不動産投資に興味はあるものの、物件を直接買うのはハードルが高い――そんな悩みを抱えていませんか。そこで注目されるのが「REIT(不動産投資信託)」です。少額から始められ、分配金という形で利回りが期待できるため、資産形成の選択肢として人気が高まっています。本記事では、REITの基本から利回りの見方、2025年時点の市場環境までを丁寧に解説し、初心者が自信を持って第一歩を踏み出すための具体策をお伝えします。読み終えるころには、REITを使った長期的な資産形成のイメージが具体的に描けるはずです。
REITとは何か

まず押さえておきたいのは、REITが「Real Estate Investment Trust」の略で、日本語では不動産投資信託と訳される点です。投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設を購入し、そこから得られる賃料や売却益を分配金として投資家に還元します。言い換えると、個人でも小口で不動産オーナーの一員になれる仕組みなのです。
さらに、東京証券取引所に上場しているJ-REITは株式と同じように売買でき、価格がリアルタイムで変動します。これにより、伝統的な不動産投資よりも流動性が高く、売買のタイミングを柔軟に選べる点が特徴です。一方で市場価格が下がれば元本割れのリスクもあるため、値動きの仕組みを理解することが欠かせません。
実は、REITにはオフィス特化型や住宅特化型、さらには物流施設に投資するものなど、多彩な種類があります。ポートフォリオが分散されている総合型REITは景気変動の影響を受けにくい傾向があり、初心者にも取り組みやすい選択肢と言えるでしょう。
利回りを正しく理解する

重要なのは、利回りにも複数の指標がある点を知ることです。最も目にする「予想分配金利回り」は、直近の分配金見込みを基に算出された数字で、株式でいう配当利回りにあたります。つまり、投資額に対してどれだけキャッシュを受け取れるかを示す目安です。
一方、投資パフォーマンスをより正確に把握したい場合は「トータルリターン」を確認しましょう。これは分配金に加えて、売買による値上がり益・損を含めた総合的な利回りです。2025年10月時点で東証REIT指数の年初来トータルリターンは5.8%(日本取引所グループ調べ)となっており、低金利環境下では魅力的な水準と言えます。
また、利回りは物件取得価格や運営コストの変化で左右されるため、過去データだけでなく運用会社の戦略や借入金利の動向を合わせて確認することが欠かせません。特に金利上昇局面では、借入コスト増が分配金を圧迫するリスクがあるため、財務内容が健全な銘柄を選ぶ姿勢が求められます。
資産形成に生かすポートフォリオ戦略
ポイントは、REITを単独で保有するのではなく、株式や債券、現金と組み合わせて分散投資を行うことです。内閣府の「国民経済計算」によると、日本の家計金融資産は約2,200兆円のうち現預金が50%以上を占めますが、低金利では資産が増えにくい状況が続いています。そこでREITを組み込むことで、インカムゲイン(分配金)とキャピタルゲイン(値上がり益)の両方を狙えるようになります。
例えば、投資総額500万円のうち、株式40%、債券30%、REIT20%、現金10%という配分を考えてみましょう。REIT部分が年6%の分配金利回りを実現すれば、年間6万円のキャッシュフローが得られます。これは複利効果を高める再投資原資となり、長期保有で資産形成を加速させる要素になります。
さらに、2025年度も継続している「新しいNISA」の成長投資枠を活用すれば、年間240万円までのREIT投資から分配金・売却益が非課税になります。つまり、税引き後リターンを高めるうえで非常に有効な手段であり、制度上限の範囲で計画的に積立投資を行う価値があります。
2025年の市場動向とリスク管理
実は、2025年はオフィス市況の二極化が進んでいる点が注目されています。三菱地所のレポートでは、東京丸の内など一等地の空室率は3%台を維持する一方、周辺エリアでは8%前後まで上昇しています。この差がオフィス特化型REITの収益力に影響を与えているのです。
また、物流施設への需要は依然として堅調です。国土交通省の「物流関連施設着工統計」によれば、2025年1〜8月の新規着工床面積は前年同期比12%増でした。ネット通販の拡大で空室率が低水準なため、物流特化型REITは安定分配が期待されやすい状況にあります。
一方で、米国の利上げ動向や円安による輸入物価上昇が国内インフレを加速させ、金利にも上昇圧力がかかる可能性があります。金利1%の上昇でREITの分配金が平均0.4%下がるとの試算もあり、リスクシナリオを踏まえたうえで投資比率を調整することが大切です。ストップロスラインを事前に決めておく、複数銘柄に分散するなど、シンプルながら効果的なリスク管理が求められます。
初心者が今日からできる準備
まずは証券口座を開設し、REIT取引ができる環境を整えましょう。次に、東証REIT指数連動型のETF(上場投資信託)をチェックし、少額から値動きと分配金の仕組みに慣れることをおすすめします。
続いて、個別REITのIR資料を読む習慣を身につけると、物件ポートフォリオや借入比率、運営会社の方針が理解できます。IRページには平均賃料や稼働率の推移も掲載されており、利回りの裏付けを数字で確認できるため貴重な情報源です。
最後に、ライフプランに合わせて投資期間と出口戦略を明確にすることが欠かせません。例えば10年後に教育資金が必要なら、その時点で価格下落に備えた利益確定ルールを設定しておくと安心です。計画と検証を繰り返すプロセスこそが、REITを通じた堅実な資産形成への最短ルートと言えるでしょう。
まとめ
ここまで、REITの仕組みと利回りの見方、そして2025年の市場環境を踏まえた資産形成の方法を解説してきました。小口から参加できる流動性の高さと、安定した分配金がREIT最大の魅力です。一方で金利動向や物件市況の変化には注意が必要であり、分散投資と情報収集が成功の鍵となります。まずは少額から始めて経験を積み、NISAなどの非課税制度を活用しながら資産を着実に育てていきましょう。行動を起こすことでしか、リターンは生まれません。今日こそ第一歩を踏み出す最適なタイミングです。
参考文献・出典
- 日本取引所グループ(JPX) – https://www.jpx.co.jp
- 日本不動産研究所「不動産投資家調査」 – https://www.reinet.or.jp
- 国土交通省 物流関連施設着工統計 – https://www.mlit.go.jp
- 内閣府 国民経済計算 – https://www.cao.go.jp
- 三菱地所 総合レポート2025 – https://www.mec.co.jp