家賃収入で将来の資産形成を狙いたいものの、収益物件に本当に必要な資金や知識が分からず一歩を踏み出せない方は多いはずです。この記事では15年以上の実務経験をもとに、購入前に押さえておくべき資金計画や立地選定、2025年度の最新税制までを丁寧に解説します。最後まで読むことで、自分にどのくらいの自己資金が必要なのか、買ってから何を管理すれば良いのかがイメージできるようになります。
収益物件に必要な資金計画

ポイントは、物件価格だけでなく諸費用と運営費を含めた総投資額を把握することです。
重要なのは、まずイニシャルコストを正確に積み上げることです。仲介手数料、登記費用、火災保険料、銀行事務手数料を合計すると物件価格の7〜10%が目安になります。さらに、購入時に日割りで請求される固定資産税等精算金も忘れがちなので注意が必要です。
続いて自己資金と融資のバランスを決めます。国土交通省の2025年住宅市場動向調査によると、投資用不動産購入者の平均自己資金比率は約21%でした。金融機関は自己資金2〜3割を目安に審査を行うため、1億円のアパートなら少なくとも2,000万円を準備すると返済比率が安定します。また、予備費として家賃3か月分程度を手元に置くと、空室や修繕への対応がスムーズになります。
最後にキャッシュフローをシビアに吟味しましょう。家賃収入から返済額と管理費等を差し引いた手残りがプラス10%以上であれば、金利上昇や空室率悪化にも耐えやすい体質です。2025年時点で都市銀行の投資用ローン金利は変動型で1.3〜1.8%が主流ですが、今後の政策金利次第では上昇余地があります。返済シミュレーションには金利+1%のストレスシナリオを入れておくと安心です。
立地と需要を見極める視点

まず押さえておきたいのは、立地が長期の収益を大きく左右するという事実です。
人口動態を確認すると、総務省統計局の2023年住宅・土地統計調査では、三大都市圏の単身世帯比率が35%を超え過去最高となりました。この層はワンルーム需要を押し上げるため、駅徒歩10分以内の物件は依然として空室リスクが低い状況です。一方、郊外や地方都市でも駅近×駐車場付きファミリー物件は根強い需要があり、エリア特性を把握することが収益最大化の鍵になります。
次に交通インフラの将来計画をチェックします。国土交通省の都市計画資料によると、2025〜2030年にかけて地下鉄延伸や新駅開業が予定されている地域は複数あります。インフラ整備は賃料上昇の可能性を高めるため、長期投資では未開発エリアのポテンシャルにも目を向けたいところです。
また、大学や大型病院、再開発エリアなど雇用や流入人口を生み出す施設の近隣は、築古物件でも回転率が高く安定しやすい傾向にあります。つまり、表面的な利回りよりも、賃貸需要を裏付ける人口・雇用データを重視することがリスクを抑える近道です。
物件タイプ別に見る収益性のカギ
実は、同じ立地でも物件タイプによって収益構造は大きく異なります。
ワンルームマンションは管理がシンプルで入居付けが早い一方、賃料下落が早い点がデメリットです。築10年で平均賃料が5〜10%下がるという東京カンテイの2024年データを踏まえると、購入時の想定利回りを高めに取る必要があります。
これに対し、木造アパートは建築コストが抑えられるため表面利回りが高く出やすいです。ただし、法定耐用年数が22年と短く、金融機関の融資期間が制限されやすい点に注意が必要です。返済期間が短いと月々のキャッシュフローが圧迫されるため、自己資金比率を上げるか、RC造への投資も比較検討すると良いでしょう。
一方で、築古のRCマンションを一棟ごと取得し、共用部をリノベーションして付加価値を高める戦略も有効です。修繕費をかけて賃料を3,000円上げられれば、年間では戸数×3,000円×12か月の収入増となり、表面利回りが1%以上向上する事例も珍しくありません。つまり、物件タイプの特性を理解し、改善余地まで織り込んだ上で購入判断を行うことが重要です。
管理体制とランニングコストの把握
まず押さえておきたいのは、収益物件の成否は購入後の運営にかかっている点です。
管理委託に出す場合、管理料は家賃の3〜5%が相場です。加えて24時間サポートや退去立会い費用などのオプションを付けると、実質で6%前後になるケースもあります。月額ベースでは小さく見えても、年間では利回りを大きく削るため、委託内容とコストを細かく比較しましょう。
自主管理を選ぶと確かにコストは抑えられます。しかし、賃貸借契約やトラブル対応をすべて自分で行う負担は小さくありません。特に夜間の水漏れや滞納督促は精神的なストレスとなりやすく、副業として投資する場合は代行会社の活用が現実的です。
修繕積立の計画も欠かせません。国交省「民間賃貸住宅の修繕調査」(2024年速報)では、築20年を超える物件の平均修繕費が年間家賃収入の7%に達しています。屋上防水や給排水管更新など高額修繕が発生すると、1回で数百万円になるため、毎月家賃収入の10%を修繕積立として内部留保すると安全です。
2025年度の税制・補助制度を押さえる
ポイントは、税制優遇を活用して実質利回りを底上げすることです。
2025年度も賃貸住宅の減価償却制度は現行通りで、木造22年、RC47年の法定耐用年数による定額法が採用されています。築古物件を購入した場合、残存耐用年数が短いため償却費を大きく計上でき、所得税や住民税の節税効果が高まります。
住宅ローン控除は自宅取得向け制度のため収益物件には適用されませんが、賃貸併用住宅の場合は居住部分の床面積が50%以上であれば、居住部分のみ控除対象となるのが2025年度のルールです。また、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は個人事業として不動産賃貸業を営む場合も利用でき、掛金を全額損金計上できるメリットがあります。
固定資産税に関しては、2025年度も住宅用地特例が継続しており、200㎡以下の小規模住宅用地は課税標準が6分の1に軽減されます。敷地が広い場合でも200㎡を超える部分は3分の1の軽減を受けられるため、土地値の高い都市部では実質利回りを押し上げる要因となります。期限付きの補助金は地域差が大きいため、具体的な金額は各自治体の2025年度予算案を確認することが大切です。
まとめ
ここまで、収益物件 必要 な資金計画から立地選び、物件タイプごとの収益構造、運営コスト、2025年度の税制までを俯瞰しました。一つずつ整理すると、自分に適した物件規模や自己資金の目安がはっきり見えてくるはずです。最終的には、堅実な資金計画と需要を支える立地を前提に、長期的な修繕と税務まで織り込んだシミュレーションを作ることが成功への近道です。まずは信頼できる管理会社や税理士に相談し、数字を確かめたうえで一歩を踏み出してみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅市場動向調査2025年版 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査2023 – https://www.stat.go.jp
- 東京カンテイ 市場レポート2024 – https://www.kantei.ne.jp
- 国土交通省 民間賃貸住宅の修繕調査2024速報 – https://www.mlit.go.jp
- 金融庁 2025年金融レポート – https://www.fsa.go.jp