マイホームを売却して投資物件に切り替えたいと考えているものの、どこから手をつければいいのか分からず悩んでいませんか。住み慣れた自宅を手放すことへの不安、税金や手続きの複雑さ、そして投資物件選びの難しさなど、考えるべきことは山ほどあります。しかし、正しい知識と手順を理解すれば、自宅という資産を効率的に活用し、安定した収益を生み出す投資物件へとスムーズに移行することができます。この記事では、自宅売却から投資物件購入までの具体的な流れ、税制優遇の活用方法、失敗しないための注意点まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
自宅売却から投資物件への乗り換えを検討する理由

多くの方が自宅を売却して投資物件に乗り換える背景には、ライフスタイルの変化や資産運用の見直しがあります。子どもの独立によって広い家が不要になった、定年退職を機に住み替えを考えている、あるいは相続した実家の活用方法を模索しているなど、状況は人それぞれです。
自宅を投資物件に切り替える最大のメリットは、住んでいるだけでは生まれない収益を得られることです。特に都心部や駅近の好立地に自宅を所有している場合、その資産価値を最大限に活かすことができます。国土交通省の調査によると、2025年の賃貸住宅市場は依然として堅調で、単身世帯の増加により1Rから1LDKの需要が高まっています。
さらに、老後の生活資金を確保したいという切実なニーズもあります。公的年金だけでは不安という声が多い中、不動産投資による安定収入は大きな魅力となっています。実際、金融庁の調査では、老後2000万円問題が話題になって以降、50代以降の不動産投資への関心が高まっているというデータもあります。
ただし、感情的な判断だけで進めるのは危険です。自宅には思い出が詰まっており、手放すことへの抵抗感は自然なことです。しかし、資産としての価値を冷静に評価し、将来の生活設計と照らし合わせて判断することが重要になります。
自宅売却前に確認すべき重要なポイント

自宅を売却する前に、まず現在の住宅ローン残債を正確に把握することが必要です。残債が売却価格を上回るオーバーローン状態では、売却時に自己資金を追加しなければなりません。金融機関に問い合わせて、現時点での残債額と繰上返済手数料の有無を確認しましょう。
次に重要なのが、自宅の適正な市場価格を知ることです。不動産ポータルサイトで近隣の類似物件の売却価格を調べるだけでなく、複数の不動産会社に査定を依頼することをお勧めします。一般的に3社以上から査定を取ることで、より正確な相場感をつかむことができます。国土交通省の不動産取引価格情報検索でも、実際の成約価格を確認できるため参考になります。
税金面での確認も欠かせません。自宅を売却する際には、居住用財産の3000万円特別控除という大きな優遇措置があります。これは、マイホームを売却した際の譲渡所得から最大3000万円を控除できる制度です。ただし、この特例を受けるには「住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期限があります。つまり、空き家にしてから時間が経ちすぎると、この優遇が受けられなくなる可能性があるのです。
売却のタイミングも慎重に検討しましょう。不動産市場には繁忙期と閑散期があり、一般的に1月から3月の転勤・進学シーズンは需要が高まります。また、築年数が浅いほど高値で売れる傾向にあるため、売却を決めたら早めに動くことが得策です。
投資物件選びで失敗しないための基準
自宅売却の目処が立ったら、次は投資物件選びです。ここで最も重要なのは、立地条件を妥協しないことです。不動産投資の成否は立地で8割決まるといっても過言ではありません。駅から徒歩10分以内、できれば5分以内の物件を選ぶことで、空室リスクを大幅に減らすことができます。
総務省の人口動態調査によると、東京23区や政令指定都市の中心部では今後も人口増加が見込まれています。一方、地方都市の郊外では人口減少が進んでおり、将来的な空室リスクが高まります。投資物件を選ぶ際は、国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計を参考に、長期的な需要が見込める地域を選びましょう。
物件タイプの選択も重要な判断ポイントです。ワンルームマンションは初期投資が抑えられ、管理も比較的容易ですが、利回りは3〜5%程度と控えめです。一方、一棟アパートや一棟マンションは高い利回りが期待できますが、初期投資が大きく、管理の手間も増えます。自己資金の額や管理に割ける時間を考慮して、自分に合ったタイプを選びましょう。
築年数と修繕計画のチェックも欠かせません。中古物件の場合、築20年を超えると大規模修繕が必要になる時期に差し掛かります。修繕積立金の残高や修繕履歴を確認し、近い将来に大きな出費が予想される物件は避けるべきです。また、新耐震基準(1981年6月以降)を満たしているかも必ず確認してください。
