人が減る地域と伸びる地域が入り混じるいま、不動産投資を始めたいと思っても「どこを選べば失敗しないのか」と迷う方は多いはずです。立地の良し悪しは家賃収入の安定性や資産価値の維持に直結しますが、人口動態や再開発計画を単に調べるだけでは足りません。本記事では、15年以上にわたり収益物件を扱ってきた筆者が、立地選定と長期投資の関係を基礎から解説します。将来性をデータで読み解く方法、実務で使えるチェックポイント、2025年度に活用できる支援策まで網羅しますので、最後まで読めば「買っていいエリア」と「避けるべきエリア」を見極める力が身につきます。
立地選定が長期投資で最重要となる理由

重要なのは、立地がすべてのキャッシュフローを左右するという事実を理解することです。賃料、空室率、修繕コストの三要素はエリア特性に大きく影響されるため、物件スペックよりも立地選定が長期投資の成否を決めます。
まず賃料水準は周辺の雇用機会と交通利便性で決まります。国土交通省「土地総合情報システム」によれば、駅から徒歩10分以内の区分マンションは同20分超より平均賃料が約17%高いという結果が出ています。つまり利便性の高い立地は長期にわたり高い家賃を維持しやすいのです。
次に空室リスクです。総務省の将来推計人口では、全国の世帯数は2030年にピークを迎え、その後減少に転じます。ただし都市部の20〜40代人口は一定程度集中し続ける見込みで、地方圏との明暗が鮮明です。投資家はこの人口移動を踏まえ、賃貸ニーズが縮まらない地域を選ぶ必要があります。
さらに修繕費の負担も立地によって違いが出ます。都市中心部は築古物件でも市場価格が底堅く、売却して建て替えや大規模修繕に充てられるケースが多い一方、郊外で同じ築年数になると値下がり幅が大きく資金回収が難しくなります。長期投資では出口戦略も視野に、立地が持つリセールバリューを重視しましょう。
データで読む地域の将来性

まず押さえておきたいのは、公開データを組み合わせることで将来の賃貸需要を高い精度で予測できる点です。人口統計、開発計画、就業者数は無料で閲覧できるため、活用しない手はありません。
筆者が最初に確認するのは総務省「地域別将来推計人口」です。この資料から15〜49歳の人口増減率を抽出し、プラスの自治体だけを候補に絞ります。若年・現役層が増える地域は賃貸需要が長期的に見込めるからです。
次に国交省「都市計画情報」をチェックします。再開発区域や新駅設置が決定している場所は、完成前から地価上昇が始まることが多く、家賃アップの余地も大きい傾向があります。ただし一時的なバブルにならないよう、就業人口の増加見込みとセットで判断することが欠かせません。
最後に厚生労働省の「雇用保険事業年報」で雇用保険加入者数を見ます。企業が集まり労働者が増えるエリアは賃貸ニーズが持続しやすいため、人口だけでなく雇用動向まで確認することで、立地選定 長期投資の精度がさらに高まります。これらのデータを地図上に重ねて可視化すると、成長ポテンシャルの高いエリアが浮かび上がります。
実践的なエリア分析の手順
ポイントは、マクロデータで絞った後に現地でミクロ確認を行い、数字と肌感覚をすり合わせることです。ここでは筆者が実際に行う三段階プロセスを紹介します。
第一段階は「歩いて調べる」ことです。駅から物件候補までの動線を歩き、コンビニやカフェの入れ替わりが激しいかを観察します。短期間で閉店・開店を繰り返す区域は地元消費が弱い可能性があり、長期保有には不安が残ります。
第二段階では、賃貸仲介会社を訪ね家賃相場と客層をヒアリングします。例えば「単身向け1Kの平均入居期間は?」と聞くと、回転率の高低が分かり、将来のリフォーム費用を想定しやすくなります。また、「法人契約の割合」を聞くことで、景気変動に強いかを推測できます。
第三段階は、役所でインフラ計画やハザードマップを確認することです。下水道更新予定が無いエリアは突発的な負担増を招く恐れがあり、長期投資に向きません。一方、高台移転促進地区に指定されている区域は、災害リスク低減に加えて補助金対象になるケースがあるためプラス要因になります。以上の手順を踏めば、机上の空論に終わらない立地選定が可能です。
立地と物件タイプの最適な組み合わせ
実は、優良立地でも物件タイプを誤ると収益性が大きく損なわれます。需要が集中するターゲットに合わせて、間取りや築年数を選ぶことが欠かせません。
都心ビジネス街では、30㎡前後の1DKが単身ビジネスパーソンに人気で、平均入居期間は総務省の住宅・土地統計調査によると3.2年と比較的長めです。家賃は高めでも、入居者の転居頻度が低いため、長期保有で修繕費を抑えやすい利点があります。
一方、大学が複数立地する郊外エリアでは15〜20㎡の1Kが主流です。家賃設定は控えめになりますが、入居者が毎年入れ替わる分だけ原状回復費がかさみます。したがって賃料収入と修繕費のバランスを取りやすい築浅物件を選び、家賃よりも回転率で勝負する戦略が向いています。
住宅地として歴史のある郊外では70㎡前後のファミリー向け区分マンションが長期投資に有効です。小学校の評判や公園の整備状況が家賃維持の鍵になります。ここでは管理組合の財務状態を必ず確認しましょう。修繕積立金が不足していると、追加徴収で利回りが下がるおそれがあるからです。
2025年度に活用できる税制・補助制度
まず押さえておきたいのは、制度は「使える時に使う」のが鉄則という点です。2025年度時点で新規投資家が利用可能な代表的制度を整理します。
住宅ローン減税は2025年入居分まで控除枠が残っており、賃貸併用住宅であれば居住部分に対する所得税控除を受けられます。また、認定長期優良住宅を建築すると、不動産取得税が1200万円控除、登録免許税が0.1%軽減となる特例も2025年度末まで継続予定です。
固定資産税については、新築賃貸住宅に対する3年間の1/2軽減措置が引き続き適用されます。さらに一部自治体では、空き家再生を目的にリフォーム費用の1/3を上限200万円まで補助する「2025年度空き家利活用支援事業」を実施中です。対象地域や条件は自治体ごとに異なるため、購入前に役所で確認してください。
これら優遇措置を組み合わせると、自己資金を効率よく温存しながら立地選定 長期投資を行えます。ただし制度には期限があるため、検討期間をダラダラ延ばすと知らぬ間に適用外になるおそれがあります。タイムラインを逆算し、物件選びと申請準備を並行して進めることが肝要です。
まとめ
本記事では、立地選定と長期投資の密接な関係をデータと実務の両面から解説しました。人口動態・雇用統計・再開発情報を重ね合わせることで成長エリアを見極め、現地調査と賃貸市場ヒアリングで数字を裏付ける手法を紹介しました。また、物件タイプを立地特性に合わせる重要性と、2025年度まで利用できる税制・補助制度も確認しました。不動産投資は一朝一夕で成果が出るものではありませんが、本記事のステップを踏めば、ブレない指針を持って物件を選定できるはずです。今日からデータ収集を始め、現地を歩き、自分の投資エリアを自信を持って決めてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 土地総合情報システム – https://www.land.mlit.go.jp/
- 総務省 地域別将来推計人口 – https://www.stat.go.jp/
- 厚生労働省 雇用保険事業年報 – https://www.mhlw.go.jp/
- 国土交通省 都市計画情報ダウンロードサービス – https://www.mlit.go.jp/toshiseibi/
- 財務省 税制改正の解説2025年度版 – https://www.mof.go.jp/