不動産投資を数年続けていると、「毎月の返済額をもっと圧縮できないか」「金利上昇リスクに備えたい」といった悩みが必ず出てきます。特に不動産価格の伸びが鈍化し、賃料も横ばい傾向にある2025年現在では、キャッシュフロー改善の手段として借り換えが再注目されています。本記事では、不動産投資ローンの基本を理解している経験者の方が、借り換えを判断・実行する際に押さえておきたいポイントを網羅的に解説します。読むことで金利差の見極め方から税制優遇の活用法、そして実務上の落とし穴まで具体的に把握できるはずです。
借り換えを検討すべきタイミング

重要なのは、金利差だけでなく物件の収益状況や残債期間を総合的に見ることです。全国銀行協会の統計によると、2025年9月時点の投資用変動金利はおおむね1.5〜2.0%、固定10年は2.5〜3.0%で推移しています。この範囲より0.5%以上高い金利で借りている場合、借り換え効果が生まれる可能性が高まります。
まず、残債が1億円で残期間15年のローンを年2.7%から年1.9%へ借り換えると、単純計算で利息負担は約1100万円減少します。とはいえ、繰上げ返済手数料や抵当権設定費用などが平均で100万〜150万円かかるため、差し引きした正味効果を確認する必要があります。また、物件の築年数が20年を超える場合は、融資期間を短縮せざるを得ないケースが多く、結果的に月々の返済額が上がる点にも注意が必要です。
一方で、空室率が一時的に高まっている物件ほど借り換え審査は厳しくなります。金融機関は直近1年の入居率や賃料下落率を重視するため、借り換え前にリーシングを強化し、安定したキャッシュフローを示せるようにしておくと交渉がスムーズに進みます。つまり、適切なタイミングを見極めるには、市場金利・物件状態・審査基準の三つを同時にチェックすることが欠かせません。
金利差と総返済額のシミュレーション方法

ポイントは、単年度の利息削減額ではなく、総返済額とキャッシュフローマージンの変化を比較することです。具体的には、借り換え前後のローン返済表を作成し、年間返済額と税引後キャッシュフローを並べて可視化します。固定資産税や管理費を含めたランニングコストも入れると、より現実的な数字が得られます。
実は、金利差が0.3%でも、残期間20年以上ある場合は効果が大きいケースがあります。例えば残債8000万円・期間25年・金利2.4%のローンを2.1%に借り換えると、利息総額は約330万円減り、月々のキャッシュフローは約1.1万円改善します。これにより、空室発生時に備える予備資金を年間13万円積み立てられる計算です。
また、固定金利へ切り替える場合は、利息が上がっても支払い額が安定することで長期計画を立てやすくなります。将来の金利上昇リスクを2%と想定し、変動と固定のシナリオを比較することで自分のリスク許容度に合った選択が見えてきます。金融機関によっては試算シートを提供してくれるため、数字の検証を重ねてから意思決定する姿勢が大切です。
金融機関選びで見落としがちなポイント
まず押さえておきたいのは、融資姿勢の違いです。メガバンクはローン残高が大きく、物件規模が1億円以上であれば金利が低めに設定される傾向があります。一方で、地方銀行や信用金庫は地元物件に対して柔軟な審査を行い、諸費用を抑えられるメリットがあります。金利だけでなく、事務手数料・保証料・団体信用生命保険(団信)の条件を総額で比較することが不可欠です。
さらに、2025年度から一部のネット銀行が導入した「実勢家賃査定レポート」は、机上査定より厳密にキャッシュフローを評価します。これにより、従来は評価額の70%程度だった融資上限が80%まで広がるケースもあり、自己資金を温存して借り換えできます。ただし、レポート作成には管理会社の協力が必要で、ヒアリング期間が長引くと審査全体が1カ月以上遅れる点に注意しましょう。