利回りだけに惑わされないことも大切です。表面利回りが高くても、空室率が高かったり、修繕費用が多くかかったりすれば、実質的な収益は大きく下がります。実質利回りを計算する際は、管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税、火災保険料などの経費を差し引いて考えましょう。一般的に、都心部の実質利回りは3〜4%程度が現実的な水準です。
自宅売却と投資物件購入のベストな順序
自宅売却と投資物件購入のタイミングをどう調整するかは、多くの方が悩むポイントです。理想的なのは、自宅の売却と投資物件の購入を同時期に進める「買い替え」の形ですが、実際にはいくつかのパターンがあります。
最も安全なのは、自宅を先に売却してから投資物件を探す方法です。売却代金が確定しているため、予算が明確になり、無理のない投資計画が立てられます。また、住宅ローンの残債を完済できるため、新たな投資用ローンの審査も通りやすくなります。ただし、売却後の仮住まいが必要になる場合があり、引っ越しが2回発生するというデメリットもあります。
一方、先に投資物件を購入してから自宅を売却する方法もあります。この場合、気に入った物件を逃さずに購入できるメリットがありますが、一時的に二重ローンの状態になる可能性があります。金融機関によっては、自宅の売却を条件に融資を承認する「買い替えローン」を提供しているところもあるので、相談してみる価値があります。
売却と購入を同時に進める場合、不動産会社との連携が重要になります。売却を依頼する不動産会社と、投資物件を探す不動産会社が同じであれば、スケジュール調整がスムーズに進みます。また、売却価格と購入価格のバランスを見ながら交渉できるため、総合的に有利な条件を引き出せる可能性もあります。
仮住まいを避けたい場合は、リースバックという選択肢もあります。これは自宅を売却した後も、賃貸として住み続けられる仕組みです。ただし、家賃が発生するため、投資物件からの収益とのバランスを慎重に検討する必要があります。
税制優遇を最大限に活用する方法
自宅売却から投資物件への乗り換えでは、税制面での知識が資産形成の成否を大きく左右します。まず押さえておきたいのが、先ほど触れた居住用財産の3000万円特別控除です。この制度を利用すれば、売却益が3000万円以下であれば譲渡所得税が一切かかりません。
さらに、所有期間が10年を超えるマイホームを売却する場合は、軽減税率の特例も併用できます。通常、不動産の譲渡所得税率は所有期間5年超で20.315%ですが、この特例を使えば6000万円以下の部分について14.21%に軽減されます。つまり、3000万円の特別控除を使い切った後の利益についても、税負担を抑えることができるのです。
投資物件を購入する際の税制メリットも見逃せません。不動産投資では、建物の減価償却費を経費として計上できます。これにより、実際には現金が出ていかない経費を計上でき、所得税や住民税の節税効果が期待できます。特に木造アパートの場合、法定耐用年数が22年と短いため、減価償却のスピードが速く、初期の節税効果が高くなります。
ただし、注意すべき点もあります。3000万円特別控除を受けた場合、その後3年間は住宅ローン控除を受けられなくなります。また、投資物件を購入する際の住宅ローン控除は適用されません。投資用ローンは住宅ローンよりも金利が高く、控除も受けられないため、返済計画は慎重に立てる必要があります。
確定申告も重要なポイントです。不動産所得が発生すると、毎年確定申告が必要になります。青色申告を選択すれば、最大65万円の特別控除が受けられるほか、赤字を3年間繰り越すこともできます。税理士に依頼する費用も経費として計上できるため、初年度から専門家のサポートを受けることをお勧めします。
資金計画と融資戦略の立て方
自宅売却代金をどのように投資物件の購入に充てるかは、慎重な計画が必要です。まず、売却代金から住宅ローンの残債を返済し、諸費用を差し引いた純粋な手元資金を算出しましょう。一般的に、売却時の諸費用は売却価格の5〜7%程度かかります。仲介手数料、抵当権抹消費用、印紙税などが主な内訳です。
投資物件を購入する際の自己資金比率は、物件価格の20〜30%が理想的です。自己資金が多いほど、金融機関の融資審査が通りやすくなり、借入額が減るため月々の返済負担も軽くなります。ただし、すべての資金を投資に回すのではなく、緊急時の予備資金として最低でも100万円程度は手元に残しておくべきです。
投資用ローンの選び方も重要なポイントです。住宅ローンと比べて金利が高く、2026年2月現在、変動金利で2〜4%程度が一般的です。複数の金融機関を比較し、金利だけでなく、融資期間、繰上返済手数料の有無なども確認しましょう。地方銀行や信用金庫の中には、不動産投資に積極的で条件の良いところもあります。
収支シミュレーションは楽観的な数字だけでなく、厳しい条件でも作成することが大切です。空室率を20%、金利上昇を2%と想定しても、キャッシュフローがプラスになるかを確認しましょう。日本不動産研究所の調査によると、都心部の賃貸マンションの平均空室率は約5〜10%ですが、地方では15〜20%に達する地域もあります。
