家賃収入で安定した資産形成を目指したいものの、「修繕費が読めず怖い」と感じる人は少なくありません。特に初めてのアパート経営では、想定外の出費が利回りを圧迫する場面がよくあります。本記事では築浅物件に焦点を当て、修繕費を抑えながら安定したキャッシュフローを確保する考え方を解説します。2025年7月時点の空室率や最新の補助制度も紹介するため、物件選びから長期戦略まで具体的にイメージできるはずです。
築浅アパートが修繕費を抑えやすい理由

まず押さえておきたいのは、築浅物件は設備の耐用年数が十分に残っているため、大規模修繕が当面不要という点です。外壁塗装や給排水管の更新は、築15〜20年を境に実施するケースが多いので、築5年以内で取得すれば当面の出費を軽減できます。また設備グレードが高い物件ほど交換スパンが長く、長期的に費用が分散されます。
さらに、築年数が浅いと入居者募集の際に競争力が高まり、空室期間が短縮しやすいことも修繕費抑制と相性が良い要因です。国土交通省の2025年7月住宅統計によると、全国アパートの空室率は21.2%ですが、築10年未満に限ると17%台に下がります。稼働率が高ければ原状回復の頻度も少なくなり、結果として修繕費を低く保ちやすいのです。
一方で取得価格は築古より高くなりがちですが、ローン審査では耐用年数の残存がプラス評価され、固定金利でも長めの融資期間を引き出しやすくなります。つまり金利差と修繕費の両面でキャッシュフローを安定させやすく、総合的な利回り改善が期待できるのが築浅アパートの魅力です。
修繕費の目安とキャッシュフローへの影響

実は修繕費の想定精度を高めると、投資シミュレーションの信頼性が飛躍的に向上します。国交省「民間賃貸住宅の修繕実態調査」では、建物全体の年間修繕費は築10年未満で家賃収入の3〜5%、築20年超で10%前後に達することが示されています。築浅なら理論上、同じ家賃収入でも年間修繕費の差は5〜7ポイントに広がるわけです。
参考のため、家賃収入800万円を想定した場合の年間修繕費を整理します。 ・築7年:約30万円(3.8%) ・築22年:約80万円(10%) 差額は50万円となり、利回りに換算すると1ポイント以上の開きです。この費用差は金融機関への返済や追加投資の原資に回せるため、複利効果を生みます。
また、修繕費の多くは資本的支出として減価償却し、長期で費用化する必要があります。築浅であればそもそもの支出額が小さく、会計上の利益を圧迫しにくい点も見逃せません。つまり、修繕コストを抑制できれば資金繰りの余裕が高まり、次の物件取得や家具・家電導入など攻めの施策に資金を回しやすくなるのです。
築浅物件を見極めるポイント
ポイントは、築年数だけでなく、構造・設備・施工会社の三つを総合的にチェックすることです。まず構造面では、鉄骨造(S造)と木造では維持コストが異なります。一般に木造は外壁の再塗装サイクルが短いものの、軽量で基礎工事費が抑えられるため取得価格が安くなりやすいです。一方、鉄骨造は修繕サイクルが長く、長期保有の安定性に優れます。
次に設備仕様ですが、給湯器やエアコンが省エネ等級4以上の製品だと故障リスクが低く寿命が長い傾向があります。また防犯カメラや宅配ボックスが標準装備されていると、入れ替え時の付加投資が不要で、運用後のコストが圧縮できます。築浅でも廉価グレードで建てられた物件は、結果的に維持費が割高になるケースがあるので注意が必要です。
最後に施工会社の信頼性です。アフターサービス10年保証や24時間駆け付け窓口があるか確認しましょう。仮に小さな不具合が発生しても無償修理で済めばキャッシュフローを守れます。自治体の建設業許可情報検索で行政処分歴を調べる、国交省の住宅性能評価書を確認するなど、公的情報も活用してリスクを把握してください。
2025年度の補助制度と税制優遇を活用する方法
基本的に、築浅アパート取得時に直接使える補助金は多くありませんが、2025年度も継続が決まっている賃貸住宅省エネ改修推進事業を上手に組み合わせると効果的です。この制度は高効率給湯器や断熱窓など省エネ性能を高める改修に対し、工事費の3分の1・上限1,000万円まで補助される仕組みで、築浅でも対象設備を追加するケースが認められます。投資初期にまとめて行えば、将来の修繕費削減につながるだけでなく、入居者満足度も高められます。
税制面では、固定資産税の新築住宅軽減措置が引き続き有効です。賃貸アパートは新築から3年間、税額が2分の1になるため、築浅のうちに取得すると残り期間の恩恵を受けられます。また、青色申告特別控除65万円を適用するために、複式簿記と電子申告に対応しておくと、所得税を抑える効果が大きくなります。さらに、国税庁の通達では修繕費と資本的支出の判断基準が明確化されているため、会計処理を税理士に相談しつつ最適化すると良いでしょう。
以上の制度は申請期限や要件が毎年更新されるため、必ず国交省・財務省の最新発表を確認し、物件購入スケジュールと合わせて計画的に活用してください。
中長期視点での築浅アパート経営戦略
重要なのは、修繕費を抑えた先にどのような成長シナリオを描くかです。まず5年間はキャッシュフローを最大化し、繰上返済や追加投資の余力を蓄えるフェーズと考えましょう。この期間に空室リスクを最小化できれば、金融機関からの評価が高まり、二棟目取得の融資枠を拡大しやすくなります。
次に6〜10年目は、大規模修繕の準備期間として毎年家賃収入の5%程度を修繕積立金として内部留保しておくと安心です。稼働率が全国平均より高い状態を維持できれば、将来の査定価格も下がりにくく、売却益を狙う選択肢も生まれます。特に人口が微増している地方中核都市では、需要を的確に捉えれば利回りと資産価値の両立が期待できます。
そして11年目以降に計画的な改修を実施し、物件をリフレッシュすることで更なるバリューアップを図ります。エントランスのデザイン変更やIoT設備の導入は賃料改定交渉を有利に進める武器になります。長期的な視点でキャッシュフローを再投資し続けることが、築浅アパート経営を成功に導く鍵と言えるでしょう。
まとめ
修繕費を最小化しつつ安定した家賃収入を得るなら、築浅アパートは非常に有力な選択肢です。大規模修繕が当面不要なためキャッシュフローが安定し、空室リスクも相対的に低く抑えられます。さらに、2025年度の省エネ改修補助や新築固定資産税軽減を活用すれば、費用と税負担を同時に削減できます。まずは構造・設備・施工会社を丁寧にチェックし、5年後・10年後の支出計画まで見据えたうえで物件を選定してください。堅実な積立と計画的な再投資をセットにすれば、築浅アパート経営は着実に資産を拡大する強力な武器になります。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 2025年7月速報 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省 賃貸住宅省エネ改修推進事業 2025年度概要 – https://www.mlit.go.jp
- 国税庁 修繕費と資本的支出の区分に関する通達 – https://www.nta.go.jp
- 総務省 固定資産税の軽減措置(令和7年度版) – https://www.soumu.go.jp
- 日本不動産研究所 不動産投資家調査2025年上期 – https://www.reinet.or.jp