毎年の確定申告で重い税負担にため息をつきつつ、「不動産投資で節税できるらしい」と聞いても具体的な仕組みやリスクが分からず一歩を踏み出せない人は少なくありません。本記事では、筆者と周囲のリアルな「節税 不動産投資 体験談」を交えながら、2025年度の最新税制に基づくメリットと注意点を整理します。読み終える頃には、減価償却や必要経費を味方に付けつつキャッシュフローも確保する視点を身につけ、自分に合った投資戦略を描けるようになるはずです。加えて、税務調査への備えや専門家の使い方も紹介するので、長期的に安心して運用を続けたい人の指針となるでしょう。
節税効果を高める仕組みを理解する

重要なのは、節税とは「税金そのものをゼロにする魔法」ではなく、法律で認められた控除や経費計上を通じて課税所得を適正に圧縮する行為だという点です。2025年度の所得税法では、不動産所得は給与所得と損益通算できるため、減価償却費が大きい初年度ほど手取り給与の税率を下げる効果が期待できます。
まず減価償却費を押さえましょう。木造は耐用年数22年、鉄骨造は34年、RC造は47年と定められ、それぞれ中古購入の場合は「残存耐用年数=法定耐用年数-築年数+経過年数×0.2」の簡便法が使えます。築20年の木造なら残存は2年になり、2年間で大きな費用を計上できる計算です。つまり短期間で経費が膨らみ節税インパクトも大きくなります。
次に必要経費です。管理委託料や修繕費、火災保険料はもちろん、2025年度も有効な「小規模企業共済等掛金控除」や「iDeCo掛金控除」を併用すれば、さらなる税負担軽減が可能です。ただし過度に赤字を作り続けると金融機関の融資評価が下がるため、税金だけでなくキャッシュフローとのバランスが鍵となります。
最後に留意したいのは、節税効果は年ごとに逓減しやすいという事実です。減価償却費が尽きた後も収益性が低い物件を持ち続けると、今度は税金以前に手取りが減るリスクがあります。出口戦略を意識して購入前からシミュレーションすることが不可欠です。
体験談1:中古ワンルームで家計を圧迫せずに節税

まず押さえておきたいのは、少額スタートでも十分に節税効果を感じられるケースがあることです。会社員のAさん(30代)は、築25年の都心ワンルーム(価格1,200万円)を自己資金200万円、残りを金利1.9%の20年ローンで購入しました。
購入初年度、家賃収入は年間84万円でしたが、減価償却費(耐用年数3年)400万円、利息・管理費など100万円を経費計上し、不動産所得は大きな赤字に。給与所得900万円と損益通算した結果、所得税と住民税が約80万円軽減されました。実は赤字額を作りすぎても手持ちキャッシュが減れば本末転倒ですが、Aさんの場合は家賃がローン返済をほぼ賄い、手出しは年間10万円弱に収まっています。
また、国税庁「令和6年分(2024年)民間給与実態統計調査」によると、課税所得900万円層の平均税率は約23%です。Aさんの80万円減税は、手取りを約10%押し上げる効果があった計算になります。つまり、中古ワンルームでも減価償却の恩恵が大きいうちは実質利回りが向上するわけです。
もっとも、築古ワンルームは空室や大規模修繕のリスクも抱えます。Aさんは管理会社に任せきりにせず、共用部の修繕積立金の残高を定期的に確認し、売却タイミングを5年後に設定してリスクを限定しました。税金だけでなく資産の劣化スピードに目を向けた姿勢が、損をしない秘訣といえるでしょう。
体験談2:木造アパート一棟買いで加速度償却を活用
ポイントは、規模拡大でこそ発揮される「加速度償却」の威力です。筆者の友人Bさん(40代・自営業)は、築30年の木造アパート8戸を4,000万円で購入しました。残存耐用年数は2年となり、2年間で建物価格の70%を経費計上できるため、初年度の減価償却費は1,400万円を超えました。
Bさんの事業所得は1,000万円でしたが、不動産所得の赤字1,200万円と通算し、納税額はほぼゼロに。さらに二年目も同様の節税が続いたことで、浮いた資金を原状回復と空室対策に再投資できました。その結果、三年目以降は満室稼働で家賃収入のみで手取り300万円を確保し、大規模修繕費の積立も可能になっています。
国土交通省「住宅市場動向調査(2024年度)」では、築30年以上の木造アパート成約価格は首都圏平均で建物比率わずか15%というデータがあります。つまり、土地値比率が高く建物比率が小さいと減価償却額は伸びづらいので、Bさんはあえて地方都市に目を向け、土地値が低いエリアで建物比率を4割まで確保しました。立地より建物価格に注目した視点が、節税メリットを最大化した決め手です。
