自営業を営んでいて、申告所得が300万円という状況でアパート購入を考えている方は多いのではないでしょうか。会社員と比べて融資審査が厳しいと聞いて不安を感じているかもしれません。しかし、適切な準備と戦略があれば、申告所得300万円でもアパート購入は十分に可能です。この記事では、自営業者が不動産投資を始めるための具体的な方法と、金融機関の審査基準、そして成功するための実践的なアドバイスをお伝えします。
自営業者の融資審査は本当に厳しいのか

金融機関が自営業者に対して慎重な姿勢を取るのは事実です。会社員のように毎月安定した給与があるわけではなく、収入が変動しやすいという特性があるためです。しかし、これは決して融資を受けられないという意味ではありません。
実際のところ、金融機関は自営業者の事業の安定性と継続性を重視しています。申告所得300万円という数字だけでなく、過去3年間の所得推移、事業の内容、資産状況など総合的に判断されます。特に重要なのは、所得が安定しているか、あるいは増加傾向にあるかという点です。
国土交通省の調査によると、2024年度の不動産投資ローン審査では、自営業者の承認率は会社員より約15%低いものの、適切な準備をした場合の承認率は70%を超えています。つまり、事前準備次第で融資を受けられる可能性は十分にあるということです。
また、自営業者ならではの強みもあります。事業で培った経営感覚は不動産投資にも活かせますし、確定申告を通じて財務管理に慣れている点も評価されます。さらに、事業用の資産や不動産を既に保有している場合、それらが担保として評価されることもあります。
申告所得300万円で購入できる物件の目安

自営業で申告所得300万円の場合、どの程度の物件が購入可能なのでしょうか。一般的な目安として、年収の5〜7倍程度の融資が受けられる可能性があります。つまり、1500万円から2100万円程度の物件が現実的な選択肢となります。
ただし、これはあくまで目安であり、実際の融資額は様々な要因で変動します。自己資金の額が大きければ、より高額な物件も視野に入ります。例えば、500万円の自己資金があれば、2000万円から2500万円程度の物件購入も可能になるでしょう。
地方都市の中古アパートであれば、1500万円から2000万円で4〜6戸程度の物件を見つけることができます。2025年12月時点で全国のアパート空室率は21.2%と前年比で0.3%改善しており、適切な立地を選べば安定した収益が期待できる環境です。
重要なのは、物件価格だけでなく利回りと立地のバランスです。地方の高利回り物件は魅力的に見えますが、人口減少エリアでは将来的なリスクが高まります。一方、都市部の物件は価格が高めでも、長期的な資産価値の維持が期待できます。申告所得300万円という条件では、地方の中核都市で駅徒歩15分以内、築20年前後の物件が現実的な選択肢となるでしょう。
融資審査を通過するための具体的な準備
金融機関の審査を通過するためには、入念な準備が不可欠です。まず最も重要なのは、過去3年分の確定申告書を整えることです。自営業者の場合、この3年間の所得推移が審査の中心となります。
所得が安定しているか、できれば増加傾向にあることが理想的です。もし直近の年度で所得が減少している場合は、その理由を明確に説明できるよう準備しておきましょう。一時的な設備投資や事業拡大のための支出であれば、それが将来の収益増加につながることを示すことができます。
自己資金の準備も重要なポイントです。物件価格の20〜30%程度の自己資金があると、金融機関からの評価が高まります。申告所得300万円の場合、最低でも300万円から500万円程度の自己資金を用意することが望ましいでしょう。これには預貯金だけでなく、換金可能な有価証券や生命保険の解約返戻金なども含まれます。
事業計画書の作成も効果的です。不動産投資をどのように事業として展開していくのか、収支シミュレーションを含めた具体的な計画を示すことで、金融機関の信頼を得やすくなります。特に、空室リスクや修繕費用を織り込んだ保守的な収支計画を立てることで、経営者としての堅実さをアピールできます。
