オフィスREITへの投資を検討している方にとって、空室率は最も気になる指標の一つではないでしょうか。2026年3月現在、コロナ禍を経て働き方が大きく変化した今、オフィス市場は転換期を迎えています。この記事では、2026年のオフィスREIT空室率の最新動向を詳しく解説し、投資判断に必要な情報をお伝えします。空室率の推移から見える市場の変化、エリア別の特徴、そして今後の投資戦略まで、初心者の方にも分かりやすく説明していきます。
2026年のオフィスREIT空室率の現状

2026年3月時点のオフィスREIT空室率は、地域や物件グレードによって大きな差が見られます。東京都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)の平均空室率は約4.5%前後で推移しており、コロナ禍のピーク時と比較すると改善傾向にあります。
実は、この数値は2020年から2022年にかけての高水準期と比べると大幅に低下しています。当時は在宅勤務の急速な普及により、一時的に6%を超える水準まで上昇していました。しかし、ハイブリッドワークが定着し、企業がオフィス戦略を見直した結果、質の高いオフィスへの需要が回復してきたのです。
一方で、地方都市や築年数の古いビルでは依然として空室率が高い傾向が続いています。大阪や名古屋などの主要都市でも5%から6%台で推移しており、都心部との格差が明確になっています。さらに、築30年以上の古いオフィスビルでは、設備の老朽化やテレワーク対応の遅れから、空室率が10%を超えるケースも珍しくありません。
重要なのは、単純な空室率の数値だけでなく、その背景にある市場構造の変化を理解することです。企業は単にオフィス面積を削減するのではなく、従業員の働きやすさや生産性向上を重視した「質」の高いオフィスを求めるようになっています。このトレンドが、物件による空室率の二極化を生み出している主な要因となっています。
オフィス市場を取り巻く構造変化

働き方改革とテレワークの定着により、オフィス需要の質が根本的に変化しました。多くの企業が「オフィスは単なる作業場所ではなく、コミュニケーションとイノベーションの場」と位置づけるようになっています。
この変化を象徴するのが、フリーアドレス制やコワーキングスペースの導入です。固定席を廃止し、用途に応じて働く場所を選べるオフィス設計が主流になりつつあります。その結果、従来よりも広めの共用スペースや会議室を備えた物件への需要が高まっています。実際、国土交通省の調査によると、2025年度にオフィス移転を行った企業の約60%が、面積は縮小しながらも賃料単価の高い物件へ移転しています。
また、環境性能への関心も急速に高まっています。ESG投資の観点から、省エネ性能の高いビルや再生可能エネルギーを活用した物件が評価されるようになりました。グリーンビルディング認証を取得した物件は、そうでない物件と比較して空室率が平均2%程度低いというデータもあります。
さらに、立地に対する考え方も変化しています。従来は駅からの距離が最重要視されていましたが、現在は周辺環境の充実度も重視されます。カフェやレストラン、公園などが近くにあり、従業員がリフレッシュできる環境が整っているエリアの人気が高まっているのです。
エリア別の空室率動向と特徴
東京都心5区の中でも、エリアによって空室率には明確な違いが見られます。港区や千代田区の大手町・丸の内エリアでは、大規模な再開発により新築の高品質オフィスビルが増加しています。これらのエリアの空室率は3%から4%程度と比較的低く、安定した需要が続いています。
渋谷区や新宿区では、IT企業やスタートアップ企業の集積が進んでいます。特に渋谷駅周辺の再開発により、クリエイティブな働き方を支援する最新設備を備えたオフィスが人気を集めています。このエリアの空室率は4%から5%程度で推移していますが、新築物件への需要が高く、築古物件との格差が顕著です。
一方、中央区の日本橋エリアでは、伝統的な金融・商社系企業と新興IT企業が混在する独特の市場を形成しています。大規模な再開発プロジェクトが進行中で、今後数年間で市場環境が大きく変化する可能性があります。現在の空室率は4.5%程度ですが、新規供給の増加により一時的な上昇も予想されています。
地方主要都市では、札幌や福岡といった成長都市と、人口減少が進む地方都市で明暗が分かれています。福岡市は九州の拠点都市として企業誘致に成功しており、空室率は5%前後と比較的健全な水準を保っています。しかし、人口減少が著しい地方都市では、空室率が10%を超えるケースも増えており、投資には慎重な判断が必要です。
REITが保有するオフィス物件の特性
オフィスREITが保有する物件は、一般的な賃貸オフィスビルとは異なる特徴を持っています。まず、立地の優位性が挙げられます。多くのREITは都心部の主要駅から徒歩5分以内という好立地の物件を中心に保有しています。このような物件は景気変動の影響を受けにくく、長期的に安定した稼働率を維持しやすい傾向があります。
物件規模も重要な要素です。REITが保有するオフィスビルは、延床面積が5,000平方メートル以上の中大規模物件が中心となっています。大規模物件は複数のテナントを確保しやすく、一社の退去による影響を分散できるメリットがあります。実際、主要なオフィスREITのポートフォリオを見ると、平均的な物件規模は10,000平方メートル前後となっています。
