マンション投資を検討するとき、「区分所有で総額1億円は本当に安全なのだろうか」と戸惑う方が少なくありません。価格高騰が続く今、1室7,000万円超の都心物件を複数持てば、あっという間に1億円を超えます。しかし適切な資金計画を立て、リスクと向き合いながら運用すれば、堅実な収益と資産形成が期待できます。本記事では、1億円規模の区分所有マンション投資を成功させるために必要な視点と実践的なノウハウを、初心者にもわかりやすく解説します。読み終えるころには、物件選びから出口戦略まで一連の流れがイメージできるはずです。
1億円規模の区分所有は何が違うのか

まず押さえておきたいのは、1億円規模になると資産運用の目的が「家賃収入だけ」から「資産防衛と拡大」へ広がる点です。1室3,000万円程度のワンルームでは月数万円のキャッシュフローに注目しがちですが、1億円を投資する場合、投下資本に対する総合利回りと評価益のバランスが重要になります。
東京23区の新築マンション平均価格は2025年10月時点で7,580万円です。つまり都心の1LDKを2戸だけでも、諸費用込みで総額1億円を超える可能性があります。投資額が大きい分、金利変動や空室リスクが家計に与える影響も拡大します。一方で、優良立地の希少性は高く、長期的な値上がり益を期待しやすい点が強みです。
1億円規模になると、複数物件を組み合わせてポートフォリオを作る選択肢も広がります。例えば都心の築浅物件と郊外の高利回り中古を組み合わせれば、収益性と安定性の両立が狙えます。つまり、単一物件に資金を集中させるのではなく、リスク分散の視点でストックを構築することが成功の鍵となります。
資金計画と融資戦略の基本

ポイントは、自己資金と金融機関融資をどう組み合わせるかです。1億円をフルに自己資金で賄える投資家は多くありません。そのため、自己資金20〜30%を用意し、残りを融資で調達するケースが一般的です。自己資金を厚くすれば月々の返済負担は軽くなりますが、手元流動性が減るリスクは無視できません。
融資期間は基本的に築年数と構造で上限が決まります。RC造(鉄筋コンクリート造)の場合、金融機関は耐用年数47年を目安に融資期間を設定します。築10年の物件なら最長37年、築20年なら27年が上限です。期間が短いと返済額が増えるため、手元キャッシュフローが圧迫されます。したがって、築浅物件を選ぶか、複数行を比較して長めの融資期間を確保する工夫が欠かせません。
また、2025年現在の低金利環境は借り手に有利ですが、変動金利は将来の上昇リスクを伴います。全期間固定金利にすると金利はやや高くなりますが、キャッシュフローが読みやすくなる利点があります。つまり、リスク許容度に応じて金利タイプを組み合わせることで、長期的な安定を図ることが可能です。
物件選定で外せない三つの視点
重要なのは、賃貸需要、管理体制、そして出口価格の三点を同時に評価することです。賃貸需要を把握するには、最寄り駅の乗降者数や周辺の再開発情報を確認しましょう。たとえば山手線沿線では再開発が進む高輪ゲートウェイ駅周辺が注目され、将来的な需要増が見込まれます。
管理体制については、管理組合の総会議事録や修繕積立金の残高を精査することが必須です。十分な積立がない場合、大規模修繕時に一時金が徴収され、利回りを圧迫する恐れがあります。築年数が浅くても、長期修繕計画に無理がないか確認するだけで、後のトラブルを回避できます。
出口価格、つまり売却時の予想価格にも目を向けましょう。国土交通省の不動産取引価格情報や周辺成約事例を調べると、おおよその下限価格が推測できます。賃料だけでなく資産価値の底堅さを見極めることで、万一売却を余儀なくされた際の損失を抑えられます。これら三つの視点を合わせると、購入直後の利回りだけでは測れない「総合的な投資価値」が見えてきます。
キャッシュフローと出口戦略の組み立て方
実は、キャッシュフローの安定と出口戦略は表裏一体です。月々の家賃収入から管理費、修繕積立金、ローン返済を差し引き、手残りがプラスであれば一安心ですが、それだけで終わらせてはいけません。なぜなら、外壁補修や設備更新など突発的な支出が数年おきに発生するからです。
例えば15年保有を想定するなら、事前に三段階のシミュレーションを作成しましょう。第一段階は空室率5%の楽観シナリオ、第二段階は空室率15%の標準シナリオ、第三段階は金利が2%上昇し空室率20%となる悲観シナリオです。どの段階でも資金ショートしないかを確認することで、心理的な余裕が生まれます。
出口戦略には「賃貸運用を続ける」「売却してキャピタルゲイン(売却益)を得る」「買い替えでポートフォリオを入れ替える」の三通りがあります。1億円規模なら複数戸を少しずつ売却して利益を確定し、新たな物件に組み替える方法も有効です。つまり、運用中から売却時期と再投資先を想定し、柔軟にプランを更新することが、長期安定経営の礎となります。
2025年度の税制と補助制度の活用法
まず押さえておきたいのは、2025年度の「住宅ローン控除」は原則として自己居住用であり、賃貸用区分所有には適用されない点です。しかし、賃貸住宅の省エネ性能向上に対する国土交通省の「高性能賃貸住宅推進事業」は2025年度も継続しています。断熱性能を満たすリノベーションを行い登録を受ければ、最大200万円の補助が得られます(申請期限は2026年3月末予定)。
加えて、固定資産税の新築住宅軽減措置は賃貸用でも要件を満たせば適用されます。床面積40㎡以上280㎡以下で、建築後3年間は税額が2分の1になる制度です。新築区分を購入する場合、取得時点で適用残期間を確認すると想定利回りが向上します。
法人化についても検討すると節税効果が期待できます。所得税の最高税率は45%ですが、中小法人の実効税率は30%前後です。さらに法人名義で保有すれば、家族を役員にして所得分散を図ることも可能です。ただし、設立費用や毎期の決算コストがかかるため、総収入が1,000万円を超えたあたりで検討するのが現実的でしょう。
まとめ
ここまで「マンション投資 区分所有 1億円」をテーマに、資金計画、物件選定、キャッシュフロー管理、税制活用まで一連の流れを解説しました。大切なのは、高額投資だからこそリスクを見える化し、複数の選択肢を準備しておくことです。金融機関との交渉や補助制度の活用で資金効率を高め、出口戦略を柔軟に更新すれば、将来の経済環境が変わっても安定経営が期待できます。まずは自身のリスク許容度を把握し、物件調査と収支シミュレーションに時間をかけることから始めましょう。今日の一歩が、10年後の確かな資産形成につながります。
参考文献・出典
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国土交通省 不動産取引価格情報 – https://www.land.mlit.go.jp
- 総務省 統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku
- 国税庁 所得税法令集 – https://www.nta.go.jp
- 国土交通省 高性能賃貸住宅推進事業 2025年度概要 – https://www.mlit.go.jp/housing