会社員として働きながら「将来の年金が不安」「給与だけでは資産が増えない」と感じていませんか。アパート経営は給与所得とは別に安定収入を得られる手段として注目されていますが、「本当に儲かるのか」「空室リスクが怖い」と二の足を踏む人も多いでしょう。本記事では、会社員がアパート経営で収益性を高めるための指標、最新の融資・税制情報、具体的な空室対策から出口戦略までを体系的に解説します。読むことで、初期段階でつまずきやすいポイントを避け、自分に合った投資計画を描けるようになります。まずは基礎となる収益指標から確認していきましょう。
収益性を左右する主要指標を理解する

重要なのは、満室時の家賃収入だけでなく、運営コストと投下資本を総合的に捉えることです。会社員の方がキャッシュフローを安定させるには、利回りや返済比率といった指標を組み合わせて判断する視点が欠かせません。
最初に見るべき指標は「表面利回り」です。年間家賃収入を物件価格で割った単純な算式なので、広告資料でも目にする機会が多いでしょう。しかし管理費や修繕費を含んでいないため、実際の手取りとは差が出ます。つまり、参考値としては使えますが、そのまま鵜呑みにしてはいけません。
次に比重が高いのが「ネット利回り(実質利回り)」です。家賃から管理委託料、共用部の電気代、固定資産税などを差し引いた後の利益を基に算出するため、現金ベースの収益性を把握できます。ネット利回りが5%を超えると、金融機関の返済比率が50%程度でも月々プラスになるケースが多く、会社員が副収入として運用しやすい水準だと言えます。
さらに、長期保有を前提にするなら「自己資本利益率(ROE)」も外せません。自己資金300万円、年間手取り30万円ならROE10%となり、株式投資の平均値を上回ります。借入を上手に活用すれば自己資本を抑えつつROEを高められますが、金利上昇リスクを十分にシミュレーションする姿勢が求められます。
会社員がアパート経営に向く理由と注意点

実は、安定した給与収入がある会社員は金融機関からの評価が高く、融資を受けやすい立場にあります。勤続年数3年以上、年収500万円超であれば、地方銀行や信用金庫の投資用ローン審査に通過する確率が大幅に上がります。こうした信用力をテコにレバレッジ効果を活用できる点が大きなメリットです。
一方で、給与所得と不動産所得が合算課税になる点を忘れてはいけません。赤字を出せば給与と相殺して節税できる反面、黒字が増えれば税率も跳ね上がります。青色申告特別控除65万円(2025年度も継続)や減価償却をフル活用し、課税所得を適切にコントロールする計画を立てましょう。
また、会社員は日中に物件対応が難しいため、管理会社選びが成否を分けます。管理委託料は家賃の3~5%が相場ですが、クレーム一次対応や家賃督促を含むフルサポート型を契約すれば、精神的負担を大幅に減らせます。その分コストが上がるため、ネット利回りの計算には必ず反映してください。
最後に、副業規定にも目を通す必要があります。上場企業でも不動産所得を「不労所得」とみなして許可しているケースが増えていますが、事前届け出が必須の会社もあります。就業規則を確認し、トラブルを未然に防ぐことが長期的な投資継続の鍵となります。
融資と税制の最新ポイント(2025年度版)
まず押さえておきたいのは、2025年度も続く低金利環境です。日銀の長期金利誘導目標は0.25%前後で推移し、地方銀行の投資用ローン固定金利は年1.8~2.4%が主流となっています。金利が1%上がると35年返済で毎月の支払額が約7,000円増えるため、固定か変動かは慎重に見極めましょう。
税制面では、「住宅用家屋の不動産取得税軽減」が賃貸住宅にも適用されるケースがあり、取得後一定期間内の申告で税額が1/2になります。さらに、中小企業経営強化税制のうち賃貸住宅向けの即時償却特例は2025年3月末まで延長されているため、法人成りを検討する場合は期限に注意が必要です。
個人名義で購入するなら、2025年度の所得税改正で医療費控除の電子申告要件が緩和された影響も押さえておきたいところです。電子帳簿保存を選択すれば青色申告特別控除65万円がスムーズに適用され、紙での保存より事務負担を減らせます。