また、運用開始後の資金計画も立てておく必要があります。家賃収入から返済額、管理費、修繕積立金、固定資産税などを差し引いた実質的な手取り額を計算し、それが生活費や将来の目標額に見合っているかを確認しましょう。不動産投資は長期的な視点が重要であり、最低でも10年以上の運用を前提に計画を立てることをお勧めします。
失敗しないための注意点とリスク管理
自宅売却から投資物件への乗り換えには、いくつかの落とし穴があります。最も多い失敗例は、感情的な判断で物件を選んでしまうことです。自宅を手放す寂しさから、つい似たような雰囲気の物件を選んでしまったり、思い入れのある地域にこだわったりすることがあります。しかし、投資物件選びでは、個人的な好みよりも収益性と資産価値を優先すべきです。
空室リスクへの備えも欠かせません。入居者が見つからない期間が続くと、ローン返済や管理費の支払いが自己負担となります。このリスクを軽減するには、賃貸需要の高い立地を選ぶことが基本ですが、家賃保証会社の利用や、サブリース契約の検討も選択肢となります。ただし、サブリース契約には家賃の10〜20%程度の手数料がかかるため、収支計画に織り込んでおく必要があります。
修繕リスクも見落としがちなポイントです。特に中古物件の場合、購入後すぐに給湯器やエアコンの交換が必要になることもあります。購入前のインスペクション(建物診断)を実施し、設備の状態を把握しておくことが重要です。また、修繕費用として年間家賃収入の5〜10%程度を積み立てておくと安心です。
金利上昇リスクにも注意が必要です。変動金利でローンを組んだ場合、将来的に金利が上昇すると返済額が増加します。日本銀行の金融政策の変更により、今後金利が上昇する可能性もゼロではありません。金利が1%上昇した場合の返済額をシミュレーションし、その状況でも運用を続けられるかを確認しておきましょう。
災害リスクへの備えも重要です。地震や水害などの自然災害により物件が損傷すると、修繕費用が発生するだけでなく、空室期間も長引きます。ハザードマップで物件の立地を確認し、適切な火災保険・地震保険に加入することが必要です。国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、全国の災害リスク情報を確認できます。
まとめ
自宅売却から投資物件への乗り換えは、人生の大きな転換点となる重要な決断です。成功のカギは、感情に流されず、冷静に数字と向き合うことにあります。まず自宅の適正価格を把握し、住宅ローン残債や税制優遇の条件を確認することから始めましょう。
投資物件選びでは、立地条件を最優先に考え、将来の人口動態や賃貸需要を見据えた判断が必要です。表面利回りだけでなく、実質利回りや空室リスクまで含めた総合的な収支計画を立てることが、長期的な成功につながります。
税制面では、3000万円特別控除や軽減税率の特例を最大限に活用し、投資物件購入後の減価償却による節税効果も視野に入れましょう。資金計画では、自己資金比率を高めることで融資条件を有利にし、緊急時の予備資金も確保しておくことが大切です。
リスク管理も忘れてはいけません。空室リスク、修繕リスク、金利上昇リスク、災害リスクなど、様々なリスクを想定し、それぞれに対する備えを講じておくことで、安定した不動産投資が実現できます。
自宅という大切な資産を、将来の安定収入を生み出す投資物件へと転換することは、適切な知識と準備があれば決して難しいことではありません。この記事で紹介した手順とポイントを参考に、あなたも新しい資産運用の一歩を踏み出してみてください。不安な点があれば、税理士や不動産投資の専門家に相談しながら、慎重に進めていくことをお勧めします。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産取引価格情報検索 – https://www.land.mlit.go.jp/webland/
- 国土交通省 住宅市場動向調査 – https://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-jutaku-2_tk_000002.html
- 総務省統計局 人口推計 – https://www.stat.go.jp/data/jinsui/
- 国立社会保障・人口問題研究所 日本の地域別将来推計人口 – https://www.ipss.go.jp/pp-shicyoson/j/shicyoson18/t-page.asp
- 国税庁 マイホームを売ったときの特例 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 日本不動産研究所 不動産投資家調査 – https://www.reinet.or.jp/
- 国土交通省 ハザードマップポータルサイト – https://disaportal.gsi.go.jp/
- 金融庁 NISA特設ウェブサイト – https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/