一方で、2年という短い耐用年数が終わると減価償却費は急減します。Bさんは税理士と相談し、2025年度から屋根と外壁の修繕を計画的に行い、修繕費として損金計上することで税負担の増加を緩やかに調整しています。このように、節税スケジュールを長期視点で組み立てる姿勢が欠かせません。
体験談3:法人化で長期的な税負担をコントロール
実は、物件数が増えると個人より法人のほうが節税メリットを得やすい局面があります。会社員Fさんは3戸の区分所有を持った段階で、2025年度の制度を利用し合同会社を設立しました。法人が物件を追加取得し、所得分散を図る戦略です。
法人税の実効税率は約23%となり、個人の最高税率45%の半分程度で済みます。Fさんは法人で管理料を受け取り、給与所得との合算課税を避けながら、役員報酬を必要最低限に抑えて社会保険料負担も低減しました。さらに役員退職金を積み立てれば、将来のキャッシュアウト時に損金計上できるため大きな節税余地が生まれます。
ただし、法人化には設立費用や毎期の顧問税理士費用など固定コストが増えます。Fさんは「年間家賃収入が1,000万円を超えたら法人化を検討」という一つの目安を持ち、規模拡大と同時に移行したことでキャッシュフローを圧迫せずに済みました。
法人で取得する際は、金融機関の審査が「不動産収益のみ」になるケースが多く、個人の給与を加味しない場合もあります。Fさんは物件の実績を2年以上積んでから法人での融資を申請し、直近の実績表を提示することで金利1.8%、期間25年のローンを獲得しました。節税と資金調達を両立するタイミングの見極めこそ、法人化成功のカギです。
税務調査で慌てないための準備と専門家の使い方
まず押さえておきたいのは、節税と脱税は紙一重だという現実です。国税庁「税務行政の現状と課題(2025年版)」によれば、不動産所得者への実地調査は年間約1.8万件行われ、申告漏れ指摘の平均追徴税額は120万円を超えています。
税務調査で最も問題になるのは、私的な支出を経費に混在させるケースです。領収書は1件ごとに用途をメモし、クラウド会計ソフトと連動させて証憑をデジタル保存するしくみが有効です。2025年度から電子帳簿保存法の猶予措置が終了し、原則として電子保存が義務化されている点にも注意しましょう。
さらに、税理士への相談は「確定申告直前」ではなく、物件購入前から行うのが理想です。物件の構造や所在地で耐用年数や固定資産税評価が変わるため、購入後に節税プランを修正するのは難しい場合があります。専門家費用は年間20万〜30万円が相場ですが、追徴リスクや機会損失を防ぐ保険料と考えれば高くありません。
実際に筆者自身、築古アパートの修繕費を資本的支出と判定され、200万円の減価償却調整を余儀なくされた経験があります。事前に税理士チェックを受けていれば回避できたミスでした。節税を持続的なメリットに変えるには、記録の厳格さと専門家の伴走が欠かせないと痛感しています。
まとめ
ここまで「節税 不動産投資 体験談」を通じて、減価償却・必要経費・法人化という三つの王道テクニックと、その裏側に潜むリスクを確認しました。要するに、税金メリットは物件タイプや規模、保有期間によって姿を変えるため、数字上のシミュレーションと現場の実情を照らし合わせることが成功の近道です。最初は中古ワンルームで仕組みを体感し、規模を広げながら法人化を視野に入れるステップが無理のない流れでしょう。
最後に行動提案です。まずは自分の給与所得と将来のライフプランを一覧にし、どの程度の赤字幅まで許容できるかを可視化してください。そのうえで、信頼できる税理士や不動産会社に相談し、最新制度を踏まえたシミュレーションを作成しましょう。「節税」は目的ではなく、長期的な資産形成を加速させる手段です。正しい知識と準備で、あなたも税金を味方に付けた堅実な不動産投資家への第一歩を踏み出してください。
参考文献・出典
- 国税庁 – https://www.nta.go.jp/
- 国土交通省 住宅市場動向調査2024年度 – https://www.mlit.go.jp/
- 総務省 住宅・土地統計調査2023 – https://www.stat.go.jp/
- 金融庁 金融モニタリングレポート2024 – https://www.fsa.go.jp/
- 中小企業庁 小規模企業共済制度の概要2025年度版 – https://www.chusho.meti.go.jp/