一棟マンション投資を検討する際、「実質利回り」という言葉を目にして、どう計算すればいいのか、何%あれば成功と言えるのか、疑問に感じていませんか。物件情報に記載されている表面利回りだけを見て判断すると、実際の収益が想定を大きく下回る可能性があります。この記事では、一棟マンション投資における実質利回りの正しい理解と計算方法、さらに収益性を最大化するための具体的な戦略をお伝えします。初心者の方でも実践できる内容ですので、ぜひ最後までお読みください。
実質利回りと表面利回りの違いを理解する

一棟マンション投資を始める前に、まず押さえておきたいのが「実質利回り」と「表面利回り」の違いです。多くの物件情報に記載されているのは表面利回りですが、これだけで投資判断をすると大きな失敗につながる可能性があります。
表面利回りは「年間家賃収入÷物件価格×100」というシンプルな計算式で求められます。例えば、1億円の一棟マンションで年間家賃収入が800万円なら、表面利回りは8%となります。しかし、この数字には大きな落とし穴があります。実際の不動産投資では、管理費や修繕費、固定資産税など様々な経費が発生するからです。
一方、実質利回りは「(年間家賃収入−年間経費)÷(物件価格+購入時諸費用)×100」で計算されます。この計算式には、実際に手元に残る利益を正確に把握するための要素がすべて含まれています。同じ1億円の物件でも、年間経費が200万円、購入時諸費用が700万円かかる場合、実質利回りは約5.6%まで下がります。
日本不動産研究所の2026年2月のデータによると、東京23区における一棟マンションの平均表面利回りはファミリータイプで3.8%、ワンルームタイプで4.2%となっています。実質利回りはこれより2〜3%程度低くなるのが一般的です。つまり、表面利回りだけを見て「高利回り」と判断するのは危険なのです。
実質利回りの正しい計算方法と必要な経費項目

実質利回りを正確に計算するには、すべての経費を漏れなく把握することが重要です。見落としがちな項目も多いため、一つずつ確認していきましょう。
まず年間経費として計上すべき主な項目は、管理委託費、修繕積立金、固定資産税・都市計画税、火災保険料、空室損失、原状回復費用です。管理委託費は家賃収入の5〜10%が相場で、一棟マンションの場合は月額10万円〜30万円程度かかることが多くなります。修繕積立金は将来の大規模修繕に備えるもので、築年数が古いほど高額になる傾向があります。
固定資産税と都市計画税は物件評価額によって変動しますが、一棟マンションの場合は年間で物件価格の1〜1.5%程度が目安です。1億円の物件なら年間100万円〜150万円の税負担を想定しておく必要があります。火災保険料は建物の構造や立地によって異なりますが、年間20万円〜50万円程度を見込んでおきましょう。
空室損失も忘れてはいけない重要な経費項目です。満室を前提に計算すると、実際には大きく収益が下回ることになります。一般的には年間家賃収入の10〜20%を空室損失として見込むのが現実的です。さらに、入居者が退去した際の原状回復費用も年間で家賃収入の5〜10%程度を確保しておくと安心です。
購入時諸費用には、仲介手数料(物件価格の3%+6万円+消費税)、登記費用、不動産取得税、融資手数料、司法書士報酬などが含まれます。これらを合計すると物件価格の7〜10%程度になることが多く、1億円の物件なら700万円〜1000万円の初期費用が必要です。
実際に計算してみましょう。物件価格1億円、年間家賃収入800万円、年間経費200万円、購入時諸費用700万円の場合、実質利回りは「(800万円−200万円)÷(1億円+700万円)×100=約5.6%」となります。表面利回り8%と比べると、2.4%も低くなることが分かります。
一棟マンションの実質利回りの目安と地域別の相場
投資判断をする際に気になるのが「実質利回りは何%あれば良いのか」という点です。地域や物件タイプによって相場は大きく異なるため、適切な目安を知っておくことが重要です。
東京23区内の一棟マンションの場合、実質利回り3〜5%程度が現実的な水準です。都心部ほど物件価格が高く利回りは低くなりますが、空室リスクが低く安定した収益が見込めるメリットがあります。港区や渋谷区などの人気エリアでは実質利回り2〜3%でも、将来的な資産価値の上昇を期待して投資する人も少なくありません。
一方、東京近郊の神奈川県や埼玉県では、実質利回り5〜7%程度が目安となります。都心へのアクセスが良い駅近物件であれば、比較的高い利回りと安定した入居率の両立が可能です。千葉県や茨城県南部では、さらに高い7〜9%の実質利回りを狙える物件もありますが、人口減少リスクや空室リスクを慎重に評価する必要があります。
地方都市の場合、実質利回り8〜12%という高利回り物件も存在します。しかし、高利回りの裏には必ずリスクが潜んでいることを理解しておきましょう。人口減少が進む地域では、将来的に入居者確保が困難になる可能性があります。また、物件の売却時に買い手が見つかりにくく、出口戦略が立てにくいというデメリットもあります。
重要なのは、単純に利回りの高さだけで判断しないことです。実質利回り5%の都心物件と実質利回り10%の地方物件を比較する場合、空室リスク、資産価値の変動、売却のしやすさなど、総合的に評価する必要があります。長期的な視点で見ると、安定した3〜5%の実質利回りを維持できる物件の方が、結果的に高いリターンを生むケースも多いのです。
実質利回りを高めるための5つの実践的戦略
一棟マンションの実質利回りは、購入後の運営方法によって大きく改善できます。ここでは、収益性を最大化するための具体的な戦略を5つご紹介します。
第一の戦略は、適切な家賃設定と定期的な見直しです。周辺相場より高すぎる家賃設定は空室期間を長引かせ、結果的に収益を下げてしまいます。逆に安すぎる設定も収益機会の損失につながります。半年に一度は周辺の類似物件の家賃相場を調査し、適正価格を維持することが重要です。また、設備のグレードアップや共用部のリノベーションを行った際は、適切に家賃に反映させることで実質利回りの向上が期待できます。
