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主婦のためのアパート経営と修繕費管理

家計を預かる立場として、毎月の収入をもう一歩増やしたいと考える主婦の方は少なくありません。しかし株や暗号資産は値動きが激しく、長期的に安定しづらい点が気掛かりです。その点、アパート経営は毎月の家賃収入という“見えるお金”が得られるうえ、将来の年金代わりにもなり得ます。とはいえ、思わぬ修繕費がかさみ赤字になるケースもあるため、費用管理のコツを知らずに始めるのは危険です。この記事では、主婦が取り組みやすいアパート経営の特徴と、2025年時点で押さえるべき修繕費対策を具体例とともに解説します。

アパート経営が主婦に向く理由

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まず押さえておきたいのは、アパート経営が家事や育児と両立しやすい点です。実際の管理業務の大半は管理会社に委託できるため、日中の時間を奪われにくいからです。一方で決算書の確認や修繕計画はオーナー自身の判断が必要となり、家計簿をつけ慣れた主婦なら数字に対する抵抗感が低いという強みがあります。

国土交通省の2025年7月住宅統計によると、全国のアパート空室率は21.2%で前年より0.3ポイント改善しました。つまり全体の競争はまだ厳しいものの、適切な立地と物件管理を行えば入居獲得の余地が残っていると言えます。家賃が毎月振り込まれると生活に余裕が生まれ、子どもの教育費や老後資金に回せるのも大きな魅力です。

しかし安定収入を得るためには、修繕費とローン返済を同時に賄えるキャッシュフロー設計が欠かせません。次の章では、修繕費がいつ、どの程度発生するのかを具体的に整理します。

修繕費の基本と発生タイミング

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重要なのは、修繕費には「突発」と「計画」の二種類があると理解することです。突発修繕とは給湯器の故障や水漏れのように突然発生し、即時対応が必要になります。一方、計画修繕は外壁塗装や屋上防水のように十年単位で実施時期が予測できる工事です。

一般的な木造アパートの場合、築十〜十五年で屋根や外壁の塗装に一戸当たり60万〜80万円、給湯器交換は八年ごとに15万円前後が目安です。この数字を家賃収入から逆算し、毎月一部を修繕積立に回す仕組みを作ると突然の出費でも慌てずに済みます。

また、2025年度の建築基準法改正により、屋根材の耐風性能基準が引き上げられました。それに伴い屋根の張り替えコストが従来より1〜2割高くなる地域もあります。つまり法改正による工事費の上昇リスクを含め、余裕を持った積立設定が必要になります。

キャッシュフローに修繕費を組み込むコツ

ポイントは、家賃収入の中から「返済」「積立」「生活予備費」を三つの口座に自動振替することです。こうすることで資金管理が可視化され、使途の混在を防げます。例えば月々の家賃が25万円、ローン返済が15万円の場合、残り10万円のうち3万円を修繕積立、2万円を生活予備費、5万円を生活費に回すといった具合です。

金融機関の中には、家賃振込専用の子口座を無料で設定できるサービスがあります。主婦の方なら家計口座と明確に分けることで、家計簿とアパート経営の帳簿を混同せずに済み、確定申告も楽になります。また2025年度税制では、共用部分のLED照明交換や高効率給湯器の導入費用を30万円まで即時償却できる措置が続いています。償却とは費用を一度に経費計上し課税所得を減らす仕組みで、家計の手取りを増やす効果があります。

家賃下落に備えるシミュレーションも不可欠です。空室率21.2%という数字を踏まえ、満室想定家賃の80%でも黒字を維持できるか試算しておくと、安全余裕度を客観的に確認できます。

節税と補助金を活用した修繕費対策

実は修繕費の負担を軽くする制度が複数存在します。2025年度の住宅省エネリフォーム推進事業は、外壁断熱改修や高性能サッシ設置に対して一戸当たり最大60万円の補助が受けられます。対象工事はCO2削減効果が一定基準を満たす必要があるものの、工事項目に外壁塗装を組み込めば実質負担を圧縮できます。

固定資産税についても、長期優良化リフォームを行うと翌年度から三年間、税額が最大1/2に軽減される措置が2025年度まで継続しています。固定資産税は毎年必ず発生するため、軽減効果は家計に直結します。

ただし申請書類は専門用語が多く手続きに時間がかかるため、建築士と行政書士が連携している工務店を選ぶとスムーズです。費用対効果を高めるには、補助金の採択後に工事を始める必要がある点を忘れないようにしましょう。

失敗を防ぐパートナー選び

基本的に、管理会社や工務店は“価格”だけで選ばず“提案力”と“透明性”を重視することが大切です。例えば見積書に「一式」とだけ記載し単価が不明瞭な会社は、実際の工事内容が把握しにくく、費用超過につながりやすいからです。

一方、写真付きで劣化箇所を示し、材料のグレード別に複数案を提示してくれる会社はオーナー目線で考えている傾向があります。主婦ならではの「細かなチェック力」を活かし、見えない箇所も遠慮なく質問すると良いでしょう。

加えて、2025年以降はアパート管理適正化法により、管理業者は国への届出が義務化されました。登録番号を公式サイトで確認できる会社は、法令順守の姿勢が明確です。パートナー選びは修繕費抑制だけでなく入居者満足度を左右し、長期的な空室対策にもつながります。

まとめ

ここまで、主婦がアパート経営で安定収入を得るために不可欠な修繕費管理の基礎を解説しました。突発と計画を分けて積立を行い、家賃振込口座から自動で振り分ける仕組みを作れば、家計への影響を最小限に抑えられます。さらに2025年度の省エネリフォーム補助や固定資産税軽減を活用すれば、費用の三割程度を削減できるケースもあります。まずは信頼できる管理会社と工務店を選び、十年先を見据えた修繕計画を立てることが第一歩です。今月からでも小さな積立を始め、将来の安心につなげていきましょう。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅統計調査 2025年7月速報 – https://www.mlit.go.jp/
  • 国土交通省 アパート管理適正化法ガイドライン 2025年版 – https://www.mlit.go.jp/
  • 経済産業省 2025年度住宅省エネリフォーム推進事業 – https://www.meti.go.jp/
  • 国税庁 令和7年度(2025年度)税制改正大綱 – https://www.nta.go.jp/
  • 総務省 固定資産税の軽減措置に関する手引き 2025年 – https://www.soumu.go.jp/
  • 環境省 断熱改修によるCO2削減効果試算ツール 2025年版 – https://www.env.go.jp/

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