収益物件に興味はあるものの、購入手順が複雑で自分にできるか不安ではありませんか。まして初めての投資となれば、物件をどう選び、資金をどう組み、契約をどう進めればいいのか見当がつかない人がほとんどです。本記事では、2025年10月時点の制度と市場動向を踏まえながら、初心者でも迷わず進められる実践的なステップを解説します。読み終えるころには「大丈夫」と自信を持って次の一歩を踏み出せるはずです。
まず押さえておきたい市場の今

ポイントは、日本全体で二極化が進む賃貸需要を正しく把握することです。統計に目を通すと、都心部と主要駅近の需要は堅調ですが、郊外では空室率が拡大している地域もあります。
国土交通省が2025年7月に公表した不動産価格指数では、東京23区の住宅系収益物件は前年同月比プラス4.1%でした。一方、地方圏はマイナス0.8%と足踏み状態です。この差は、賃貸ニーズを支える人口動態と雇用環境の差に由来します。つまり、将来にわたり賃料を確保しやすいエリアは限定され始めているのです。
さらに、総務省「住宅・土地統計調査」速報値では、2025年現在の全国平均空室率は13.6%ですが、三大都市圏では9%台にとどまります。空室リスクを抑えたい初心者は、人口が流入し続けるエリアに的を絞ることが現実的な戦略となります。
一方で、地方の中核都市でも駅前再開発が活発な区域では健闘している例があります。具体的には富山市や高松市の中心部で、単身者向け新築アパートの稼働率が95%超と報告されています。立地の見極めを誤らなければ、地方でも十分に戦えることを示す好例です。
重要なのは、過去のデータに加えて再開発計画や大学の新設予定など将来の需要創出要因も把握することです。自治体ホームページや商工会議所の資料を定期的に確認し、数字だけでなく街の変化を肌で感じ取る姿勢が成功を引き寄せます。
資金計画とローンの組み立て方

まず押さえておきたいのは、自己資金と借入のバランスを明確にすることです。自己資金を2割以上用意できれば、金利優遇や返済負担の軽減につながり、長期的なキャッシュフローが安定します。
日本政策金融公庫の「新規開業実態調査」では、2024年度に不動産賃貸業を開始した個人の平均自己資金比率は22%でした。自己資金が高いほど初期返済額が抑えられ、心理的余裕も増します。また、投資用ローンの平均金利は変動型で1.8〜2.5%が一般的ですが、都市銀行と地方銀行では0.4%ほど差がある調査結果も出ています。わずかな差に見えても、30年返済では総返済額が数百万円変わるため、複数行を比較する手間は惜しめません。
一方で、2025年度も継続している不動産所得の損益通算制度を活用すれば、赤字が出た年に給与所得と合算して税負担を抑えられます。ただし、過度な節税目的は金融機関の審査でマイナス評価を受ける恐れがあります。目的はあくまで長期の収益最大化であり、節税は副次的効果として捉える姿勢が無難です。
融資を申し込む際は、自己資金のほかに予備費として家賃の6か月分を別枠で確保しましょう。予期せぬ修繕や空室に備えることで、返済遅延リスクを減らせます。つまり、金融機関には「返済に穴を空けない体制」を数値で示すことが、審査通過のカギになります。
物件選びで失敗しないための基準
重要なのは、表面利回りに振り回されず、実質利回りと将来価値を同時に評価することです。表面利回りが高い物件は多くの場合、築年数が経過していたり立地が弱かったりします。
実質利回りを試算する際は、賃料年収から管理費、修繕費、固定資産税、空室損を差し引きます。たとえば家賃年収240万円、経費率25%、想定空室率10%なら実質利回りは240×0.65÷物件価格で求められます。空室率の設定には、国土交通省「賃貸住宅市場の実態調査」地域別平均を参考にしつつ、保守的にプラス2〜3ポイント上乗せしておくと安全圏です。
立地チェックでは、駅からの徒歩分数だけでなく、スーパーや病院までの距離、夜間の街灯の明るさなど生活利便性を体感してください。また、スマホアプリで昼と夜の電波状況を調べると、在宅ワーク需要に応えられるか判断できます。設備面では光回線対応、宅配ボックス設置が「借り手の当たり前」になりつつあり、コストがかかっても改修を検討する価値があります。