築年数の管理も特徴的です。多くのREITは定期的な大規模修繕や設備更新を計画的に実施しており、築年数が経過しても競争力を維持できるよう努めています。例えば、築20年を超える物件でも、空調設備の更新やセキュリティシステムの導入により、新築物件に近い機能性を実現しているケースが増えています。
さらに、テナント構成の分散も重視されています。特定の業種や企業に依存しないよう、様々な業種のテナントを誘致することで、経済環境の変化によるリスクを軽減しています。優良なREITでは、上位10社のテナントで全体の賃料収入の50%を超えないよう管理しているところが多く見られます。
空室率から見る投資判断のポイント
空室率を投資判断に活用する際は、単純な数値だけでなく、その推移と背景を総合的に分析することが重要です。まず注目すべきは、空室率のトレンドです。過去3年間の推移を確認し、改善傾向にあるのか悪化傾向にあるのかを見極めましょう。
例えば、現在の空室率が5%でも、2年前は3%だった場合は悪化傾向と判断できます。逆に、現在5%でも1年前は7%だった場合は改善傾向にあると言えます。このトレンド分析により、そのREITの運営能力や市場での競争力を推測することができます。
次に重要なのが、同業他社との比較です。同じエリアで同規模の物件を保有するREIT同士を比較することで、そのREITの相対的な強みや弱みが見えてきます。業界平均よりも空室率が低い場合は、優れた物件管理能力やテナントリレーションを持っている可能性が高いと判断できます。
また、空室率と賃料水準の関係も確認しましょう。空室率が低くても賃料を大幅に下げて達成している場合は、実質的な収益性は低下している可能性があります。逆に、適正な賃料水準を維持しながら低い空室率を実現しているREITは、真の競争力を持っていると評価できます。
さらに、将来の新規供給予定も考慮に入れる必要があります。投資を検討しているREITの主要エリアで大規模な新築オフィスビルの供給が予定されている場合、一時的に空室率が上昇するリスクがあります。国土交通省や不動産調査会社が公表する供給予測データを確認し、中長期的な市場環境を見通すことが大切です。
2026年以降のオフィスREIT市場展望
2026年以降のオフィスREIT市場は、構造的な変化の中で新たな成長機会を見出す時期に入っています。最も注目すべきトレンドは、オフィスの多機能化です。従来の執務スペースだけでなく、カフェスペース、フィットネス施設、イベントスペースなどを併設した複合型オフィスへの需要が高まっています。
このような付加価値の高いオフィスを提供できるREITは、競争優位性を確立しやすくなります。実際、主要なオフィスREITの中には、既存物件のリノベーションにより共用部を充実させ、テナント満足度を向上させる取り組みを進めているところが増えています。
テクノロジーの活用も重要なテーマです。スマートビルディング技術の導入により、エネルギー効率の向上や快適性の向上が実現されています。顔認証システムによる入退館管理、AIを活用した空調制御、スマートフォンアプリによる会議室予約など、最新技術を取り入れた物件の競争力が高まっています。
地方都市への投資機会も注目されています。東京一極集中の是正や地方創生の流れの中で、札幌、仙台、福岡などの地方中核都市のオフィス需要が堅調に推移しています。これらの都市は東京と比較して利回りが高く、人口増加も続いているため、分散投資先として魅力的です。
一方で、リスク要因も存在します。金利上昇局面では、REITの資金調達コストが増加し、分配金への影響が懸念されます。また、経済環境の悪化により企業のオフィス需要が減退するリスクも常に考慮する必要があります。これらのリスクを理解した上で、長期的な視点で投資判断を行うことが重要です。
まとめ
2026年のオフィスREIT市場は、コロナ禍を経た働き方の変化を反映し、質の高いオフィスへの需要が回復傾向にあります。空室率は都心部で4%から5%程度と改善していますが、物件の立地や設備、築年数によって大きな差が生じています。
投資判断においては、単純な空室率の数値だけでなく、そのトレンドや同業他社との比較、賃料水準との関係を総合的に分析することが重要です。また、エリアごとの特性や将来の供給予定も考慮に入れ、中長期的な視点で市場を見通す必要があります。
オフィスREITへの投資は、市場環境の変化を理解し、優良な物件を保有するREITを選択することで、安定した収益を期待できる投資先となります。この記事で紹介した分析のポイントを参考に、ご自身の投資目標に合ったREITを見つけてください。不動産投資の第一歩として、まずは少額から始めて、市場の動きを学びながら徐々に投資額を増やしていくことをお勧めします。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産市場動向マンスリーレポート – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
- 一般社団法人不動産証券化協会 J-REIT市場データ – https://j-reit.jp/
- 三鬼商事株式会社 オフィスビル市場動向 – https://www.miki-shoji.co.jp/
- 日本銀行 金融市場局 不動産投資市場に関する調査 – https://www.boj.or.jp/
- 一般財団法人日本不動産研究所 不動産投資家調査 – https://www.reinet.or.jp/
- 国土交通省 オフィスビル等の環境性能評価 – https://www.mlit.go.jp/
- 総務省統計局 労働力調査(テレワークの実施状況) – https://www.stat.go.jp/