不動産投資を始めようと考えたとき、多くの方が最初に悩むのが「新築と中古、どちらを選ぶべきか」という問題です。特に築20年前後の中古物件は価格が魅力的である一方、新築の安心感も捨てがたいものがあります。実は、この選択は投資の成否を左右する重要な決断となります。本記事では、築20年の中古マンションと新築マンションを徹底比較し、あなたの投資目的に合った選択ができるよう、具体的なデータと実例を交えて解説していきます。初期費用から将来的な資産価値まで、投資判断に必要なすべての情報をお伝えします。
価格差から見る投資効率の違い

新築と築20年の中古マンションでは、購入価格に大きな開きがあります。国土交通省の不動産価格指数によると、2026年時点で新築マンションの平均価格は首都圏で約6,500万円となっています。一方、築20年の中古マンションは同じ立地条件でも4,000万円前後と、約40%程度安く購入できるケースが一般的です。
この価格差は投資効率に直結します。例えば、同じ立地で月額家賃15万円が見込める物件の場合、新築なら表面利回りは約2.8%ですが、築20年の中古なら約4.5%となります。初期投資を抑えられる分、キャッシュフローの改善が早く、投資回収期間も短縮できるのです。
さらに重要なのは、融資を受ける際の自己資金負担です。新築で6,500万円の物件なら自己資金として1,300万円から1,950万円が必要になりますが、中古4,000万円なら800万円から1,200万円で済みます。この差額を複数物件への分散投資に回すことで、リスクヘッジも可能になります。
ただし、価格が安いからといって安易に飛びつくのは危険です。築20年の物件は今後の修繕費用や設備更新のコストも考慮する必要があります。表面的な利回りだけでなく、長期的な収支シミュレーションを行うことが成功への鍵となります。
建物の耐久性と資産価値の推移

築20年という年数は、マンションのライフサイクルにおいて重要な節目です。一般的に鉄筋コンクリート造のマンションは法定耐用年数が47年とされていますが、実際の物理的寿命は適切な管理がなされていれば60年から100年程度まで延びることが分かっています。
築20年の物件は、すでに新築時の価格下落が一段落している点が大きなメリットです。不動産経済研究所のデータによると、マンションの資産価値は新築から10年で約30%、20年で約40〜50%下落しますが、その後の下落率は緩やかになります。つまり、築20年で購入すれば、急激な資産価値の目減りリスクを回避できるのです。
一方、新築マンションは購入直後から資産価値が下がり始めます。これは「新築プレミアム」と呼ばれる販売時の上乗せ価格が剥がれ落ちるためです。実際、新築で購入した物件を5年後に売却しようとすると、購入価格の70〜80%程度になることも珍しくありません。
建物の状態については、築20年であっても大規模修繕が適切に実施されているかが重要です。通常、マンションは12年から15年周期で大規模修繕を行います。築20年の物件なら、すでに1回目の大規模修繕が完了しているケースが多く、その履歴を確認することで建物の管理状態を判断できます。修繕積立金の残高が十分にあり、計画的に修繕が行われている物件なら、今後も安心して保有できるでしょう。
融資条件と金利の実際
金融機関の融資姿勢は、新築と中古で大きく異なります。新築マンションの場合、物件価格の90%から100%まで融資を受けられることも珍しくありません。金利も優遇されやすく、2026年2月時点では変動金利で0.5%から1.0%程度の条件を提示する金融機関もあります。
対して築20年の中古マンションは、融資比率が70%から80%程度に制限されることが一般的です。金利も新築より0.3%から0.5%程度高く設定されるケースが多くなります。これは金融機関が担保価値を保守的に評価するためです。
しかし、この融資条件の違いを逆手に取ることもできます。自己資金比率が高くなる分、月々の返済額は抑えられ、キャッシュフローが安定します。例えば、4,000万円の中古物件を80%融資で購入した場合、借入額は3,200万円です。金利1.5%、35年返済なら月々の返済額は約9.6万円となります。
一方、6,500万円の新築を90%融資で購入すると、借入額は5,850万円です。金利1.0%でも月々の返済額は約16.5万円に上ります。家賃収入が同じ15万円なら、中古の方が手元に残るキャッシュフローは明らかに多くなります。
融資期間についても注意が必要です。多くの金融機関は「法定耐用年数−築年数」を融資期間の上限とします。築20年なら最長27年となり、新築の35年と比べて短くなります。ただし、返済期間が短い分、早期に完済できるメリットもあります。投資戦略に応じて、どちらが有利かを判断することが重要です。
維持管理コストの現実的な比較
