不動産投資を始めようと物件情報を見ていると、「利回り10%!」といった魅力的な数字が目に入ります。しかし、その数字だけで判断してしまうと、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。特に築浅物件を検討する際は、表面利回りだけでなく実質利回りを正しく理解することが成功への第一歩です。この記事では、築浅物件の実質利回りについて、計算方法から注意点まで初心者にも分かりやすく解説します。実際の数値例を交えながら、あなたの投資判断に役立つ知識をお届けします。
実質利回りと表面利回りの違いとは

不動産投資の利回りには大きく分けて「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。この違いを理解することが、正確な投資判断の基礎となります。
表面利回りは「グロス利回り」とも呼ばれ、年間家賃収入を物件価格で割った単純な数値です。例えば、3000万円の物件で年間家賃収入が240万円なら、表面利回りは8%となります。計算式は「年間家賃収入÷物件価格×100」で、物件情報サイトに掲載されている利回りの多くはこの表面利回りです。一見すると分かりやすく魅力的な数字に見えますが、実際の運用では様々な経費がかかるため、この数字だけで判断するのは危険です。
一方、実質利回りは「ネット利回り」とも呼ばれ、年間家賃収入から諸経費を差し引いた実質的な収入を物件価格で割った数値です。計算式は「(年間家賃収入−年間諸経費)÷物件価格×100」となります。先ほどの例で年間諸経費が60万円かかる場合、実質利回りは6%に下がります。つまり、表面利回り8%の物件でも、実際に手元に残る収益は6%分しかないということです。
この2つの利回りの差は、物件によって大きく異なります。築浅物件の場合、修繕費が少ないため差が小さい傾向にありますが、それでも管理費や固定資産税などの経費は必ず発生します。投資判断をする際は、必ず実質利回りで比較することが重要です。
築浅物件の実質利回りを計算する方法

実質利回りを正確に計算するには、まず年間諸経費の内訳を理解する必要があります。築浅物件特有の経費構造を把握することで、より現実的なシミュレーションが可能になります。
年間諸経費の主な項目として、まず管理費と修繕積立金があります。マンションの場合、これらは毎月必ず支払う固定費です。築浅物件では月額2万円から3万円程度が一般的で、年間24万円から36万円の支出となります。次に固定資産税と都市計画税があり、物件評価額の1.4%から1.7%程度が目安です。3000万円の物件なら年間42万円から51万円程度になります。
さらに賃貸管理委託料も重要な経費です。家賃の5%から10%が相場で、月額家賃20万円なら年間12万円から24万円かかります。入居者募集時には広告費として家賃の1〜2ヶ月分、退去時には原状回復費用として10万円から30万円程度を見込む必要があります。築浅物件は大規模修繕の心配が少ないものの、エアコンや給湯器などの設備交換費用は突発的に発生する可能性があります。
具体的な計算例を見てみましょう。物件価格3000万円、年間家賃収入240万円(月額20万円)の築浅ワンルームマンションの場合、表面利回りは8%です。年間諸経費として管理費・修繕積立金30万円、固定資産税等45万円、管理委託料18万円(家賃の7.5%)、その他経費15万円の合計108万円がかかるとします。実質利回りは「(240万円−108万円)÷3000万円×100=4.4%」となり、表面利回りより3.6ポイントも低くなります。
この計算では空室期間を考慮していませんが、実際には年間1ヶ月程度の空室を想定すべきです。空室率を8%として計算すると、実質的な家賃収入は220.8万円となり、実質利回りはさらに3.76%まで下がります。このように、現実的な数値で計算することが重要です。
築浅物件の実質利回りが低くなる理由
築浅物件の実質利回りは、築古物件と比較して低くなる傾向があります。しかし、それには合理的な理由があり、必ずしもデメリットとは言えません。
最大の理由は物件価格の高さです。築浅物件は建物の評価額が高く、同じ立地でも築古物件より1000万円から2000万円高くなることが一般的です。利回りの計算式では物件価格が分母になるため、価格が高いほど利回りは低く算出されます。例えば、年間家賃収入が同じ200万円でも、物件価格が2500万円なら表面利回り8%、3500万円なら5.7%となります。
一方で、築浅物件は家賃を高く設定できるメリットがあります。新築や築浅の物件は入居者に人気が高く、同じエリアの築古物件より10%から20%高い家賃でも入居者が決まりやすい傾向にあります。また、設備が新しいため入居者の満足度が高く、長期入居につながりやすいという特徴もあります。これは空室リスクの低減という形で、実質的な収益の安定につながります。
固定資産税の負担も築浅物件が高くなる要因です。建物の評価額は築年数とともに下がるため、築浅物件ほど固定資産税が高くなります。ただし、2026年度現在、一定の条件を満たす省エネ性能の高い住宅には固定資産税の軽減措置があり、期限内であれば税負担を抑えられる可能性があります。具体的な適用条件や期限については、購入前に必ず確認することをお勧めします。
修繕費の少なさは築浅物件の大きな利点です。築10年以内の物件であれば、大規模な修繕はほとんど必要ありません。エアコンや給湯器などの設備も新しいため、突発的な交換費用が発生するリスクが低いのです。この点を考慮すると、表面上の利回りは低くても、実際の手残り額では築古物件と大きな差がない場合もあります。
実質利回りだけで判断してはいけない理由
実質利回りは重要な指標ですが、それだけで投資判断をするのは危険です。不動産投資の成功には、利回り以外の要素も総合的に評価する必要があります。
