都市部の新築価格は上がり続け、老後資金やインフレ対策として「マンション投資」が気になる方が増えています。しかし賃料が本当に返済を上回るのか、立地は将来も価値を保てるのか、不安は尽きません。本記事では、マンション投資歴15年の視点から「選び方」の核心を整理します。読むことで収益構造の基本から物件・融資・税制の最新動向までを把握でき、自分に合った一歩を踏み出せるはずです。
マンション投資が向く人・向かない人

まず押さえておきたいのは、自分のライフプランと投資目的です。安定収入を得ながら将来の年金代わりにしたい人と、短期で売却益を狙う人とでは選ぶ物件も融資条件も異なります。また、勤務先の転勤が多く時間を取りにくい人は、手間を省ける管理委託型が向いています。
一方で、家計に余裕がなく突発的な修繕費に対応できない場合は慎重になるべきです。マンション投資はミドルリスク・ミドルリターンの資産運用であり、家賃が想定より下がる局面もありえます。言い換えると、一定の余剰資金と長期視点を持てる人ほど収益を安定化しやすいのです。
収益構造を理解する

重要なのは、家賃収入から管理費・修繕積立金・ローン返済・税金を差し引いた「キャッシュフロー」です。不動産経済研究所によると、2025年9月の東京23区新築マンション平均価格は7,580万円で前年比3.2%上昇しました。価格上昇が続く局面では、表面利回りが下がる傾向にあるため、諸費用込みのネット利回りを必ず確認してください。
さらに、家賃相場は新築プレミアムが切れると緩やかに下落します。例えば月額15万円の物件が2%下がれば年間3万6千円の減収となり、30年で100万円以上の差になります。また、ローン金利が0.5%上昇するだけで総返済額が数百万円増える可能性があります。保守的なシミュレーションを行い、空室率10〜15%でも耐えられる計画を立てることが、初心者が失敗を避ける近道と言えます。
立地と将来人口の読み解き方
ポイントは、現在の賃貸需要だけでなく、10年後の人口動態を読むことです。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、東京都心6区は2035年まで人口微増が続く一方、都内でも郊外ベッドタウンの一部は減少に転じます。つまり、同じ東京都でもエリアによって空室リスクが大きく違うのです。
加えて、駅距離と交通手段の多様化も考慮します。リモートワーク浸透で徒歩15分物件が見直されていますが、バス利用前提の立地は依然として賃料が伸びにくい傾向があります。実際に平日夜や雨天時に現地を訪れ、生活動線を体感することが空室リスクの低減につながります。
なお、再開発計画や大学のキャンパス移転など行政資料を調べると、将来の需給バランスを具体的にイメージできます。地価公示や都市計画図は国土交通省のウェブサイトで無料公開されているので、必ず目を通しておきましょう。
物件スペックと管理体制のチェック
実は、築年数よりも管理状態で資産価値が大きく分かれます。エントランスの清掃状況や郵便受けのチラシ残存率は、居住者の質と管理会社の対応力を映す鏡です。また、修繕積立金が適正かどうか議事録で確認することも欠かせません。
設備面では、インターネット無料化や宅配ボックスの有無が賃貸競争力を左右します。特に単身者向けでは浴室乾燥機とWi-Fiが標準装備されているかが成約スピードに直結します。初期費用が増えても満室稼働が続けば、長期的な利回りはむしろ向上するのです。
構造面では、耐震性能を示す「新耐震基準(1981年施行)」を満たしているかを必ず確認してください。保険料や金融機関の評価にも影響するため、築古物件を選ぶ際は特に注意が必要です。
2025年度の融資環境と税制ポイント
まず、金融庁のマクロプルーデンス方針により、投資用ローンは自己資金10〜20%を求められる傾向が続いています。日本政策金融公庫の融資上限金利は2025年度上期で1.65%前後ですが、地方銀行や信用金庫の実行金利は0.8〜2.0%と幅があります。複数行を比較し、保証料や繰上返済手数料まで含めた総コストで判断しましょう。
税制面では、不動産所得と給与所得の損益通算は2025年度も有効です。ただし赤字計上が続くと税務署の調査対象になりやすいため、過度な減価償却による節税狙いは避けるべきです。また、長期譲渡所得の税率は保有5年超で約20%に軽減されるため、売却タイミングを計画的に考えると手取りを最大化できます。
これらの制度は法律改正により変更される可能性があるため、購入前に必ず最新の国税庁サイトを確認してください。専門家に依頼する場合でも、最終的に責任を負うのは自分だという意識が大切です。
まとめ
本記事では、マンション投資 選び方の要点をライフプラン、収益構造、立地、物件スペック、融資・税制の五つの視点から整理しました。結論として、数字だけでなく管理体制や将来人口まで総合的に評価することが成功の鍵です。まずは気になるエリアで賃料相場を調べ、複数物件のキャッシュフロー表を作ってみてください。その過程で疑問点が明確になり、信頼できる専門家を選ぶ目も養われるでしょう。行動を先延ばしにせず、今回得た知識をもとに一歩を踏み出してみてください。
参考文献・出典
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国立社会保障・人口問題研究所 – https://www.ipss.go.jp
- 国土交通省 地価公示・都市計画情報 – https://www.mlit.go.jp
- 日本政策金融公庫 融資情報 – https://www.jfc.go.jp
- 国税庁 タックスアンサー 不動産所得 – https://www.nta.go.jp