アパート経営に興味はあるものの、「会社員の給与だけで本当に修繕費までまかなえるのか」と不安に感じる方は少なくありません。実は修繕費を適切に見積もり、計画的に積み立てれば、サラリーマンでも安定したアパート運営は十分に可能です。本記事では、修繕費の基本から資金管理のコツ、2025年時点で使える税制メリットまでを順序立てて解説します。読み終えた頃には、修繕費への漠然とした不安が具体的な行動計画へと変わるはずです。
修繕費とは何かを正しく理解する

まず押さえておきたいのは、修繕費が「突発的に発生するコスト」ではなく「計画的に準備できる投資コスト」だという点です。国税庁の定義によれば、修繕費とは建物の原状回復や機能維持を目的として支出する費用を指します。一方で資本的支出は価値を高める工事であり、減価償却の対象になります。この区分を理解することで、税務処理を最適化しキャッシュフローを安定させられます。
重要なのは、修繕費が発生するタイミングと金額を概算しやすい点です。外壁塗装なら10〜15年ごと、屋上防水なら15〜20年ごとに必要となるケースが多く、工事単価も公開されているため、購入前に長期修繕計画を作ると予測精度が高まります。また、2025年8月の国土交通省住宅統計によると、全国のアパート空室率は21.2%ですが、適切な修繕を行う物件では平均より3〜5ポイント低い水準で推移しています。つまり、修繕費は単なる支出ではなく空室リスクを下げる投資といえます。
サラリーマンが修繕費を積み立てる三つの方法

ポイントは「定期預金」「管理会社の修繕積立」「別口座での自己管理」の三つに分けて考えることです。まず給与振込口座から定期預金に自動振替する方法は、手間が少なく心理的ストレスも小さいのが利点です。次に管理会社を通じて毎月の家賃から一定割合を積み立てるやり方は、家賃収入の範囲内で完結するためキャッシュフロー管理が容易になります。
一方で自己管理用の別口座を使う方法は、金額の上下を柔軟に調整できる反面、強い自己規律が必要です。私は年間家賃収入の10%を目安に設定し、空室が出た月でも最低5%は拠出するルールを推奨しています。こうした積立があると、突発的な給湯器交換(30万円前後)や外壁部分補修(50万円前後)にも慌てず対応できます。また、修繕積立金を家賃収入の経費として計上することで、所得税や住民税を軽減できる点も大きなメリットです。
修繕費を左右する物件選びのチェックポイント
実は物件の築年数や構造だけでなく、施工履歴の有無が将来の修繕費を大きく左右します。築20年の軽量鉄骨造でも、5年前に屋根と外壁を全面改修していれば当面の大型修繕は不要です。逆に築10年でもメンテナンス履歴が曖昧な物件は、短期間で高額費用が発生する可能性があります。
さらに、地方都市と都心部では同じ工事でも単価が2〜3割異なることがあります。これは職人の人件費や資材運搬コストの違いによるもので、投資エリアを選ぶ段階から考慮する必要があります。購入前の内見では、共用部の排水管や屋上防水シートの状態をチェックし、管理会社から過去5年分の修繕記録を取り寄せると費用予測の精度が格段に向上します。
2025年度に使える税制・補助制度の活用術
2025年度も中小企業等経営強化法による固定資産税の軽減措置が継続しており、一定の省エネ改修を伴う工事では翌年度の税額が最大半分となります。期限は2026年3月末着工分までなので、来年に大型改修を予定しているオーナーは早めの申請が得策です。また、国交省の長期優良住宅化リフォーム推進事業では、劣化対策や断熱改修を行うアパートに対し1戸あたり最大50万円の補助が受けられます。ただし、設計事務所による事前審査が必須であり、募集枠も年々縮小しているため、工事会社と連携してスケジュールを確定させることが欠かせません。
一方で、所得税の青色申告特別控除65万円を活用すれば、修繕費を含む経費計上によって税負担をさらに抑えられます。クラウド会計ソフトを使えば日常の仕訳が自動化され、会社員の限られた時間でも帳簿付けが容易になります。税制や補助制度は変更がつきものですが、2025年10月時点で有効なものに絞って活用すれば、想定外の出費を抑えながら物件価値を高められます。
キャッシュフローに与える影響を数値で掴む
基本的に修繕費は毎年均等に発生するわけではなく、大規模修繕の年に集中します。そのため長期シミュレーションを作成し、表計算ソフトで「累積キャッシュフロー」「修繕積立残高」「ローン残高」を10年単位で並べてみるとリスクが可視化されます。例えば、家賃収入年間800万円、ローン返済年間450万円、修繕積立年間80万円の場合、表面利回り8%の物件でも自己資金が十分でなければ6年目にマイナスに転じるシナリオが現れます。
しかし、ここで金利1%の繰り上げ返済を年30万円ずつ行うと、9年目には累積キャッシュフローが黒字に改善する試算もあります。つまり、修繕費とローンのバランスを見ながら適宜キャッシュを動かすことが、サラリーマンオーナーにとって最も現実的なリスクヘッジ策になります。また、空室が続いた場合を想定し、全国平均空室率21.2%の1.2倍である25%を設定しても黒字が保てるかを確認しておくと安心です。
まとめ
結論として、アパート経営で成功するサラリーマンは、修繕費を「読めるコスト」として前向きに管理しています。長期修繕計画を立て、毎月の積立を仕組み化し、税制や補助制度を適切に活用すれば、突発的な出費に振り回されることはありません。ぜひ本記事を参考に、今日から具体的な数値目標を設定し、堅実なアパート経営へ一歩踏み出してください。継続的な学習と計画的な資金管理が、あなたの不動産投資を長期的な資産形成へ導いてくれるでしょう。
参考文献・出典
- 国土交通省住宅統計調査 2025年8月速報 – https://www.mlit.go.jp/statistics/
- 国税庁 タックスアンサー「修繕費と資本的支出の区分」 – https://www.nta.go.jp/
- 中小企業庁 経営強化法に基づく税制優遇 – https://www.chusho.meti.go.jp/
- 国土交通省 長期優良住宅化リフォーム推進事業 2025年度公募要領 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/
- 総務省 統計局 家計調査 年報 2024 – https://www.stat.go.jp/