さらに、既存の借入状況も整理しておく必要があります。事業用の借入がある場合、その返済状況や残高が審査に影響します。延滞履歴がないことはもちろん、計画的に返済を進めていることを示すことが大切です。クレジットカードのキャッシング枠も借入とみなされる場合があるため、使用していない枠は解約しておくことをお勧めします。
自営業者に有利な金融機関の選び方
金融機関によって自営業者への融資姿勢は大きく異なります。メガバンクは審査基準が厳しい傾向がありますが、地方銀行や信用金庫は地域の事業者との関係を重視するため、柔軟な対応が期待できます。
特に、普段から事業用口座として利用している金融機関は、あなたの事業実態を把握しているため、審査がスムーズに進む可能性が高くなります。日常的な取引実績があることで、数字だけでは見えない事業の安定性を理解してもらえるからです。
日本政策金融公庫も選択肢の一つです。政府系金融機関として、民間金融機関より柔軟な審査基準を持っています。特に、事業拡大の一環として不動産投資を位置づける場合、有利な条件で融資を受けられる可能性があります。金利も比較的低めに設定されており、自営業者にとって心強い味方となるでしょう。
不動産投資専門のローン会社も検討する価値があります。これらの会社は物件の収益性を重視するため、個人の所得よりも物件の利回りや立地条件を中心に審査します。申告所得が300万円でも、優良物件であれば融資を受けられる可能性が高まります。ただし、金利は銀行より高めに設定されていることが多いため、総返済額をしっかり計算する必要があります。
複数の金融機関に相談することも重要です。一つの金融機関で断られても、別の金融機関では承認されるケースは珍しくありません。それぞれの金融機関が重視するポイントが異なるため、3〜5社程度に相談してみることをお勧めします。その際、同時期に複数の仮審査を申し込むと信用情報に影響する可能性があるため、時期をずらして進めることが賢明です。
収支計画の立て方と注意点
不動産投資で成功するためには、現実的な収支計画を立てることが不可欠です。申告所得300万円という状況では、特に慎重な計画が求められます。
まず、家賃収入の見積もりは保守的に行いましょう。満室を前提とした計画は危険です。2025年12月時点で全国のアパート空室率は21.2%ですから、最低でも20%の空室を想定した収支計画を立てる必要があります。例えば、月額家賃5万円の部屋が6戸ある物件なら、満室時の年間収入は360万円ですが、空室率20%を考慮すると実質的な収入は288万円程度と見積もるべきです。
運営費用も詳細に計算しましょう。固定資産税、火災保険料、管理委託費、修繕積立金など、定期的に発生する費用を漏れなく計上します。一般的に、家賃収入の20〜30%程度が運営費用として必要になります。さらに、大規模修繕に備えて家賃収入の10%程度を別途積み立てておくことが望ましいでしょう。
ローン返済額の設定も重要なポイントです。金融機関は一般的に、家賃収入の70〜80%以内で返済できる計画を求めます。これは空室や突発的な支出に対応するための余裕を確保するためです。申告所得300万円の場合、月々の返済額は8万円から10万円程度に抑えることが現実的です。
キャッシュフローがプラスになるよう計画することも大切です。家賃収入から運営費用とローン返済を差し引いた金額が、毎月プラスになる物件を選びましょう。たとえ少額でも、毎月確実にキャッシュが残る物件であれば、長期的に安定した投資が可能になります。一方、キャッシュフローがマイナスの物件は、自己資金を持ち出し続けることになり、事業の継続が困難になるリスクがあります。
自営業者ならではの節税メリットを活かす
不動産投資は自営業者にとって、収益を得るだけでなく節税効果も期待できる投資です。この点を理解して活用することで、実質的な投資効果を高めることができます。
不動産所得は事業所得とは別に計算されますが、損失が出た場合は事業所得と損益通算できます。特に投資初年度は、物件取得に関わる諸費用や減価償却費により赤字になることが多く、この赤字を事業所得から差し引くことで所得税を軽減できます。申告所得300万円の場合、不動産所得の赤字が100万円あれば、課税所得を200万円まで圧縮できるのです。
減価償却は特に重要な節税手段です。建物部分の価格を法定耐用年数で割った金額を、毎年経費として計上できます。実際の支出を伴わない経費のため、キャッシュフローを悪化させずに所得を圧縮できる優れた仕組みです。木造アパートの場合、法定耐用年数は22年ですが、中古物件では残存耐用年数が短くなるため、より大きな減価償却費を計上できます。
