マンション投資に興味はあるものの、「表面利回りの数字をどう読めばいいのか」「アフターコロナで需要は本当に戻ったのか」と不安を抱えていませんか。実際、コロナ禍で住宅ニーズは大きく揺れ動き、現在も賃料相場や金利は変化を続けています。しかし基本を押さえれば、初心者でも堅実にチャンスを見極められます。本記事では、最新データを踏まえながら表面利回りの正しい使い方、市場環境の読み解き方、資金計画のポイントを順に解説します。最後まで読むことで、アフターコロナ時代に合った投資判断の軸が手に入るでしょう。
アフターコロナで変わった市場環境

まず押さえておきたいのは、2023年以降の経済再開で都心部の賃貸需要が回復し、投資マネーが再び集中していることです。訪日客の急増やオフィス回帰の動きが重なり、一部エリアでは賃料がコロナ前を上回る水準に達しました。
日本不動産研究所によると、2025年9月時点の東京23区平均表面利回りはワンルームマンションで4.2%、ファミリータイプで3.8%、一棟アパートで5.1%となっています。アフターコロナの資金流入で価格は上昇したものの、賃料伸びが追いつきつつあるため、利回りは大きく落ち込まずに推移しています。つまり、過度な高値掴みさえ避ければ、依然としてキャッシュフローは組み立てやすい状況です。
一方で金利環境は慎重に見ておく必要があります。日銀は緩やかな正常化へ舵を切り、都市銀行の投資用ローン金利は2021年比でおよそ0.3ポイント上昇しました。小幅とはいえ返済総額には直結するため、物件価格が高止まりしている今こそ融資条件の交渉力が問われます。また、地銀や信用金庫は地域活性化の観点から投資家に前向きで、都心物件でも相談の余地があります。
表面利回りとは何かを再確認

ポイントは、表面利回りが「物件価格に対する年間家賃収入の割合」を示す指標にすぎないと理解することです。購入判断の第一歩として便利ですが、経費や空室を考慮しないため、数字だけを信じると誤った期待収益を抱きやすくなります。
例えば、3,000万円の区分マンションで年間家賃が150万円なら表面利回りは5%です。しかし管理費や修繕積立金が年24万円、固定資産税が7万円、平均空室率10%を見込むと、手取りは約104万円に下がります。実質利回り(ネット利回り)は3.4%となり、返済負担が月8万円を超える場合は赤字リスクが高まります。言い換えると、表面利回りは「ふるい」に使い、購入前には必ず実質利回りでシュミレーションする習慣が欠かせません。
また、同じ利回りでも物件規模で意味合いは変わります。ワンルームで5%は平均以上でも、一棟アパートで5%なら低めの水準です。数字を市場ベンチマークと照らし合わせて判断することで、過度に高利回りを追うリスクを避けられます。
物件選びで失敗しないポイント
まず押さえておきたいのは、立地の将来性を数字で測る姿勢です。総務省の住民基本台帳によれば、東京23区の人口は2025年も微増を続けていますが、増加率は区によって大きく異なります。単に「駅近」という理由だけでなく、再開発計画、大学キャンパス移転、企業拠点の集積といった需給の裏付けを確認しましょう。
次に、賃貸ターゲットを具体的にイメージすることが重要です。20代単身者向けなら駅徒歩5分以内のワンルーム、共働きファミリーなら保育施設とスーパーが近い2LDKなど、想定入居者の生活動線から逆算すると、内見時のチェックポイントが明確になります。
価格交渉では「表面利回り×融資条件×空室リスク」の総合判断がカギです。実は、売主との調整で物件価格を2%下げられれば、表面利回りは同率上がります。融資金利を0.2ポイント下げる交渉と合わせれば、手取りキャッシュフローは年間10万円以上改善するケースも珍しくありません。つまり、数字の小さな差が長期的な収益を大きく左右します。
資金計画とリスク管理の新常識
重要なのは、返済・修繕・税金の三つを同時に管理する発想です。コロナ禍で空室期間が平均1.3か月から1.8か月へ伸びた実績を踏まえ、10%超の空室率でも黒字を維持できる返済比率を組む必要があります。目安として、家賃収入に占める元利返済額は50%以下、修繕積立を含む固定費は15%以内に収めると安心です。
さらに、2025年は材料費高騰が続くと見込まれ、外壁補修などの大規模修繕費が以前より1~2割増しになる傾向があります。あらかじめ長期修繕計画を取得し、五年後・十年後の大きな支出を見える化することで、不意のキャッシュショックを避けられます。
リスクヘッジ策としては次の三点が効果的です。
- 金利上昇時に借り換えを検討できるよう、繰上返済手数料が低い金融機関を選ぶ
- 賃料保証付きの管理委託ではなく、入居付け実績重視の管理会社を複数比較する
- 青色申告による65万円控除を活用し、課税所得を圧縮してキャッシュフローを底上げする
これらを組み合わせれば、短期的な収支悪化に直面しても致命傷を避けられる体制が整います。
2025年度の制度と税制優遇を押さえる
実は、制度面を理解するだけで手残りを年間数十万円規模で改善できる余地があります。2025年度も「不動産取得税の軽減措置」が継続しており、課税標準から1,200万円が控除されます。固定資産税については、建物部分が新築後3年間(耐火構造は5年間)半額になる優遇があるため、新築ワンルームに投資する場合は早期取得が有利です。
また、賃貸経営で発生する減価償却費は、青色申告と組み合わせることで課税所得を大きく減らせます。建物価格を80%としてRC造47年、区分所有なら定額法で計算すると、年間約51万円を経費計上できます。これは実際のキャッシュ支出を伴わないため、表面利回りでは見えない「税引後利回り」を押し上げる効果が大きいと言えます。
2025年度末には「住宅省エネ2025キャンペーン」の補助金申請が終了予定ですが、投資用マンションは対象外です。誤って計画に組み込まないよう注意しましょう。基本的には汎用的な税制優遇と耐用年数を意識し、長期で恩恵が続く仕組みを選ぶことが堅実な戦略となります。
まとめ
アフターコロナで需要が戻った今、マンション投資は再び資産形成の有力な選択肢になっています。とはいえ、表面利回りだけを追いかけると、空室や修繕費で手残りが想定を下回るリスクは残ります。この記事で紹介した市場データの読み解き方、実質利回りシミュレーション、資金計画と税制活用を組み合わせれば、変動の激しい時代でも安定収益を確保できるはずです。まずは気になる物件の数字を実質ベースで検証し、信頼できる金融機関と管理会社を選ぶ行動から始めてみてください。
参考文献・出典
- 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 総務省 住民基本台帳人口移動報告 – https://www.stat.go.jp
- 国土交通省 住宅市場動向調査 – https://www.mlit.go.jp
- 日本銀行 金融システムレポート – https://www.boj.or.jp