不動産投資を夫婦で行っている方、あるいはこれから始めようと考えている方にとって、配偶者控除は見逃せない制度です。2026年度の税制改正により、配偶者控除の適用ルールが変更される可能性が議論されており、不動産収入がある世帯では家計への影響が大きくなることが予想されます。この記事では、配偶者控除の基本から2026年改正の動向、不動産収入がある場合の注意点まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。正しい知識を身につけることで、税制改正後も賢く節税対策を行い、安定した不動産投資を続けることができるでしょう。
配偶者控除の基本を理解しよう

配偶者控除とは、配偶者の所得が一定額以下の場合に、納税者本人の所得から一定額を控除できる制度です。この制度を利用することで、世帯全体の税負担を軽減できるため、多くの家庭で活用されています。
2026年4月現在、配偶者控除を受けるための基本的な条件は、配偶者の年間合計所得金額が48万円以下であることです。給与収入のみの場合は103万円以下となり、いわゆる「103万円の壁」として広く知られています。控除額は納税者本人の所得によって異なり、合計所得金額が900万円以下の場合は最大38万円、900万円超950万円以下では26万円、950万円超1,000万円以下では13万円となります。
重要なのは、この「所得」には給与だけでなく、不動産所得や事業所得なども含まれるという点です。つまり、配偶者がアパート経営や駐車場経営などで収入を得ている場合、その不動産所得も合計所得金額に加算されます。不動産所得は「収入−必要経費」で計算されるため、収入が多くても経費が大きければ所得は抑えられますが、この計算方法を正しく理解していないと、知らないうちに配偶者控除の対象外になってしまう可能性があります。
また、配偶者控除の対象外となっても、配偶者の合計所得金額が133万円以下であれば「配偶者特別控除」を受けられます。この制度は段階的に控除額が減少する仕組みで、所得が増えるほど控除額は少なくなりますが、急激な税負担増を避けるクッションの役割を果たしています。
2026年度の税制改正で何が変わるのか

2026年度の税制改正では、配偶者控除の見直しが議論の中心となっています。政府は働き方の多様化や女性の社会進出を促進する観点から、現行の配偶者控除制度の抜本的な見直しを検討しており、不動産収入がある世帯にも大きな影響が及ぶ可能性があります。
まず注目されているのが、所得制限の見直しです。現在の48万円という基準額が引き上げられる可能性が議論されており、一部では60万円程度への引き上げ案も浮上しています。この変更が実現すれば、配偶者が不動産収入を得ている場合でも、より柔軟に配偶者控除を活用できるようになるでしょう。ただし、この引き上げと引き換えに、控除額自体が縮小される可能性もあり、世帯によっては実質的な増税となるケースも考えられます。
さらに、不動産所得の計算方法についても見直しが検討されています。現行制度では、不動産収入から必要経費を差し引いた金額が所得となりますが、この必要経費の範囲や計算方法について、より厳格な基準が設けられる可能性があります。特に減価償却費の計上方法や、修繕費と資本的支出の区分について、明確化が図られる見込みです。
一方で、デジタル化の推進に伴い、所得の把握方法も変わりつつあります。マイナンバー制度の活用により、不動産収入を含むすべての所得情報が税務署で一元管理されるようになり、申告漏れや計算ミスが発見されやすくなっています。このため、2026年度以降は、より正確な所得計算と適切な申告が求められることになるでしょう。
不動産収入がある場合の配偶者控除への影響
不動産収入がある配偶者の場合、配偶者控除の適用判定は給与所得者よりも複雑になります。ここでは、実際にどのような影響があるのか、具体的なケースを交えて解説していきます。
不動産所得の計算では、家賃収入などの総収入金額から必要経費を差し引きます。必要経費には、固定資産税、都市計画税、損害保険料、修繕費、減価償却費、管理費、借入金の利子などが含まれます。例えば、年間の家賃収入が150万円あっても、必要経費が110万円かかっていれば、不動産所得は40万円となり、配偶者控除の対象となる48万円以下に収まります。
しかし、注意が必要なのは、減価償却費の扱いです。建物の減価償却費は実際の支出を伴わない経費ですが、所得計算上は必要経費として認められます。つまり、購入当初は減価償却費が大きく、所得を抑えられますが、年数が経過すると減価償却費が減少し、同じ収入でも所得が増加する傾向があります。このため、長期的な視点で所得の推移を予測し、配偶者控除への影響を考慮する必要があります。
また、複数の不動産を所有している場合は、すべての不動産所得を合算して判定します。例えば、アパート経営で30万円の所得、駐車場経営で25万円の所得がある場合、合計55万円となり、配偶者控除の対象外となってしまいます。一方で、一つの物件が赤字であれば、他の物件の黒字と相殺できるため、全体として所得を抑えることも可能です。
さらに、不動産収入以外の所得がある場合も注意が必要です。パートやアルバイトの給与所得がある場合、給与所得控除後の金額と不動産所得を合算した金額が48万円以下でなければ、配偶者控除は受けられません。例えば、給与収入が80万円(給与所得25万円)、不動産所得が30万円の場合、合計所得は55万円となり、配偶者控除の対象外となります。