さらに、将来の修繕計画を売主から入手し、10年先に発生する大規模修繕を織り込むことが肝心です。特に築25年以上のRC(鉄筋コンクリート)造は、屋上防水や配管更新に500万円規模が必要になるケースもあります。購入前に長期修繕計画を読み込み、積立金の不足が予想されるなら価格交渉の材料にする視点が求められます。
売買契約から引き渡しまでの具体的手順
実は、多くのトラブルは契約前の情報確認不足とスケジュール管理の甘さから生まれます。流れを理解しておけば、大半の問題は未然に防げます。
1. 買付証明書の提出 2. 金融機関の事前審査 3. 重要事項説明・売買契約 4. ローン正式審査・金銭消費貸借契約 5. 決済・引き渡し
上記の手順はどの仲介会社でも共通ですが、フェーズごとに確認すべきポイントがあります。たとえば重要事項説明では、設備の瑕疵担保責任期間が2年間なのか3か月なのかで、実質的なリスクが大きく変わります。疑問点はその場で質問し、議事録としてメールで残すと後日の証拠になります。
ローン正式審査の段階で、金融機関に「長期固定と変動を併用するミックスローン」の相談をすると、金利上昇リスクに備えた柔軟な資金計画が立てられます。2025年10月現在、長期金利は徐々に上向いており、固定比率を高める投資家が増えています。借入期間を短くして金利を下げる選択肢もありますが、キャッシュフローがタイトになる点には注意が必要です。
決済当日は、司法書士が登記手続きを行い、売主への残代金支払いと同時に鍵を受け取ります。ここで火災保険が未加入だと金融機関から融資実行されないため、最低でも前日までに証券を準備しておくことが必須です。スムーズに終えれば、物件取得の日から家賃収入を得る権利が発生します。
購入後の運営とリスク管理
ポイントは、収益を守る運営体制を整え、長期的に物件価値を高めるアクションを習慣化することです。購入直後に管理会社と目標稼働率や修繕方針を共有し、毎月のレポートで進捗を確認します。
2025年度も有効な「賃貸住宅省エネ改修補助金」は、断熱性能を向上させる改修に対して費用の三分の一(上限120万円)が支給されます。省エネ性能が向上すれば、人気が高まり賃料を1割上げられた事例も報告されています。つまり、補助金を活用したバリューアップは、キャッシュフローと資産価値を同時に押し上げる好手となります。
リスク管理では、自然災害と家賃滞納への備えが欠かせません。火災・地震保険に加え、家主費用特約を付けると、災害後の家賃減収をカバーできます。滞納対策としては、連帯保証人より保証会社を活用したほうが実務上の回収率が高いことが国土交通省の調べで明らかです。
最後に、購入後一年ごとに物件の価値を再評価しましょう。不動産会社に簡易査定を依頼し、市場価格が上昇していれば、借換えによる金利引き下げや追加融資で次の投資に進む選択肢が広がります。こうしたPDCAを回すことで、収益物件は単なる家賃収入口ではなく、資産形成を加速させるレバレッジとなるのです。
まとめ
ここまで、「収益物件 初めて 購入手順 大丈夫」という疑問に寄り添いながら、最新市場動向の確認、資金計画、物件選び、契約実務、購入後の運営という五つのステップを解説してきました。重要なのは、数字と現場感覚の両面からリスクを測り、計画的に資金と時間を投下することです。今すぐできる行動として、気になるエリアを歩き、複数の金融機関に事前相談を申し込み、シミュレーション表を自作してみてください。具体的な一歩を踏み出せば、収益物件購入への不安は確実に小さくなります。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_tk3_000180.html
- 総務省 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/
- 日本政策金融公庫 新規開業実態調査 – https://www.jfc.go.jp/
- 国土交通省 賃貸住宅市場の実態調査 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/
- 住宅金融支援機構 金利動向 – https://www.jhf.go.jp/