団信の種類にも差があります。いわゆる「ワイド団信」は金利に0.3〜0.5%上乗せされる一方、健康状態に不安がある投資家でも借り換えが可能です。逆に、健康リスクが低い場合は団信不要タイプを選び、金利を0.1%下げる選択肢もあります。つまり、金融機関ごとの商品設計を読み解き、自分の属性と投資戦略に合う最適解を探ることが成功のカギとなります。
2025年度の制度と税制優遇の活用法
まず、2025年度も継続している代表的な制度は「登録免許税の軽減措置」です。借り換えに伴う抵当権設定時の登録免許税が本則0.4%から0.1%へ引き下げられるため、1億円のローンでは30万円の節約になります。期限は2026年3月31日登記分までと明確に定められているため、スケジュール管理が重要です。
一方で、投資用物件は住宅ローン減税の対象外ですが、借り換え費用を含む諸経費は不動産所得の必要経費として計上できます。国税庁の通達では、登録免許税や司法書士報酬を一括で損金算入できるため、借り換え初年度の節税インパクトは大きくなります。具体的には、所得税・住民税を合わせて税率40%の投資家が150万円の経費を計上すれば、約60万円の節税効果が見込めます。
また、2025年度から始まった「中小企業等経営強化法」の賃貸業向け拡充により、一定の省エネ改修を行った賃貸物件は固定資産税が3年間半額になる特例が利用できます。借り換えと同時に省エネ改修ローンを組み、キャッシュフローを確保しつつ固定資産税を抑える戦略も検討に値します。ただし、改修工事の完了報告が自治体に受理されないと特例が適用されないため、施工会社選びと書類管理を徹底しましょう。
借り換え手続きの実務と注意点
実務で最も時間がかかるのは、旧金融機関との抵当権抹消手続きです。抹消書類の発行に通常1〜2週間、書類の不備があればさらに遅延します。物件売却の予定がある場合、借り換えと決済が重なるとスケジュールが複雑化するため、司法書士と早めに調整することが肝心です。
また、借り換え審査中に追加書類を求められるケースも少なくありません。法人名義であれば直近2期分の決算書に加え、賃貸借契約書の写しや管理状況報告書を求められることがあります。これらを事前にPDF化し、共有クラウドで管理しておくと手続きがスムーズになります。個人名義の場合でも、確定申告書第三表や納税証明書の提出を求められるため、税理士との連携を強化しましょう。
固定金利へ借り換える際に見落としがちなのが、繰上げ返済手数料の再設定です。変動型では無料だった繰上げ返済が固定型では手数料発生となるケースが多く、一部繰上げ返済を予定している投資家には不利に働きます。代わりに、毎月返済額を増額できるオプションを活用し、総返済額を圧縮する方法も検討してください。
最後に、「不動産投資ローン 借り換え 経験者向け」といった検索ワードで情報収集をすると、実体験ベースのブログが多数ヒットします。ただし、2023年以前の記事は金利水準や制度が異なる場合があるため、必ず2025年以降の情報かどうかを確認する癖をつけましょう。
まとめ
本記事では、借り換えを検討すべきタイミング、金利差のシミュレーション方法、金融機関選びの着眼点、2025年度の制度活用、そして実務上の注意点を解説しました。結論として、借り換えの是非は「金利差×残債期間×諸費用」の数式だけでなく、物件の収益性と自身の投資戦略を総合して判断することが求められます。まずは現在のローン条件を整理し、複数の金融機関で事前審査を受けて比較材料をそろえましょう。そのうえで、必要経費の節税効果や固定資産税の軽減措置を組み合わせれば、キャッシュフローを着実に改善できます。行動を先延ばしにせず、今日から資料準備を始めることが、未来の安心につながる第一歩です。
参考文献・出典
- 全国銀行協会 – https://www.zenginkyo.or.jp
- 国税庁 – https://www.nta.go.jp
- 法務省 登録免許税法 – https://www.moj.go.jp
- 経済産業省 中小企業等経営強化法 特例措置 – https://www.meti.go.jp
- 総務省 固定資産税 特例情報 – https://www.soumu.go.jp