なお、会社員が初めて融資を受ける際には「返済期間=法定耐用年数」を基本ラインに審査されます。木造アパートなら22年、RC造なら47年が目安です。耐用年数オーバーの中古物件でも、リフォーム工事で残存年数を延ばせば返済期間を伸ばせる場合があるため、金融機関と早めに相談しましょう。
空室率を下げる運営術と最新トレンド
ポイントは、物件の魅力を維持しつつターゲット入居者を明確にすることです。国土交通省住宅統計によると、2025年8月の全国アパート空室率は21.2%(前年比▲0.3%)でしたが、都市郊外では30%近い地域もあります。立地が選べない場合でも、設備投資とマーケティングで差別化する余地は十分にあります。
まず設備面では、宅配ボックスと高速インターネットがミレニアル世代からの需要を集めています。導入コストは1室あたり月1,000円程度の家賃上乗せで回収できるケースが多く、長期的な入居期間の伸長にもつながります。また、スマートロックやスマホ連動のIoT機器は、小規模アパートでも導入しやすく管理会社との連携もスムーズです。
空室期間を短縮するには、募集家賃の見直しタイミングが重要です。入居申し込みが来ないまま2週間を超えたら、500〜1,000円の段階的な値下げを検討しましょう。反対に、競合物件が埋まっているエリアでは強気の設定が可能なため、賃貸ポータルサイトの掲載状況を毎週チェックする習慣が役立ちます。
加えて、管理会社任せにせず自ら空室確認を行う姿勢も欠かせません。オンライン内見動画を自作し、SNSで拡散するオーナーも増えています。初期費用はスマホ三脚と簡易マイクで1万円ほどですから、行動次第で募集力に大きな差が生まれるでしょう。
将来を見据えた出口戦略
基本的に、アパート経営は長期保有が前提ですが、会社員の場合はライフステージの変化に合わせた出口戦略を持つことがリスク管理になります。例えば、子どもの進学で資金需要が読めない時期が来ると、早期売却や借り換えでキャッシュ化する選択肢が欠かせません。
売却益を最大化するには、築15年以内に手放すと収益還元法で高値が付きやすい傾向があります。家賃設定が市場平均以上、修繕履歴が整っている物件は、投資家間での成約スピードが速いため、帳簿だけでなく写真付きの修繕記録を残しておくと有利です。
一方、相続を見据えるなら法人化が有効です。法人で保有すれば、株式譲渡という形で持分を移転でき、相続税評価額を抑えられます。2025年度の事業承継税制は引き続き適用期限が2032年まで延長されているため、計画的に株価をコントロールしやすい環境が続いています。
結論として、出口戦略は購入時点でシミュレーションしておくことで、値下がり局面でも慌てずに判断できます。売却、継続保有、借り換えの3ルートを想定し、それぞれの損益分岐点を数値化しておけば、将来の選択肢を柔軟に広げられるでしょう。
まとめ
アパート経営で収益性を高めるには、表面利回りではなくネット利回りとROEを軸に判断し、会社員ならではの信用力で有利な融資を引き出すことが第一歩です。そのうえで、2025年度の税制優遇や低金利を活用しつつ、空室対策と出口戦略を購入時から組み込むと、予期せぬリスクにも耐えられます。今日からできるのは、自己資金と融資条件を整理し、ターゲット入居者像を描いて募集・運営プランを具体化することです。小さな一歩を積み重ねれば、給与に加えて安定した家賃収入を得る未来は十分に実現できます。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 2025年版 – https://www.mlit.go.jp
- 財務省 税制改正大綱 2025年度 – https://www.mof.go.jp
- 日本銀行 金融政策決定会合資料 2025年9月 – https://www.boj.or.jp
- 中小企業庁 事業承継税制ガイドライン2025 – https://www.chusho.meti.go.jp
- 総務省 統計局 家計調査年報2024 – https://www.stat.go.jp