第二の戦略は、空室期間の最小化です。入居者募集の方法を工夫することで、空室損失を大幅に削減できます。複数の不動産会社に同時に募集を依頼する、インターネット広告を活用する、内見時の印象を良くするために清掃や照明を工夫するなど、細かな配慮が効果を発揮します。また、退去予告を受けた時点で速やかに次の入居者募集を開始することで、空室期間を1〜2ヶ月短縮できれば、年間の実質利回りは0.5〜1%程度改善します。
第三の戦略は、管理コストの最適化です。管理会社に全面委託している場合、定期的に契約内容を見直し、他社と比較検討することをお勧めします。管理委託費を家賃収入の10%から7%に削減できれば、年間で数十万円のコスト削減になります。ただし、安さだけで選ぶと管理品質が低下し、結果的に空室率が上がる可能性もあるため、サービス内容とのバランスを考慮することが大切です。
第四の戦略は、計画的な修繕とメンテナンスです。突発的な大規模修繕は大きな出費となり、実質利回りを一時的に大きく下げてしまいます。長期修繕計画を立て、毎年少しずつ予算を確保しながら計画的に修繕を行うことで、支出を平準化できます。また、予防的なメンテナンスを行うことで、設備の寿命を延ばし、長期的なコスト削減につながります。
第五の戦略は、税務対策の活用です。減価償却費を適切に計上することで、会計上の利益を圧縮し、所得税や住民税の負担を軽減できます。また、修繕費と資本的支出の区分を正しく理解し、可能な限り修繕費として経費計上することで、税負担を最小化できます。税理士に相談しながら、合法的な節税対策を実施することで、手取り収益を増やし、実質的な利回りを向上させることができます。
実質利回りだけでは測れない投資価値の見極め方
実質利回りは重要な指標ですが、それだけで一棟マンション投資の成否を判断することはできません。長期的な投資成功のためには、利回り以外の要素も総合的に評価する必要があります。
まず注目すべきは、物件の資産価値の変動可能性です。都心部の好立地物件は実質利回りが低くても、将来的に物件価格が上昇する可能性があります。不動産経済研究所のデータによると、2026年2月の東京23区の新築マンション平均価格は7,580万円で、前年比3.2%上昇しています。このような資産価値の上昇が見込める物件では、売却時のキャピタルゲインも含めた総合的なリターンを考慮する必要があります。
次に重要なのが、融資条件と返済計画です。同じ実質利回り5%の物件でも、金利1%で融資を受けられる場合と、金利3%の場合では、手元に残るキャッシュフローが大きく異なります。金融機関の評価が高い物件は、有利な条件で融資を受けやすく、結果的に投資効率が高まります。また、元利均等返済と元金均等返済のどちらを選ぶかによっても、長期的なキャッシュフローは変わってきます。
立地の将来性も見逃せないポイントです。再開発計画がある地域、新駅の開業が予定されている地域、大学や企業の移転が決まっている地域などは、将来的に賃貸需要が高まる可能性があります。このような情報は自治体の都市計画や開発計画を調べることで入手できます。短期的な実質利回りは平均的でも、5年後、10年後に大きく収益性が向上する可能性を秘めた物件は、長期投資として魅力的です。
建物の構造と耐用年数も重要な評価要素です。鉄筋コンクリート造の一棟マンションは、木造アパートと比べて耐用年数が長く、長期的な資産価値を維持しやすい特徴があります。また、新耐震基準を満たしているか、省エネ性能はどうかといった点も、将来的な入居者確保や資産価値に影響します。実質利回りが同じでも、築年数が浅く構造がしっかりした物件の方が、長期的には有利です。
さらに、管理状態と入居者の質も見極めるべきポイントです。現在の入居率が高く、長期入居者が多い物件は、管理が適切に行われている証拠です。また、家賃滞納率が低く、トラブルが少ない物件は、安定した収益を生み出しやすくなります。購入前に可能な限り、現在の管理状況や入居者の属性を確認することをお勧めします。
まとめ
一棟マンション投資において、実質利回りは収益性を正確に把握するための最も重要な指標です。表面利回りだけでなく、すべての経費と購入時諸費用を含めた実質利回りを計算することで、現実的な投資判断が可能になります。
東京23区では実質利回り3〜5%、近郊エリアでは5〜7%、地方都市では8〜12%が目安となりますが、単純に高利回りを追求するのではなく、空室リスクや資産価値の変動、将来の売却可能性まで含めて総合的に評価することが成功への鍵です。
実質利回りを高めるには、適切な家賃設定、空室期間の最小化、管理コストの最適化、計画的な修繕、税務対策の活用という5つの戦略を実践しましょう。また、利回りだけでなく、物件の資産価値、融資条件、立地の将来性、建物の構造、管理状態なども考慮した多角的な視点が必要です。
一棟マンション投資は長期的な視点で取り組むべき投資です。目先の高利回りに惑わされず、10年後、20年後も安定した収益を生み出せる物件を選ぶことが、真の投資成功につながります。この記事で学んだ知識を活かして、ぜひ慎重かつ戦略的な投資判断を行ってください。
参考文献・出典
- 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp/
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp/
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ – https://www.reinfolib.mlit.go.jp/
- 東京都都市整備局 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/
- 公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会 – https://www.jpm.jp/
- 一般財団法人 日本不動産研究所 不動産投資家調査 – https://www.reinet.or.jp/research/
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/