アパート経営に興味はあるものの、いくらかかるのか、そしてどの物件を選べばいいのかがわからず一歩を踏み出せない方は多いはずです。特に自己資金と融資のバランス、立地や築年数の判断軸など初期の選択は、十年以上に及ぶ収益を大きく左右します。本記事では「アパート経営 初期費用 選び方」を中心に、必要資金の内訳から2025年時点で利用できる税優遇、物件選定のチェックポイントまでを整理します。読み終える頃には、自分に合った投資プランを描く具体的なイメージがつかめるでしょう。
アパート経営の初期費用を俯瞰する

まず押さえておきたいのは、初期費用は物件価格だけでは完結しないという事実です。不動産取得税や登録免許税、仲介手数料などの諸費用が物件価格の6〜8%程度、さらにリフォーム費や入居募集広告費が数十万円から数百万円かかります。つまり三千万円の中古アパートを買う場合、合計で三千三百万円前後を見込む必要があるわけです。
一方で、2025年9月時点の住宅市場は金利が過去最低水準で推移しており、長期固定でも1%台前半の融資が珍しくありません。この環境では自己資金を厚く積むより、低金利で借りた資金を運用に回す方がキャッシュフローを高めやすい傾向にあります。国土交通省の住宅統計によれば、2025年7月の全国アパート空室率は21.2%で前年から0.3ポイント改善しました。適切な原状回復と設備投資により入居者に選ばれる物件へ仕上げられれば、初期費用の増加を長期の安定収入で回収できる可能性が高まります。
自己資金はいくら必要か

ポイントは、金融機関が求める頭金と、予備費まで含めた“持ち出し総額”を分けて考えることです。一般的に地方銀行や信用金庫は物件価格の80%前後を上限に融資します。したがって自己資金として20%程度、三千万円の物件なら六百万円が目安になります。加えて予期せぬ修繕や空室対策に備える運転資金を二百万円ほど積んでおくと安心です。
また、自己資金比率は融資条件だけでなく金利にも影響します。直近の融資事例では、自己資金10%より20%を入れた方が金利が0.2%下がるケースが見られます。0.2%の差でも、30年間で返済総額が約百二十万円減る計算になり、予備費の確保にもつながります。一方で流動性を保つために手元資金を厚く残す戦略も有効です。要は、金利差とリスク許容度のバランスを見極めることが、自己資金額を決める最大の鍵になります。
融資条件と金融機関の選び方
実は、同じ自己資金比率でも金融機関によって審査基準や担保評価が大きく異なります。都市銀行は借入額が一億円以上の大型案件を好む傾向があり、個人向けの小規模アパートには積極的でない場合があります。対照的に信用金庫や地域密着型のノンバンクは、築古や地方物件にも柔軟に対応する代わりに金利が0.3〜0.5%高めです。
さらに、2025年度から始まった「賃貸住宅向け省エネ改修融資制度」は一定の断熱性能を満たすリフォームを行う場合、金利が通常より0.2%優遇されます(2027年3月申込分まで)。ただし申し込みには省エネ性能証明書が必要で、審査期間も長めなのでスケジュール管理が欠かせません。金融機関の比較では、金利・融資期間・担保評価に加え、こうした制度の取り扱い有無も確認することで総返済額を抑えられます。
物件選定で押さえるべき指標
重要なのは、数字と現地調査の両輪でリスクを見極めることです。まず利回りだけで判断せず、将来の空室率と家賃下落を反映した実質利回りを計算します。例えば国交省のデータでは郊外駅徒歩15分圏の家賃は年平均1.2%下落しています。この数字を織り込んでもなお黒字が確保できるかをシミュレーションしましょう。
現地調査では、昼夜・平日休日の両方で周辺を歩き、入居者ターゲットの生活動線を確認します。最寄り駅から物件までの街灯の数、コンビニやスーパーの位置、騒音源の有無などはネット情報だけでは把握できません。また、築古物件の場合は給排水管や屋根防水の更新履歴を必ず確認します。修繕履歴が不透明な物件は、購入後に高額な改修費が発生するリスクを抱えるからです。
2025年度まで使える税優遇と維持費の見積もり
まず押さえておきたいのは、税金は「取得時」「保有時」「売却時」の三段階で発生し、それぞれに軽減措置が設けられている点です。取得時には不動産取得税の特例措置が2025年度まで延長されており、課税標準額から1,200万円が控除されます。これにより税額が数十万円単位で下がる例も珍しくありません。
保有時には固定資産税が家屋評価額の1.4%課税されますが、新築アパートなら3年間は税額が半減される特例が継続中です。さらに小規模住宅用地に該当する200㎡以下の敷地は課税標準が6分の1に軽減されるため、土地持ちによる新築投資はメリットが大きくなります。一方、築古物件は減価償却費を多く計上できるため所得税の圧縮に寄与しますが、修繕費用が膨らみやすい点に注意が必要です。
維持費については、共用部清掃と消防設備点検で年間1戸あたり約1万5千円が相場です。加えて2025年以降はインターネット無料設備の有無が入居率に直結しており、月額数千円でも導入した方が長期的には得策といえます。こうしたランニングコストを実質利回りに織り込むことで、購入後のキャッシュフローのブレを最小化できます。
まとめ
ここまで、アパート経営の初期費用と選び方を自己資金、融資、物件調査、税優遇の四つの角度から整理しました。特に重要なのは、諸費用と予備費を含めた総額を把握し、金利と税制の優遇を最大限に活用してキャッシュフローを安定させることです。記事を参考に、自分のリスク許容度とエリア特性を照らし合わせながら候補物件を絞り込み、金融機関へ早めに相談してみてください。行動を先延ばしにしない姿勢が、長期的な資産形成への第一歩となります。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 2025年7月速報 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 固定資産税特例措置解説 2025年度版 – https://www.soumu.go.jp
- 東京都住宅政策本部 賃貸住宅向け省エネ改修融資概要 2025 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp
- 日本政策金融公庫 不動産投資融資ガイド 2025年改訂 – https://www.jfc.go.jp
- 全国賃貸住宅新聞 2025年市場動向レポート – https://www.zenchin.com