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アパート経営はするな?賃貸経営の落とし穴と対策

「アパート経営はするな」という言葉を耳にしたことはありませんか。地方転勤の可能性や年金不安が高まる中、家賃収入で将来を支えたいと考える人は増えています。しかし「入居者が集まらない」「多額の借金が怖い」という声も絶えません。

私は15年間で5棟のアパートを運営し、失敗も成功も経験してきました。本記事では、その体験をもとに賃貸経営の落とし穴と乗り越え方を具体的に解説します。

「アパート経営はするな」と言われる5つの理由

なぜ「アパート経営はするな」と言われるのでしょうか。よく挙げられる理由は以下の5つです。

  • 空室リスク:入居者が決まらず家賃収入が途絶える
  • 修繕費の負担:想定外の出費でキャッシュフローが悪化
  • 借入金の重圧:金利上昇で返済額が増加する可能性
  • 入居者トラブル:家賃滞納やクレーム対応の手間
  • 資産価値の下落:築年数が進むと売却時に損失が出る

これらのリスクは確かに存在します。しかし、事前に対策を講じれば回避できるものばかりです。重要なのは「買えば安心」ではなく、経営者として戦略を練る姿勢を持つことです。

賃貸経営の落とし穴①:表面利回りの罠

私が2012年に購入した築25年の木造アパートは、表面利回り11%と魅力的に見えました。ところが引き渡し直後、給水管の漏水で150万円の修繕費が発生。初年度の利益はほぼ消えました。

表面利回りと実質利回りの違い

項目 表面利回り 実質利回り
計算方法 年間家賃÷物件価格 (年間家賃−経費)÷(物件価格+諸費用)
含まれる経費 なし 修繕費・管理費・固定資産税など
投資判断 参考程度 実際の収益性を反映

この経験から、購入前のインスペクション(建物診断)が不可欠だと痛感しました。費用は10万円前後ですが、診断書をもとに売主と価格交渉した結果、次の物件では200万円の値引きを獲得できました。

賃貸経営の落とし穴②:空室リスクの甘い見積もり

国土交通省の統計によると、2025年7月時点の全国アパート空室率は21.2%です。つまり5戸に1戸は空室という計算になります。

空室率が収益に与える影響

空室率 年間家賃収入(満室600万円の場合) 減少額
0% 600万円
10% 540万円 60万円減
20% 480万円 120万円減

私が運営する物件では、空室対策として「写真の質」にこだわっています。プロカメラマンに撮影を依頼したところ、同じ賃料で内見予約数が2倍になりました。初期費用は1室あたり2万円程度ですが、1か月空室が埋まれば十分回収できます。

賃貸経営の落とし穴③:融資条件の見極め不足

金融機関の選び方で利回りは大きく変わります。私が当初相談した地元信用金庫は、自己資金3割・金利2.3%という条件でした。一方、同じ物件を都市銀行に持ち込むと、金利1.1%・自己資金2割に下がりました。

融資条件の比較例

金融機関 自己資金 金利 年間返済額(借入3,000万円・25年)
信用金庫A 30% 2.3% 約155万円
都市銀行B 20% 1.1% 約138万円

年間返済額の差は約17万円。25年間で400万円以上の差になります。融資交渉では、空室率20%・金利上昇2%という厳しめのシナリオでも返済余力が残る試算を提示することがポイントです。

賃貸経営の落とし穴④:自主管理の限界

初めは自主管理を選び、家賃督促やクレーム対応に休日が潰れました。ストレスが高まり、3年目から管理会社へ委託したところ、手数料は家賃の5%でも空室期間が短縮。結果としてキャッシュフローが改善しました。

自主管理と管理委託の比較

項目 自主管理 管理委託
手数料 なし 家賃の3〜5%
時間的負担 大きい 小さい
入居者対応 自分で対応 管理会社が対応
空室対策 自分で実施 専門ノウハウを活用

管理会社との月1回のオンラインミーティングで入居者属性や問い合わせ数を共有しています。情報が可視化されることで、ペット可やネット無料など設備投資の判断が迅速になりました。

落とし穴を避けるための具体的な対策

これまでの経験から、賃貸経営で失敗しないためのポイントを整理します。

購入前にやるべきこと

  • インスペクションの実施:費用10万円前後で将来の修繕リスクを把握
  • 複数の金融機関に相談:条件の比較で年間数十万円の差が出る
  • 実質利回りで判断:経費込みの収益性を計算する

運用中に意識すべきこと

  • 余裕資金の確保:年間返済額の3か月分を別口座にキープ
  • 管理会社との連携強化:定期的なミーティングで情報共有
  • 募集条件の柔軟化:礼金ゼロ+短期解約違約金の組み合わせ

2025年度の制度活用で収益を改善する

補助金や税制を活用することで、実質利回りを向上させることができます。

「2025年度 住宅・建築物省エネ改修推進事業」では、賃貸アパートも対象となり、1住戸あたり最大60万円の補助を受けられます。私は外壁断熱と高効率エアコン導入に活用し、実質利回りを0.8ポイント改善しました。

税務面では、築古物件の減価償却を活用する方法があります。建物価格を高めに取得し、4年で償却しきることで短期的にキャッシュフローを最大化できます。ただし、2024年の改正電帳法により領収書の電子保存が義務化されたため、クラウド会計ソフトの導入をおすすめします。

まとめ

「アパート経営はするな」と言われる背景には、確かなリスクが存在します。しかし、事前の準備と適切な運用でそれらは回避できます。

重要なポイントを振り返ります。

  • 表面利回りではなく実質利回りで判断する
  • 購入前にインスペクションを実施する
  • 複数の金融機関で融資条件を比較する
  • 自主管理にこだわらず管理委託も検討する
  • 余裕資金を確保してリスクに備える

立地や築年数だけでなく、資金計画や管理体制を総合的に設計することが長期安定経営の鍵です。まずは小さく始め、経験を積みながら再投資を図る姿勢が、これからの市場で生き残る近道になるでしょう。

参考文献・出典

  • 国土交通省住宅局 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/
  • 財務省 税制改正概要 – https://www.mof.go.jp/tax_policy/
  • 経済産業省 住宅・建築物省エネ改修推進事業 – https://www.meti.go.jp/
  • 日本銀行 金融経済統計レビュー – https://www.boj.or.jp/
  • 国税庁 電子帳簿保存法特設ページ – https://www.nta.go.jp/

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