産投資の収益性を一目で把握できる便利な数字です。物件情報サイトや不動産会社の資料には必ず記載されており、投資家が最初に確認する重要な情報となっています。しかし、表面利回りには大きな注意点があります。
実は、表面利回りには運営にかかる経費が一切含まれていません。固定資産税、管理費、修繕費、保険料などの支出を考慮していないため、実際に手元に残る収益とは大きく異なる場合があります。つまり、表面利回りは物件の収益性を示す入口の指標であり、これだけで投資判断をすることは危険なのです。
特に木造アパートの場合、建物の維持管理に予想以上のコストがかかることがあります。表面利回りが高くても、実際の手取り収入が少ないケースは珍しくありません。そのため、表面利回りを正しく理解し、他の指標と組み合わせて総合的に判断することが重要になります。
木造アパートの表面利回りが高い理由

木造アパートの表面利回りは、一般的にRC造(鉄筋コンクリート造)やSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)のマンションと比較して高く設定されています。2026年2月時点のデータによると、東京23区のアパート平均表面利回りは5.1%で、ワンルームマンションの4.2%やファミリーマンションの3.8%を上回っています。
この差が生まれる最大の理由は、建物の耐用年数と資産価値の違いです。木造建築の法定耐用年数は22年と定められており、RC造の47年と比べて半分以下となっています。つまり、木造アパートは建物の価値が早く減少するため、投資家はより高い利回りを求めるのです。
さらに、木造アパートは建築コストが比較的安いという特徴があります。RC造と比べて建築費が30〜40%程度抑えられるため、物件価格自体が低く設定されます。同じ家賃収入が得られる場合、物件価格が安ければ表面利回りは自動的に高くなります。
一方で、高い表面利回りにはリスクも伴います。木造建築は経年劣化が早く、修繕費用が頻繁に発生する傾向があります。また、築年数が古くなると入居者の確保が難しくなり、家賃を下げざるを得ない状況も生まれやすいのです。このように、表面利回りの高さは必ずしも投資の有利さを意味しないことを理解しておく必要があります。
実質利回りとの違いを知る
表面利回りだけでは不動産投資の真の収益性は分かりません。ここで重要になるのが実質利回りという指標です。実質利回りは、年間家賃収入から運営経費を差し引いた実質的な収入を物件価格で割って算出します。
具体的な計算式は「(年間家賃収入−年間運営経費)÷(物件価格+購入時諸費用)×100」となります。運営経費には固定資産税、都市計画税、管理費、修繕積立金、火災保険料、賃貸管理手数料などが含まれます。木造アパートの場合、これらの経費は年間家賃収入の20〜30%程度を占めることが一般的です。
例えば、表面利回り10%の木造アパートがあったとします。年間家賃収入が300万円、物件価格が3000万円の物件です。しかし、年間運営経費が60万円かかる場合、実質利回りは「(300万円−60万円)÷3000万円×100=8%」となります。表面利回りと2%の差が生まれるのです。
さらに、購入時の諸費用も考慮する必要があります。不動産取得税、登記費用、仲介手数料などを含めると、物件価格の7〜10%程度の初期費用がかかります。これらを加えると、実質利回りはさらに低くなります。木造アパート投資を検討する際は、必ず実質利回りを計算し、実際の収益性を正確に把握することが成功への第一歩となります。
木造アパート投資で注意すべき経費項目
木造アパートの運営には、想定以上に多くの経費がかかります。まず押さえておきたいのは、固定資産税と都市計画税です。これらは毎年必ず発生する税金で、物件の評価額によって決まります。木造建築は建物の評価額が年々下がるため、税額も徐々に減少しますが、土地部分の税金は変わりません。
修繕費用は木造アパート特有の大きな負担となります。外壁塗装は10〜15年ごとに必要で、1棟あたり100万円以上かかることも珍しくありません。屋根の補修、給排水設備の交換、シロアリ対策なども定期的に実施する必要があります。築年数が経過するほど、これらの費用は増加していきます。
管理費用も見逃せない項目です。入居者募集、家賃回収、クレーム対応などを管理会社に委託する場合、家賃収入の5〜10%程度の手数料が発生します。自主管理を選択すれば費用は抑えられますが、時間と労力が必要になります。特に本業がある方にとって、自主管理は現実的ではないでしょう。
空室リスクへの備えも重要です。木造アパートは築年数が経過すると競争力が低下し、空室期間が長くなる傾向があります。年間家賃収入を計算する際は、満室想定ではなく空室率10〜20%を見込んでおくことが賢明です。これらの経費を正確に把握し、収支計画に反映させることで、現実的な投資判断が可能になります。
木造アパートの収益性を高めるポイント
表面利回りが高い木造アパートでも、工夫次第で実質的な収益性をさらに向上させることができます。重要なのは、立地選びです。駅から徒歩10分以内、スーパーやコンビニが近い、治安が良いといった条件を満たす物件は、空室リスクが低く安定した収益が見込めます。
