相続した実家や祖父母のマンションをどう扱うか悩んでいませんか。空き家の固定資産税だけ払い続けるより、上手に運用して家計の新しい柱に変える方法があります。本記事では「相続物件 不動産投資 始め方」をキーワードに、法的手続きから収益化のコツ、2025年度に使える支援制度までを網羅的に解説します。読み終えたときには、相続物件を活かす第一歩が明確になるでしょう。
相続物件を投資視点で見るメリットと注意点

重要なのは、相続物件が「取得費ゼロに近い資産」である点です。購入資金を抑えられるため、投下資金に対する利回りは高くなりやすく、銀行の融資審査でも自己資本比率が高く映ります。また、築年数が経っていても土地の含み価値があれば売却出口を複数描ける点も魅力です。一方で、相続直後は感情が介在しやすく、必要以上のリフォーム費をかけて収支が悪化するケースが少なくありません。まずは家族会議で運用方針を確認し、感情と数字を分けて考える姿勢が大切です。
次に気を付けたいのが物件の法的瑕疵です。古い家屋は耐震基準を満たさず、賃貸募集で不利になる場合があります。国土交通省の住宅着工統計によると、1981年以前の旧耐震物件は賃料が同規模の新耐震物件より平均9%低いという結果が出ています。利回り計算では予定賃料を控えめに見積もり、必要な補強費を想定しておきましょう。
まず押さえておきたい法的手続き

まず押さえておきたいのは、2024年4月から義務化された相続土地国庫帰属制度との関係です。不要な土地を国へ引き渡す選択肢がある一方、審査に落ちると放棄できず維持費だけが残ります。投資活用を検討するなら、相続登記を速やかに終えて権利関係を明確にし、融資や賃貸契約に支障が出ない状態に整えましょう。
法務局での相続登記は2025年も登録免許税が0.4%ですが、2025年度の特例措置として、登記申請期限を過ぎても罰則が猶予される期間が続いています。ただし申請遅延には過料リスクがあるため、3か月以内に申請書を提出するのが安全です。司法書士に依頼すると10万円前後かかりますが、書類不備で差し戻される時間的損失を防げます。
さらに、区分所有マンションの場合は管理規約の確認が欠かせません。賃貸を禁止している物件では投資活用ができず、売却一択になる可能性があります。管理組合への届出義務、ペット可否、共用部修繕積立金の残高を調べ、意図しない追加負担を避けましょう。
収益シミュレーションと融資戦略
ポイントは、相続物件でも「購入費ゼロ=利益が出る」とは限らないことです。固定資産税、都市計画税、火災保険、管理委託料、将来修繕費を毎年かかる費用として計上し、想定家賃から差し引きます。総務省の住宅・土地統計調査では全国平均空室率は13.6%ですが、地方圏では20%を超える地域もあるため、最低でも15%の空室率で試算すると安全です。
融資を活用する場合、日本政策金融公庫の不動産担保融資は2025年度も金利1.3%台から利用できます。相続物件を追加担保に入れることで、リフォーム資金500万円程度を低金利で調達できる可能性があります。民間銀行では自己資金1割以上、返済比率35%以下が目安です。返済期間は耐用年数に縛られますが、鉄筋コンクリート造なら残存年数+15年が交渉余地といわれています。
シミュレーションでは、金利上昇2%、賃料下落10%のストレスシナリオを作り、それでもキャッシュフローが黒字になるか確認しましょう。つまり、最悪ケースでも破綻しない設計こそが長期投資を成功させる鍵です。
運用スタイルの選択と管理方法
実は、相続物件の立地や規模によって最適な運用スタイルは大きく変わります。駅近の区分マンションなら、長期入居を目的としたファミリー向け賃貸にすることで、回転率を下げ安定収入を得やすくなります。一方で、郊外の戸建てはDIY可能物件として貸し出すと、家賃を抑えつつ長期入居者を確保できる事例が増えています。国土交通省の「貸戸建住宅の市場動向調査」でも、築30年以上の戸建てを借りる層は増加傾向にあり、家賃下落が小さいのが特徴です。
管理方法は自主管理と管理委託の二択ですが、相続物件が遠方にある場合は委託が現実的です。管理会社への手数料は家賃の5%が相場で、入居者募集、家賃回収、クレーム対応を代行してくれます。最近はIoTを活用した見守りサービスをセットにする会社もあり、高齢入居者の事故対応リスクを減らせるメリットがあります。また、管理契約を更新する際は、預かり敷金の保管方法や修繕の決裁フローを明文化しておくとトラブルを防げます。
2025年度に活用できる支援制度と税制
まず押さえておきたいのは、2025年度も継続する「住宅省エネリフォーム補助金」です。一定の省エネ基準を満たす改修を行うと、戸建てで最大120万円、集合住宅で最大15万円/戸を受け取れます。賃貸物件でも対象になるため、サッシ交換や高効率給湯器の導入前に交付申請を行いましょう。ただし予算枠が埋まり次第終了となるため、計画段階で施工業者に相談しておくことが必須です。
税制面では、固定資産税の住宅用地特例が2025年度も適用され、200㎡以下の部分については課税標準が6分の1となります。賃貸に出した場合でも、居住用であれば特例を受け続けられるため、空家のまま放置するより税負担が軽くなります。また、相続発生から3年以内に売却すると譲渡所得の特別控除3,000万円が使えますが、運用益が見込めるなら賃貸しつつ将来の値上がりを待つ戦略も有効です。投資判断はキャッシュフローと税メリットの両面から検討しましょう。
さらに、自治体独自の空き家活用補助も見逃せません。例えば、東京都世田谷区では2025年度も賃貸改修費の3分の1、上限100万円を助成しています。自治体ホームページで最新情報を確認し、国の補助金と併用できるかチェックすることで、自己資金を抑えながら物件価値を高められます。
まとめ
相続物件は購入費が不要な分、利回りを高めやすい資産ですが、法的手続きや管理体制を疎かにすると収支が簡単に崩れます。相続登記で権利を固め、保守的な収益シミュレーションを行い、2025年度の補助金と税制を活用することで、初年度から黒字化を目指す道筋が見えてきます。まずは現状の家賃相場と修繕費見積もりを取るところから始め、数字に基づく判断を下しましょう。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅着工統計 – https://www.mlit.go.jp/toukeijouhou/chojou/stat-index.html
- 総務省 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/
- 法務省 相続登記に関するお知らせ – https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00459.html
- 日本政策金融公庫 融資制度案内 – https://www.jfc.go.jp/
- 国税庁 タックスアンサー 相続税・譲渡税 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/