不動産投資に興味はあっても、「収益物件はどこで見つけるのか」「購入手順が分かりづらい」と感じる人は多いものです。情報が断片的だと、物件を探す前から挫折してしまいがちです。しかしポイントを押さえれば、初心者でも着実に一歩を踏み出せます。本記事では立地選定の考え方から具体的な購入ステップまでを網羅し、読むだけで実践可能な流れを示します。読み終えたとき、あなたは投資エリアを絞り込み、次に取る行動を明確に描けているはずです。
収益物件探しの基本的な視点

重要なのは、「自分の投資目的」を最初に定義することです。長期保有でインカムゲインを重視するのか、短期売却によるキャピタルゲインを狙うのかで適切な物件やエリアが変わるからです。例えば安定収益なら、単身者向けマンションが集中する駅徒歩圏が有力候補になります。一方で値上がり益を期待するなら、再開発計画が進む地域やインフラ整備で人口流入が見込める郊外駅近に着目します。目的を明確にすることで、後の情報収集が無駄なく進みます。
次に考えるべきは「自分の管理体制」です。遠方物件は手間を外部委託しやすい利点があるものの、管理費が高くなります。近隣物件なら自主管理でコストを抑えやすいですが、トラブル対応の負担は増えます。つまり目的だけでなくライフスタイルとの相性も、物件選びの大切な軸となります。
エリア選定で押さえたい人口と賃貸需要

まず押さえておきたいのは、長期的に人口が維持されるかどうかです。総務省「住民基本台帳人口移動報告(2025年7月)」によると、東京都、福岡県、沖縄県は依然として転入超過が続いています。転入が続く地域では入居需要が読みやすく、空室リスクを抑えられます。また人口増減率だけでなく、世帯構成の変化にも注目しましょう。単身世帯が増えるエリアではワンルーム需要が高まり、ファミリー向け物件は伸び悩むことがあります。
さらに、賃料水準と所得水準のバランスも重要です。国土交通省「住宅市場動向調査(2024年度)」では、家賃負担率が平均で24%を超えると入居者の滞納リスクが高まると示されています。エリアの平均所得を調べ、家賃相場が手取りの25%前後に収まっているか確認してください。家賃が高すぎるエリアでは、景気後退期に急激な空室増となるケースがあります。
最後に、公共投資や再開発計画も判断材料になります。都市計画決定済みで具体的なスケジュールが示されている再開発は、資産価値を押し上げる可能性が高いからです。ただし計画段階にとどまる案件は延期リスクもあるため、工事着手済みかどうかを行政の公式資料で確認しましょう。
情報収集の具体的ルート
ポイントは、一次情報と二次情報を組み合わせることです。一次情報とは、不動産流通機構のレインズや不動産会社が保有する未公開物件データを指します。これらは価格交渉の余地が大きく、競争相手も少ないため好条件で取得できることがあります。一方、二次情報はポータルサイトやSNSで得られる市場感です。平均利回りや空室期間など、市場全体の動きをつかむのに役立ちます。
実は、金融機関からの紹介も見逃せません。融資を申し込む際、担当者が収益性の高い案件を持ち込んでくることがあります。銀行は貸し倒れを避けるため、一定の審査をクリアした物件しか勧めません。したがって、自己資金や返済実績を早期に整え、金融機関との信頼関係を築くことが情報網の拡大につながります。
最後に、現地調査の徹底が欠かせません。昼と夜で人通りや治安が変わるエリアも存在するため、時間帯を変えて訪れることが大切です。周辺の家賃看板をチェックすれば、ネット掲載より新しい賃料相場がつかめます。こうした地道な作業が、机上の数字を実現可能な計画へ近づけます。
購入手順とチェックポイント
購入手順は大まかに五段階に整理できます。
- 物件選定
- 収支シミュレーション
- 価格交渉・買付申込
- 融資審査
- 売買契約・引渡し
まず、物件選定後すぐに収支シミュレーションを行いましょう。家賃、管理費、修繕費、空室率5〜10%、金利上昇2%を織り込んだ試算を作ります。楽観シナリオと悲観シナリオの両方で黒字かを確認することで、想定外の出費に備えられます。
次に、買付申込書を提出する際には、指値の根拠を明確に伝えることが大切です。近隣の成約事例や建物の劣化状況を示すと、売主も価格交渉に応じやすくなります。国交省「不動産価格指数(2025年4月)」を引用し、市場平均を下回る利回りなら価格調整が必要だと論理的に説得しましょう。
融資審査では、物件の担保評価だけでなく、個人の返済能力が重視されます。年収500万円の場合、フルローンを避け自己資金1割を用意すると審査通過率が高まります。また、金融機関によっては耐用年数を超える融資期間を認めないため、木造アパートよりRC造マンションの方が長期融資を受けやすい傾向があります。
引渡し前の最終確認として、インスペクション(建物状況調査)を依頼しましょう。2025年度はインスペクション結果の説明が宅建業法で義務化されており、報告書に基づき修繕計画を組み立てられます。ここで水回りや屋上防水の劣化度合いを把握しておくと、突発的な出費を避けられます。
融資と資金計画の組み立て方
まず押さえておきたいのは、金利タイプの選択です。日銀の長期金利は2025年4月に1.1%前後で推移し、国内銀行の投資用ローン固定金利は2.5%台が目安になっています。変動金利型は1.8%程度と低いものの、金利上昇リスクを負います。返済比率が家賃収入の50%を超える場合は、固定金利の安心感を優先した方が無難です。
自己資金の確保方法としては、退職金制度の活用や、つみたてNISAの利益確定が考えられます。ただし全額を頭金に充当すると、突発的な修繕や空室発生への備えが不十分になる恐れがあります。理想的には物件価格の20%を頭金、さらに家賃3カ月分相当を運転資金として残すと、キャッシュフローのブレが小さくなります。
また、法人化による節税を検討するタイミングも重要です。年間家賃収入が1,000万円を超えると実効税率の差が顕著になり、法人化が有利となるケースが多く見られます。しかし設立費用や社会保険料負担が増えるため、税理士と試算を行ったうえで判断してください。
最後に、長期の資金繰り表を作成しましょう。家賃下落率を年1%で見込み、10年後のキャッシュフローが黒字なら安全圏に入ります。国土交通省「不動産投資市場動向(2025年版)」では、平均家賃の年下落率が0.7%と示されており、これを上回る保守的な前提で計画することがリスク管理につながります。
まとめ
本記事では、収益物件を「どこで」探し、「購入手順」をどう進めるかを体系的に解説しました。投資目的と管理体制を明確にし、人口動態や家賃水準を踏まえてエリアを選定することが成功の土台となります。そのうえで一次情報と二次情報を組み合わせ、机上と現地のギャップを埋める調査が欠かせません。さらに、保守的なシミュレーションとインスペクションを通じ、リスクを数値化してから契約に臨めば、想定外の出費を大幅に減らせます。まずは本記事で紹介した五段階の手順を自分の案件に当てはめ、具体的な行動計画を書き出してみてください。早めの一歩が、将来の安定収入を生む第一歩となります。
参考文献・出典
- 総務省統計局 – https://www.stat.go.jp/data/idou/
- 国土交通省 住宅局「住宅市場動向調査」 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/
- 国土交通省 不動産・建設経済局「不動産価格指数」 – https://www.mlit.go.jp/pri_fudosan_price_index/
- 日本銀行「長期金利の推移」 – https://www.boj.or.jp/statistics/
- 国土交通省「不動産投資市場動向調査」 – https://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_tk5_000062.html