物件の状態を見極めることも大切です。築年数が古くても、適切にメンテナンスされている物件は長期的な投資価値があります。購入前に必ず現地を訪れ、外壁のひび割れ、屋根の状態、共用部の清掃状況などを確認しましょう。また、過去の修繕履歴を確認することで、今後必要となる大規模修繕の時期や費用を予測できます。
入居者ニーズに合わせたリフォームも効果的です。木造アパートは比較的リフォームしやすい構造のため、少ない投資で物件の魅力を高められます。例えば、和室を洋室に変更する、インターネット無料を導入する、宅配ボックスを設置するといった工夫で、周辺物件との差別化が図れます。
さらに、複数の管理会社から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較することも重要です。管理手数料が1%違うだけで、年間数万円から数十万円の差が生まれます。また、火災保険も複数社を比較し、必要な補償内容を見極めることで、無駄な支出を削減できます。これらの積み重ねが、長期的な収益性の向上につながるのです。
融資を活用した木造アパート投資の考え方
木造アパート投資では、融資を活用することで自己資金以上の規模の投資が可能になります。ただし、木造建築は融資条件が厳しくなる傾向があります。金融機関は建物の耐用年数を重視するため、築年数が古い木造アパートほど融資期間が短くなり、月々の返済負担が大きくなります。
一般的に、木造アパートの融資期間は法定耐用年数の22年から築年数を引いた年数が上限となります。例えば、築10年の物件なら最長12年の融資となるケースが多いのです。融資期間が短いと月々の返済額が増え、キャッシュフローが悪化する可能性があります。
そのため、木造アパート投資では自己資金比率を高めることが重要です。物件価格の30〜40%程度の自己資金を用意できれば、融資審査も通りやすくなり、月々の返済負担も軽減されます。また、金利交渉の余地も生まれやすくなります。
融資を受ける際は、複数の金融機関を比較検討することが大切です。地方銀行や信用金庫は、地域の木造アパートに対して積極的な融資姿勢を示すことがあります。また、日本政策金融公庫は比較的長期の融資に対応しているため、選択肢の一つとして検討する価値があります。金利だけでなく、融資期間、返済方法、繰上返済の条件なども含めて総合的に判断しましょう。
長期的な視点で木造アパート投資を考える
木造アパート投資は、短期的な高利回りだけでなく、長期的な視点での戦略が必要です。まず考えるべきは、出口戦略です。木造建築は築年数が経過すると資産価値が大きく下がるため、いつ売却するか、あるいは建て替えるかを事前に計画しておく必要があります。
一般的に、木造アパートの資産価値は築15〜20年で大きく下落します。この時期を迎える前に売却するか、大規模リフォームを実施して物件価値を維持するかの判断が求められます。また、土地の価値が高い立地であれば、建物を解体して土地として売却する選択肢も考えられます。
減価償却を活用した節税効果も、木造アパート投資の大きなメリットです。木造建築は耐用年数が短いため、年間の減価償却費が大きくなり、所得税や住民税の節税につながります。ただし、売却時には譲渡所得税が発生するため、トータルでの税負担を計算することが重要です。
さらに、地域の将来性も考慮に入れましょう。人口が増加傾向にある地域、再開発計画がある地域、交通インフラの整備が予定されている地域などは、長期的な賃貸需要が見込めます。一方、人口減少が進む地域では、将来的に空室率が上昇し、家賃下落のリスクが高まります。国土交通省や総務省が公表する人口動態データを参考に、投資エリアを慎重に選定することが、長期的な成功につながります。
まとめ
木造アパートの表面利回りは、不動産投資の入口として重要な指標ですが、それだけで投資判断をすることは危険です。表面利回りが高くても、運営経費や空室リスクを考慮すると、実質的な収益性は大きく異なる場合があります。
成功する木造アパート投資のためには、実質利回りを正確に計算し、修繕費用や管理費用などの経費を現実的に見積もることが不可欠です。また、立地選び、物件の状態確認、適切なリフォーム、効率的な管理体制の構築など、多角的な視点から物件を評価する必要があります。
融資を活用する際は、木造建築特有の融資条件を理解し、自己資金比率を高めることで安定した投資が可能になります。そして何より、長期的な視点で出口戦略を描き、地域の将来性を見極めることが、持続可能な不動産投資につながります。
表面利回りという数字に惑わされず、実質的な収益性とリスクを冷静に分析することで、木造アパート投資は魅力的な資産形成の手段となるでしょう。まずは小規模な物件から始め、経験を積みながら投資規模を拡大していくことをお勧めします。
参考文献・出典
- 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp/
- 国土交通省 不動産市場動向 – https://www.mlit.go.jp/
- 総務省統計局 人口推計 – https://www.stat.go.jp/
- 国税庁 減価償却資産の耐用年数等に関する省令 – https://www.nta.go.jp/
- 公益財団法人 東日本不動産流通機構 – https://www.reins.or.jp/
- 一般財団法人 日本不動産研究所 不動産投資家調査 – https://www.reinet.or.jp/
- 金融庁 投資家保護情報 – https://www.fsa.go.jp/