アパート経営を始めるとき、最初にどれほどのお金が必要かは誰もが気になるところです。区分マンションや賃貸併用住宅と比べ、何が違うのかまで理解できれば資金計画はぐっと立てやすくなります。本記事では「アパート経営 初期費用 違い」という切り口で、費用の内訳から節約のコツ、2025年時点の最新データまで整理します。読み終えた頃には、自分に最適な投資スタイルを見極める手がかりを得られるでしょう。
アパート経営に必要な初期費用の内訳

重要なのは、購入価格のほかに発生する諸費用を正確に把握することです。物件価格の8〜12%が目安と言われますが、項目を知っておけば予算超過を防げます。
まず仲介手数料や登記費用は避けられません。仲介手数料は上限が「物件価格の3%+6万円+消費税」と定められており、登記費用には登録免許税と司法書士報酬が含まれます。さらに印紙税、固定資産税の日割り清算、火災保険料も初年度にまとめて支払う必要があります。
金融機関から融資を受ける場合、融資手数料と抵当権設定費用が加わります。融資手数料は定額型なら11万円程度、定率型では借入額の2.2%前後が一般的です。抵当権設定には登録免許税のほか司法書士報酬も発生し、合わせて数十万円と見込んでおくと安心です。
最後に修繕積立金と運転資金を別枠で用意します。国交省「賃貸住宅管理業務の適正化に関する指針」では、築10年未満でも年間家賃収入の5%程度を修繕予備費に充てることが推奨されています。空室が続く局面に備え、家賃3〜6か月分の運転資金を併せて確保しておくと資金繰りに余裕が生まれます。
融資利用時と自己資金投資の費用差

まず押さえておきたいのは、自己資金比率が変わると初期費用だけでなく長期的なキャッシュフローも変動する点です。金融機関は物件価格の80%前後を上限に融資しますが、近年は立地や築年数によって70%以下に抑えられるケースも増えています。
自己資金を2割入れると、登記費用や仲介手数料など「物件価格に比例する費用」はそのままでも、融資手数料や抵当権設定費用が圧縮できます。たとえば1億円の物件で自己資金2000万円を投じると、融資手数料(定率型2.2%)は176万円から132万円へと減少し、利息負担も30年で数百万円単位で軽くなります。
一方で自己資金が少ないと、手元流動性を維持しながら早期に複数棟を保有できる利点があります。資産拡大を優先する投資家は、資金効率を高めるためにフルローンに近い借り入れを選びがちです。しかし返済比率が高い状態では、2025年7月の全国アパート空室率21.2%のように空室が想定以上に続くと途端に苦しくなります。目的とリスク許容度に合わせたバランスが不可欠です。
新築アパートと中古アパートの費用構造
ポイントは、土地の有無と減価償却の扱いが費用を大きく左右することです。新築は建物価格の割合が高く、減価償却期間が長い半面、取得税の軽減措置が適用されやすいという利点があります。
新築アパートでは、土地取得費と建築費が主な支出です。建築費用は木造で坪単価60万〜80万円が相場ですが、2025年度の「サステナブル建築物等先導事業(賃貸住宅部門)」を利用すると、ZEH-M(ゼッチ・マンション)仕様へのグレードアップ費用の一部が補助されます。補助率は上限で建築費の1/10、1戸当たり最大100万円、応募は2025年11月末までと定められているため、スケジュール管理が欠かせません。
中古アパートは購入直後にリフォーム費が必要になることが多いものの、取得価格を抑えられる点が魅力です。築20年超の木造なら法定耐用年数(22年)の残存期間が短く、4年で一括償却できるケースもあります。つまり減価償却費を早期に計上して課税所得を圧縮し、手残りを増やす戦略がとれます。ただし修繕履歴の有無や設備の老朽化によって追加費用が膨らむため、建物診断を怠らないことが肝心です。
初期費用を抑えるために出来ること
実は、購入交渉以外にも節約可能なポイントは意外と多いものです。たとえば仲介手数料は専属専任媒介の物件を避け、複数の仲介会社に声をかけることで割引交渉の余地が生まれます。
また、金融機関選びも大きな差になります。同じ金利でも融資手数料の定額型を採用する地方銀行なら、定率型より数十万円単位でコストを削減できるケースがあります。審査に必要な事業計画書を自ら作成し、収支シミュレーションを提示すると、手数料引き下げや金利優遇につながりやすくなります。
さらに、区分所有マンションとの比較で迷う場合は、管理組合費や修繕積立金が毎月固定で発生する点を考慮しましょう。アパート一棟所有なら修繕費を自主管理できるため、タイミングを調整してキャッシュを温存することが可能です。費用を抑える余地が大きい反面、計画的な積立を怠ると大規模修繕時に資金ショートを招くため、毎年家賃収入の10%を修繕口座に移すなどルールを決めておくと安心です。
リスクとリターンのバランスを考える
まず、家賃収入だけに目を奪われず空室リスクを数値化する姿勢が大切です。国土交通省の統計によると、2025年7月の全国アパート空室率は21.2%で前年より0.3ポイント改善しましたが、地方郊外では30%を超える地域もあります。立地調査を疎かにすると、利回りが高く見えても実収入が伸びない懸念があります。
家賃下落への備えとして、購入前に「実質利回り=年間家賃収入−運営費−空室損失÷取得総額」で試算し、空室率20%・家賃下落10%といった厳しいシナリオでも黒字になるか確認してください。また、返済比率が家賃収入の50%を超えると、金利が1%上昇しただけで手残りが消える可能性があります。
結論として、初期費用を十分に読み込み、保守的な収支計画を立てることが長期安定経営への近道です。賃貸併用住宅や区分マンションと比べて自由度の高いアパート経営ですが、その分リスク管理を自分で完結させる覚悟が求められます。
まとめ
ここまで「アパート経営 初期費用 違い」を中心に、諸費用の内訳、融資条件、新築と中古の費用構造、節約の具体策、リスク管理まで幅広く解説しました。初期費用は物件価格の8〜12%に加え、修繕積立や運転資金を忘れずに見込む必要があります。自己資金と借入のバランス、新築と中古の特性、そして空室リスクを織り込んだ収支計画を整えれば、投資判断に迷いはなくなるはずです。この記事を参考に、まずは試算表を作り、自分の資金でどこまで対応できるかを数字で確認してみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅・土地統計調査 2025年版 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/
- 国土交通省 賃貸住宅管理業務の適正化に関する指針 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/
- 国土交通省 住宅局 令和7年度サステナブル建築物等先導事業概要 – https://www.mlit.go.jp/report/
- 総務省 統計局 家計調査年報 2024年 – https://www.stat.go.jp/data/kakei/
- 日本銀行 金融システムレポート 2025年4月 – https://www.boj.or.jp/research/fsr/