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一棟買いは危険?失敗しないための基礎知識

不動産投資を始めるとき、「区分より一棟のほうがスケールメリットが大きい」と耳にして心が動く方は多いはずです。しかしネット上には「一棟買い 危険」という言葉もあふれ、怖くて踏み出せないという声をよく聞きます。本記事では、想定外の出費や空室リスクで後悔しないために、経験者が実際につまずきやすいポイントを整理します。読み終える頃には、危険を見える化し、対策を立てる方法が分かるはずです。

一棟買いが区分投資とまったく違う理由

一棟買いが区分投資とまったく違う理由のイメージ

まず押さえておきたいのは、一棟物件は収益もリスクも大きく跳ね上がるという点です。一棟買いでは土地と建物を丸ごと所有するため、自主管理の裁量が広がる一方で、修繕や空室の責任も全て自分に戻ってきます。区分所有なら管理組合が対応してくれる屋上防水や外壁塗装も、一棟では数百万円単位の負担となりやすいのです。

さらに、収益の変動幅が大きいことも特徴です。家賃収入は複数戸から得られるため安定すると言われますが、実際には一棟が築二十年を超えると同時多発的に空室や設備故障が起こりやすく、キャッシュアウトが集中します。つまり、家賃総額が大きいという表面利回りだけで判断すると、真の収益性を見誤る恐れがあります。

見えにくいキャッシュフローの罠

見えにくいキャッシュフローの罠のイメージ

ポイントは、手残りを左右する「運営費率」を現実的に見積もることです。国土交通省の賃貸住宅経営実態調査では、築二十年超の木造アパートでは運営費率が三〇%前後に達しています。初心者がよく使う「家賃の一割を修繕積立に回せば安心」という簡易計算だけでは、複数戸同時退去や給排水管交換に耐えられません。

例えば、月額家賃が総額四〇万円のアパートで、表面利回り一〇%とすると年間家賃は四八〇万円です。ここから管理費、固定資産税、火災保険などで約二〇%、将来の大規模修繕を見込んでさらに一五%を差し引けば、残るのは約三〇〇万円弱に過ぎません。実は、楽観的なシミュレーションほど危険を呼び込みます。

融資審査と金利上昇リスクを読み解く

重要なのは、借入比率が高まるほど小さな金利変動が致命傷になる点です。日本政策金融公庫のデータによれば、二〇二五年上期の平均融資金利は二%を下回る水準ですが、民間銀行の投資用ローンは変動金利が中心です。仮に金利が一%上昇すると、残債八千万円・残期間二十五年の場合、年間返済額は約七〇万円増えます。一棟物件では個人の給与所得で補填できない規模の赤字が発生することも珍しくありません。

また、融資審査自体も年々厳格化しています。金融庁のモニタリング結果によると、自己資金比率一〜二割が求められるケースが増加し、家賃収入のみで返済可能かを示す「返済比率」のチェックも強化されています。つまり、購入前に複数のシナリオで金利と返済額を試算し、最悪ケースでも赤字が家計を圧迫しないよう備えることが欠かせません。

建物・設備の修繕費が投資計画を揺らす

実は、大規模修繕のタイミングを読めないことが、一棟買い 危険と呼ばれる最大の要因です。屋根・外壁の塗装、共有部の配管交換、エレベーターのリニューアルなどは、築二十〜三十年でほぼ同時期に訪れます。独立行政法人住宅金融支援機構の「マンション大規模修繕費用調査」では、延べ床面積五〇〇㎡程度のアパートでも一次修繕で平均一五〇〇万円が必要と示されています。

さらに、ライフライン設備の不具合は入居者満足度を直撃し、退去率を押し上げます。例えば、給湯器をまとめて交換すると一台当たり十五万円前後ですが、十戸同時に故障すれば一五〇万円が即座に出ていきます。つまり、購入時に表面利回りが高くても、築年数が進むほど隠れた負債が膨らむ構造を理解しておく必要があります。

リスクを抑えるための具体的なチェックリスト

まず物件選定では、過去の修繕履歴と長期修繕計画書を必ず確認します。見積書が残っていない場合、専門業者に同行してもらい屋根裏や配管を目視するだけでも、将来の出費を予測しやすくなります。また、レントロール(賃料明細)と入居者属性を突き合わせ、直近二年の入退去率を把握すると収益の安定度を測れます。

購入後は、積立金口座を分けて運用することが有効です。毎月家賃の二割を大規模修繕用として別管理し、残りを返済と生活費に充てる仕組みにすると、緊急支出時でも慌てません。さらに、二〇二五年度時点で有効な「住宅省エネ2025事業」などの補助金は、省エネ性能向上工事に限り最大二〇〇万円が交付されます。期限付きの制度ですが、活用すれば修繕コストを抑えつつ物件価値も上げられます。

最後に、出口戦略を先に描いておくことがリスク分散につながります。売却時期を築二十五年と決め、残債が家賃で完済できるかを逆算すると、適切な繰り上げ返済や再投資の判断がしやすくなります。この一連のプロセスを購入前から具体化できれば、「一棟買い 危険」は「一棟買い 安全」へ近づくはずです。

まとめ

結論としては、一棟買いが危険かどうかは、物件のキャッシュフローと修繕計画を現実的に見抜けるかにかかっています。表面利回りや満室想定収入だけで判断せず、運営費率、将来の金利上昇、大規模修繕の時期を複数シナリオで試算しましょう。そして、補助金の活用や出口戦略の明確化によって、リスクは大幅に下げられます。今日紹介したチェック項目を実践し、収益と安心を両立する投資計画を組み立ててください。

参考文献・出典

  • 国土交通省 賃貸住宅経営実態調査 2024年度版 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省統計局 住宅・土地統計調査 2023 – https://www.stat.go.jp
  • 日本政策金融公庫 融資・金利情報(2025年上期) – https://www.jfc.go.jp
  • 金融庁 令和6年度金融行政モニタリング結果 – https://www.fsa.go.jp
  • 一般社団法人不動産流通機構 レインズマーケットインフォメーション 2025 – https://www.reins.or.jp

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