不動産投資を始めたいものの「古い物件を買ってリノベーションすれば安く済むのでは」と考えつつ、ローン金利の変動リスクが怖いと悩む人は多いでしょう。実は、2025年10月時点での変動金利は1.5〜2.0%と依然として低水準が続き、リノベーション費用まで含めて借りられる不動産投資ローンが増えています。本記事では、変動金利を活用した資金調達の仕組みとリスク管理のコツを丁寧に解説します。読み終えるころには、物件選びからローン契約、リノベ計画までの全体像がつかめ、行動に移す自信が得られるはずです。
リノベーション投資の魅力と落とし穴

まず押さえておきたいのは、リノベーションが生む付加価値の大きさです。築30年前後の区分マンションを例に取ると、購入価格を相場より15%ほど抑えられる一方、内装や配管を刷新すると賃料を10〜20%上げられるケースも珍しくありません。また、空室対策としてデザイン性を高めれば、回転率が上がり長期の収益安定につながります。
しかし、工事費が想定を超えるとキャッシュフロー(手元資金の動き)が一気に悪化します。老朽配管の取り替えや耐震補強が追加で発生すると、見積額が当初の1.3倍になる例もあります。つまり、現地調査と専門家の意見を十分に取り入れ、余裕を持った費用計画を立てることが欠かせません。
さらに、リノベ済み物件を転売する場合は短期譲渡税にも注意が必要です。取得から5年以内に売却すると最大39.63%の税率がかかり、想定利益が半減する可能性があります。長期保有で家賃収入を得るのか、早期売却でキャピタルゲイン(売却益)を狙うのか、戦略を明確にしてから資金を組むことが成功の鍵になります。
不動産投資ローンの仕組みと審査ポイント

重要なのは、不動産投資ローンが住宅ローンとは異なる審査基準を持つ点です。金融機関は「物件自体の収益性」と「借り手の与信力」を併せて評価します。具体的には、想定賃料収入から空室率20%と固定費を差し引き、年間返済額比率(DSCR)が1.2倍以上になるかを確認されることが一般的です。
また、2025年度の主要行では自己資金10〜20%を求めるケースが増えています。自己資金を多く入れるほど返済負担が軽くなり、金利交渉でも有利になる傾向があります。日本政策金融公庫をはじめとする公的融資は、リノベーションを伴う事業性が明確なら低金利での借り入れが可能ですが、審査期間が長い点には注意が必要です。
リノベ費用を含めて一本化できる「アドオンローン」も広がっています。このスキームなら工事段階でつなぎ融資を手配する手間が省けるため、資金管理がシンプルになります。ただし、完成後に再鑑定が行われ、想定賃料が下振れすると融資額が減る場合があるため、賃料査定は保守的に見積もると安心です。
変動金利のメリットとリスクをどう捉えるか
ポイントは、低金利メリットと金利上昇リスクを天秤にかけることです。変動金利1.5%で3000万円を25年借りると毎月返済は約12万円ですが、金利が2.5%に上がると約14万円に増えます。家賃収入が月18万円なら余剰は6万円から4万円へ縮小し、予備費が少ないと途端に資金繰りが苦しくなります。
一方で、固定10年型3.0%を選ぶと毎月返済は約14万円で一定です。変動との差額2万円を保険料と考えられるかが判断基準と言えるでしょう。全国銀行協会の2025年10月データによれば、直近5年間の平均変動金利は1.7%前後で推移しており、急な上昇局面は限定的でした。つまり、短中期でのキャッシュフロー重視なら変動金利は有効な選択肢になります。
リスクを抑える具体策として、元本と利息の合計返済額が1.5倍になっても現金預備費で6か月以上カバーできるよう手元資金を確保する方法があります。また、金利上昇局面では固定への借り換えや、部分繰上げ返済で元本を減らすなど柔軟な対応が欠かせません。
資金計画とリスクヘッジの実践ステップ
まず、購入価格の20%を自己資金、総リノベ費用の10%を予備費として別口座に確保しましょう。これにより、工事遅延や金利上昇が起きても資金ショートを防げます。次に、返済シミュレーションを変動金利1.5%、2.5%、3.5%の三段階で実施し、いずれも黒字確保できる物件だけを選定します。
管理会社との入居付け契約も早期に締結し、工事完了前から募集広告を出せば空室期間を最小限にできます。また、家賃保証(サブリース)契約を利用する場合は、保証賃料の改定条件と免責期間を細かく確認することが大切です。保証賃料が市場賃料の80%以下では、金利上昇時の耐性が下がる点に注意してください。
さらに、2025年度の国土交通省「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、一定の省エネ基準を満たす工事費に対し最大250万円の補助が受けられます。補助金分を自己資金に充当すれば返済総額を抑えられるうえ、入居者に光熱費削減メリットをアピールでき、長期入居につながる好循環が生まれます。
まとめ
変動金利は低コストで始められる一方、上昇リスクへの備えが必須です。リノベーションで家賃収入を底上げし、不動産投資ローンの返済余力を高める戦略は今も有効ですが、自己資金の厚みと保守的なシミュレーションが成功を左右します。まずは複数の金融機関で事前審査を受け、同時に工事見積もりを取って総投資額を明確にしましょう。十分な準備を重ねれば、変動金利を味方につけた収益性の高い物件運用が可能になります。
参考文献・出典
- 全国銀行協会 – https://www.zenginkyo.or.jp
- 国土交通省 長期優良住宅化リフォーム推進事業 – https://www.mlit.go.jp
- 日本政策金融公庫 事業資金案内 – https://www.jfc.go.jp
- 東京都住宅政策本部 住宅市場動向調査2025 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
- 不動産流通推進センター 不動産取引価格情報 – https://www.retpc.jp