不動産投資に興味はあるものの、「一棟を丸ごと買うなんて自分には無理」と感じていませんか。高額な初期費用や空室リスクを思うと、二の足を踏む方が多いのは当然です。しかし、実は区分所有よりキャッシュフローが読みやすく、長期での資産形成に向く手法でもあります。
本記事では、私が15年前に購入した築浅ワンルームマンション一棟の実体験を交えながら、初心者が押さえるべきポイントを丁寧に解説します。エリア別の価格相場から資金計画の立て方、融資戦略、そしてリスク管理まで、具体的な数値とともにお伝えしていきます。
一棟マンション投資の基礎知識

一棟買いがもたらす最大の魅力は、収益と管理面での自由度にあります。部屋単位でなく建物全体を所有するため、賃料設定や修繕計画を自分の判断で調整できるのです。区分所有では管理組合の決議が必要な事項も、一棟オーナーなら即座に実行に移せます。
不動産流通推進センターの調査によると、一棟マンションの平均価格は2025年9月時点で約1億9,052万円、表面利回りは7.48%となっています。一方、一棟アパートは平均8,859万円で利回り8.00%と、規模に応じた選択肢が広がっています。同じ資金をレバレッジに活用すれば、郊外で利便性の高い20〜30戸規模の一棟物件も視野に入ってきます。
一棟買いでは土地も同時に取得できるため、建物が償却後も土地価値が残りやすい点がメリットです。金融機関は土地付き収益物件を担保評価しやすいため、自己資金を圧縮した融資スキームを組める可能性が高まります。ただし、空室率の上振れや大規模修繕の費用負担は避けられません。つまり、一棟買いはリターンとリスクの振れ幅が大きく、物件選定と資金計画の精度が成否を分けるのです。
エリア別価格相場と市場動向

一棟マンション購入を検討する際、エリアによる価格差を把握しておくことが重要です。東京23区の新築マンション平均価格は2025年9月時点で7,580万円と発表されていますが、これは区分所有の数値です。一棟物件となると、エリアや規模によって大きく異なります。
都心6区(千代田・中央・港・新宿・渋谷・文京)では、一棟マンションの平均価格が2億円に迫る水準で推移しています。城南エリア(品川・目黒・大田・世田谷)は1億5,000万円〜2億円程度、城東エリア(墨田・江東・台東)では1億円前後からの物件も見つかります。地方主要都市に目を向けると、名古屋や大阪では8,000万円〜1億5,000万円、福岡では5,000万円〜1億円程度が相場となっています。
利回りに関しては、都心部ほど低く郊外ほど高い傾向があります。ただし、高利回りの物件には空室リスクが伴うことを忘れてはいけません。総務省の住宅・土地統計調査によれば、全国の賃貸住宅空き家は443万戸に達し、空き家率は13.8%と過去最高を記録しています。エリア選定では利回りだけでなく、将来の人口動態や賃貸需給バランスも考慮する必要があるのです。
体験談:築浅ワンルーム一棟で味わった初年度のリアル
机上のシミュレーションと実運営の差を知ることは非常に重要です。私は2010年、駅徒歩6分の築3年・24戸のワンルームマンションを総額2億8,000万円で取得しました。購入時の想定では年間家賃収入1,860万円、表面利回り6.6%でしたが、実際には入居者の入替えや軽微な設備交換で初年度の稼働率は92%にとどまりました。
家賃収入は1,710万円に下振れし、実質利回りは5.2%まで低下しました。それでも赤字を回避できた要因は、購入前に修繕積立金を精査し、引渡し直後に給水ポンプを更新したからです。インスペクション(建物状況調査)を実施して設備の劣化状況を事前に把握していたことで、初期対応により突発的な故障を防ぎ、長期安定稼働への道筋をつけられました。
賃借人ニーズを把握するため自らアンケートを実施し、2戸をフリーレント付きで募集しました。その結果、平均空室期間を45日から18日に短縮でき、翌年から稼働率は96%前後で推移しています。経験上、初年度にどれだけ運営に手をかけるかが、以降のキャッシュフローを左右すると痛感しました。
資金計画と諸費用の内訳
一棟マンション購入では、物件価格以外にもさまざまな諸費用がかかります。自己資金は物件価格の15〜20%が目安とされており、2億円の物件であれば3,000万〜4,000万円を用意する必要があります。これに加えて諸費用として物件価格の6〜8%程度を見込んでおくと安心です。
主な諸費用の内訳を見ていきましょう。仲介手数料は物件価格の3%+6万円に消費税がかかり、2億円の物件なら約660万円となります。不動産取得税は固定資産税評価額の3〜4%で、建物と土地を合わせると数百万円規模になることも珍しくありません。登録免許税は土地が評価額の1.5%、建物が2%です。さらに印紙税、司法書士報酬、火災保険料なども必要になります。
私の場合、2億8,000万円の物件に対して頭金4,200万円(15%)と諸費用約1,800万円、合計6,000万円の自己資金を投入しました。この比率であれば、多くの金融機関で融資審査が通りやすくなります。自己資金比率を高めすぎると投資効率が下がり、低すぎると返済負担が重くなるため、バランスが重要です。
融資戦略とキャッシュフローシミュレーション
自己資金の厚みだけでなく、返済比率のバランスを意識することがポイントです。私は頭金15%を投入し、残りを20年の元利均等返済で組みました。この設定により年間返済額は1,260万円となり、DSCR(債務返済余裕率)は1.35倍を維持できています。DSCRとは、年間の純営業収益を年間返済額で割った数値で、1.2倍以上あれば安全圏とされています。
金融機関を比較するときは、金利差だけでなく評価方法に注目してください。土地の積算評価を重視する地銀は、築年数が浅くても郊外物件なら評価が伸びにくい場合があります。一方、事業収益を評価するノンバンクは金利が高めでもLTV(融資比率)を90%近くまで伸ばすことが可能です。
日本銀行の金融システムレポートによれば、金利が1%上昇した場合、ローン返済額は20〜30%増加すると試算されています。将来の金利上昇リスクを考慮し、私は固定金利期間10年の商品を選択しました。変動金利の低さに魅力を感じる方も多いですが、キャッシュフローの安定性を重視するなら、固定金利期間を設けることをおすすめします。
運営と出口戦略を同時に描く
保有中の運営方針と売却時の出口戦略をセットで考える姿勢が不可欠です。キャッシュフローを最大化するだけでなく、資産価値の維持が結果として売却益にもつながります。購入直後に大規模修繕積立スケジュールを10年間で設定し、フローリングの貼替え周期を入居者募集サイクルと合わせました。
この工夫により、修繕のたびに家賃を2,000円ずつ上げることに成功しています。また、入居者向けに無料インターネットを導入し、満足度向上と離脱防止を図りました。この取り組みは空室率低下だけでなく、物件評価の向上にも寄与し、査定利回りを0.3ポイント改善させています。
出口については、保有10年目となる2030年時点で売却かローン借換えを検討しています。累積減価償却後の簿価と市場価格の差額を試算し、税引後キャッシュが手元にいくら残るかを毎年更新しています。減価償却とは、建物の取得価格を法定耐用年数に応じて毎年経費計上する仕組みで、RC造マンションなら47年、重量鉄骨なら34年が目安です。こうしたシミュレーションを繰り返すことで、予期せぬ市場変動にも備えられます。
リスク管理と制度活用のポイント
一棟買いで最も見落とされやすいのが保険と法定点検です。火災保険は構造区分と築年数で保険料が大きく変わるため、2025年度に導入された「共同住宅向け長期包括補償プラン」を活用しました。これにより、年間保険料を約18%削減できています。
2024年から義務化された給排水設備の点検報告を怠ると、行政指導だけでなく入居者トラブルの原因となります。私は管理会社と3年契約を結び、点検結果をクラウドで共有する仕組みを導入しました。情報の透明化により、修繕計画の前倒し判断がしやすくなり、結果的にコスト削減につながっています。
節税制度の活用も見逃せません。2025年度も継続している「耐震・省エネ改修に伴う固定資産税減額制度」を前提に、築15年を迎える2027年に外壁断熱改修を計画しています。工事費は1戸あたり約60万円ですが、3年間の税額半減効果で投下資本の回収目途を立てています。また、耐震基準適合証明を取得すれば、不動産取得税の軽減措置を利用できます。制度の期限や要件は毎年更新されるため、物件取得前に自治体の担当窓口へ確認する習慣をつけましょう。
まとめ
ここまで、一棟マンション購入の特徴、私の実体験、エリア別相場、資金計画、融資戦略、運営の工夫、そしてリスク管理まで具体的にお伝えしました。一棟買いは区分投資よりハードルが高いものの、収益と資産価値を自分でコントロールできる点が大きな魅力です。
重要なのは、購入前の現実的なシミュレーションと、購入後すぐに手を打つ運営施策の両輪を回すことです。表面利回りだけに惑わされず、実質利回りやDSCRを計算し、空室リスクや金利上昇も織り込んだ計画を立ててください。記事で紹介した制度や点検のポイントを参考に、まずは物件情報と融資条件を同時に集め、試算を具体化してみることをおすすめします。
参考文献・出典
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国土交通省 住宅局 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku
- 総務省 固定資産税関係資料 – https://www.soumu.go.jp
- 日本銀行 金融システムレポート – https://www.boj.or.jp
- 不動産流通推進センター – https://www.retpc.jp