家賃は上がるのに給与は伸び悩み、将来の年金も不透明。そのため「副収入を得る手段として不動産投資に興味があるが、一歩を踏み出せない」という声をよく耳にします。特にシェアハウスは少額から始められ、交流ニーズの高まりで需要が続くと言われますが、運営の手間や空室リスクを不安に感じる人も多いでしょう。本記事では「基礎知識 不動産投資 シェアハウス」をキーワードに、仕組みから物件選び、最新制度までを体系的に解説します。読み終えた頃には、自分に合った投資判断の軸が見えるはずです。
シェアハウス投資の仕組みを理解する

ポイントは、通常の賃貸とシェアハウス運営の違いを押さえることです。シェアハウスでは一つの戸建てやマンションを複数の入居者に部屋単位で貸し出し、家賃総額を高めることで収益率を引き上げます。
まず、家賃設定の考え方が異なります。ワンルーム賃貸は空室率が低くても一人からしか収入を得られませんが、シェアハウスなら四部屋運営で一部屋空いても家賃の75%は確保できます。また、共用部の光熱費を家賃に上乗せする形で定額徴収するため、実質管理費をコントロールしやすい点も魅力です。
一方で契約形態は「定期借家契約」を用いるケースが主流です。三〜六か月ごとに再契約するため、部屋数が多いほど事務作業が増えます。さらに家具家電を備え付ける場合、初期投資額が表面利回りを圧迫しやすいので、減価償却期間を意識した資金計画が不可欠です。
実は、近年は運営代行会社を活用するオーナーが増えています。家賃の10〜15%程度を手数料として支払う代わりに、入居者募集からトラブル対応まで外注できるため、サラリーマン投資家でも参入しやすくなりました。運営モデルを比較し、労力と収益のバランスを見極めることが出発点になります。
市場動向と需要を読み解く

まず押さえておきたいのは、シェアハウス需要が20代後半から30代前半を中心に安定している点です。総務省「住生活基本調査」では、単身世帯のうち交流志向を持つ層が2015年から2023年にかけて約1.3倍に増えました。特にリモートワーク普及後、家賃を抑えつつコミュニティを求める動きが地方都市まで拡大しています。
しかし、需要は全国一律ではありません。東京都心では外国人留学生とIT系フリーランサーが入居者の半数を占める一方、政令市の郊外では看護師寮の代替需要や地方企業の短期転勤ニーズが主力です。物件立地とターゲット属性がずれると空室期間が長引くので、人口動態と求人倍率を組み合わせて分析することが重要です。
観光需要に連動したエリアも注目です。例えば大阪市此花区はユニバーサル・スタジオ周辺で外国人短期滞在が戻り、平均入居期間が3か月未満というデータが大阪市住宅政策室から公表されています。短期契約を前提にするなら、高回転でも損益分岐点を割らない料金設計が必須です。
最後に、供給過多リスクについて触れます。国土交通省の「賃貸住宅市場概況 2024年度版」では、許可取得済みシェアハウスの新規供給はピークだった2018年比で約6割に減少しました。これは融資姿勢の引き締めと行政の消防・建築基準強化が影響しています。新規参入が鈍化している今こそ、質の高い物件が選ばれる潮流に合わせれば差別化は容易です。
物件選びと立地戦略の基本
重要なのは、駅距離と商業施設の有無だけでなく、コミュニティ形成に適した間取りを重視する視点です。シェアハウスではLDKの広さと水回り設備数が入居満足度を左右します。国交省の指針では、10人以下規模なら洗面台2カ所以上、浴室1.5カ所相当が推奨とされています。
まず、築古戸建てをリノベーションする手法があります。取得価格が抑えられるため利回りを取りやすい反面、耐震補強や防火仕様への改修費がかさむケースが多く、結果的に総投資額が新築より高くなる例も珍しくありません。購入前にインスペクション(建物診断)を実施し、予定工事費を具体化しておくと資金ブレを抑えられます。
一方で新築企画は、設計段階から個室の遮音性やスマートロックを組み込めるため、若年層からの支持が高い傾向です。ただし土地取得費が都心で高騰しているため、利回り確保には延床面積の最適化が鍵を握ります。例えば杉並区の木造三階建て10室タイプでは、建築コストを平米単価28万円に抑えられれば表面利回り8%超も現実的です。
