初心者の方にとって、アパート経営の初期費用がどれくらい掛かるのか、そして実際の評判はどうなのかは大きな不安材料です。自己資金をいくら用意すれば良いのか、融資は通りやすいのか、空室リスクは本当に減っているのか――疑問は尽きません。本記事では、2025年9月時点の最新データと15年以上の実務経験をもとに、初期費用の内訳から評判の実態、資金を抑えるコツ、支援制度まで順を追って解説します。読み終えるころには、必要なお金とリスクを具体的に把握し、自分に合った一歩を踏み出せるようになるはずです。
初期費用の内訳を知る

重要なのは、初期費用を「物件価格+諸費用+予備費」の三つに整理することです。多くの初心者は物件価格ばかりに目を向けますが、実際には諸費用が総額の10〜15%を占めるケースが一般的です。国土交通省の2025年版「不動産取引実態調査」によると、1億円未満のアパート取得では平均12.8%が諸費用でした。
まず物件価格に対し、仲介手数料や登記費用、ローン事務手数料が発生します。具体的には、仲介手数料が物件価格の3%+6万円、登録免許税が0.2〜0.4%、司法書士報酬が数十万円程度となります。さらに、火災保険や地震保険は10年分を一括で払うケースが多く、木造アパートなら100万円前後を見込むと安全です。
一方、予備費として最低100万〜200万円を確保しておくと、突発的な修繕にも対応しやすくなります。築年数が浅い物件でも、給湯器やエアコンは突然故障するものです。言い換えると、予備費は投資家としての余裕を作り、メンテナンスを先送りしないための安全弁になります。
評判が分かれる理由

実は、アパート経営の評判が「儲かる」という声と「失敗した」という声に二極化する背景には、情報の非対称性があります。成功者は緻密な収支計画と立地選定を徹底する一方、失敗例の多くはシミュレーションが甘く、空室期間を短く見積もっています。2025年7月の全国アパート空室率は21.2%で前年比0.3ポイント改善しましたが、エリア間の格差は依然として大きいのが現状です。
さらに、口コミサイトやSNSでは、築古物件をオーバーローンで購入し、修繕資金が不足して破綻しかけたケースが目立ちます。否定的な評判の背景には、出口戦略を持たずに高金利ローンを組むなど、計画段階のミスが潜んでいます。つまり、評判を鵜呑みにせず、どのような前提条件で語られているのかを確認することが欠かせません。
一方で、入居者ニーズに合った設備投資を行い、適正賃料を維持しているオーナーは高評価を獲得しています。例えば、Wi-Fi無料やスマートロック導入など、月々のコストが小さく空室短縮に寄与する施策が効果的です。評判を見極める際は、設備投資と家賃設定のバランスに注目すると本質が見えてきます。
必要資金を抑える工夫
まず押さえておきたいのは、融資条件を比較するだけでなく、物件選定と工事費の最適化を図ることです。日本政策金融公庫や地方銀行の2025年度アパートローンは、自己資金20%以上を条件に1.2〜2.0%の固定金利が主流です。自己資金を厚くすれば金利が下がり、総返済額を数百万円単位で抑えられる点は見逃せません。
設備面では、築10年前後の軽微リフォーム物件を選ぶと、取得直後の大規模修繕を回避できます。大手管理会社の査定では、外壁塗装や屋根補修を同時に発注すると一括割引率が10%前後になるため、将来の修繕費をまとめて交渉する方法も有効です。また、2025年度の「賃貸住宅省エネ改修補助金」は、断熱改修に最大200万円を支給し、入居促進につながる点で注目されています。
そして、手元資金を節約する最後の手段として、家具家電付きプランをリース会社と組む方法があります。初期一括購入よりキャッシュフローは軽くなりますが、リース満了後の買取価格も加味して総費用を比較することが肝心です。
成功事例と失敗事例から学ぶ
ポイントは、同じ市区町村でも立地と運営手法で収益差が生まれることです。東京都多摩地区のAさんは駅徒歩8分の築12年木造アパートを購入し、入居者ターゲットを20代単身者に絞りました。家賃設定を周辺相場より5%高くしながら、無料インターネットと宅配ボックスを導入した結果、空室期間は平均15日と短く、実質利回り7.2%を維持しています。
一方、大阪府郊外で築25年RC造を取得したBさんは、購入直後に屋上防水と給排水管更新で800万円を追加出費しました。当初の利回り計画が崩れ、キャッシュフローは赤字に転落。彼は「仲介会社のシミュレーションを信じ過ぎた」と語り、自己学習の不足を痛感しています。
つまり、成功者は立地とターゲットを明確にし、修繕計画を事前に織り込んでいます。失敗例は購入前の調査不足や甘い空室想定が原因であり、評判に左右されず自分で数字を検証する習慣が不可欠です。
2025年度の支援制度と融資動向
基本的に、国の支援策は省エネ化と防災強化を促す流れにあります。先述の賃貸住宅省エネ改修補助金は2025年3月交付開始、予算上限に達し次第終了するため早めの申請が推奨されます。また、自治体独自の耐震改修助成は東京都や名古屋市で継続されており、補助率は費用の3分の1が目安です。
融資面では、日本銀行の低金利政策が段階的な見直しに入っているものの、住宅投資向け融資は優良物件を中心に1%台前半を維持しています。地方銀行協会の2025年6月調査では、自己資金30%以上の案件に対し金利0.9%の提案例も報告されました。金利上昇リスクに備え、固定期間10年以上の商品を選ぶか、繰上返済用の資金を別途プールすることが推奨されます。
さらに、2025年度税制改正で固定資産税の新築軽減措置が2年間延長されました。木造アパートは新築後3年間、税額が通常の2分の1となり、キャッシュフロー改善に寄与します。制度は期限があるため、着工時期の調整も検討材料になります。
まとめ
今回取り上げたように、アパート経営の初期費用は物件価格の1.1倍程度を見込むと現実的です。評判が二極化する背景には、数字の読み違いと立地選定の甘さが潜んでいました。補助金や低金利を上手に活用し、修繕計画と出口戦略を同時に描くことで、長期的に安定した投資が可能になります。今後は、自分のリスク許容度を明確にし、信頼できるデータをもとにシミュレーションを重ねる――それこそが、成功への近道といえるでしょう。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産取引実態調査2025年版 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省 住宅統計調査2025年7月速報 – https://www.mlit.go.jp
- 日本政策金融公庫 中小企業事業融資ガイド2025年度 – https://www.jfc.go.jp
- 地方銀行協会 資金調達動向調査2025年6月 – https://www.chiginkyo.or.jp
- 総務省 家計調査報告 住宅関連支出編2024年 – https://www.stat.go.jp
- 日本銀行 金融経済統計月報2025年8月 – https://www.boj.or.jp