新築マンションは当初10年程度、設備の故障や修繕がほとんど発生しません。給湯器やエアコンなどの設備も新品のため、突発的な出費を心配する必要がないのは大きな安心材料です。また、修繕積立金も当初は低く設定されていることが多く、月々のランニングコストを抑えられます。
しかし、この低い修繕積立金には落とし穴があります。多くの新築マンションでは、販売促進のために当初の修繕積立金を意図的に低く設定しています。国土交通省のガイドラインでは、適正な修繕積立金は1平方メートルあたり月額200円から300円程度とされていますが、新築時は100円程度に抑えられているケースも少なくありません。
築20年の中古マンションは、すでに現実的な修繕積立金額に調整されています。1回目の大規模修繕を経験しているため、今後必要となる費用も予測しやすくなっています。購入前に長期修繕計画と修繕積立金の残高を確認することで、将来的な負担増のリスクを正確に把握できます。
設備更新のコストも考慮が必要です。築20年の物件では、給湯器やエアコンの交換時期が近づいている可能性があります。給湯器の交換には15万円から30万円、エアコンは1台あたり10万円から20万円程度かかります。ただし、これらは購入時の価格交渉材料にもなります。設備の状態を理由に値引き交渉を行い、その資金で計画的に更新していけば、結果的にコストを抑えられます。
管理費についても違いがあります。新築マンションは最新の省エネ設備を備えているため、共用部の電気代などが抑えられる傾向にあります。一方、築20年の物件でも、LED照明への切り替えや管理会社の見直しなどで、管理費を削減している事例も増えています。重要なのは、管理組合が機能しているかどうかです。
入居者ニーズと賃貸需要の違い
賃貸市場における新築と築20年の物件では、ターゲット層が異なります。新築マンションは「新しさ」というブランド価値があり、高所得者層や法人契約を獲得しやすい傾向にあります。特に転勤族や外資系企業の社員など、家賃補助が手厚い層からの需要が見込めます。
実際、リクルートの賃貸住宅市場調査によると、新築物件は周辺相場より10%から20%高い家賃設定でも入居者が決まりやすいというデータがあります。また、入居期間も長くなる傾向があり、空室リスクを低減できます。初期の数年間は安定した収益を確保しやすいのが新築の強みです。
しかし、築年数が経過するにつれて、この優位性は失われていきます。新築から5年も経てば「築浅」という扱いになり、家賃も周辺相場に近づいていきます。つまり、新築プレミアムは永続的なものではなく、時間とともに減衰していくのです。
築20年の中古マンションは、価格競争力が最大の武器となります。同じエリアの新築より2割から3割安い家賃設定が可能なため、価格重視の若年層や単身者、学生などの需要を取り込めます。特に都心部では、立地の良さと手頃な家賃のバランスが取れた物件として、安定した需要があります。
また、築20年程度の物件は間取りが現代のニーズに合っていることも多くなっています。2000年代前半に建てられた物件は、すでにバス・トイレ別、独立洗面台、室内洗濯機置き場など、現在の標準的な設備を備えています。リノベーションで内装を一新すれば、築年数を感じさせない魅力的な物件に生まれ変わります。
賃貸需要の安定性という観点では、立地が最も重要です。駅徒歩10分以内、主要駅へのアクセスが良好、周辺に商業施設や医療機関が充実しているなどの条件を満たしていれば、新築でも中古でも安定した需要が見込めます。逆に、立地が悪ければ新築でも苦戦することになります。
税制面でのメリット・デメリット
不動産投資における税制は、新築と中古で大きく異なります。まず減価償却費の計算方法が違います。新築マンションの場合、鉄筋コンクリート造なら47年の法定耐用年数で減価償却を行います。一方、築20年の中古マンションは、残存耐用年数27年で計算することになります。
減価償却期間が短いということは、毎年計上できる減価償却費が大きくなることを意味します。例えば、建物価格3,000万円の物件なら、新築では年間約64万円の減価償却費ですが、築20年の中古なら年間約111万円となります。この差は課税所得を圧縮する効果があり、所得税・住民税の節税につながります。
ただし、減価償却期間が短いということは、早期に減価償却が終了することも意味します。減価償却が終わると、それまで経費計上できていた分がなくなり、課税所得が増加します。売却時の譲渡所得計算でも、簿価が低くなっている分、譲渡益が大きくなり税負担が増える可能性があります。
新築マンションには、住宅ローン控除の恩恵を最大限受けられるメリットがあります。2026年度の制度では、認定住宅なら最大13年間、年末ローン残高の0.7%が所得税から控除されます。ただし、これは自己居住用の場合であり、投資用物件では適用されません。
