不動産投資に興味はあるものの、変動する金利や市況に不安を覚える方は少なくありません。特に事務所物件は賃料水準やテナント動向の変化が早く、融資条件選びを誤るとキャッシュフローが一気に崩れるリスクがあります。そこで本記事では、固定金利を活用して事務所物件を安定運用するための考え方を整理します。読み進めることで、金利リスクを抑えつつ、長期的に収益を伸ばす手順が分かります。
固定金利の基礎と2025年の金利環境

重要なのは、固定金利が「借入期間を通じて金利が変わらない仕組み」である点です。日本銀行の長期金利統計によれば、2025年10月時点の10年物国債利回りは1.1%前後で推移しています。つまり金融機関が設定する長期固定金利も、2020年代前半よりやや高めながら依然として歴史的低水準にあります。また、変動金利が半年ごとに見直されるのに対し、固定金利は返済額が一定なため収支計画を立てやすい利点があります。
ただし、固定金利は初期の金利水準が変動型より高い傾向にあります。そのため、短期で売却する戦略には不向きになるケースがあります。一方で保有期間が10年以上の長期投資であれば、金利上昇局面でも返済額が変わらない安心感が大きな武器となります。つまり、事務所物件を堅実に育てたい投資家にとって、固定金利は選択肢の筆頭と言えるのです。
事務所物件に固定金利を使うメリット

まず押さえておきたいのは、事務所賃料の変動幅が住宅より大きい点です。テナント入れ替え時に賃料が下がる場合でも、返済額が一定ならば収支のブレを最小限に抑えられます。さらに、オフィス市場は景気連動性が高く、空室率が上昇する局面で資金繰りの余裕があるかが生死を分けます。固定金利で返済額を固定化しておけば、突然の収入減にも柔軟に対応できます。
実は、事務所物件では修繕周期が読みにくいのも特徴です。床や空調の交換など大規模修繕が重なる年でも、返済が一定なら総支出のピークをコントロールしやすくなります。また、金融機関の与信評価では、固定金利によるリスク管理がプラス評価されるケースもあります。将来的な追加融資や物件買い増しを狙う際、安定した債務返済実績は大きな後押しになるでしょう。
市場金利とリスク管理の考え方
ポイントは、固定金利であっても金利上昇リスクを無視せず、市場動向をチェックし続けることです。財務省の国債金利データでは、過去20年で長期金利は0.05%から1.5%まで振れ幅がありました。仮に今後1%程度上昇すれば、新規融資の固定金利は2%台に達する可能性があります。早期に固定化した投資家は、この上昇分を事実上“節約”できる計算になります。
一方で、早まって高い固定金利で借りてしまうと損失になる場合もあります。したがって、契約前には「ヘッジ効果と金利見通しのバランス」を比較することが欠かせません。加えて、固定期間終了後の金利タイプを事前に確認することも重要です。多くの金融機関では、期間満了後に変動金利へ自動的に切り替わるため、再度の固定化交渉や借り換えの選択肢を準備しておくと安心です。
2025年度の融資制度と活用ポイント
まず、2025年度も中小企業等経営強化法に基づく「経営強化計画認定」を取得すれば、信用保証料の一部減免と低利融資が受けられます。事務所投資を個人事業や法人で行う場合、この制度により固定金利が0.2%程度下がるケースがあります。また、日本政策金融公庫の「中小企業投資資金貸付」は、最長20年固定で1%台前半と民間より有利です。ただし、事業計画の妥当性が厳しく審査されるため、空室リスクや修繕計画を具体的な数値で示すことが必要となります。
さらに、東京都など一部自治体では、2025年度も「小規模事業者設備投資支援融資」が継続中です。この制度では、固定金利が年0.9%上限で据え置かれ、保証料も半額補助されます。期限は2026年3月末申込分までと発表されていますので、利用を検討する場合は早めにスケジュールを組みましょう。言い換えると、制度活用で確保した低金利こそが、将来のキャッシュフロー余裕を生む源泉になります。
キャッシュフローを最大化する実践テクニック
実は、固定金利を選ぶだけでは収益は向上しません。重要なのは、余剰キャッシュをどう再投資するかにあります。例えば、日本銀行の短観によると、都心五区の平均オフィス空室率は2025年7月時点で4.5%と低水準です。賃料アップの交渉余地がある局面で設備を更新し、テナント満足度を高めれば、単価を3%上げることも難しくありません。金利が固定されているため、賃料増分がそのまま手残りになる効果は大きいと言えます。
また、固定金利で得られる安定収支を背景に、リバースモーゲージ型の追加融資を活用する方法もあります。たとえば、物件評価額の70%まで再度借り入れ、隣地を購入して一体開発を行うなど、スケールメリットを狙う戦略です。もちろん過度なレバレッジは禁物ですが、返済額が読める環境であれば、適切な拡大策が取りやすくなります。
最後に、毎年の確定申告時に修繕費と資本的支出を区分し、減価償却の適用範囲を最適化することも欠かせません。固定金利で利息支払いが一定だからこそ、節税効果を積み上げることが利益の底上げにつながるのです。
まとめ
固定金利の事務所ローンは、将来の金利変動を遮断し、キャッシュフローを読みやすくする強力な手段です。長期保有を前提に、低金利局面で固定化し、自治体や公的融資の優遇制度を組み合わせることで資金コストを最小化できます。空室や修繕といった事務所特有のリスクも、返済額が一定なら冷静に対処できます。まずは金融機関の条件を比較し、利用可能な2025年度制度を確認したうえで、堅実な投資プランを描いてみてください。
参考文献・出典
- 日本銀行 – https://www.boj.or.jp
- 国土交通省 不動産投資市場調査 – https://www.mlit.go.jp
- 財務省 国債金利統計 – https://www.mof.go.jp
- 中小企業庁 経営サポート「2025年度資金繰り支援」 – https://www.chusho.meti.go.jp
- 東京都産業労働局 オフィス市況レポート2025 – https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp