家賃収入で資産を築きたいものの、「自分はいくらまで借りられるのか」「住宅ローンとの違いは何か」と悩む人は多いでしょう。私も15年前、最初の物件取得時に限度額が読めず不安が募りました。本記事では、最新の金利動向を踏まえながら、不動産投資ローンの仕組みと借入限度額を決める要素を解説します。実際の審査を通過した投資家の体験談も紹介し、住宅ローンとの違いを比較しつつ、限度額を高めるための具体策を提示します。読み終えた頃には、自身の資金計画を現実的に描けるようになるはずです。
不動産投資ローンの基本構造

まず押さえておきたいのは、不動産投資ローンが事業性融資に分類される点です。家賃収入を主な返済原資とするため、金融機関は物件の収益力と借り手の事業者としての資質を重視します。つまり、年収だけでなく、物件の立地・利回り・空室リスクまで総合的に審査されるわけです。
次に、返済期間と金利タイプが住宅ローンより柔軟な反面、金利水準はやや高く設定されます。全国銀行協会の2025年9月データによると、変動金利は1.5〜2.0%、10年固定は2.5〜3.0%が目安です。私が2024年に借り換えた際は変動1.68%で承認され、月々の返済額を約3万円圧縮できました。
また、団体信用生命保険(団信)が必須でない商品も多く、保険料相当分が金利に上乗せされないケースがあります。一方で、火災保険や地震保険の加入条件が厳格になる傾向があるため、運営コストを試算する際は保険料も忘れずに見積もりましょう。
最後に、融資額上限は「物件評価額×融資割合(LTV)」で概算できます。都心区分マンションではLTV80%前後が一般的ですが、築古アパートや地方物件では60%程度に抑えられる例が目立ちます。結果として、同じ自己資金でも物件タイプ次第で借入限度額に大きな差が出るのです。
借入限度額を左右する三つの要素

重要なのは、限度額を決める主要因が「個人属性」「物件評価」「資金計画」の三つに集約される点です。この順に理解すると、対策を立てやすくなります。
最初の個人属性には、年収、勤続年数、保有資産に加え、過去の信用情報が含まれます。年収800万円で自己資金300万円のAさんと、年収500万円でも自己資金800万円のBさんでは、後者が審査を通りやすい場合があります。金融機関は返済余力だけでなく、リスク共有の姿勢を評価するからです。
次に物件評価ですが、収益還元法で算出される「積算評価+収益評価」のバランスが鍵を握ります。実は築20年の木造アパートでも、土地値が高い地域なら評価額が伸び、借入限度額が増えることがあります。私の受講生であるCさんは、東京都下の土地値比率が高い物件を選び、LTV85%の高融資を獲得しました。
最後の資金計画には、自己資金割合と返済比率(返済額÷家賃収入)が含まれます。返済比率が70%を下回ると安全域とみなされ、限度額が伸びやすいのが通例です。例えば月額家賃収入40万円、予定返済額25万円なら比率は62.5%となり、追加融資の可能性も高まります。
体験談に学ぶ審査突破のコツ
実は、同じ属性でも提出書類の質で審査結果が分かれることがあります。ここでは私が伴走した二つの事例から学びましょう。
最初の事例は都内在住Dさん、年収650万円の会社員です。Dさんは収支計画書を簡易版で提出した結果、借入限度額が物件価格の65%と渋い評価でした。そこで、空室対策プランや修繕積立計画を盛り込んだ詳細版に改訂し、再審査で80%まで改善しました。金融機関は「リスクを数値で管理できる能力」を重視していたのです。
一方で、地方政令市に住むEさんは、年収500万円ながら副業で太陽光発電収入が年間120万円ありました。当初は副業収入が安定性に欠けると見なされ、融資枠が抑えられる見通しでした。しかし、3年間の売電実績を証憑付きで提示し、確定申告書と照合させることで、想定より20%多い限度額を獲得できました。数字と書類の裏付けが説得力を高めた好例です。