2026年改正に向けた準備と対策
2026年度の税制改正に備えて、不動産収入がある世帯では今から準備を始めることが重要です。まず取り組むべきは、現在の所得状況の正確な把握です。過去3年分の確定申告書を見直し、不動産所得の推移を確認しましょう。収入と経費のバランス、減価償却費の残存期間、将来的な修繕計画などを整理することで、今後の所得予測が立てやすくなります。
次に、必要経費の見直しと適正化を行いましょう。修繕費として計上できるものと、資本的支出として減価償却すべきものの区分を正しく理解することが大切です。例えば、壁紙の張り替えや設備の修理は修繕費として一括計上できますが、エアコンの新規設置や間取り変更などは資本的支出として減価償却する必要があります。この区分を適切に行うことで、年度ごとの所得を調整しやすくなります。
また、不動産の名義についても検討が必要です。現在、配偶者名義で不動産を所有している場合、所得が48万円を超えそうであれば、共有名義への変更を検討する価値があります。共有名義にすることで、所得を分散でき、配偶者控除を維持できる可能性が高まります。ただし、名義変更には贈与税の問題が生じる可能性があるため、税理士に相談することをお勧めします。
さらに、青色申告の活用も効果的な対策です。不動産所得が事業的規模(おおむね5棟10室以上)と認められる場合、青色申告特別控除として最大65万円を所得から控除できます。これにより、不動産収入が多くても所得を大幅に抑えることが可能になります。青色申告を行うには、事前に税務署への届出が必要ですので、早めに手続きを進めましょう。
税理士に相談すべきタイミングとポイント
不動産収入と配偶者控除の関係は複雑で、個々の状況によって最適な対策が異なります。そのため、専門家である税理士に相談することが、確実で効果的な方法といえるでしょう。
税理士に相談すべきタイミングとしては、まず不動産投資を始める前の段階が挙げられます。物件の購入前に、将来的な所得予測や配偶者控除への影響をシミュレーションしてもらうことで、購入判断の材料になります。また、夫婦どちらの名義で購入するか、共有名義にするかといった判断も、税理士のアドバイスを受けることで最適な選択ができます。
次に、確定申告の時期も重要な相談タイミングです。特に初めて不動産所得の申告を行う場合は、必要経費の範囲や計算方法について専門家の確認を受けることで、申告ミスを防げます。また、配偶者控除の適用可否についても、正確な判定をしてもらえます。
さらに、税制改正が発表された直後も相談の好機です。2026年度の改正内容が明らかになった時点で、自分の世帯にどのような影響があるか、どのような対策が有効かを相談しましょう。改正内容によっては、年内に対策を講じる必要がある場合もあるため、早めの相談が重要です。
税理士を選ぶ際のポイントとしては、不動産税務に詳しい専門家を選ぶことが大切です。不動産所得の計算は複雑で、一般的な所得税の知識だけでは対応しきれない部分もあります。また、相談しやすい雰囲気や、分かりやすい説明をしてくれるかどうかも重要な選択基準です。初回相談は無料で行っている税理士事務所も多いので、複数の事務所を比較検討することをお勧めします。
まとめ
配偶者控除と不動産収入の関係は、2026年度の税制改正により大きく変わる可能性があります。現行制度では配偶者の合計所得金額が48万円以下であることが条件ですが、不動産所得は収入から必要経費を差し引いて計算されるため、適切な経費管理により所得を調整することが可能です。
2026年度の改正では、所得制限の見直しや不動産所得の計算方法の明確化が検討されており、不動産収入がある世帯では早めの準備と対策が必要です。現在の所得状況を正確に把握し、必要経費の適正化、名義の見直し、青色申告の活用などを検討しましょう。
税制改正の内容は複雑で、個々の状況によって最適な対策が異なります。不安な点や疑問がある場合は、不動産税務に詳しい税理士に相談することをお勧めします。正しい知識と適切な対策により、税制改正後も安定した不動産投資を続け、家計全体の税負担を最適化することができるでしょう。
今から準備を始めることで、2026年度の改正にも余裕を持って対応できます。この記事を参考に、ぜひ自分の世帯に合った対策を検討してみてください。
参考文献・出典
- 国税庁「配偶者控除」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
- 国税庁「配偶者特別控除」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
- 国税庁「不動産所得」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
- 財務省「税制改正の大綱」 – https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/index.html
- 総務省「個人住民税」 – https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/ichiran09.html
- 国税庁「青色申告制度」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
- 国税庁「減価償却のあらまし」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm