不動産融資

建築費は誰が負担する?投資家必見の仕組み

不動産投資を調べていると「建築費 誰が負担するのか」と疑問に感じる方が多いものです。自己資金をいくら用意すべきか、銀行融資はどこまで頼れるのか、そしてデベロッパーや施工会社との費用分担はどう決まるのか。これらは収益シミュレーションに直結する重大ポイントです。本記事では、建築費の内訳を整理しつつ、投資家・金融機関・施工会社それぞれの役割を具体例で解説します。読み終えた頃には、建築費の構造を理解し、コスト上昇リスクへの備え方まで把握できるはずです。

建築費の内訳をざっくり押さえる

建築費の内訳をざっくり押さえるのイメージ

まず押さえておきたいのは、建築費が「本体工事費」「付帯工事費」「諸経費」の三層で構成される点です。本体工事費とは建物そのものを造る費用で、床面積1㎡あたりの単価がもっとも注目されます。一方で付帯工事費には外構や造成、上下水引き込みなど、建物外で必要な工事が含まれ、立地条件によって大きく変動します。また諸経費には設計料、確認申請料、地盤調査費、そして2025年度も継続する建築確認申請手数料などが入り、全体の5〜10%を占めることが一般的です。つまり、坪単価だけで判断すると見落としが発生するため、三層を合算した「総建築費」で比較する習慣が重要になります。

総務省の「住宅・土地統計調査」(2023年版)によると、木造賃貸住宅の平均本体工事費は延べ床1㎡あたり約18万円ですが、諸経費を加えると実質は約22万円に跳ね上がります。数字だけを見ると小さな差に感じるかもしれません。しかし賃貸アパート300㎡の場合、諸経費の差額だけで1200万円規模になるため、投資家にとって無視できないインパクトです。こうしたデータを頭に入れておくと、見積もり書を受け取った際に「どこまでが本体で、どこからが付帯か」を冷静にチェックできます。

施主・デベロッパー・施工会社の役割

施主・デベロッパー・施工会社の役割のイメージ

ポイントは、建築費を「誰が決めて、誰が支払うか」が立場によって変わることです。一般的な個人投資家が賃貸アパートを建てる場合、施主である投資家自身が建築費を負担し、施工会社に一括請負方式で支払います。ここでデベロッパーが入るケースでは、デベロッパーが土地取得からプラン作成までを行い、投資家は完成物件を購入する形になります。この場合、建築費は物件価格に組み込まれており、表面上は「誰が払ったのか」が見えにくくなります。

一方で、マンション開発のような大型プロジェクトでは、デベロッパーが金融機関から開発資金を調達し、施工会社に分割払いで発注するのが一般的です。このとき投資家は完成後に区分所有権を購入する立場で、直接建築費を負担しません。しかし、原価が販売価格に転嫁されるため、最終的には買主がコストを吸収する構図となります。つまり「建築費 誰が負担するのか」という問いの答えは、契約スキームによって変わり、かつ回り回って最終的に投資家が負担することが多いのです。

融資と自己資金、実際に誰が支払うのか

実は、建築費を直接工務店へ支払う主体が投資家であっても、資金源は自己資金と融資の二本立てです。金融庁の「令和6年金融モニタリングレポート」によると、2025年時点で地方銀行の賃貸用融資は平均で建築費の約80%をカバーしています。そのため、自己資金を2割以上用意するのが目安になりますが、地盤改良やオプション工事が増えた場合は追加自己資金が必要になります。

支払いタイミングも重要です。多くの請負契約では「契約時10%」「上棟時30%」「引き渡し時60%」といった分割払いが採用されます。融資実行は建物完成後となるケースが多く、中間金の資金繰りをどうするかが課題になります。つなぎ融資を利用する方法もありますが、金利は年1.5〜2.0%程度とやや高めです。したがって自己資金に余裕がない投資家ほど、請負契約の支払い条件を交渉し、上棟時までに必要なキャッシュを減らす工夫が不可欠です。

コスト上昇リスクを誰が負担するのか

建設資材価格は近年上昇が続き、国土交通省の「建設工事費デフレーター」では2020年比で2024年に約14%上がりました。問題は、契約後に資材価格がさらに上昇した場合、追加費用を誰が負担するかです。契約形態が「固定価格契約」であれば施工会社がコストを吸収しますが、「実費精算契約」の場合は施主負担になります。投資家にとっては契約形態を理解し、価格上昇条項の有無を確認することがリスク管理につながります。

さらに、労務費高騰による人件費増も見逃せません。労務費は本体工事費の3〜4割を占めるため、職人不足が長引くと建築費全体に波及します。価格転嫁を避けたいなら、工期を短縮できるプレハブ工法やユニットバス一体成形など、施工効率の高い仕様を選ぶ手もあります。ただし初期コスト削減が長期の修繕費増につながる場合もあるので、ライフサイクルコストを合わせて検討することが重要です。

建築費を抑えるために投資家が取れる行動

まず押さえておきたいのは、見積もりの比較検討を怠らないことです。同じ延べ床面積でも、仕様の違いで建築費が1割以上変わることは珍しくありません。図面を複数社に提示し、統一フォーマットで見積もりを取れば、単価の違いが浮き彫りになります。また設計監理方式を採用し、設計事務所に施工チェックを依頼すると、不要な仕様変更を防げるメリットがあります。

さらに、2025年度の「ZEH賃貸支援補助金」は、一定の省エネ性能を満たす賃貸住宅に対し、1戸あたり最大70万円の補助が受けられます。期限は2026年3月交付申請分までです。建築費の一部を国が負担してくれるため、初期投資を下げつつ高い入居訴求力を得るチャンスになります。ポイントは、補助対象となる断熱材や設備の仕様を早い段階で確定し、申請スケジュールを施工会社と共有することです。

最後に、銀行への事業計画提出時には、材料価格上昇や空室リスクを盛り込んだシミュレーションを作成します。リスクを織り込んだ計画は審査担当者の信頼を高め、金利や融資割合の優遇につながることがあります。結論として、投資家自身が情報を集め、施工会社と金融機関の両方と交渉する姿勢こそが、建築費を最適化する最短ルートと言えるでしょう。

まとめ

建築費は本体工事費・付帯工事費・諸経費の三層からなり、契約スキームによって「誰が支払うのか」が変わります。個人投資家の場合でも、実質的には自己資金と融資が原資となり、追加費用や資材価格高騰リスクを負担するのは投資家自身です。だからこそ、見積もり比較や補助金活用、リスクを織り込んだ事業計画が欠かせません。読者のみなさんも、建築費の中身を把握し、交渉材料を増やすことで、長期的に安定したキャッシュフローを実現してください。

参考文献・出典

  • 総務省 住宅・土地統計調査 2023年版 – https://www.stat.go.jp
  • 国土交通省 建設工事費デフレーター 2024年 – https://www.mlit.go.jp
  • 金融庁 令和6年金融モニタリングレポート – https://www.fsa.go.jp
  • 環境省 ZEH賃貸支援事業 2025年度要綱 – https://www.env.go.jp
  • 日本建築学会 建築積算実務マニュアル 第4版 – https://www.aij.or.jp

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