不動産投資を検討していると「ローンの利息がもったいないから現金一括が得だ」と耳にすることがあります。しかし実際に多額の資金を一度で投じる決断は簡単ではなく、判断を誤ると長期的な資産形成に影響が出かねません。本記事では現金一括 不動産投資 デメリットという視点から、レバレッジ効果の欠如、資金拘束による機会損失、税金面での落とし穴などを総合的に解説します。読後には「なぜ現金一括が必ずしも最良ではないのか」を理解し、ご自身の戦略に合った資金計画を選べるようになるはずです。
現金一括購入の仕組みを正しく理解する

まず押さえておきたいのは、現金一括購入のメリットとその裏に潜むリスクを同時に把握することです。住宅ローンを使わないため金利負担がなく、月々の返済ストレスもありません。一方で投下資本の回収が長期化し、次の投資機会を逃す危険性があります。
国土交通省「不動産価格指数(2025年7月公表)」によると、首都圏中古マンションの平均利回りは年4.2%前後です。仮に5000万円を現金で投じても年間家賃収入は210万円程度にとどまり、純利回りが3%だとしても回収には30年以上かかります。つまり短期間で複数物件を持つポートフォリオ形成は難しく、資産拡大のスピードが鈍る点が最初のデメリットと言えるでしょう。また金融機関の信用実績を築けないため、将来ローンを組みたくなった際に審査で不利になる場合もあります。
レバレッジ効果を捨てることの影響

重要なのは、レバレッジ効果(てこの原理)を活用できないことで投資効率が下がる点です。レバレッジ効果とは少ない自己資金で大きな資産を保有し、家賃収入から借入返済を行うことで自己資本利益率(ROE)を高める仕組みを指します。
たとえば同じ5000万円の自己資金をもとに、頭金20%で5物件を分散購入したケースを想定します。融資部分を含めた総投資額は2億5000万円となり、利回り4.2%なら年間家賃収入は1050万円です。返済額と諸費用を差し引いても、自己資本に対する利益率は現金一括より高くなる可能性が大きいのです。一方、2025年度の住宅ローン平均金利は日本銀行「貸出約定平均金利」(2025年6月速報)で1.6%前後にとどまっており、借入コストは家賃収益で十分にカバーできる水準と言えます。現金派はこの差益を放棄する形になるため、中長期のリターンに大きな差が生まれる点を理解しておく必要があります。
資金拘束と機会損失のリアル
ポイントは、現金一括が資金の流動性を著しく低下させることです。不動産は株式や投資信託と比べて売却までの時間が長く、2025年の住宅流通市場でも媒介契約から成約まで平均2.5か月かかると国土交通省「不動産流通経営協会統計」が示しています。この期間は資金が凍結された状態になり、市場の好機に素早く乗れません。
さらに、2025年現在の国内REIT平均配当利回りは約4.0%です。5000万円をREITや株式で分散投資していれば、分配金や配当を得ながら必要に応じて部分売却も可能でした。言い換えると、現金一括の不動産保有は市場全体の上昇局面を取り逃すリスクと裏腹なのです。また突発的な修繕や家賃下落に対応するキャッシュリザーブを別途確保しなければならず、資金効率がさらに低下する点も見逃せません。
税金とキャッシュフローに潜む落とし穴
実は税制面でも現金一括には不利な側面があります。ローンを利用すると支払利息が「不動産所得の必要経費」として控除でき、課税所得を圧縮します。しかし利息が発生しない現金購入では、この経費計上ができず所得税・住民税の負担が増えることになります。
加えて、ローン返済中は元本部分を「繰延税金効果」として将来のキャッシュフロー改善に役立てられます。元本返済額は損金になりませんが、実際に支出しているため課税対象外のキャッシュアウトです。その結果、手元に残る現金と課税所得のバランスが取りやすくなります。一方、現金購入の場合は家賃収入がそのまま課税対象になり、税引後キャッシュフローが想定より少ないと感じる投資家が少なくありません。2025年度も不動産取得税や固定資産税の軽減措置は一定期間続いていますが、適用後も税負担は年々かかり続けるため、初期に手元資金を残す戦略が欠かせないのです。
2025年の市場環境で考える現金一括の立ち位置
一方で、借入による金利上昇リスクを避けたい人や、融資審査に不安がある人にとって現金一括は一定の安心感を与えます。日本銀行は2025年4月にマイナス金利政策を解除し、長期金利は1%台後半へと上昇しました。今後さらに金利が上がるシナリオもあり、固定金利ローンを確保できない場合は返済負担が膨らむ可能性があります。
また2025年度の相続税改正では、小規模宅地等の特例が見直されました。相続対策として現金を不動産に組み替える目的で一括購入を選ぶケースも増えています。ただし相続発生時に評価額が下がる物件でなければ節税効果は限定的であり、過度な期待は禁物です。したがって現金一括を選ぶ際は、金利動向だけでなく税制改正やライフプランも含め総合的に検討することが不可欠です。
まとめ
本記事では現金一括 不動産投資 デメリットとして、レバレッジ効果を放棄することによる収益性低下、資金拘束による機会損失、税務面での不利などを解説しました。ローンを使わない安心感は確かに魅力ですが、長期的な資産拡大やキャッシュフロー最大化を目指すなら、適度な借入を活用した方が有利な場面が多いといえます。まずは自己資金を全額投入する前に、金利シミュレーションや複数シナリオの収支計画を作成し、自分にとって最適な資金戦略を選択してください。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産価格指数(2025年7月公表) – https://www.mlit.go.jp
- 日本銀行 貸出約定平均金利(2025年6月速報) – https://www.boj.or.jp
- 不動産流通経営協会 住宅流通統計2025 – https://www.fra.or.jp
- 国土交通省 住宅着工統計2025 – https://www.mlit.go.jp
- 国税庁 相続税法令等改正のあらまし2025 – https://www.nta.go.jp