固定資産税・都市計画税についても違いがあります。新築マンションは当初3年から5年間、固定資産税が半額に軽減される特例があります。しかし、この期間が終了すると税額が倍増するため、収支計画に織り込んでおく必要があります。築20年の中古マンションは、すでに評価額が下がっているため、固定資産税も安定して低い水準にあります。
相続税対策として不動産投資を考えている場合、築年数による評価額の違いも重要です。相続税評価額は実勢価格より低く算定されますが、新築より中古の方がさらに評価額が低くなる傾向があります。ただし、これは個別の状況によって異なるため、税理士への相談が不可欠です。
出口戦略を見据えた選択
不動産投資で最も重要なのは、購入時から出口戦略を考えておくことです。新築マンションは、購入後10年から15年程度で売却する場合、資産価値の下落が大きくなります。しかし、立地が良ければ一定の需要は見込めるため、売却自体は比較的スムーズに進むことが多いでしょう。
築20年で購入した中古マンションは、さらに10年保有すると築30年になります。築30年を超えると、買い手が住宅ローンを組みにくくなるため、売却価格が大きく下がる可能性があります。ただし、大規模修繕が適切に行われ、管理状態が良好であれば、実需だけでなく投資家からの需要も期待できます。
売却以外の出口戦略として、建て替えの可能性も考慮すべきです。築40年から50年を迎えると、多くのマンションで建て替えの議論が始まります。立地が良く、容積率に余裕がある物件なら、建て替えによって資産価値が大きく向上する可能性があります。築20年の物件なら、あと20年から30年後に建て替え時期を迎えることになります。
賃貸経営を継続する場合、新築は長期的な安定収益を見込めます。適切な管理とメンテナンスを行えば、30年から40年は賃貸需要を維持できるでしょう。一方、築20年の中古マンションは、10年から15年後にリノベーションを検討する必要があります。500万円から1,000万円程度の投資で内装を一新すれば、さらに10年から15年は競争力を保てます。
相続を考えている場合、築年数による違いも重要です。新築で購入した物件を子世代に引き継ぐ場合、まだ十分な資産価値と収益性が残っています。築20年で購入した物件でも、適切に管理されていれば、相続時点で築40年から50年となっても、収益物件として機能し続けることは可能です。
市場環境の変化にも注意が必要です。人口減少が進む地域では、新築・中古を問わず資産価値の下落リスクが高まります。逆に、再開発が予定されているエリアや、交通インフラの整備が進む地域では、築年数に関わらず資産価値の上昇が期待できます。購入時点で、10年後、20年後のエリアの将来性を見極めることが、成功する出口戦略の鍵となります。
まとめ
新築マンションと築20年の中古マンション、どちらを選ぶべきかは、あなたの投資目的と資金状況によって変わります。新築は初期の安定性と管理の手軽さが魅力ですが、価格が高く利回りは低めです。一方、築20年の中古は価格競争力があり、高い利回りとキャッシュフローを実現できますが、修繕費用や設備更新のコストを考慮する必要があります。
重要なのは、表面的な数字だけで判断しないことです。物件の管理状態、立地の将来性、融資条件、税制メリット、そして出口戦略まで、総合的に検討することが成功への道です。特に築20年の中古マンションを選ぶ場合は、修繕履歴と長期修繕計画を必ず確認し、管理組合の運営状況もチェックしましょう。
どちらを選ぶにしても、複数の物件を比較検討し、収支シミュレーションを綿密に行うことが大切です。不動産投資は長期的な視点が求められる投資です。焦らず、じっくりと検討を重ね、あなたに最適な物件を見つけてください。この記事が、あなたの不動産投資の第一歩を踏み出す助けになれば幸いです。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
- 国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html
- 不動産経済研究所 全国マンション市場動向 – https://www.fudousankeizai.co.jp/
- 公益財団法人 東日本不動産流通機構(REINS) – https://www.reins.or.jp/
- 国土交通省 住宅ローン減税制度 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000017.html
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/
- 公益財団法人 マンション管理センター – https://www.mankan.or.jp/