さらに、近隣の行政計画を必ず確認しましょう。用途地域変更や再開発が予定されているエリアでは、将来の売却益が期待できる半面、建築規制が強化される場合があります。自治体の都市計画課にヒアリングし、投資期間に応じた出口戦略を描くことが成功への近道です。
収支計画とリスク管理の実践
まず押さえておきたいのは、キャッシュフローを「保守的に」試算する姿勢です。空室率は全国平均より5ポイント高い数値を入れ、共用部の水道光熱費は季節変動を考慮して上限値で計算することで、想定外の赤字を避けられます。
金融機関の融資は、2025年時点でも木造シェアハウスは最長22年が一般的です。金利は変動型で1.9〜2.6%のレンジが多いものの、地方銀行では地域活性化の観点から優遇金利を提示する例もあります。複数行に事業計画書を提出し、金利だけでなく融資期間と団体信用生命保険の内容まで比較することが大切です。
リスク管理では、火災保険と施設賠償責任保険のセット加入が必須です。共用キッチンからの火災事故や入居者間トラブルによる損害賠償は、高額化しやすいためです。年間保険料は延床120㎡でおおむね8万円前後ですが、免責金額を上げることで保険料を抑えつつ、自己資金で対応可能な範囲を見定める方法もあります。
空室対策としては、SNS広告とポータルサイトを併用し、ターゲットに応じた訴求を行います。例えば外国人留学生向けには英語表記の動画内覧を用意し、地方出身者向けには家賃保証プランを提示するなど、細分化したマーケティングが効果的です。適切なPRにより平均入居期間を延ばせれば、実質利回りの底上げにつながります。
2025年度に活用できる制度・税制優遇
実は、2025年度も小規模住宅投資を後押しする仕組みが残っています。代表的なのが「住宅取得等資金贈与の特例」です。親や祖父母からの贈与で、一定の省エネ基準を満たす住宅なら1000万円まで非課税となります(2025年12月31日契約締結分まで)。シェアハウスでも要件を満たせば利用可能で、自己資金率を高めて融資条件を有利にできます。
また、国税庁の「青色申告特別控除」は不動産所得にも適用されます。帳簿を電子保存しe-Taxで申告するだけで65万円控除が受けられるため、課税所得が高いサラリーマンほど節税メリットが大きいです。帳簿付けが面倒に感じる場合は、クラウド会計ソフトを導入すると手間が激減します。
固定資産税については、「新築住宅に係る軽減措置」が2025年度も継続しています。床面積が50〜120㎡であれば、建物部分の固定資産税が3年間半額になります。シェアハウスは個室面積を抑えつつ総床面積を調整しやすいので、軽減要件を満たす設計がしやすい点が利点です。
さらに、自治体独自の補助金にも注目です。例えば福岡市の「空き家活用促進補助金(2025年度)」では、耐震改修を伴う共同住宅化に対して上限200万円が交付されます。制度は年度ごとに予算枠が変動するため、計画初期に自治体窓口へ最新情報を確認し、交付申請のスケジュールを逆算しましょう。
まとめ
本記事ではシェアハウス投資の仕組み、市場動向、物件選び、収支計画、そして2025年度に使える制度までを総合的に解説しました。要は、需要のあるターゲットを明確にし、立地と間取りを最適化し、保守的な収支計画を立てれば、シェアハウスは安定収益をもたらす選択肢になります。次のステップとして、気になるエリアで現地調査を行い、金融機関へ事業計画書を持ち込む行動を起こしてみてください。小さな一歩が、将来の大きな資産形成につながるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅局 「賃貸住宅市場概況 2024年度版」 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 「住生活基本調査 2023」 – https://www.stat.go.jp
- 国税庁 「住宅取得等資金の贈与税非課税措置」 – https://www.nta.go.jp
- 国税庁 「青色申告特別控除に関する手引き 2025」 – https://www.nta.go.jp
- 福岡市 住宅都市局 「空き家活用促進補助金 2025年度要綱」 – https://www.city.fukuoka.lg.jp