まず考えるべきは資産価値の維持です。築浅物件は建物の劣化が少ないため、将来的な資産価値の下落が緩やかです。国土交通省の調査によると、マンションの資産価値は築10年で新築時の70%から80%程度まで下がりますが、その後の下落ペースは緩やかになります。つまり、築浅物件を購入すれば、急激な資産価値の下落を避けられるということです。一方、利回りの高い築古物件は、さらなる資産価値の下落リスクを抱えています。
融資条件の有利さも見逃せません。金融機関は築浅物件に対して積極的に融資を行う傾向があり、低金利での借入が可能です。2026年2月現在、築浅物件であれば1%台前半の金利で融資を受けられるケースも多くあります。一方、築古物件は融資期間が短くなったり、金利が高くなったりする可能性があります。月々の返済額に直結する融資条件は、実質利回りと同じくらい重要な要素です。
入居者の質と安定性も重要なポイントです。築浅物件には属性の良い入居者が集まりやすく、家賃滞納や近隣トラブルのリスクが低い傾向にあります。また、設備が充実しているため入居者の満足度が高く、長期入居につながりやすいのです。実際、築浅物件の平均入居期間は築古物件より1年から2年長いというデータもあります。空室期間が短く入居期間が長いということは、安定した収益を得られるということです。
さらに、管理の手間も考慮すべきです。築浅物件は設備トラブルが少ないため、オーナーとしての対応業務が最小限で済みます。本業を持ちながら不動産投資をする場合、この手間の少なさは大きなメリットです。時間的コストを考えると、利回りが多少低くても築浅物件を選ぶ価値は十分にあります。
築浅物件で実質利回りを高める工夫
築浅物件でも工夫次第で実質利回りを改善することは可能です。購入時の交渉から運用方法まで、具体的な方法を見ていきましょう。
購入価格の交渉は最も効果的な方法です。物件価格が100万円下がれば、それだけで実質利回りは0.3%から0.5%程度改善します。売主の事情や市場動向を見極めて、適切なタイミングで交渉することが重要です。特に売り急いでいる物件や、長期間売れ残っている物件は交渉の余地が大きい傾向にあります。不動産会社との関係構築も大切で、複数の物件を検討していることを伝えると、より良い条件を引き出せる可能性が高まります。
管理費の見直しも効果的です。賃貸管理会社は複数社を比較検討し、サービス内容と費用のバランスが良い会社を選びましょう。家賃の5%で管理してくれる会社もあれば、10%かかる会社もあります。年間家賃収入が200万円なら、管理委託料が5%違うだけで年間10万円の差が生まれます。ただし、安さだけで選ぶのではなく、入居者募集力や対応の速さなども総合的に評価することが大切です。
家賃設定の最適化も重要なポイントです。周辺相場より高すぎると空室期間が長くなり、安すぎると収益を逃してしまいます。不動産ポータルサイトで類似物件の家賃を調査し、自分の物件の強みを活かした適正価格を設定しましょう。築浅という強みを活かして、周辺相場より5%から10%高い家賃でも入居者が決まる可能性は十分にあります。また、定期的に家賃相場を確認し、市場動向に合わせて調整することも大切です。
経費の削減では、火災保険の見直しも効果があります。複数の保険会社を比較し、必要な補償内容で最も安い保険を選びましょう。年間数万円の差が出ることもあります。また、確定申告で経費として計上できる項目を漏れなく申告することも重要です。物件視察の交通費、不動産投資の勉強のための書籍代、セミナー参加費なども経費として認められる場合があります。税理士に相談して、適切な節税対策を行うことで、実質的な手残り額を増やすことができます。
まとめ
築浅物件の実質利回りは、表面利回りより大幅に低くなることを理解しておく必要があります。管理費、固定資産税、管理委託料などの諸経費を差し引くと、表面利回りから2%から4%程度下がるのが一般的です。しかし、実質利回りが低いからといって、築浅物件が投資対象として劣っているわけではありません。
重要なのは、利回りだけでなく資産価値の維持、融資条件、入居者の質、管理の手間など、総合的な視点で判断することです。築浅物件は初期の利回りこそ低めですが、長期的に安定した収益を生み出す可能性が高く、特に不動産投資初心者にとっては管理の手間が少ないというメリットがあります。
実質利回りを正確に計算し、現実的なシミュレーションを行うことで、失敗のリスクを大きく減らすことができます。物件情報に掲載されている表面利回りに惑わされず、自分で諸経費を計算して実質利回りを算出する習慣をつけましょう。また、購入価格の交渉や管理費の見直しなど、利回りを改善する工夫も忘れずに行ってください。
不動産投資は長期的な視点が必要な投資です。目先の利回りだけでなく、10年後、20年後の資産価値や収益性も考慮して、自分に合った物件を選ぶことが成功への近道となります。この記事で学んだ知識を活かして、賢い不動産投資の第一歩を踏み出してください。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産市場動向マンスリーレポート – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
- 日本不動産研究所 不動産投資家調査 – https://www.reinet.or.jp/
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei.htm
- 総務省 固定資産税制度 – https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czais_kotei.html
- 東京都主税局 固定資産税・都市計画税 – https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/kotei_tosi.html
- 一般財団法人 日本不動産研究所 市場動向調査 – https://www.reinet.or.jp/research/
- 国土交通省 住宅市場動向調査 – https://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-jutaku-2.html