これらの体験談から分かるのは、審査担当者が「説明責任を果たせる投資家」を求めていることです。つまり、物件の強みとリスクを事前に分析し、改善策を添えて提示すれば、限度額を押し上げられる余地が生まれます。
住宅ローンとの違いを数字で理解
ポイントは、不動産投資ローンと住宅ローンが似て非なる審査基準を持つ点です。混同すると資金計画が狂いやすいので、違いを数字で把握しておきましょう。
住宅ローンでは借入限度額が年収の7〜8倍を上限とする銀行が多い一方、投資ローンでは年間家賃収入が返済原資に加算されるため、単純な倍率では測れません。私自身、年収600万円時点で住宅ローン上限は4800万円前後でしたが、投資ローンでは家賃収入を含め総額1億2000万円まで承認されました。
さらに、返済比率の計算方法も異なります。住宅ローンは「返済額÷年収」で35%以内が基準ですが、投資ローンは「返済額÷(年収+家賃収入)」で50%以内が目安です。そのため、同じ返済額でも投資ローンのほうが比率が低く算出され、追加融資が視野に入りやすくなります。
金利面でも違いは明確です。住宅ローンの変動金利は2025年9月時点で0.4〜0.7%が主流ですが、投資ローンは1.5%以上が一般的です。利回り8%の物件でも金利差を考慮すると実質手取り利回りは約5%に下がるため、購入前にキャッシュフロー計算を重ねる必要があります。
借入限度額を引き上げる具体策
まず取り組みたいのは、自己資金比率を高める工夫です。ボーナスや退職金を頭金に充当するほか、既存物件の評価額が上がっていればリファイナンスで元本を下げる方法もあります。元本が減れば返済比率が改善し、次の融資枠が広がるからです。
次に、法人化を検討する価値があります。2025年度の税制では、法人税率が段階的に引き下げられ、中小法人の実効税率は約30%です。個人の最高税率45%と比べ節税効果が期待でき、金融機関によっては法人スキームのほうが長期融資を引き出しやすい例も出ています。ただし設立コストや赤字繰越制限などデメリットもあるため、専門家と試算してから判断しましょう。
さらに、複数行同時申込みより「メインバンク方式」が有効な場合があります。私が2023年に試したところ、メイン行に決算書を継続提出し信頼残高を高めた結果、従前LTV70%だった枠が77%へ改善しました。担当者との面談で、中長期の事業計画を共有した点が評価されたようです。
最後に、物件選定の段階で出口戦略を織り込むことが欠かせません。将来の売却価格が担保評価を下支えするためです。築浅RCマンションなら減価償却期間が長く、10年後の残債より売却価格が上回る試算を示せれば、高い限度額でも金融機関は安心して貸し出します。
まとめ
本記事では、不動産投資ローンの借入限度額を左右する要素と、住宅ローンとの違いを体験談を交えて解説しました。個人属性や物件評価に加え、書類の質が審査に与える影響は想像以上に大きいことが分かったはずです。限度額を引き上げたいなら、収支計画の精緻化、自己資金割合の向上、法人化など複数の手段を組み合わせることが効果的です。行動に移す際は、金利上昇や空室リスクを保守的に見込んだシミュレーションを行い、健全なキャッシュフローを確保しましょう。そうすれば、資産拡大のスピードを保ちながらも、長期で安定した投資運用が可能になります。
参考文献・出典
- 全国銀行協会 – https://www.zenginkyo.or.jp
- 国土交通省 不動産市場動向調査2025年版 – https://www.mlit.go.jp
- 日本政策金融公庫 創業融資ガイド2025 – https://www.jfc.go.jp
- 不動産流通推進センター 市場統計レポート2025 – https://www.retpc.jp
- 国税庁 法人税率等の概要(令和7年度) – https://www.nta.go.jp