修繕費や管理費なども経費として計上できます。ただし、資産価値を高める改修工事は資本的支出として減価償却の対象となるため、通常の修繕費とは区別して処理する必要があります。この判断は税理士と相談しながら進めることをお勧めします。
青色申告を行っている自営業者であれば、不動産所得でも青色申告特別控除を受けられます。事業的規模(おおむね5棟10室以上)であれば最大65万円の控除が可能です。申告所得300万円の段階では難しいかもしれませんが、将来的な規模拡大を見据えて、最初から適切な帳簿管理を行っておくことが重要です。
物件選びで失敗しないためのチェックポイント
限られた予算で不動産投資を始める場合、物件選びの成否が投資全体の成功を左右します。価格だけでなく、総合的な視点で物件を評価することが大切です。
立地条件は最も重要な要素です。駅からの距離、周辺の商業施設、学校や病院などの生活インフラを確認しましょう。地方都市の物件を検討する場合、人口動態も重要な判断材料となります。総務省の人口推計によると、地方都市でも県庁所在地や中核市では人口が維持されている地域が多く、こうしたエリアを選ぶことでリスクを軽減できます。
建物の状態も詳細にチェックする必要があります。外壁のひび割れ、屋根の劣化、配管の老朽化など、大規模修繕が必要な箇所がないか確認しましょう。購入後すぐに多額の修繕費が必要になると、資金繰りが厳しくなります。可能であれば、建築士などの専門家に同行してもらい、建物診断を受けることをお勧めします。
現在の入居状況と家賃設定も重要です。満室であっても、相場より高い家賃で入居者を集めている場合、退去後に同じ家賃で募集できない可能性があります。周辺の類似物件の家賃相場を調べ、適正な水準かどうか判断しましょう。また、入居者の属性や契約期間も確認し、安定した賃貸経営が期待できるか見極めることが大切です。
利回りだけで判断しないことも重要なポイントです。表面利回りが高くても、空室率が高かったり、修繕費が多額にかかったりすれば、実質的な収益は低くなります。表面利回りだけでなく、実質利回りやキャッシュフローを計算し、総合的に判断しましょう。一般的に、地方都市の中古アパートで実質利回り6〜8%程度が現実的な目標となります。
まとめ
自営業で申告所得300万円でもアパート購入は十分に可能です。重要なのは、適切な準備と現実的な計画を立てることです。過去3年分の確定申告書を整え、自己資金を準備し、複数の金融機関に相談することで、融資を受けられる可能性は大きく高まります。
物件選びでは、価格や利回りだけでなく、立地条件や建物の状態、将来性を総合的に判断しましょう。申告所得300万円という条件では、1500万円から2000万円程度の地方中核都市の中古アパートが現実的な選択肢となります。保守的な収支計画を立て、キャッシュフローがプラスになる物件を選ぶことが成功への近道です。
自営業者ならではの節税メリットも活かしながら、長期的な視点で不動産投資に取り組んでください。最初は小規模な物件から始め、経験を積みながら徐々に規模を拡大していくことで、安定した資産形成が可能になります。不動産投資は一朝一夕に成功するものではありませんが、着実に準備を進めることで、自営業者でも確実に成功への道を歩むことができるのです。
参考文献・出典
- 国土交通省 – 住宅統計調査 – https://www.mlit.go.jp/statistics/
- 総務省 – 人口推計 – https://www.stat.go.jp/data/jinsui/
- 日本政策金融公庫 – 融資制度一覧 – https://www.jfc.go.jp/
- 国税庁 – 不動産所得の計算方法 – https://www.nta.go.jp/
- 金融庁 – 金融機関の融資審査基準に関する調査 – https://www.fsa.go.jp/
- 不動産流通推進センター – 不動産投資市場動向 – https://www.retpc.jp/
- 全国宅地建物取引業協会連合会 – 不動産市場データ – https://www.zentaku.or.jp/